フィンランドが足りない
例えるならば、豆源のきなこ大豆のように、地味にクセになる。それがフィンランドだ。
荻窪のフィンランド カフェにて突然悟る。シナモンロールとコーヒー、フィンランド の雑貨たちに忙しさに荒ぶった心が凪いでいく。
マリメッコもカウニステもアラビアも好きだけど、何より求めてしまうのは、サウナとのんびりする時間だ。
お店にはヴィヒタが飾られていて、ウーシサウナでお姉さんに勧められ、自分でも叩いたことを思い出した。サウナの熱で身体が蒸されたような感覚にとらわれる。
フィンランドの楽しみ方は多様であると思うが、私の場合は、サウナとのんびり過ごす時間だ。サウナに入って地元の人や観光客と話し、外気浴、水シャワー、湖、海、雪で体を冷却して、お腹が空いたらレストランやマーケットで美味しそうなものを食べる。
オーロラを観るために訪れたイナリでは、外は銀世界のためサウナ付きコテージでのんびり本を読んで過ごし、雪道を15分位かけて歩いてスーパーで食材を購入し、また夜までオーロラ待ちで寝たり起きたり、サウナしたり、だらだら過ごす。
雪という行動制限にかこつけて、暖かい部屋で贅沢な時間を過ごす。外にで出ないという正当な理由があるのが嬉しい。
くぅー、フィンランドが足りないと地団駄を踏んでいたら(昭和的表現)、この本に出会った。小説を読んでいたのだが、漫画もある。なろうにもある。
フィクションであることは明記されているが、サーミの人たちの生活に近い気がして、イナリへの旅をしみじみ思い出してしまった。
中途半端な田舎で育った軟弱者なので北極圏で狩りをして暮らすのは、今からだとかなりハードモードなので、必要に迫られない限りはしない。しかしその世界観の中で、勝手にフィンランドの雰囲気を感じることができるのはささやかな幸せだ。サウナは出てこないけれど、イナリのお腹を直撃する寒さや雪が積もる静かな町、ゆっくり流れる時間。とてもいい。
読んだら、更にフィンランドへ行きたくなってしまった。いつか一日中真っ暗な、極夜の時期にいってみたいな。本の中では極夜の準備はそれは大変そうだったけど。
ようこそ、ハワイ島へ!Ho`okipa Hawai`i !妄想海外旅行も慣れてきた今日この頃だ
多くの人が大好きであろうハワイ、10月からANAが成田-ホノルル路線を再開するようだ。月2回だが。
9/8にはオアフ島での自宅待機命令の2週間延期になった事もあり、まだまだ普通に旅行できるようになるには何体もの中ボスを倒す必要がありそうだ。
ちなみにフィンランドの入国規制は一部解除されたみたい。当たり前の話なのだが、日本国外では私は外国人なので、落ち着くまで公共サウナへ行くの怖いな。
移動は不自由だが、精神は自由だ。今、レッスンで習っている曲、ホオキパハワイはハワイ島のカマアイナの気分で、あつまれ ハワイ島!という自称親善大使の気分で踊っている。あつ島!
