患者擁護団体の利益相反を調査した報告
医療分野の利益相反と言えば医療従事者と製薬企業の関係を思い浮かべるのではないでしょうか。しかし患者擁護団体にも利益相反があります。患者擁護団体は非営利団体であり、その主な活動は特定の疾患や障害の医学研究支援等です。ボランティア団体のようなイメージのある患者擁護団体の利益相反を調査した研究をご紹介します。
Conflicts of Interest for Patient-Advocacy Organizations. PMID: 28249131
調査方法は非営利団体のデータベースであるGuideStarで年間750万ドル以上の歳入のある医療分野コードに分類された団体を検索、年次報告書で寄付金額と用途、寄付者の名前を確認しています。
このGuideStar とは1994年バズ・シュミット氏により、米国ヴァージニア州ウイリアムスバーグに設立された非営利団体フィランソロピック・リサーチが運営する情報サイトの一つです。
結果は以下の通りです。
報告状況は以下の通りです。年間歳入750万ドル~2490万ドルの範囲が最も多く6割を占めました。しかし2億5千万ドル以上の歳入がある団体が6団体ありました。
ほとんどの団体が提供者名を開示していました。しかし開示された金額を正確に出していたのは5団体でした。
業界からの資金提供状況も調査されています。
業界からの資金提供を受けている団体は半数ほどありました。そのうち資金提供額を明確にしていない団体が4割もあるという結果でした。
献金と言えば医療従事者との関係がクローズアップされ製薬企業の陰謀論が流行りますが、患者擁護団体とてかなりの試験提供を受けていることがわかります。医療従事者の場合と同様にとらえるのであれば企業から献金を受けた患者擁護団体が企業に不利な情報を患者に開示しない可能性だってあるのです。活動するには資金がどうしても必要ですから献金を受けることが悪なのではなく、利益相反の情報を開示することが重要だということです。
予防接種率は喚起と通知で改善,特に生電話や対面が効果的という報告(コクランから)
Twitterを見ていると明らかに非科学的な情報が一般市民だけでなく医療従事者からも発信されています。2017年10月時点の日本国内のtwitter利用者数は約4500万人だそうです。9~15%はbotであるとの報告aがあり、さらに重複利用をしている利用者や企業・団体のアカウントもありますから個人利用者数はこの数字より少ないでしょう。多くの人がリツイートして情報が拡散する「バズる」と言われる現象がありますが、真実の情報よりも間違った情報の方が拡散しやすいという報告がありますb。ただ、拡散された情報どおりに行動するかはまた別の話です(一定数行動に移してしまう人がいますから無いに越したことはないのですが)。
1つ論文をご紹介します。様々な手法による予防接種率への寄与を検証した研究をまとめた報告です。
Patient reminder and recall interventions to improve immunization rates. PMID: 29342498
喚起・再通知方法は直接電話・手紙・ハガキ・テキストメッセージ・自動音声案内・メールと電話の組合せ・案内通知或いは出向いての案内・対面案内が検討されました。このうち直接電話と対面説明がより効果的だったと結論付けています(表1)。
表1 通知方法による接種率への寄与
各通知方法のメタアナリシスの異質性は中等度から高度でした。恐らくハガキと手紙の違い、アウトリーチで対面説明もしている(対面説明のメタアナリシスにトラッキング&アウトリーチの論文が含まれていました)など形式は違うが内容が似てきてしまうためはっきりとした分類がしにくいのが要因と思われます。
個々の論文を一部ご紹介します。
A randomized study of tracking with outreach and provider prompting to improve immunization coverage and primary care. PMID: 9917436
※この論文は対面案内のメタアナリシスに含まれていました。方法はトラッキング&アウトリーチです。やはりメタアナリシスを行う際の割り振りに難があるようです。
介入は何もしない(コントロール)・案内通知のみ・トラッキング&アウトリーチのみ・トラッキング&アウトリーチと案内通知の組合せの4種のどれかに割り付け。
※トラッキング&アウトリーチとは未接種状況をスクリーニングして訪問案内する方法。
結果はトラッキング&アウトリーチで20%の接種率改善が得られたというものでした。コクランのメタアナリシス及び個々の論文を見てみるとコミュニケーションが密である方法の成績が良かったです。これはテクノロジーが発展してもやはり人間は感覚や感情に影響されやすいとも言えますが、しかし逆に医療従事者が密なコミュニケーションで案内をすれば拡散した誤ったネット上の情報など取るに足らないともいえるのではないでしょうか。
拡散した情報の火消しはどうしても後手に回ります。そこに労力を割くよりも外来や公共の場での講演などの地域に根差した地道な活動を進めていく方が効率的かもしれません。
a. Online Human-Bot Interactions: Detection, Estimation, and Characterization.
b.The spread of true and false news online.
