No Gain without Pains

自動車関連エンジニアによる読書のすゝめ

「人工知能(AI)のはなし」を読んで、AIについて考えてみた

人工知能(AI)

今、まさに乗りに乗ってる分野なのではないでしょうか?

そんな乗ってるモノに自分も乗っかってみたくて、読んでみたのが

人工知能(AI)のはなし   大村平

大村先生の「はなしシリーズ」は他にも何冊か読んだことがあり、ウィットに富んだ語り口調で、難しいはなしを平易に伝えてくれるので自分は好きです。

また、機会があれば紹介してみたいと思います。

さて、大村先生の本は数学関係のはなしが多いのですが、そんな著者が今流行りの人工知能についての本を書いていたので、ついつい手に取ってしまいました。

で、読んだらビックリ!!

なんと初版は1992年で、自分が読んだのは2017年に改訂されたものでした。

今から25年以上も前にここまでの見識を持っていたことにめちゃくちゃ驚きました。

その頃の日本で、我々一般人が人工知能と言われてイメージするのはアニメの中の世界くらいだったのではないでしょうか?

うーん、すごい!

 

さて、この本では、そんな人工知能の歴史を振り返りながら、どんな経緯を辿って今に至っているのかを簡単な例題を解きながら説明してくれています。

今、「人工知能」、「AI」という言葉が先走っている感があって、その実情を知らないままに使っている人も多いかと思いますが、そんな人はこの本を読むと、人工知能とは?がおぼろげながらに見えてくる気がします。

 

Googleによる支配? 人工知能の未来について考えてみる

今、人工知能の分野でトップランナーと言えば、なんといってもGoogleでしょう。

有名なのはGoogleが開発したAIが囲碁のトップ棋士に勝ったとかありましたね

そのあたりから人工知能ブームが一気に熱を帯びてきたような気がします。

そのGoogle人工知能を学習させる為に使っているアルゴリズムディープラーニング。日本語で深層学習なんて言ったりします。

人間の脳のニューロンによる情報伝達のメカニズムを真似てつくられたアルゴリズムです。

そのディープラーニングをはじめとする人工知能系のプログラミングに使われている言語に「Python」があります。

実は、自分はほんの数か月前までプログラミングなんて全くわかりませんでした。

エクセルのマクロも触ったことがないくらいです。

でも、大学の授業に「Fortran」の授業があったような記憶が・・・

しかし、このご時世、時代についていけなくなるとやばいと思い、会社で募集していたPythonの研修に応募し、少しだけかじったところなのです。

だから、まだコードとか自分で書いたりはできませんww

ただ、そこで感じたのは、ほとんだが「FREE」だということです。

まず、Pythonはフリーで使えるし、

Googleが開発したディープラーニング用のライブラリであるテンソルフローもフリーで使えちゃいます。

だから、その気になれば個人でディープラーニングしちゃえるんです。

まあ、何に使うのか?が問題なんですが、なんでGoogleはここまで開けっぴろげなのでしょうか?

商売しようと思えばできそうなものです。

そこに私はGoogleという組織の恐ろしさを感じました。

目先の利益なんて興味がないと言わんばかりです。

もっと先を見て、フリーで色々な「Google製」のモノを提供することで、我々はGoogleなしでは生きていけない状態を作られているのではないかと・・・。

そうなってしまえば、利益なんて後からいくらでも回収できるでしょう。

まさに大局観で世界を見ているからこそできる所業です。

目先の利益ばかりを追いかける組織ではとても相手になりそうにありません。

 

だいぶAIから話がそれてしまいましたが、人工知能のはなしを通して、巨大企業Googleの強さの一旦を垣間見た気がしたのでした。

 

「統計学が最強の学問である」を読んでみた

私が学生の頃、数学の確率の授業は最も苦手な科目だった。

何故か?

それは、

「確率なんて数学なのか?」

といった疑問をもっていたからのように今考えると思われる。

だからといって他の数学の分野が得意だったかというと全くダメであったが・・・。

それはさておき、統計学である。

確率とは切っても切れない関係だということは、なんとなく想像できる。

だから、この年になるまで興味をもたずに過ごしてきた。

しかし、たまたま自分の仕事で扱うデータを統計的に処理しないといけないことになり、慌てていろいろ勉強してみたら、意外とおもしろい!

と、その中の一冊が

統計学が最強の学問である   西内啓

統計学に関する本としては異例のヒット本なのではないだろうか?