カジメロさんが歌っている「Ho`okipa Hawai`i」、気になる方は是非検索/購入してほしい。テンションが上がるし、歌詞を少し理解できれば、さらにハワイ島気分を楽しめる。アップテンポの良いノリの曲、ハワイ島って言ったら、ここでしょという場所についての歌詞が良き。
歌詞の一番は「ありがとう、ヒロ」から始まり、「カニレフアの雨」「パナエバの森」が出てくる。
ヒロはハワイ大学があったり、フラの大会「メリーモナークフェスティバル」の開催される場所である。
ハワイは意外と雨が降ることが多く、雨について様々な名前がついている。カニレフアの雨は、ヒロに降る雨の名前だ。レフアが飲む雨、レフアを鳴らす雨という意味だ。レフアとはハワイ島のシンボ
パナエバの森は、レフアの森が広がる地域で、様々な神話の舞台になったり、フラソングの歌詞に出てくる。ハワイの神話でペレの妹ヒイアカが倒すモオというトカゲの住処だったりする。現在は熱帯動物園もあるみたいで、神話の世界観を感じてみたい。
二番は、ハワイ島の観光地の紹介かと思いきや、「ここはカマアイナの家」といういきなり親密度が上がって攻略対象のお家へ行く急展開!な状況になる。
カマアイナは、ハワイを舞台にしたドラマ「HAWAII FIVE-O」のセリフにもたまに出てくるのだが、その土地で生まれた人という意味だ。また客をもてなす人という意味もある。その方のお家で美しく豊かな土地を眺めている情景が歌われている。ああ、ハワイ島で何もしないでまったりとしたい。
三番目はハレマウマウだ。女神ペレが住んでいるとされる。火口は深さ400m、直径900mで硫黄臭の強い噴煙が上がるらしい。私が訪れた時は、キラウエアカルデラは閉鎖されており、立ち入ることはできなかった。ペレが起こした噴火の跡を観ている情景が歌われている。
ハレマウマウの火口ではメリーモナークの前に、ハラウが踊りをペレに捧げたりしており、フラを踊るものの端くれとして神妙な心待ちになる。次回は是非行ってみたい。
ブラックサンドビーチ。かめちゃんがおるよ。
四番目はワイメア。さわやかな風が吹く高地だ。こちらは実際に行く事が出来た。コナに滞在していて、とても蒸し暑いなと日々感じていたのだが、こちらは山の高い場所の様でとても涼しく、時折霧が出て軽井沢みたいだった。車の運転がすごーく疲れた。
最後にエンディングの踊りが入り、曲は終わる。踊り終わる頃には息が上がる。テンションも上がる。
私が初めてハワイ島に行ったのは、2018年のことだ。当時はキラウエア火山が噴火していて、旅行に行くことを周りの人にとても心配された。キラウエア火山は島の真ん中にあり、溶岩が島全体に流れていると皆思っていたんだと思う。島の端っこで噴火しているので、実際に旅行にはほとんど問題は無かった。問題は強いて言うなら、公園に入れなかったことくらいだ。
噴火も落ち着き、やられたらやり返す倍返しだと言う時に、再び現在のような事態になるとは誰も思わなかっただろう。溶岩でマシュマロを焼くという、大丈夫か?事案のツアーがあると聞いて、次に行くのを楽しみにしていたが、なかなか試練が続く。いつ生まれたって平穏な一生はない。
今日も祭日にも関わらず連絡がきて、コロナ疑惑の社員がいるということ。明日は社内清掃のためお休みになってしまった。「私、メリーさん」の怪談のごとく、どんどん背後に近づいてくる恐怖と不安がある。
不安は正常な判断ができなくさせることは経験から理解している。その不安を数字で示せる根拠はないし、1000%幻想なのだから、まずはハワイアンソングで癒されて、オキソン満タンにしてガドルと戦いに行こうぜ!
*noteにも同じ内容を挙げています。
マウイ島 マウナレオの霧に抱かれて寝落ちする
がごっ
朝の通勤電車に鈍く大きな後頭部を打ち付けた音が響く。
音に驚き目が覚める。
音量の割には痛くないのだが、周りの人の視線が痛い。さっきまで曲を聴きながらフラの振付をさらっていたのだが、いつの間にか寝落ちていたようだ。
6月から少しずつフラレッスンも再開し、ハワイアンミュージックに心癒され、その優しいハンドモーションに踊りに緊張している心がするすると解けていくようだ。これはフラを始めた2011年にも感じたことがある。あれから9年経って、再び目が覚めるような気分だ。
9月からのレッスン曲は、Keali’i Reichelの名曲「Maunaleo」だ。
