Rock'n'Roll Prisoner's Melancholy

好きな音楽についての四方山話

自分のロック感を作ったアーティスト(2)Aerosmith【70年代】

Aerosmith [エアロスミス]

origin: Boston, Massachusetts, U.S.


Aerosmith [野獣生誕]

 1st studio album
 released: 1973/01/05
 producer: Adrian Barber

  • Side one
    1. Make It
    2. Somebody
    3. Dream On
    4. One Way Street
  • Side two
    1. Mama Kin
    2. Write Me a Letter
    3. Movin' Out
    4. Walkin' the Dog

[comment]
 69年生まれの筆者にとって、70年代の Aerosmith は後追いであり、当時(80年代)の洋楽雑誌では必ず 3rd か 4th を名盤として取り上げるので、1st と 2nd は聴く回数が少なかった。
 それ故、この 1st の良さが分かったのは2000年代になってからだ。
 後に大ヒットする珠玉の名バラード "Dream On"、そして、ロックン・ロールの定番曲 "Mama Kin" の2曲がとりわけ有名だが、このアルバムの目玉はルーファス・トーマス のカヴァーでアルバムの最終曲 "Walkin' the Dog" だ。
 この "Walkin' the Dog"、60年代には the Rolling Stones もデビュー・アルバムの最終曲として収録し、80年代には Ratt もデビュー・アルバム(7曲入りEP)の最終曲として収録しているのだが、はっきり言って Aerosmith のカヴァーが圧倒的に優れている。
 その理由は簡単で、スティーヴン・タイラーの歌唱力が、他の追随を許さないほど群を抜いて素晴らしいからである。


Get Your Wings [飛べ!エアロスミス]

 2nd studio album
 released: 1974/03/15
 producer: Jack Douglas, Ray Colcord

  • Side one
    1. Same Old Song and Dance
    2. Lord of the Thighs
    3. Spaced
    4. Woman of the World
  • Side two
    1. S.O.S. (Too Bad)
    2. Train Kept A Rollin'
    3. Seasons of Wither
    4. Pandora's Box

[comment]
 アルバム・カヴァーが 1st に比べ、飛躍的にカッコ良くなった。
 しかし、1st 同様、やはり、この 2nd も Aerosmith を知った80年代当時は聴く回数が少なかった。
 "Train Kept A Rollin'" を聴くためのアルバムだと思っていた節があり、他の曲があまり耳に入ってこなかった。
 ところが、いつの間にか、"Same Old Song and Dance" の腰にくるヘヴィなミドル・テンポに引き込まれ、"Spaced" のプログレッシヴな曲構成でこのバンドの奥深さを知り、"Pandora's Box" のグルーヴィーなロックン・ロールにやられていたのである。
 このバンドのディスコグラフィでは少し地味な存在だが、筆者はこのアルバムでミドル・テンポ、そして、アフター・ビートのカッコ良さに気付かされた。
 捨て曲の無しの名盤である。


Toys in the Attic [闇夜のヘヴィ・ロック]

 3rd studio album
 released: 1975/04/08
 producer: Jack Douglas

  • Side one
    1. Toys in the Attic
    2. Uncle Salty
    3. Adam's Apple
    4. Walk This Way
    5. Big Ten Inch Record
  • Side two
    1. Sweet Emotion
    2. No More No More
    3. Round and Round
    4. You See Me Crying

[comment]
 言うまでもないが、ロック史に燦然と輝く不朽の名盤である。
 ここで一気にキャッチーになり、メジャー感が増した。
 80年代にヒップ・ホップ・グループの Run-DMC がカヴァーして大ヒットする "Walk This Way" は、これに収録されている。
 筆者は Run-DMC の "Walk This Way" を先に聴いている世代なのだが、この曲は Aerosmith のオリジナルからして、ヴォーカルが殆どラップなのである。
Aerosmith の音楽性は、ブルーズ、R&B、ファンク等、黒人音楽からの影響が大きいのだが、このアルバムは特にそれが顕著だ。
 アルバムのラストを飾る "You See Me Crying" は珠玉のバラードであり、80年代に隆盛を極めるグラム・メタル・バンドが書く殆どのバラードは、この曲からアイデアを拝借している。


Rocks [ロックス]

 4th studio album
 released: 1976/05/03
 producer: Jack Douglas, Aerosmith

  • Side one
    1. Back in the Saddle
    2. Last Child
    3. Rats in the Cellar
    4. Combination
  • Side two
    1. Sick as a Dog
    2. Nobody's Fault
    3. Get the Lead Out
    4. Lick and a Promise
    5. Home Tonight