中身は難しい数式などはほとんどない。

統計学がいかに発展してきて、様々な分野でいかに威力を発揮しているかを教えてくれる。

文字も大きめで、非常に読みやすい。

数式を並べられると、眠たくなってしまう私にはちょうどよかった。

また、間違った使い方をしている人が非常に多く、使う場合の注意点も述べている。

いわゆる

「統計リテラシー

だ。

さて問題は

統計学が本当に最強の学問なのか?」

ということだが、最強かどうかは置いておいて、非常に重要な考え方であることは間違いないと思う。

それは、筆者が本の中で言っていることはもちろんだが、現代の世界は、古典力学に取って代わって、量子力学全盛の時代であるからだ。

量子論では、素粒子レベルでは、存在の有無は確率的にしか表せないとの考え方をとっている。

ということは、結局素粒子の集まりであるこの世界も確率に支配されているのではないかとも考えられるわけである。

そこで、統計学的な考え方というのは非常に重要になってくるのではないかと思う。

私は、そういう意味で統計学が今後さらに重要な役割を担うのではないかと考えている。

 

●たばこと肺がんに因果関係はあるのか?

最後に、この本では度々

「喫煙と肺がんの因果関係」

について統計データとともに示されている。

確かに、何も知らずに読んだら喫煙と肺がんには因果関係があると説得されてしまうことだろう。

しかし、環境問題への指摘で有名になった武田邦彦教授によると、

喫煙率は数十年前に比べて劇的に減少しているのに、肺がん患者はなぜ増加しているのか?という疑問から、「喫煙と肺がんには因果関係がない」との立場をとっておられる。

確かに、一昔前に比べて、自分の周りでも喫煙者の数は激減している。

それなのに肺がん患者が減少傾向という声は聞いたことがない。

※あくまで自分の感覚であり、データを確認したわけではないので、間違っていたら指摘お願いします。

それぞれの先生は、おそらくそれぞれの意見について知った上で主張していると思われるが、実際に会って、建設的な議論をして、現在の時点での結論を聞かせていただきたいものである。

 

「お父さんが教える13歳からの金融入門」を読んで、お金について勉強してみた

「お金」

僕にとっては珍しいお題である。

もちろん、お金はあるに越したことはないが、だからと言って株やFXなどの投資に興味があるかと言われると、「?」である。

何故か?

多分、単純に面倒だからなのだろう

ギャンブルが嫌いかと言われれば、昔は毎日のようにパチスロ、競馬をやっていた時期もあったぐらいだから、嫌いではない。

だけど、株式投資などは、しくみがわからないから手をだすのが億劫なのだ。

 

しかし、良くも悪くも、現在の世界はお金で動いているのは間違いない。

綺麗ごとを言っても、やはりお金は重要なファクターである。

株式投資やFXなどをやるかどうかは置いておいて、その「お金」のしくみを知っているのと、知らないのとでは、今後の人生において大きな違いになってくるのではないかと考えたら、この本を手に取っていた。

●お父さんが教える13歳からの金融入門   デヴィット・ビアンキ

13歳でもわかるなら自分でもわかるだろうと期待して読んでみた。

はっきり言ってわかりやすい。

まさしく入門本で、自分でもすらすら読めた。

でも、はたして普通の13歳(中学1年生)がこれを読んで理解できるか?

微妙なところである。

これが16歳ならだいぶ理解できる子の割合は増えてくるだろうなと思う。

逆にある程度金融関係の知識がある人は知っている事ばかりかもしれない。

自分なんかは、その辺の知識はほとんどないので、

・クレジットカードとデビットカードの違い

・株式のオプションとは?

の話なんかは「へぇ~」でした。

 

●お金は手段

自分は常々こう思うようにしています。

お金は手段であると

現在の世の中ではお金は非常に強力で有効な手段であると

ただし、それが目的やゴールにはならないようにしなければならない。

そうすると、お金を儲ける為にはなんでもやっていいという考えになってしまうからだ

目的と手段が入れ替わってしまっているのに気づかないと大変な事になる

会社は利益を出さなくてはならない。

ただし、その利益は目的ではなく、その会社が社会に対して貢献する為の手段である。

いつからかそれが逆転してしまって、目先の利益を出すことに奔走してはいないか?

そのせいで社会に貢献する為の会社の財産をなくしてはいないか?