多くのハワイアンソングの中で、たまに出会う思い入れがある曲でもある。なかなか踊る機会に恵まれず、今回自分のレッスンで生徒さんに教えることになり、初めて長期的な期間(とは言え年末までだが)踊ることになった。
落語家さんが噺にのまれることがあるというのと同様に、この曲にのまれてしまうことがある。自分の心地よいと思う波長に合ってしまうのか、ケアリーの声が心地よいのか、またその歌詞がとても雄大でお母様への敬愛にあふれているからなのかよく分からない。とにかく踊っていると曲に意識が吸い込まれてしまう様な気分になる。正確に踊れているのか認識できなくなる。
インストラクターとしてレッスンを受けてから数年ぶりに踊るので、振付をさらいながら、曲を聴いていると、寝落ちしてしまったり、気が付けば曲が終わっていたり。なんだこれ、全集中マウナレオの呼吸で知らないうちに攻撃されているのか。ユウナに成仏させられそうになるアーロンさんの如く、とにかく意識を持っていかれる。
マウナレオは、マウイ島ワイルクにある山で、こだまの響く山だそう。渓谷入口の左側に鎮座している。数年前にマウイ島に行った時は、時間と足が無くて訪れることを泣く泣く諦めた、イアオ渓谷にある。
プウ・ククイ山の断崖に囲まれた渓谷で、作家のマーク・トウェインが太平洋のヨセミテと絶賛したということだが、残念がらヨセミテにも行ったことが無いので美しさについては自分の言葉では語れない。
この場所は、昔からアリイ(首長)に愛された場所で、午後の天気が曇りがちの時のみアリイ以外の人々が入ることが許された時代もあったそうだ。
カフルイ空港から車で15分。ワイルクまでのバスがあるのだが、ワイルクからの足が車以外なし。
歌詞の中にも、きらめく霧雨、灰色の霧がかかる、マリエ(マウイ島ワイルクに吹く風の)の霧と何度も霧の表現が出てくる。渓谷は、ハワイでも2番目に雨の多い地域なので、本当に霧がかかりやすい場所なのだろう。フラで霧が出てくると裏の意味があるのかと勘ぐってしまうが、この曲はなさそうだ。
カメハメハ1世のハワイ全島統一の際に、マウイ島でも壮絶な戦いがこの地で行われた。また渓谷の山肌にある洞窟にはアリイたちの亡骸が祀られているとも言われている。戦いの時に渓谷を流れるイアオ川は血で真っ赤にそまり、死体によって川の流れがせきとめられた。その魂が霧になって現れるとかだったら、神聖さを超えてホラーだ。
私がレッスンを受けているハラウでは、立って踊る振付だが、ケアリーが出ている動画では、ノホスタイルで座って踊っているものが多い。山を表現するのにとても合っている振付だと思う。
私が踊ったことがあるノホスタイルの曲には、「ヘエイア」というカヒコの曲がある。ウリウリという赤と黄色の羽で飾られた楽器を片手に持って、波を表現しながら踊る。サーフィンで遊ぶ人たちを歌っている曲だ。
曲とあっているからと言っても、上半身と座った状態の下半身での踊るのは、意外と大変だ。ヘエイアを練習していた時は、床についた足首やひざは痛いし、途中膝立ちになったりするので、バランスを取るのが難しい。地味な動きの割には、下半身へのダメージが大きい。
Keali'i Reichel - Maunaleo (HiSessions.com Acoustic Live!)
曲にのまれてしまうのは、私だけではなく、多くの人が踊りながらうっとりしてしまうようだ。発表会のDVDを観ていると、カオという、腰を上下に動かすステップがあるのだが、腰の動きとともに体も上下に動いてしまい、踊っている人たちがモグラたたきのもぐらみたいにひょこひょことなってしまっていた。残念。
曲がどんなに素晴らしくともダンサーの技術が無ければ、フラは完成されないのだ。
山をモチーフにしている圧倒的な存在感のある曲なので、どっしりと踊ってほしい。教える時にはこの部分を強調したいと考えている。幽玄な雰囲気も出したい。
曲の意味を捉えて、ハンドモーションとステップに反映させる。最後に感情を添えて。一曲一曲を大事に踊りたい。フラを踊れるのも教えるのもこれで最後かもしれないと思いながら、大事に踊っていきたい。もう一度iPhoneで曲を流す。イヤフォンからイントロが流れ出す。