[comment]
 前作に続き、これもロック史に燦然と輝く不朽の名盤であり、もし、Aerosmith の名盤を1枚だけ選べと言われたら、筆者はこれを挙げる。
 前作と双璧をなす名盤だがテイストはかなり異なり、このアルバムの方が圧倒的にヘヴィだ。
 そして、Aerosmithディスコグラフィで最もヘヴィなアルバムでもあり、前作の邦題に使われている「ヘヴィ・ロック」という言葉は、実はこのアルバムの方が似合っている。
 このヘヴィ・ロックの名盤が無ければ、後の Mötley Crüe、Ratt、Guns N' Roses、Skid Row あたりの音楽性は違ったものなっていただろう。
 "Home Tonight" は、アルバムのラストを飾に相応しい珠玉のバラードであり、スティーヴン・タイラーの最初の歌い出しだけで完全に持っていかれる名曲だ。
 筆者にとって、Aerosmith のバラードと言えば、有名な "Dream On" よりも、むしろこの "Home Tonight" なのである。


Draw the Line [ドロー・ザ・ライン]

 5th studio album
 released: 1977/12/09
 producer: Jack Douglas, Aerosmith

  • Side one
    1. Draw the Line
    2. I Wanna Know Why
    3. Critical Mass
    4. Get It Up
    5. Bright Light Fright
  • Side two
    1. Kings and Queens
    2. The Hand That Feeds
    3. Sight for Sore Eyes
    4. Milk Cow Blues

[comment]
 3rd と 4th が名盤として取り上げられることが多いのだが、それらに拮抗するくらい、この 5th も名盤だ。
 ただし、3rd ほどキャッチーではなく、4th ほどヘヴィでもない。
 これまでに施してきた装飾を外しており、Aerosmithディスコグラフィでは、最もプリミティヴなロックン・ロール・アルバムだ。
 ギタリストのジョー・ペリーが単独で書き、自ら歌う "Bright Light Fright" はガレージ・ロックのようだ。
 何故か、ジョー・ペリー以外のメンバー4人と、プロデューサーのジャック・ダグラスによって書かれたヘヴィなバラード "Kings and Queens" だけが浮いた感じがする。
ジョー・ペリーは、次の6thの完成前に脱退するのだが、"Bright Light Fright" と "Kings and Queens" の乖離に、その原因があったのではないだろうか?


Live! Bootleg [ライヴ・ブートレッグ]

 1st live album
 released: 1978/10/27
 producer: Jack Douglas, Aerosmith

  • Side one
    1. Back in the Saddle
    2. Sweet Emotion
    3. Lord of the Thighs
    4. Toys in the Attic
  • Side two
    1. Last Child
    2. Come Together
    3. Walk This Way
    4. Sick as a Dog
  • Side three
    1. Dream On
    2. Chip Away the Stone
    3. Sight for Sore Eyes
    4. Mama Kin
    5. S.O.S. (Too Bad)
  • Side four
    1. I Ain't Got You"
    2. Mother Popcorn
    3. Train Kept A-Rollin' / Strangers in the Night

[comment]
 全くもって紛らわしいタイトルだが、海賊盤(ブートレッグ)ではなく、正真正銘の正規盤である。
 ライヴ・アルバムだが、1つの公演を収録したものではなく、各曲をあちこちの公演から寄せ集めている。
 "Mother Popcorn" だけが73年の音源で、他は77~78年の音源だ。
 この時期の Aerosmith は極度のドラッグ中毒であり、演奏が荒すぎるため、ライヴ・アルバムとしては名盤とは言い難い。
 録音状態が悪いのだが、とても貴重な音源であり、当時の「危ういバンドの状態」を知るための資料としての価値は高い。
 しかし、Aerosmith のライブ・アルバムなら、彼らがクリーンになってからのタイトな演奏を収めた98年の A Little South of Sanity の方がお薦めだ。


Night in the Ruts [ナイト・イン・ザ・ラッツ]

 6th studio album
 released: 1979/11/16
 producer: Gary Lyons, Aerosmith

  • Side one
    1. No Surprize
    2. Chiquita
    3. Remember (Walking in the Sand)
    4. Cheese Cake
  • Side two
    1. Three Mile Smile
    2. Reefer Head Woman
    3. Bone to Bone (Coney Island White Fish Boy)
    4. Think About It
    5. Mia