 

ちょっと話がそれてしまったが、自分がやりたい事にお金が必要であれば、そのお金のしくみについてよく知り、やりたい事の手段として有効に使える状態にしなければならないと思うのです。

今後もこれをきっかけに少しづつ勉強していく予定ですので、ここで紹介していこうと思います。

 

「プリオン説はほんとうか?」を読んで、BSE問題を再考する

BSE問題

BSE問題、いわゆる狂牛病だ。

僕ら世代だと懐かしく聞こえる響きなのかもしれない。

2001年頃に日本でも大きな社会問題になった。

当時、吉野家から牛丼がなくなり、かわりに豚丼が販売された。

今の若者は知らない人も多いかもしれないが、各牛丼チェーンに最初から豚丼がメニューにあったわけではない。

この事件をきっかけにメニューに登場したのだ。

今ではすっかりレギュラーメニューとなっている。

 

さて、そんな一大社会問題となったBSEだが、そういえば最近すっかり聞かなくなった。

いつの日か吉野家にも牛丼が復活し、世間の皆さんは忘れているかもしれない。

事実、自分もすっかり忘れていた。

そんな時、たまたま「BOOK OFF」さんで面白い本がないか物色していたら、見つけた本がこれだ

●「プリオン説はほんとうか?」  福岡伸一

最近よく読む、分子生物学者 福岡先生の本。

ついつい気になって購入してしまった。

2005年の著書なので、もうかれこれ14年も前の著作になる。

当然、この14年の間に科学は進歩し、BSEに関する知見も増えたのだろうが、あえて、この古い著作を読んでみたくなった。

それは、BSE問題が発生した当時、自分も

「牛丼が食べれなくなる」

くらいにしか考えておらず、基礎的な知識がなかったからである。

とりあえず、この問題を当時の最新科学はどう見ていたのか?

それを知りたくなったのである。

ノーベル賞学者への挑戦 

本の題名にあるプリオン説とは、狂牛病の原因となる病原体をプリオンというタンパク質とする説である。

この説を唱えたプルシナーはノーベル賞を受賞した。

何も知らない私たち一般人が聞けば、

「へぇー、タンパク質が原因なんだ」

と思うだけかもしれないが、医学や生物学の世界の人にとってはそれはとてつもなくセンセーショナルなことだったはずだ。

だって、病気の原因がタンパク質ですよ

よく考えたら「え?!」って思います。

普通、病気は細菌やウィルスが原因で引き起こされます。

それが、ただのタンパク質が原因だなんて・・・。

本ではまず、この「プリオン説」を裏付けるエビデンスについて説明しています。

うんうん、なるほど。それなりに納得させられるデータです。

しかし、福岡先生はここから猛反撃にでるわけです。

あろうことか、ノーベル賞学者に対して・・・

 

福岡先生は、プリオン説の弱点をつき、自らが考える代案をだします。

それが、

「レセプター仮説」

狂牛病を引き起こすのは、あくまで未知のウィルスであると

そしてそのウィルスが猛威をふるった結果が異常型プリオンタンパク質であると推測しています。

 

ここで重要なのは、その内容ではなく、ノーベル賞という最高の権威に対しても科学は反証可能だということでしょう。

人間社会ではこういう事は意外と難しい。

権威のある人(会社であれば社長)が放った言葉は「絶対」となりがちだ。

反証の余地があったとしてもそれが許される空気にはならない。

宗教などはその最たる例であろう。

教祖の放った言葉は絶対なのである。

ただ、科学は違う

科学は、「科学絶対主義」などと批判されることがあるが、それは違うと思う。

科学は絶対ではないからこそここまで進化してきたのではないだろうか?

それがどんなに偉い学者が唱えた学説であろうが、正しく論理的であれば反証可能なのである。

だからこそ、ニュートン力学に代わって量子力学が誕生できた。

 

自分も少なからず実験データを取り扱う身である為、この本を読んで、常に真実は何かを自分の中で反証しながらデータを視なければいけないと痛感した。

 

【おすすめ本】組織のリーダー、マネージャー層が読むべき本 7選

企業、学校、病院、役所 etc・・・

大多数の人が何らかの組織に所属していると思いますが、年を取って経験を重ねると、リーダーやマネージャーという役目を負うようになります。

そして、そんな立場に立つと、若い頃には見えなかったモノが見えてきたりします。

そんな時に読むべき本として、私が読んだ本の中からおすすめする7冊を紹介していきます。

 