区間推定ってなんだろう?
みなさま、こんにちは。
平成30年第3回AHEADMAP関東支部抄読会の開催をご案内いたします。
ツイキャス日時:平成30年3月24日(土曜日)
午後9時30分頃予定です。
ツイキャス配信はこちら
→https://ssl.twitcasting.tv/aheadmap_kantou/broadcaster
お時間があれば聞いてみてください。
さて、今回は、統計学を学ぶ第2弾!!!
区間推定ってなんだろう? です
そして、区間推定から話は進んで、統計でよく使われる用語について触れたいと思います。
どんな用語がでてくるんでしょうか??
今回もスライドを表示しながらお話しをさせていただきます。
ぜひ よろしくお願いいたします!!
ナンで統計を使うんですか?
さま、こんにちは。大変遅くなりました。
平成30年 第2回AHEDMAP関東支部抄読会の開催をご案内致します。
ツイキャス配信日時:平成30年2月24日(土曜日)午後9時30分頃を予定しております
ツイキャス配信はこちら↓
https://ssl.twitcasting.tv/aheadmap_kantou/broadcaster
お暇であれば聞いてみてください。
==================================================================
今年は論文で必ず用いられる統計学を学んでいきたいと思います。
統計をより身近に感じて頂けるような内容にしていきたいと思っています。
よろしくお願いします。
今回のお題は「ナンで統計を使うんですか?」です。
統計を使うとどういいことがあるのか?
どうやるのか?
に触れたいと思います。
今回からツイキャスの画面にスライドを表示しながら進めます。
使用するスライドはこちら(5秒/毎)↓
平成30年1月27日配信のお題論文のデザインはcase-control studyです。Case-control studyって何ですか?
薬の効果を検討する臨床試験のdesignでよく行われるrandomized controlled trial(RCT)は暴露のから設計される試験で、現在から未来へ向かって調査します。それに対して、平成30年第1回配信のお題論文のdesignはcase-crossover study(書かれていますが括りはcase-control studyです)は現在から過去に向かって調査する試験です。crossoverというのはcaseとcontrolを設定した場合でも、ある一定期間をおいてcaseとcontrolを入れ替える、つまりcrossさせる試験のdesignです。このdesignの利点は症例数が稼げることです。case20人、control20人で行えば入れ替えて40人ずつのデータが取れます。しかしインターバルを置くとはいえ暴露の影響が完全に消えているのか?は誰にもわからないので信頼性に影響が出ることが欠点です。今回のdesignはcaseとcontrolをcrossさせていませんが、同一人物の発作の無い期間とあった期間を比較をしているためと思われます。
Case-control studyは設定した調査期間の発症した例としない例を抽出し、過去の暴露状況を調査します。
Case-control studyの利点は追跡をしない為、お金と時間がかからないことです。しかし、これにより同時に大きな欠点も抱えます。それは過去の状況を現在から調査するため詳細が不明になる可能性があることです。
今回のお題論文もそれを踏まえて結果を見て頂けたらと思います。
僕、痛風なんですがビールじゃなくて焼酎とかワインならいいですか?