[comment]
 失敗作扱いされることの多いアルバムだが、個人的には、そんなことはないと思っている。
 評価の低い理由は、9曲中3曲もカヴァー曲があるということと、レコーディングの終了前にジョー・ペリーが脱退してしまったからだろう。
 全体の 1/3 がカヴァー曲なので多すぎるように感じるが、the Beatlesのデビュー・アルバムは14曲中6曲がカヴァー曲だったし、the Rolling Stones のデビュー・アルバムは12曲中11曲がカヴァー曲だった。
 ただし、カヴァーの良さが目立つことは確かであり、the Shangri-Las の "Remember" は特に出来がいい。
 Jazz Gillum の "Reefer Head Woman" は古いブルーズがエアロ流のヘヴィ・ロックにアレンジされており、the Yardbirds の "Think About It" はスティーヴン・タイラーの歌の良さにより原曲を超えている。
 オリジナル曲では、スティーヴン・タイラーが、当時生まれたばかりの娘のために書いた美しいバラード "Mia" が素晴らしい。


~ 総括 ~

Aerosmith については、ロックを聴き始めた頃(82年、中1の頃)、音楽雑誌『ミュージック・ライフ』で、KISS、Queen と共に3大バンドと言われていたことを何となく知るようになったのだが、レコードを買って聴きたいとは思わなかった。

 いきなり話を逸らしてしまうが、Aerosmith というバンド名は造語なので Aerosmith だけで問題ないと思うのだが、KISS と Queen は the を付けなくても英語圏の人はバンド名として直ぐに解釈できるのだろうか?

 学生時代に習った程度の英語の知識では、KISS と Queen をバンド名にするには the が必要に思えるのだが...Queen は、かつて女王陛下のいた英国のバンドなので the を付けると、逆にややこしくなるのだろうか?

 世の中には the が必要そうなのに the の付いていないバンド名がけっこうあるので、バンド名に the が必要か否かの基準が、未だによく分からない...

Aerosmith に話を戻す。

 筆者が Aerosmith を聴きたくなったのは、80年代に大好きだったグラム・メタル(LAメタル)のバンド、Mötley Crüe や Ratt が音楽雑誌のインタビューで Aerosmith からの影響を語っていたからだ。

 そして、タイムリーなことに、当時、脱退していた二人のギタリスト、ジョー・ペリーとブラッド・ウィットフォードが Aerosmith に復帰して制作された Done with Mirrors がリリースされたので、期待して聴いてみたのだが1曲目の "Let the Music Do the Talking" 以外は地味だったので今一つピンとこなかったというのが正直な感想だった。

 その後、Guns N' Roses の登場により、彼らのルーツの1つである Aerosmith に再度注目が集まり、3rd の Toys in the Attic と 4th の Rocks が名盤であることを知ったので聴いてみたところ、完全に Aerosmith にド嵌りすることになった。

 たぶん、この2枚のアルバムを聴いた回数は、人生の中で間違いなく上位10枚に入ると思う。

 とにかく、この2枚のアルバムはスティーヴン・タイラーのヴォーカルが上手すぎる。

スティーヴン・タイラーは、自分の声をどのようにコントロールすれば、より一層、曲が良くなるのかを知り尽くしたシンガーなのである。

 これまでに生で聴いたことのあるシンガーの中でも、トップ・クラスの歌唱力だ。

 そして、当然、ジョー・ペリーもカッコいいギター・リフやソロを決めてくれるのだが、Aerosmith 独特の黒人音楽に根ざしたグルーヴを生み出しているのは、ブラッド・ウィットフォードのギターと、トム・ハミルトンのベースと、ジョーイ・クレイマーのドラムスだ。

 実は、アルバムのクレジットを見たり、ライヴを見たりすると、一捻りあるリードやソロはブラッド・ウィットフォードが弾いていたりする("Back in the Saddle"、"Last Child" 等)。

 ド派手なジョー・ペリーの陰に隠れてしまいがちだが、ブラッド・ウィットフォードは凄腕のギタリストだ。

 そして、Aerosmith の素晴らしさは、70年代のドラッグ漬けの生活を断ち切り、87年の Permanent Vacation 以降は心身ともにクリーンな状態で名盤を連発し、完全無欠のライヴ・バンドになったことである(一説によると、一時期、危ういメンバーもいたらしいのだが、それも過去の話となっている)。

 ドラッグとは、大切なものを失うばかりであり、得られるものは何も無く、創作活動への好影響も無く、良いロックを生み出すにはクリーンで健康であることが一番だということを Aerosmith は証明してくれた。

 これは、本当に素晴らしいことだと思う。

自分のロック感を作ったアーティスト(1)AC/DC【70年代】

AC/DC [エーシー・ディーシー]

origin: Sydney, Australia


High Voltage

 1st studio album
 released: 1975
 producer: Harry Vanda, George Young

  • Side one
    1. Baby, Please Don't Go
    2. She's Got Balls
    3. Little Lover
    4. Stick Around
  • Side two
    1. Soul Stripper
    2. You Ain't Got a Hold on Me
    3. Love Song (Oh Jene)
    4. Show Business

[comment]
 母国オーストラリアでのデビュー・アルバム。
 豪州盤なので、正直なところ、殆どの日本のロック・リスナーにとって、馴染みの薄いアルバムだ。
 "She's Got Balls"、"Little Lover" の2曲が、後の世界デビュー盤の High Voltage に収録されている。


T.N.T.