●リーダーシップ、マネジメント系

①もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの「マネジメント」を読んだら

                                        岩崎夏海

マネジメントと言えばドラッカー

でも、いきなりドラッカーの本を読むのはハードルが高いって人にはこの本がおすすめ。

通称「もしドラ

有名な本なので私が紹介するまでもありませんが、ドラッカーの「マネジメント」を片手に、高校の野球部の女子マネージャーが野球部をマネジメントして強くしていくという青春ストーリーで、ドラッカーの考えの要点を野球部のマネジメントという想像しやすい実例を使いながら学べるというおもしろい試みの本だと思います。

 

②マネジメント 基本と原則【エッセンシャル版】   P・F・ドラッカー

もしドラ」で予備知識を得たらやっぱり本家を読みましょう。

マネジメントとは何か?

原理原則で語るドラッカーの言葉は、現代でも色あせることはありません。

そして、現代の組織が抱える課題を浮き彫りにしてくれます。

 

③プロフェッショナルの条件 いかに成果をあげ、成長するか   P・F・ドラッカー

ドラッカー2連荘!

「マネジメント」を読んで、さらにこれを読むと、ドラッカーへの理解が一層深まります。

ポスト資本主義社会としてドラッカーが想定する知識社会

資本主義の限界がみえつつある現代において、非常に興味深い内容です。

そしてドラッカーはポスト資本主義社会のモデルとして日本に期待をしているようですが、その期待に応えられているでしょうか?

 

④スーパーエンジニアへの道 技術リーダーシップの人間学   G・M・ワインバーグ

IBMの超一流エンジニアだったワインバーグ氏の著書。

第一線のエンジニアだった著者が、徐々に組織のリーダーにならざるを得なかった時に感じた葛藤は、自分もエンジニアの端くれなので共感できます。

IBMをリタイヤした後、その経験を活かして企業のリーダーシップ研修のコンサルタントをしていた時の経験談をベースに、リーダーシップとは何か?を教えてくれます。

特にエンジニア系のリーダー、マネージャーにおすすめ!

翻訳がちょっと読みにくいですが、慣れれば気になりません。

 

コーチング系

コーチングの神様が教える「できる人」の法則   マーシャル・ゴールドスミス 

いかにも自己啓発系のタイトルで買うのをためらいましたが、中身はタイトルのイメージとは全然違います。

「できる人」とは会社のトップエグゼクティブ(役員クラス)の事を指しています。

著者であるマーシャル・ゴールドスミス氏は、トップエグゼクティブのコーチングが専門なのでこういうタイトルになったのでしょう。

邦題はもう少し考えた方がよいような・・・。

 

また、著者はドラッカー財団の役員も務めていたらしく、ドラッカーに師事しています。

そんなわけで、ドラッカーの考え、特にフィードバックの要素についてふんだんに取り入れたコーチング理論だと思います。

本の構成としては、上述のワインバーグ氏の本と同じく、自らがコーチングしたクライアントの実例をベースに、マネージャーが陥りやすい20の悪い癖と、それらを改善する為の7つのステップを紹介しています。

自分の上司にあてはめて読むと「あるある」的な事例がいっぱい出てくるので、本書に出てくる場面を自分に置き換えながら読むとおもしろいと思います。

 

②コーポレートコーチング(上) 利益を756倍にした驚くべき組織改革術  苫米地英人

苫米地博士は、自らの脳の専門知識を生かした個人向けのコーチングをしているのですが、そんな博士が企業向けのコーチングをして欲しいとの要望に応えて書いたのが本書です。

その中身は普通のコーチングの内容とはだいぶ違っていておもしろいです。

特にゴール設定に対する考え方は、苫米地博士ならではの論理で自分は納得してしまいました。

ゴールは現状の外側に設定するんですよ!

 

③コーポレートコーチング(下) 利益を756倍にした驚くべきリーダー論  苫米地英人

上巻の入門編、初級編に引き続き下巻の中級編です。

組織のトップはどのような思考でどのようなビジョンを描き、そしてどのようなゴールを示さなければならないのか?

苫米地博士ならではの論理的な答えに目から鱗でした。

上下巻ともにボリューム的には多くなく、サクッと読めるので是非おすすめです。

 

 

【おすすめ本】天才脳科学者が答える本当の知性とは?日常の疑問をわかりやすく解説します

●苫米地博士の「知の教室」   苫米地英人

●どんな本?