曲について解釈や振付をさらっていく途中で、自分の在り方をカラボー神父から問われたグレイのように、自分はどうしたいのかを考えるのもいい。相も変わらず混沌とした世の中で、自分が幸福であればこのまま流れていくもよし、止まるのもよし。疲れたら休みながら、進んでいこうではないか…
マウナレオの霧に包まれて、意識が…とおく
すぅやぁ…
がごっ
再び後頭部を激しく電車の窓に打ち付ける音が社内に響いた。
フィンランド イナリ 白い静寂と生きとし生きるもの Day5
朝起きたらさらっさらの雪が降ってる。今日の天気予報は一日雪予報。
今日の夜のオーロラは、絶望的だ。春の気候は不安定で、この先1週間も良い天気の日がないし、kp値も低いから明日帰国の途につくとしても残念な感じはない。1週間滞在を延長したとしても、オーロラを見る可能性がとても低いだろう。
気持ちを切り替えて、朝ごはんを食し、唯一申し込んだオプショナルツアー「トナカイのそりに乗るツアー」に参加する。
ツアー会社まで車で乗せられ、防寒着のつなぎを着せられる。もっこもこだ。今日はマイナス6度、そこそこ寒い。もこもこ装備をさせられた一行は、再び車に乗せられSIIDAの更に先の何もない森の中に下ろされた。そこにいたのは、ソリを引いた可愛いトナカイたちとサーミの伝統装束を着たお兄さんだ。
ここから2人ずつソリに乗って、森を進むのだ。
お兄さん《手綱》トナカイ《ロープ》ソリ《ロープ》トナカイ《ロープ》ソリ《ロープ》トナカイ《ロープ》ソリと電池の直列つなぎの様にトナカイとソリが連なっており、参加者各々がソリに座る。かけられた防寒具はトナカイの毛皮と毛布だ。暖かいが、同胞の毛皮をソリを引いているトナカイたちはどう認識しているのだろうか。トナカイ語が分かる設定が私に無くてよかった。
しかしこのようなソリのつなぎ方で、果たしてこのつながったソリはうまく進むのか心配になる。途中に配置されているトナカイが動かなければ、前にいるトナカイがその分も引っ張らないとならないし、動かないのではないか。
結論から言えばそれは全くの杞憂だった。トナカイたちは「やり方はできている」と暗チのリゾットばりにいい仕事をした。昔、サーミが移動していた時には、このソリで人と荷物を引っ張ったのだ。私なんかが心配するのは全くお門違いだった。
可愛いおしりは、もふもふしているように見える。
小雪舞う森の中を進む。気がつくと、こんなに寒くて雪深いのに、鳥たちがピチピチと鳴いている。サラサラの雪が流れていく。
もっとサンタさんのソリや犬ぞりレースの如くにすごい速さで森を駆け抜けるかと思いきや、歩きのお兄さんに引っ張られてトナカイたちは歩く。ソリの速さも13分/kmといった速さにしかならない。
途中でトナカイがコロコロとした茶色の球形を尻尾の下から産んだり、枝や雪を拾い食いしたり。平和だ。
広い場所に出ると焚き火を囲んでティータイムだ。お兄さんがサーミやトナカイについての話をしてくれる。今はトナカイで移動して生活するサーミはおらず、トナカイを飼いながら一か所に留まって住んでいる。
野生のトナカイは少なくほぼ誰かに飼われているらしい。
トナカイはこの厳しい気候の中で生きているので何でも食べる。葉、雪や木の枝、栄養がありそうなものは何でも。確かにここに来る途中、ソリを引きながら、雪の中に口を突っ込んでもぐもぐしていた。水分補給かと思ったが、どうやらお食事だったようだ。
そんな話を聞いていると、遠くからやってきた。
野良トナカイ。
飼われている子らを威嚇したり、お兄さんにクッキーをねだったり。この子は飼われている子ではないらしい。耳にタグが付いていたので、国で管理しているのかもしれない。
野生のトナカイは寿命が短いそうだ。ソリを引いていた子たちと比べてもとても痩せている。この寒い場所で暮らすことの厳しさを感じる。
威嚇されて興奮しちゃった子を慰めるお兄さんと野良トナカイのお尻。
トナカイはサーミにとって、食料になったり、移動手段だったり、防寒具になったりとなくてはならない存在だ。トナカイとともにこの極寒の北極の地に生きていく。オーロラがはためく夜の雪原をヨークを歌いながら、一人トナカイのソリで走るサーミのイメージが浮かぶ。
東京で生きていると本当に自然とともに生きていることを忘れるなぁと思う。
どこのドワーフだというほどの着膨れ。このツノの子は撮影用だとお兄さんは言っていたが、みんな可愛いぞ。