 2nd studio album
 released: 1975
 producer: Harry Vanda, George Young

  • Side one
    1. It's a Long Way to the Top (If You Wanna Rock 'n' Roll)
    2. Rock 'n' Roll Singer
    3. The Jack
    4. Live Wire
  • Side two
    1. T.N.T.
    2. Rocker
    3. Can I Sit Next to You, Girl
    4. High Voltage
    5. School Days

[comment]
 母国オーストラリアでの2ndアルバム。
 これも豪州盤なので、殆どの日本のロック・リスナーにとって、馴染みの薄いアルバムだ。
 "It's a Long Way to the Top (If You Wanna Rock 'n' Roll)"、"Rock 'n' Roll Singer"、"The Jack"、"Live Wire"、"T.N.T."、"Can I Sit Next to You Girl"、"High Voltage" の7曲が、後の世界デビュー盤の High Voltage に収録されている。


High Voltage [ハイ・ヴォルテージ]

 1st internationally released album
 released: 1976
 producer: Harry Vanda, George Young

  • Side one
    1. It's a Long Way to the Top (If You Wanna Rock 'n' Roll)
    2. Rock 'n' Roll Singer
    3. The Jack
    4. Live Wire
  • Side two
    1. T.N.T.
    2. Can I Sit Next to You Girl
    3. Little Lover
    4. She's Got Balls
    5. High Voltage

[comment]
 既にリリース済みの 2枚の豪州盤、High VoltageT.N.T. からセレクトした世界デビュー盤。
 表題曲の "High Voltage" は、High Voltage ではなく、T.N.T. の収録曲だというややこしさ。
 殆どの日本のロック・リスナーにとって、AC/DC のデビュー・アルバムといえば、これだろう。
 今の AC/DC にも脈々と受け継がれるブルーズ・ベースのロックン・ロールであり、AC/DC というバンドは、ここから殆ど変っていない。
 強いて言うなら、70年代的なハード・ロックよりは、60年代的なブルーズ・ロックに近い。


Dirty Deeds Done Dirt Cheap [悪事と地獄]

 3rd studio album
 released: 1976/09/20
 producer: Harry Vanda, George Young

  • Side one
    1. Dirty Deeds Done Dirt Cheap
    2. Love at First Feel
    3. Big Balls
    4. Rocker
    5. Problem Child
  • Side two
    1. There's Gonna Be Some Rockin'
    2. Ain't No Fun (Waiting 'Round to Be a Millionaire)
    3. Ride On
    4. Squealer

[comment]
AC/DC のアルバム解説は難しい。
 何しろ、アルバムのリリースを重ねても、音楽性は殆ど変わらず、ブルーズ・ベースのロックン・ロールなのだから。
 前作との違いを無理やり見つけるなら、ローカルっぽさが薄れて、メインストリーム型のハード・ロックに近づいたということくらいだろうか?
 ちなみに、この時期のシンガー、ボン・スコット の歌唱にはメタリックな要素が無く、徹頭徹尾ロックン・ロール・シンガーなので、ヘヴィ・メタルを期待して聴くと、ちょっと肩透かしを食らうかもしれない。


Let There Be Rock [ロック魂]

 4th studio album
 released: 1977
 producer: Harry Vanda, George Young

  • Side one
    1. Go Down
    2. Dog Eat Dog
    3. Let There Be Rock
    4. Bad Boy Boogie
  • Side two
    1. Problem Child
    2. Overdose
    3. Hell Ain't a Bad Place to Be
    4. Whole Lotta Rosie

[comment]
 ロック史上、トップクラスに入るカッコいいアルバム・カヴァー。
 全てのアルバムが名盤の AC/DC だが、70年代(=ボン・スコット時代)のスタジオ・アルバムから、名盤を1枚選べと強制されるなら、これを選ぶ。
 理由は、多くの人の予想通り、"Whole Lotta Rosie" が収録されているからだ。
 この曲を聴いてクレイジーになれない人はロックン・ロールを語るな!...と言うのは傲慢だが、筆者にとって、この曲でクレイジーになれない人とはロックン・ロールに求めるものが違うと判断できる物差しのような曲なのである。


Powerage [パワーエイジ]

