概要
IBMが初期の真空管式コンピュータ保守用に製造した真空管試験器です。
マニュアルから1950年前後の物と思われます。
ネット上にもほぼ情報のないレアな試験器です。
特徴
かなり小型で、TV-7D/Uの2/3程度のアルミトランクに収められています。
本体中央にマルチテスターが組み込まれており、真空管試験回路と切り離して単独使用することも可能です。
このテスターを試験回路と内部接続することで、小型試験器としては珍しく各電極電圧及び電流が測定可能です。
プレート電圧は0,50,110,150,200,250Vのステップ
SG電圧は0~150V連続可変
G電圧は0~-150V連続可変(つまみ位置がシビアで使いにくいのでこちらで0~75Vに改造)
となっているので、各電極電圧におけるP電流を測定する静特性試験機として使用できます。
Gmは測定できません。
ピン接続は本体上部のハブボードをリードでジャンパすることによって行われます。
オリジナルのジャンパ(左写真)が一本だけ付属していましたが、プラグの規格を同定できなかったので類似のピンを使って自作しました。
試験はショート試験及び、ロード負荷(内蔵ステップ切り替え)をかけた状態での0バイアス電流測定とカットオフ電流測定が、マニュアルに記載された試験項目です。
左図のO点及びB点の電流測定によって良否判定するもので、真空管コンピュータ用試験器らしい試験法です。
内部配線は整理されており、IBMが真空管コンピュータで培った配線技術を感じられます(?)
入手時は完全オリジナルの状態でしたが、劣化した電解コンデンサや抵抗の一部を交換しています。
良い点
・各電極の電圧が直接測定可能。(私の知る限り小型試験機では他にありません。)
・電流測定が可能。
・任意のピン接続が可能
・軽量コンパクト
悪い点
・Gm測定は不可能。
・電圧計の最小レンジが50Vなうえメーターが小さいので、G電圧微調整が難しい。
・メーター回りがカーボン抵抗であり、回路図と実装値のそもそものずれが大きく、経年劣化によるずれも大きかった。(金皮抵抗に換装済み)
総評
機能の面では、大型試験器でしか見ない各電極電圧電流測定可能な点が一番の特徴であり素晴らしい点です。
これだけの機能をこのサイズの筐体に収めたのは驚きで、造りの良さも大手試験器メーカーに匹敵するものです。
いろいろな点で所有の満足度が高く、流石はIBMだなと思いました。