一見、タイトルからこの本の内容を推し量るのは難しいかもしれません。

概要は、

 編集者が疑問に思った17の事柄について、博識な苫米地博士が

 出来るだけわかりやすく、たとえ話などを織り込んで、対話形式で答える。

といった感じです。

普通、いきなりこんな事聞かれたら「え?どうやって答えればいいんだろう?」といったような事でも、平易にわかりやすく説明してくれます。

難しい事を難しい言葉で語らず、相手がわかる言葉で説明する。

様々な分野に精通する苫米地博士ならではの回答に「なるほど!」となってしまいました。

こういうのって、一つの分野の専門家では難しいのかもしれませんね。

様々な分野の知識があるからこそ、相手の引き出しに合った答えを選んで話すことが出来るのでしょう。

その中のいくつかについて、さわりだけ紹介します。

●4次元について

よく相対論などの本で、「空間軸の3次元(縦、横、高さ)に時間軸を加えて4次元とする」みたいな事が書かれていたりしますが、その時間軸という概念についてイメージしずらい人もいるので、「待ち合わせ」を例にとって時間軸を説明しています。

簡単に言えば、

 待ち合わせで、場所だけ指定しても会う事はできないでしょ

ということです。

自分としては特に時間軸のイメージはしずらい事はなかったのですが、説明の方法として「なるほど」と思いました。

●時間の流れについて

時間が流れる方向について、多くの人がイメージするのは、

 過去 ⇒ 現在 ⇒ 未来

の方向だと思います。

しかし、苫米地博士はそれは誤りであり、時間の流れは、

 未来 ⇒ 現在 ⇒ 過去

なのだと論じています。

この説明には、川上から流れてくるボールで説明していますが、これを聞いてすぐに腹に落とすのは難しいかもしれません。

これは、「時間が進む」といったような言葉に影響を受けているのかもしれません。

はたまた、時計は未来へ向かって進んでいるわけですから、そういう固定観念が出来上がってしまってもおかしくないでしょう。

しかし、確かに時間が過去から未来の方向に流れていると考えると、過去が未来に影響を与えるという因果になって、どこか古典力学決定論的な考え方になってしまいそうです。

でも、過去起きた事象が自分にとって「良かった」出来事だったのか「悪かった」出来事だったのかが決まるのは未来である気もします。

それは、その時は「失敗した!」と思った出来事であっても、その失敗が原因で、未来に大きな成功を納めれば、その過去の失敗は「悪かった」出来事から「良かった」出来事に変わってしまうからです。

だからといって過去の出来事が未来に影響しないとも言えない気もします。

なので、この本の別の章でも書かれていますが、実際は双方向であるといった方がよいのかもしれません。

仏教でいう「縁起」の概念。

それは、原因⇒結果の因果だけではなく、同時に結果もまた原因になっているという考え。

全ての事は、関係性で成り立っており、逆に言うと関係性がなければ存在しないのと一緒という概念。

だから、

 過去があって未来があり、同時に未来があって過去がある

といった感じでしょうか?

著者は、アインシュタインの相対論の方程式ではt(時間)はマイナスで、x、y、z(空間軸)はプラスで書かれているから過去に向かって流れているのは科学でも常識とも言っています。

この辺は、もし物理に詳しい方がいれば是非ご意見をお伺いしたいところです。

●道を極める事とトレランスの話

最後にエンジニアらしい話題を一つ。

この話の中で、

日本の工業製品は、トレランス(許容範囲)を決めても、中央値が非常に高い分布でモノをつくってしまうが、アメリカでは、トレランスの範囲にあればいいという考えの元で裾野が広い分布でモノをつくる傾向がある。そして、それは、日本はリソーセスを無駄遣いしているということ。

といった内容の指摘がありました。

また、それは安くて良いモノを求めすぎる消費者側に原因があるということです。

アメリカにも職人は存在して、トレランスを狭めようと思えば要求に従ってトレランスを狭める事はできるが、要求がなければしないだけの事。

この話は感覚としてはよくわかります。

アメリカもそうかもしれませんが、おそらく、中国製品もその傾向が強いのではないでしょうか?

だからこそ日本製品は安くて品質の高いものという認識が広まっているのだと思います。

しかし、これからさらにグローバル化は進み、海外の部品工場から仕入れて組み立てるという傾向はどんどん加速されていくでしょう。

そうなれば、トレランスの範囲でギリギリ許容範囲といったモノも多く使わざるを得ない状況は容易に想像できます。

その時に日本の工業製品はどういった立ち位置で世界と闘っていくのか?