 5th studio album
 released: 1978
 producer: Harry Vanda, George Young

  • Side one
    1. Rock 'n' Roll Damnation
    2. Down Payment Blues
    3. Gimme a Bullet
    4. Riff Raff
  • Side two
    1. Sin City
    2. What's Next to the Moon
    3. Gone Shootin
    4. Up to My Neck in You
    5. Kicked in the Teeth

[comment]
 このアルバムの収録曲はライヴで演奏されることが少なくなったため、アルバム自体の印象が地味に捉えられがちだが、実際には名曲ぞろいの名盤である。
 そもそも AC/DC のアルバムは全て名盤であり、このアルバムは AC/DCディスコグラフィの中でも脳を揺さぶる名リフの宝庫だ。
 そして、AC/DC 好きの Aerosmith のギタリスト、ジョー・ペリーがフェイバリットに挙げるアルバムでもある。
 前作、Let There Be Rock もロック史上屈指の素晴らしいアルバム・カヴァーだったが、このアルバムのアートワークは前作とは全く異質ではあるが、袖からコードを垂らすアンガス・ヤングが素敵すぎて、前作に匹敵するアルバム・カヴァーだと思う。


If You Want Blood You've Got It [ギター殺人事件]

 1st live album
 released: 1978
 producer: Harry Vanda, George Young

  • Side one
    1. Riff Raff (from Powerage)
    2. Hell Ain't a Bad Place to Be (from Let There Be Rock)
    3. Bad Boy Boogie (from Let There Be Rock)
    4. The Jack (from T.N.T.)
    5. Problem Child (from Dirty Deeds Done Dirt Cheap)
  • Side two
    1. Whole Lotta Rosie(from Let There Be Rock)
    2. Rock 'n' Roll Damnation (from Powerage)
    3. High Voltage (from T.N.T.)
    4. Let There Be Rock (from Let There Be Rock)
    5. Rocker (from T.N.T.)

[comment]
 スタジオ盤よりもライヴ盤の方が、そのバンドの本質を表し、名演を記録している場合は意外と多く、最初に聴く1枚として適していることがある。
 例えば、The YardbirdsFive Live YardbirdsDeep PurpleMade in Japan、Rory Gallagher の Live in Europe、UFO の Strangers in the Night 等。
 70年代(=ボン・スコット時代)の AC/DC も、このライヴ・アルバムが彼らの魅力を最も分かりやすく伝えてくれるのではないだろうか?
 演奏はタイトで、選曲も良く、ライヴでの AC/DC はブギーっぽさやブルーズっぽさがスタジオ盤よりも一層際立って聴こえる。


Highway to Hell [地獄のハイウェイ]

 6th studio album
 released: 1979
 producer: Robert John "Mutt" Lange

  • Side one
    1. Highway to Hell
    2. Girls Got Rhythm
    3. Walk All Over You
    4. Touch Too Much
    5. Beating Around the Bush
  • Side two
    1. Shot Down in Flames
    2. Get It Hot
    3. If You Want Blood (You've Got It)
    4. Love Hungry Man
    5. Night Prowler

[comment]
 ボン・スコットの遺作となったアルバムであり、以外にも、これが米国でリリースされた AC/DC の最初のアルバムである。
 相変わらずのブルーズ・ロック、そしてロックン・ロールなのだが、バンドの演奏力が更に上がり録音状態も良いため、各楽器の音の分離が良いので聴きやすくなっている。
 簡単に言えば、「もの凄く売れそうな音になった」ということであり、世界規模での成功が約束されたような音なのである。
 これの次が、ブライアン・ジョンソンが加入して驚異的なヒットを記録した Back in Black なのだが、シンガーがボン・スコットのまま次のアルバムを制作していたら、どのような音になっていたのだろう?


~ 総括 ~

 筆者は1969年生まれなので、70年代のロックは全て後追いである。

 つまり、AC/DC はシンガーがブライアン・ジョンソンに変ってから聴いており、最初に聴いたのは10thアルバムの Fly on the Wall であり、実はこれは AC/DC の低迷期とされる時期のアルバムだ。

 しかし、筆者にとっては名盤であり、その後、Back in BlackFor Those About to Rock We Salute You を聴いて、完全に AC/DC に嵌った。

 当時の筆者にとって、AC/DC のシンガーとはブライアン・ジョンソンだったので、70年代(=ボン・スコット時代)の AC/DC は避けていたのだが、その壁を打ち破る切っ掛けとなったのが Guns N' Roses だった。

 Guns N' Roses の日本限定の編集盤 Live from the Jungle に収録されていた AC/DC のカヴァー "Whole Lotta Rosie" を聴いて、そのあまりのカッコ良さにブッ飛ばされたのである。