ツアーに参加している人たちもとてもいい人たちだった。ティータイム中も、みんなトナカイの健気な可愛さとこの雪の世界の静かさにリラックスしているかのようだ。写真を撮ったり、話したり。
帰りものんびりとソリに乗り、終わりつつある旅をさみしく思うけれど、良い時間を過ごせた心はほくほくと温かい。
心が穏やかだと言うことは、人を人たらしめる一つの要因なのかもしれない。心が満たされた穏やかな状態を幸せというのだろう。幸せは人の行動を支配する。不幸せも同じだ。
出発する前は、アジア人が暴力をふるわれたり、差別的な発言をされるというニュースに怯えていたが、この5日間全く嫌な思いはすることは無かった。単にほとんど人と合わなかったからかもしれないけれど。
日本にいてもどこにいても差別に合うし、避けられないならどういう対応をするか常に考えておく必要がある。アドリブがきかない私の場合は特にだ。恐れて行動できないのは勿体無いことだとも思う。自分が自分である人生はこの一度だけなのだ。
心穏やかに、冷静に判断できる自分でありたい。
翌日、9時のフライトに乗るために、朝早く起きる。雲の合間に太陽の光が見えて、オーロラみたいだった。
イヴァロ空港まで送ってくれたシャトルバスの運転手のおっちゃんが、バスを降りるときに、
「See you next winter!」
と言ってくれた。
トゥンク…とはならなかったが、キュンとしてしまった。そうだ、こっちのおっちゃんは可愛いのだ。
またここに来よう、いつかの冬に。
ヴァンター空港のムーミンカフェ。可愛かった。
ここまでお読みくださり、有難うございます。
皆さまご自愛下さいませ。よい週末をお過ごし下さい。
フィンランド イナリ サーミ Day4
3時過ぎに寝て、ゆっくり起きてブランチ。初日に購入したパンとスモークサーモン、チーズ、サラダを食す。普通のパンなのになぜこんなにおいしいのか。
今日は、満を持してオーロラハットというコテージに移動する。一泊450€というお値段だが、温かいお部屋からオーロラが楽しめるという。値段も値段なので、二泊だけ予約をした。
中に入っておどろいた。今までのコテージが二人で12,000円位だったので、2倍強のお値段設定だからと分かっていても、おどろく。しつらいが全然違う。豪華すぎて、部屋に入った途端笑ってしまった。キッチンとサウナは無いがとても広く素敵なお部屋だ。
今までは部屋に入ったら、ベッドにシーツと布団カバーが置いてあって、せっせと布団と毛布にカバーをかける所からスタートだったのに、既にベッドは出来上がっており、おしゃれにディスプレイされていた。
今までのシンプルな部屋と違い、無駄にもふもふがあったり、トナカイの毛皮が壁に貼り付けてあったり、おしゃれランプがあったり。北欧の底力を見た。
トイレも広く、タイルも高級感がある。ハンドソープやボディソープが既においてあり、驚いた。今までにはない装備である。ドライヤーも全然ちがう。今までの何分やったらこのロン毛が乾くのだろうという風量ではない。
しばしお部屋を堪能したあと、今日はSIIDA(サーミ民族博物館と北部ラップランド自然センター)へ向かう。窓口で来場者の国名を集計していて、恐る恐る「日本人」と答えたが、「今日初めての日本人ね!」と普通に言われて、「あ、はい」と拍子抜けしてしまった。日本と温度感が違う。
サーミとは、スカンジナビア半島北部ラップランド及びロシア北部コラ半島に居住する先住民族でトナカイとともに暮らしている遊牧民族である。フィンランド、ノルウェー、スウェーデン、ロシアに広がって住んでいるそう。イメージ的には北海道のアイヌと近いのだろうか。
サーミのことを知ったのは、去年ノルウェーに行った時だ。ヨイクという精霊と交信を行うために歌う音楽が流れる博物館で、不思議な気持ちで彼らの衣装や文化を初めてみた。ヨイクはなかなか興味深い。
シャーマニズムとの関連から、ヨイクは自然界とコミュニケーションを取るための道具、方法としてとらえられる。太陽や月、山、川などを対象に、その成立に関する物語を歌う、叙事詩のような形式を取ることもあれば、対象への賛美と感謝を歌う讃歌のような形式を取ることもある。
自然界に対してだけでなく、人間同士のコミュニケーションのためにも用いられる。赤ん坊が誕生した時、その子供に対して歌われたり、親しい人同士で、その人の外観、人格的美点、欠点、人生など描写したヨイクを歌い合うこともある。また、たった一人でトナカイが牽く橇に乗ったとき、その孤独を癒すためにも歌われる。