今までの品質を担保できるのか?

これまでのやり方では通用しない時代に既に突入しているのでしょう。

そこを勝ち抜くためにには、製品そのものに新たな価値を創造しなければいけないのだと思います。

しかし、そういう仕事が苦手な日本人がどう闘っていくのか?

自分を含めて、岐路に立たされているのだとあらためて感じさせられました。

【おすすめ本】人間の知性の限界はどこにあるのか?天才達が明らかにしてきた人間の限界に迫る!

●理性の限界 不可能性・不確定性・不完全性  高橋昌一郎

理系の本を読むようになると、たまに「不確定性原理」や「不完全性定理」というものが出てきます。

それが気になって、それについてわかりやすく説明されている本を探していたら、おもしろそうだったのがこの本です。

理性の限界についてのシンポジウムの参加者達が、ディスカッション形式で議論を進めるといった架空の状況を設定して文章が構成されていて、新しいなと思いました。

また、その架空の参加者達の様々なバックボーンやキャラクター設定によって、色々な角度から議論を見ることができると思います。

この本では、理性の限界として、不可能性、不確定性、不完全性といった三つの定理を主題に議論が進みますが、それぞれは、社会科学の限界、自然科学の限界、形式科学の限界についてどう考えるかといった内容になっています。

●アロウの不可能性定理による「選択の限界」

まずは、アロウの不可能性定理による「選択の限界」の話から

選択と言えば、選挙が代表的なものとして挙げられると思いますが、選挙には色々な形式がとられています。

しかし、どのような形式をとったとしても、どこかで矛盾が生じてしまい、完全に合理的な選挙は不可能であるといいます。

また、「囚人のジレンマ」という有名なパラドックスを題材に「ゲーム理論」による「ミニマックス理論」などが紹介されており、今後の人生の様々な選択の場面で、自分がどのような選択をするべきなのか?の一つの考え方を得た気がします。

ハイゼンベルク不確定性原理による「自然科学の限界」

次に有名なハイゼンベルク不確定性原理による「自然科学の限界」について

これは量子論の中から出てきた原理ですが、この原理の意味するところについては専門家の中でも意見が割れているようです。

それは、量子のような超ミクロな世界では、観測をした途端に観測の影響を量子がうけてしまい、位置と運動量を知ることができないという「観測の限界」であるという考えと、そもそも量子は観測をする前から位置と運動量は不確定であり、どこにでも存在すると同時に存在しないという摩訶不思議な状態であるという考えです。

後者の考えには、あの相対性理論を創り上げたアインシュタインや、量子論を築き上げた一人であるシュレーディンガーですら疑問を呈しており、アインシュタインは「神はサイコロを振らない」という有名な言葉で皮肉っていますし、シュレーディンガーも「シュレーディンガーの猫」という有名なパラドックスで問題提起しています。

このような議論はまだまだ解決をみていないようですが、量子論は現に現実世界で成功を納めており、これからの世界は、量子論を制する者が世界を制するといっても過言ではないくらい、まだまだ成長していく分野なのでしょう。

量子コンピューターが当たり前になる頃には世界はどうなっているのだろう・・・

ゲーデル不完全性定理による「形式科学の限界」

最後にゲーデル不完全性定理による「形式科学の限界」について

形式科学ってなんぞや?って所ですが、要するに数学かな?

数学のような一見、論理の塊で非の打ちどころがないような系(システム)の中に、その系で証明不可能な命題が存在してしまうということです。

ゲーデル以降、不完全性定理は拡張され、ゲーデルが証明した自然数の世界だけではなく、数学全般にわたって証明されたといいます。

そこで「神の非存在論」が出てくるわけです。

要するに「神」をキリスト教などの一神教が言う所の「神」、いわば「全知全能の神」と定義すると、その神も不完全性定理に支配されるため、全知全能ではなくなる。

ということは、全知全能の神は存在しないということになる。

これに関しても当然議論の余地のあるところでしょうが、神の存在を数学で否定できるってすごいですね。

 

どの議論もおもしろく、非常に知的興奮を刺激される内容でした。

量子が粒子と波の性質を同時に持っているように、我々の思考は同時に複数の選択肢を持つことが出来ます。

ということは、思考と量子の間には何か関係があるのか?

なんて妄想を膨らませるのも楽しいです。