 これはオリジナルを聴かなければと思い購入したのが、ボン・スコット時代のライヴ盤 If You Want Blood You've Got It だ。

 驚いたのは、ハイトーンでメタリックなブライアン・ジョンソンと、セクシーでワイルドなボン・スコットでは、シンガーとしてのタイプが全く異なるにも関わらず、何の違和感なく聴けたことだった。

 その後はボン・スコット時代のアルバムも次々に聴いていったのだが、とにかくロックン・ロールの名盤揃いであり、ボン・スコットが亡くなりブライアン・ジョンソンにシンガーを変えてからも、音楽性を殆ど変えずに一貫してロックン・ロールを演奏し続け、これほどファンから愛され続けているバンドは稀有なのではないだろうか?

AC/DC の凄さとは、長期に渡りロックン・ロールをやり続け、常にタイトで高水準なライヴをファンに提供しているところだ。

 例えば、New York Dolls や The Stooges 等も優れたロックン・ロール・バンドであり、筆者にとっても重要なバンドなのだが、彼らは自堕落でドラッグに惑溺したためバンド活動が短命に終わっており、そのあたりが甚だ残念なところだ。

 それと比べると、AC/DC の場合、ドラッグの問題を抱えたドラマーのフィル・ラッドを解雇する潔さがあり、バンドを運営する能力が高い。

 一面的に見ると冷たい印象を与えるかもしれないが、バンド運営に関わっているクルーの生活や、レコード会社やマネジメントのスタッフの生活があるのだから、一人のメンバーの不祥事で多くの関係者を路頭に迷わすわけにはいかないので、これは極めて真っ当な判断なのである。

 長きに渡り活動を続けてきた AC/DC だが、リズム・ギタリストのマルコム・ヤング認知症でバンドを離れ、2017年に死去した。

 シンガーのブライアン・ジョンソンは聴力障害で一時期バンドを離れている時期があった(代役は Guns N' Roses のアクセル・ローズ)。

 バンドの顔であるリード・ギタリストのアンガス・ヤングは、2024年3月31日で69歳になった。

 ベーシストのクリフ・ウィリアムズは70歳を超えており、ドラマーのフィル・ラッドも間もなく70歳になる(フィル・ラッドはドラッグ問題でバンドへの出戻りを2回繰り返しているので危うい)。

 何となくバンド活動が終焉に来ているような気がする。

 いつまでバンドが続くか分からないのだが、彼らがバンドを続けてくれる限り、筆者は追いかけようと思っている。

バンドのギタリストがリリースしたソロ・アルバム(その1: 80年代編)

Turn Out the Lights / Bernie Tormé

[title]
Turn Out the Lights [ターン・アウト・ザ・ライツ]
 1st album
 released: 1982

  1. Turn Out the Lights
  2. Painter Man
  3. Lies
  4. America
  5. Getting There
  6. Possession
  7. No Reply
  8. Chelsea Girl
  9. India
  10. Oh No!

[artist]
 Bernie Tormé [バーニー・トーメ]
 ( Gillan [ギラン], Ozzy Osbourne [オジー・オズボーン] )
 origin: Ranelagh, Dublin, Ireland

[comment]
 この人は、イアン・ギラン(Deep Purple)、オジー・オズボーン(Black Sabbath)とバンド活動を共にするという恵まれた環境にいながら、そこを離れてソロ活動を始めるという変わり者だ。
 1952年生なので、ジョニー・サンダース(New York Dolls)、ポール・スタンレー(KISS)、ブラッド・ウィットフォード(Aerosmith) と同い年であり、年齢を考えるとギラン~オジーの頃は既にそこそこのベテランである。
ストラト+マーシャルでアームを使って弾きまくる奏法は、明確にジミ・ヘンドリックスリッチー・ブラックモアの流れを汲むものなのだが、弾き過ぎなくらいクレイジーなところが彼の最大の魅力だろう。
 歌に関しては、はっきり言って上手くもなければ声に個性があるわけではないので、後に元 Girl のシンガー Phil Lewis と組むのだが、結局また自分で歌うようになる。
 この人の書く「ロックン・ロール色の強いヘヴィ・メタル」は優れているので、楽曲に合う上手いシンガーと組めれば、或いは、ギランかオジーのところに残っていれば80年代屈指のギター・ヒーローになれていたような気がする。


Mercy / Steve Jones

[title]
Mercy [マーシー]
 1st album
 released: 1987

  1. Mercy
  2. Give It Up
  3. That's Enough
  4. Raining in My Heart
  5. With You or Without You
  6. Pleasure and Pain
  7. Pretty Baby
  8. Drugs Suck
  9. Through the Night
  10. Love Letters