https://ja.wikipedia.org/wiki/サーミ人#音楽
森羅万象に宿る精霊を信仰してる部分に、日本の神道やアイヌ、ハワイでの多くの神々がいる状況と似ているなと思う。一神教の国が多い中、多くの迫害を受けることもあったのは、よくある話過ぎてつらい。第二次世界大戦の頃、多くのサーミがフィンランド、イナリへ移動してきたそう。
スウェーデンを舞台にしての映画があるのでご興味ある方は、Amazon PrimeやApple TVで見ることができる。私は闇落ちしてしまうので、メンタルが300%くらいHappyな時しか、この手の映画を見ない。ちなみにまだ見れていない。
トナカイとともに移動して生きる生活、全く想像ができない。家を借りないで住むところを転々とする人たちがいるけれど、今の日本ではそんなイメージだろうか。今は定住するサーミが多いそうだ。
ゴールデンカムイやヴィンランドサガを見て、雪深い冬が厳しい地域で生きていく人々に尊敬をしていたが、イナリに来てさらに尊敬Lvが上がった。雪がいっぱいあるとサウナの後、雪に飛び込めるから気持ちいいよね、とか浮ついてしまって、ごめんなさい。
SIIDA前のお土産屋さん。現在は閉まっている。夏はイナリ湖の観光船の発着場所になるそう。
イナリに来て、外食をほぼしていないので、ホテルイナリにてサーモンスープとイナリ湖で取れた魚盛り前菜をいただく。美味。ホテルイナリのレストランは少し混んでいたが、まったり食事できた。フランス人やドイツ人、中東の方々がいたが、ここでも特に嫌な思いもせず、心地よい時間と料理を楽しんだ。 アジア人は見当たらなかった。
サーモンスープ。安定のおいしさ。フィンランドに来たら絶対にのみたい。
何か色々な魚の前菜。どれも美味。緑の抹茶の粉みたいな調味料が最後まで何だか分からなかった。味はほのかに甘い。しけった触感。
早めの夕飯を楽しんで、いそいそとホリディヴィレッジに戻る。18時から21時まではKp3なので、北の空をパトロールしないとならない。暗くなる雪道を転ばないように急ぐ。この瞬間にオーロラが現れているかもしれないと思うと気が気ではない。
部屋を暗くして、窓からオーロラを探す。ゆっくりだが夜空に大きく広がる緑の光。しばらく楽しんでいたが、どうしても外で見たくて、服を着て5分後にイナリ湖畔へ向かう。部屋の中は、温かく極寒の外に出る服装だと暑すぎる。外に出るために服を着るとどうしても時間がかかる。焦っているから余計だ。
しばらく観察していたが、晴れた空に浮かぶ、オーロラのご機嫌は悪い。昨夜の様にカーテンの様になびいてくれないし、なかなか出てきてくれない。緑の靄のように見える。
この薄さだと、部屋からは認識できない。またこの日、湖に来ていた団体は、暗闇でヘッドランプをカメラの設定のために頻繁につけるので、暗順応がうまくできずにイライラした。眩しいって!
大きくなるかと思えば、すぐに消えてしまう。はかない。
薄っすらとして、雲と見分けがつきにくい。
この後お風呂に入ったり一度休憩をして、12時から再度外に出たが、風が強く吹くだけで、オーロラは現れてくれなかった。昨日のオーロラは奇跡だったのかもしれない。奇跡は分からないうちに通り過ぎているものなのだ。
この時期は、フィンランドのコロナ罹患者は、二人だった。一人は、武漢からロヴァニエミに来ていた中国人、もう一人はイタリア旅行に行っていたフィンランド人。コテージでほとんど他の人々と合わない生活だった。今から考えるとホテルに宿泊するよりよかったかもしれない。
この時は緊急事態宣言が出ることになるとは、思っていなかった。
フィンランド イナリ オーロラとちりばめられた宝石 Day3
フィンランドに出かける前のふしぎ発見で、フィンランド 、エストニア特集をやっていた。オーロラを見にやってきていたのは、キルスピヤルビ。イナリと緯度はほぼ同じ。サンタクロースがいるロヴァニエミから西へ400キロの場所にある。フィンランド 、スウェーデン、ノルウェーの国境沿いにある村だ。
番組はスノーモービルでサウナをひっぱり、2時間半の場所でサウナに入りながらオーロラを待つというものだった。しかし剥き出しのスノーモービルで極寒の中、移動はかなり大掛かりなものだし、1回目で見えなかった場合、別日に再び行くのも面倒だなと思えた。