皆さま、こんにちは。
平成30年 第1回AHEDMAP関東支部抄読会の開催をご案内致します。
ツイキャス配信日時:平成30年1月27日(土曜日)午後9時30分頃を予定しております
ツイキャス配信はこちら↓
https://ssl.twitcasting.tv/aheadmap_kantou/broadcaster
お暇であれば聞いてみてください。
==================================================================
<シナリオ>
ある町の薬局にて、初めて来局された患者さんからこんなことを聞かれました。
「僕、痛風の治療しているんだ。以前痛みも出たことがあってね。食事には気を付けたいんだけどお寿司とかお酒好きなんだよね。でもプリン体の多い食品とかビールはなるべく避けた方がいいって言うじゃない。ビールじゃなければいいかな? 焼酎とかワインならいいかな?」
<患者背景>
高血圧と痛風の診断を受けており、以下の薬を服用している。
・フロセミド20mg 1錠 分1 朝食後
・アロプリノール100mg 1錠 分1 朝食後
早速食品のプリン体含有量、アルコール飲料と痛風疼痛発作の関連を検討した文献を検索したところ次の論文がヒットし、読んでみることにしました。
Alcohol quantity and type on risk of recurrent gout attacks: an internet-based case-crossover study. PMID: 24440541
https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24440541
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
今回は身近な病気「痛風」をテーマにしました。食生活ともリンクするので気になる方も多いのではないでしょうか。将来罹患するかもしれない病気、一緒に考えてみませんか。
論文抄読会へのお誘い ~自分で発表してみませんか? 英語論文に触れてみよう!~
明けましておめでとうございます(o_ _)o))
昨年8月に関東支部が立ち上がり、早くも半年が過ぎました。
現状の活動はネット抄読会配信です。自分達の情報発信能力の開発・向上を目的として始めました。
ネットを活用することで普段は距離的・時間的に交流の難しいであろう方々とも意見交換、ご助言を頂ける環境が出来たことがこの活動において最も素晴らしい変化だと思います。さらに、そのネットからリアルでの繋がりも得ることが出来ました。
抄読会では主に医学系の論文を扱っています。母語話者・第二言語話者数の世界ランキングの1位は中国語、2位が英語です。中国語は中国自体の人口からこのランキングですが、世界的に見ればやはり英語が最も多いことになります。ちなみに日本は14位です。
※L1:第1言語/L2:第2言語
Rank |
Language |
L1 speakers |
L1 Rank |
L2 speakers |
L2 Rank |
Total |
1 |
Mandarin Chinese |
897 million |
1 |
193 million |
4 |
1.09 billion |
2 |
English |
371 million |
3 |
611 million |
1 |
983 million |
3 |
Hindustani (Hindi/Urdu) |
329 million |
4 |
215 million |
2 |
544 million |
4 |
Spanish |
436 million |
2 |
91 million |
8 |
527 million |
5 |
Arabic |
290 million (2017) |
5 |
132 million |
6 |
422 million |
6 |
Malay |
77 million (2007) |
15 |
204 million |
3 |
281 million |
7 |
Russian |
153 million |
8 |
113 million (2010) |
7 |
267 million |
8 |
Bengali |
242 million |
6 |
19 million in Bangladesh (2011) |
13 |
261 million |
9 |
Portuguese |
218 million |
7 |
11 million |
15 |
229 million |
10 |
French |
76 million |
17 |
153 million |
5 |
229 million |
当然、医学関連論文もほぼ英語で発表されます。ということは英語論文に触れないことは得られる情報量が激減することを意味します。これは日進月歩の医療において致命的です。
論文を読むことが当たり前の環境は今までも現状でも自分の周りではほぼ皆無で、リアルで共有することがなかなかありません。自分以外にもそんな方はまだまだ多いのではないでしょうか?
既にJJCLIPなどもご視聴頂いている方もいるかと思います。当然、聞くだけでも学びはありますが、自身で1時間ほどに話すことをまとめる、それを作成するうえで他の方と意見交換をする、この過程はさらに多くのものを与えてくれると思います。
前述しましたが、主に医学関連論文を扱います。主なメンバーが薬剤師の為、薬物療法関連が今のところ多いですが、他の医療職の方々(看護師、管理栄養士、社会福祉士、精神保健福祉士、臨床検査技師、放射線技師、臨床工学技士、歯科衛生士、理学療法士、作業療法士、救急救命士、言語聴覚士等)もご参加頂けると視野が広がるのではと思います。
必要なものもほんの少しです!
是非お気軽にお声がけください(^▽^)/
ご連絡の際はツイッターで、#aheadmap関東支部メンバー募集 とつけて参加希望とツイートして下さい!
#aheadmap関東支部メンバー募集 hashtag on Twitter
※必要なもの
1.ノリ
2.パソコン
3.インターネット環境
※発表・参加時の自己紹介などはアカウント名で構いません(^▽^)/
本年もよろしくお願い致します。(o_ _)o))