[artist]
 Steve Jones [スティーヴ・ジョーンズ]
 ( Sex Pistols [セックス・ピストルズ], The Professionals [ザ・プロフェッショナルズ] )
 origin: Shepherd's Bush, London, England

[comment]
 このアルバムがリリースされた頃に洋楽のミュージック・ビデオを紹介するテレビ番組で初めて "Mercy" を聴いたときは、「間違ってクリス・レアの曲かけたんちゃうん!」と思うほど衝撃を受けた。
 "Mercy" が、あまりにもアダルトなソフト・ロックすぎて、かつて英国を騒がせた、あの Sex Pistols にいたギタリストのイメージと全く重ならなかったのである。
 筆者が初めてロックだと意識して聴いたアルバムは、中学校の同級生にもらった Sex Pistols のコンピレーション・アルバム(たぶん Flogging a Dead Horse)なのだが、それで Sex Pistols が好きになったわけでもなければ、パンクに嵌ったわけでもないのでスティーヴ・ジョーンズの音楽的嗜好については全く知らなかった。
 その後のインタビュー記事を読んで知ったのだが、この人は Faces の大ファンであり音楽的嗜好としては、伝統的なロックを好む保守的な人なのである。
 当時、クリス・レアの名盤 On the Beach が愛聴版だった筆者にとって、このアルバムは大歓迎の音楽性であり今でも聴き続けている愛聴盤になった。


Thunder / Andy Taylor

[title]
Thunder [サンダー]
 1st album
 released: 1987

  1. I Might Lie
  2. Don't Let Me Die Young
  3. Life Goes On
  4. Thunder
  5. Night Train
  6. Tremblin'
  7. Bringin' Me Down
  8. Broken Window
  9. French Guitar

[artist]
Andy Taylor [アンディ・テイラー]
 ( Duran Duran [デュラン・デュラン], The Power Station [ザ・パワー・ステーション] )
 origin: Tynemouth, Northumberland, England

[comment]
 この2024年に Duran Duran というバンド名が如何ほどの重みを持つのか分からないが、筆者にとっては洋楽を聴き始めて最初期に好きになったバンドであり、同世代(筆者は69年生)の洋楽リスナーにも同様の人が多いのではないだろうか。
Duran Duran はニュー・ウェイヴの流れから出てきたシンセポップ/ダンスロックのバンドなので、最も目立つ楽器はニック・ローズシンセサイザーであり、アンディ・テイラーのギターではなかった。
 ただし、Duran Duran の曲にロックらしい切れ味を与えていたのは間違えなくアンディの奏でるエッジの効いたギターであり、彼の貢献度は高い。
 アンディの音楽的なルーツはハード・ロックであり、このアルバムは彼の嗜好が素直に詰め込まれたメジャー感溢れる上質のハード・ロック・アルバムとなっている。
Duran Duran 在籍時のアンディは、ルックスがニュー・ウェイヴからロックン・ローラー風に変わってゆき、バンドの中で浮いていったのだが、Duran Duran 脱退後にリリースされたこのアルバムを聴いたとき、脱退が必然であることが理解できた。


Too Much Ain't Enough / Andy McCoy

[title]
Too Much Ain't Enough [トゥー・マッチ・エイント・イナフ]
 1st album
 released: 1988

  1. I Will Follow
  2. Tell Me a Story
  3. Talking 'Bout a Feeling
  4. Knee Deep in Sky High
  5. Too Far Gone
  6. Too Much Ain't Enough
  7. Spanish Harlem
  8. My Mistake
  9. Heart of the Matter
  10. Make Believe

[artist]
 Andy McCoy [アンディ・マッコイ]
 ( Hanoi Rocks [ハノイ・ロックス], Cherry Bombz [チェリー・ボムズ], Suicide Twins [スーサイド・ツインズ] )
 origin: Pelkosenniemi, Finland

[comment]
 「100点」と書くだけで自分の中では完結するので、それ以上書くことを見つけるのが難しいのだが、それではこのような文章を書いている意味がない。
 もし、このアルバムを Hanoi Rocks 名義でリリースされていたとしても、当時このアルバムを買った筆者は何の文句も言わなかったと思う。
 2001年にアンディ・マッコイとマイケル・モンローにより Hanoi Rocks が再結成されたときに、アンディが「俺とマイケル以外はソルジャーみたいなもんだから2人で十分」と言っていたのだが、筆者にとっての Hanoi Rocks とは「アンディが書いた曲」なのでアンディ1人でも十分だったのである。
Hanoi Rocks 解散後、早々にリリースされた The Cherry Bombz と The Suicide Twins にも十分満足していたのだが、この 1st ソロ・アルバムは明確に Hanoi Rocks の延長線上にあり、アンディの書く魔法のようなメロディーを持つロックン・ロールが詰め込まれている。
 もし「一番好きなソングライターは誰か?」と聴かれたら「そんら乱暴な質問は止めろ」と言うつもりだが、どうしても答える必要があるのなら The Dogs D'Amour のタイラか、アンディのいずれかの名を挙げると思う。