イナリのホリディヴレッジからは各コテージから1〜2分でオーロラが見えるイナリ湖がある。とても簡単だ。明日以降2泊するオーロラハットに泊まれば、部屋の窓からオーロラを見ることもできるし、見えたら外に出るということも可能だ。服を着込むのに5分くらいかかるが。
イナリにあるほとんどのホテルやコテージは、外にでて少し歩けばオーロラ観測ができる場所に建っているので、雪の中機動力を持たない旅行者にとってイナリはシンプルでお手軽な場所だと言える。オーロラを見ることに特化するならば、イナリはとても効率的だと思う。
朝起きると昨日の雪がまだ降り続いている。天気予報を見れば午後から晴れる予定なのだが、曇天と雪を恨めしく見る。春の天気は中々に不安定だ。
ゆっくりと朝食をとり、水分の多い雪の中、散歩に出かける。
今朝のイナリ湖
雪がミルフィーユみたいに屋根に積もっている
住宅街を歩くがほとんど人と出会わない
ホテルイナリを超えて、議会会議場のSAJOSまで歩く。サーミ族のお土産屋さんや図書館、カフェがある。公民館みたいな感じだ。
図書館はそんなには広くなかったが、のんびりできるスペースがある。ちょうど良い空調とクッションにダメになりそうだった。本を読んだりうたた寝したり、エンドレスに過ごせる気がする。
日本の漫画があった。鋼錬は分かる。銀牙もまあ分かる。
が、となりの関くんにはびっくりした。すごいね。
館内はちょうど良い温度で、ウロウロしていると喉が乾いてくるので、カフェでバターコーヒー(3.5€)注文する。
お昼の時間だったので、ランチもやっていた。ここの職員の方々なのか会議室に集まって来た地元の人なのかよく分からないけど、適度な混み具合で落ち着く。
カフェのレジの女性がハーマイオニーに似ていると友達に言われたが、良く分からなかった。
ゆるゆるとお茶をしていると、だんだん外が晴れてきた。朝の天気から想像がつかないほど晴れてきた。
お昼寝をして夜に備える。日没は17:30くらいなのに、19:30まではとても明るい。緯度が高いせいなのか。夕飯を済ませて、いざ観測に向かう。
しかしオーロラと言ってもどうやって空に現れるのかよく分からない。何せ見たことがないんだから。写真や映像で既に空に出て、ひらひらとカーテン状なっているものは見たことがあるが実際の登場シーンは謎のベールに包まれている。
レセプションのお兄さんにオーロラが現れる方角を聞いたところ、「コテージからイナリ湖に出たら、左斜め上を見ろ」と言われた。ざっくりとしている。
イナリ湖に行くとすでに10人くらいの人々が観測を始めていた。本来なら電灯がないため、湖畔は暗い場所のはずなのだが、ちょうど満月の時期に当たってしまったため、昼間の様だ。ヘッドランプはいらなかった。
iPhone夜景モードで撮影。夜でも空は青いんだとよくわからないことを思った。
夜空を見上げると星が散りばめられている。プラネタリウムの様に「それではお月様を消してみましょう」とできれば、もっと星が見えるよねと友が言う。確かにちょっと消したいかもしれん。それほどの強い光だ。
イナリ湖の左手方面を見ていると、雲の様な白い煙が空に突然静かに現れた。雲かな何かなと凝視していると、色が緑に変わって、広がってきた。
オーロラだ。緑の光が広がっている。これが。
その後次々に縦に雲の様なものが出てきて、色が見えてきて、オーロラと分かる。現れて、繋がって、消えていく。不思議だ。何だこれ。
しばらくすると今度はイナリ湖の向かって中央にもオーロラが現れた。寒さが吹き飛ぶほど興奮した。よく分からないけれど、「がんばれ!がんばれ!」と両手をグーにして空に向かっている私がいた。
オーロラが出てくる瞬間は、市川春子先生の「宝石の国」で空に黒点が現れて、中から美しく空虚な月人が降りてくる瞬間みたいだ。美しくはかなくふわふわとしている。夜空を見つめている私は、シンシャか昼の宝石たちのようだと思った。
コテージに戻って暖をとったり、湖へ行ったりを繰り返して、夜3時頃眠りについた。
フィンエアーも3/26で成田-ヘルシンキ行きは運行停止。国境も閉鎖されてしまった。今年のオーロラシーズンはもう終わってしまうし、間に合わない。けれど9月から再びオーロラシーズンが来るので、気になる方は是非見に行ってほしい。
どこへ行くにも窮屈で雰囲気は重苦しい。けれど思考はいつでも自由だ。行きたい場所見たいものに心を馳せて、出来るだけ平常心を保っていきたいなと思う。
こんな状態でも思考はいつでも自由だし、その状態にいられることは実はとても幸せなことなのかもしれないな。
フィンランド イナリ スーパーへ行こう Day2
フィンランド 、イナリは、フィンランド の最北のイヴァロ空港からシャトルバスで約1時間。イナリ湖畔の周りにある人口500人の村だ。イナリ湖は長さ80km、幅41kmの巨大な湖だ。今は凍って全く見えないが大小さまざまな島があり、夏はクルーズ船で巡ることができる。
誰かが作ったエモいやつ
光がない夜のイナリ湖の北にオーロラが現れる発生確率が低くても、見えることが多いそうだ。
Visit Finlandに書いてあった、サーミの伝説のオーロラがとても素敵だ。
オーロラって、一体どんな現象なんでしょうか?サーミの伝説によれば、キツネが北極圏の丘を走るとき、尻尾が雪原に触れ、それが火花となって巻き上がり、夜空に光となって表れると伝えられています。フィンランド語のレヴォントゥレット(revontulet)は、この伝説から生まれた言葉で「狐火」という意味です。
科学者の説明によれば、この現象は、「太陽風が地球に向かって吹き込み、磁場を持った大気圏内でエネルギーが発生し、それが光となる」となるといったところですが、サーミの伝説のほうがいいですね。
夜に窓から外を見ていた時、小動物が駆け抜けていくシルエットが見えた。オーロラを夜空に浮かび上げるキツネだったのかな。
天気予報では今晩は雪予報、さて今晩はオーロラを見ることができるのだろうか。
朝ご飯は初日なので、ホリディヴィレッジのレセプション兼カフェでモーニングビュッフェ(9.5EUR)。ついでにもともとの予約のサウナ付キャビンに何時ごろ移動できるかを確認する。11時から掃除だそうなので、11:30には部屋を使えるようになる。それまで、グレードアップしたコテージにいていいそうだ。
昨夜は到着してから何も食べていなかったので、もりもり食べる。
豪華なコテージに別れを告げて、もともと予約していたサウナ付コテージへ移動。スーツケース2個を広げると部屋がいっぱいだ。昨夜のコテージが広かったので、窮屈な感じがする。
荷物を広げて落ち着いたので、スーパーへ買い物がてら街の中心地へ。ホリディヴィレッジから15分くらいの道のりだ。東京は最近は雪がほとんど降らないので、こんな雪景色の中歩くのはとても楽しい。
東京の雪と違って水分少なめふわふわ
Kスーパーマーケットが唯一のスーパーと言われていたが、もう一つ「Sale」というスーパーマーケットができていた。とても広かった。読み方は英語読みでいいのか不明。Kスーパーマーケットは建物を新しくしているらしく、イナリホテルの前の店舗は建築中だった。そこから200mくらい先に今はお店があった。
慣れない雪の上を歩く。ほとんど人通りもなく、街は明るいけど静かだ。
街の中心地。イナリホテルとお土産屋さん
スーパーでスモークサーモンとチーズ、パン、サラダ、マヨネーズ、ブルーベリージャム、牛乳、ヨーグルトを購入し、滞在中の食料とした。スモークサーモンはとても脂が乗っておりとても美味しい。後日追加で購入した。
今日は女性の日らしくレジのお姉さんに白バラをいただいた。優しい。
お土産屋さんをのぞき、のんびりコテージへ帰る。少し夕寝をし、夜に備える。
夕方、外を見れば雪が降っている。雪が降るとオーロラは見ることができないので、今夜は無理だ。
諦めて部屋のサウナを温めて、楽しむことにした。
トイレとシャワーの奥にサウナ。サウナストーブの電源をオンにすると温まりだす。
一人用かな。パーソナルスペースが狭ければ二人入れる。
この格好で何度も外を見たが、空が晴れる気配はなかった。
人通りがあるので、外での外気浴は少し緊張する。気持ちいいけど。サウナから外に出るドアは一つなので、外に出るたびに外の冷気が部屋に入ってくるのが難点か。
明日は晴れる予報。オーロラの強さを示すKp値は9段階中3で弱いけど、明日から本気出すと心に決めてサウナで汗を流した。
今日もトラブルと無縁の平和な一日だった。新コロからも解放されて、あったかいお部屋でよく眠れた。