Atomic Playboys / Steve Stevens

[title]
Atomic Playboys [アトミック・プレイボーイズ]
 1st album
 released: 1989

  1. Atomic Playboys
  2. Power of Suggestion
  3. Action
  4. Desperate Heart
  5. Soul on Ice
  6. Crackdown
  7. Pet the Hot Kitty
  8. Evening Eye
  9. Woman of 1,000 Years
  10. Run Across Desert Sands
  11. Slipping into Fiction

[artist]
Steve Stevens [スティーヴ・スティーヴンス]
 ( Billy Idol [ビリー・アイドル] )
 origin: New York City, U.S.

[comment]
ビリー・アイドルのバンド在籍時からお気に入りだったギタリスト、スティーヴ・スティーヴンスが満を持してリリースしたこのアルバムに当時の筆者はド嵌りし、彼が(正確にはAtomic Playboysというバンドが)「東京ドーム・ファイナルカウントダウン'89」に出演すると知ってチケットも速攻で購入した。
 残念ながらギリギリになってスティーヴの出演が中止になったので、複雑な気分で京都から新幹線に乗って東京に向かったのだが、ピンチヒッターはマイク・ヴェセーラが歌っていた頃の Loudness であり、今思うとけっこうレアなライヴを体験できたと思う。
 いきなり話を脱線させたが、スティーヴは玩具の光線銃を使ったトリッキーなプレイ、80年代的なフラッシーなソロ、アコースティック・ギターによるしっとりた伴奏など、何でも出来る天才なのだが、大前提として「良い曲」ありきの人なのである。
 このアルバムも良い曲を高水準の演奏で聴かせてくれる名盤であり、Sweet のカヴァー "Action" も最高だ。
 そして、シンガーのペリー・マッカーティは、スティーヴが組んできたシンガーの中で最も歌唱力が高い。

#0460) 90年代における個人的 UK ロック 4大アーティスト

Grand Prix / Teenage Fanclub

[title]
Grand Prix [グランプリ]
 5th album
 released: 1995/05/29

  1. About You
  2. Sparky's Dream
  3. Mellow Doubt
  4. Don't Look Back
  5. Verisimilitude
  6. Neil Jung
  7. Tears
  8. Discolite
  9. Say No
  10. Going Places
  11. I'll Make It Clear
  12. I Gotta Know
  13. Hardcore/Ballad

[artist]
Teenage Fanclub [ティーンエイジ・ファンクラブ]
 origin: Glasgow, Scotland, U.K.

[comment]
 2nd アルバムの Bandwagonesque を聴いたときは、英国のシューゲイズと米国のグランジをミックスしただけのように聴こえていたのだが、数年後に曲の良さに気付き、それ以来、掌を返して愛聴するようになったバンド。
 基本的にドラマー以外の3人のメンバーが、それぞれ単独で曲を書くのだが、どのメンバーが書く曲もメロディーが秀逸なのは凄い。
 このバンドのアルバムから一枚選ぶのは難しいのだが、初めて聴くなら徹底して楽曲至上主義に振り切ったこのアルバムがいい。


Casanova / The Divine Comedy

[title]
Casanova [カサノヴァ]
 8th album
 released: 1996/04/29

  1. Something for the Weekend
  2. Becoming More Like Alfie
  3. Middle-Class Heroes
  4. In & Out of Paris & London
  5. Charge
  6. Songs of Love
  7. The Frog Princess
  8. A Woman of the World
  9. Through a Long & Sleepless Night
  10. Theme from Casanova
  11. The Dogs & the Horses

[artist]
 The Divine Comedy [ザ・ディヴァイン・コメディ]
 origin: Enniskillen, Northern Ireland, U.K.

[comment]
 欧米人から見るとアジア各国の違いが分からないように、アジア人の筆者から見ると欧州各国の違いが分からないのだが、一方的に「こういのが欧州っぽい」と思っているイメージにピタリと当てはまるのが The Divine Comedy の音楽だ。
 こういう音楽をバロック・ポップというらしいのだが、その始祖は Scott Walker であり、The Divine Comedy はその後継者と言えるだろう。
 1st ~ 3rd にかけて丁寧に作り上げてきた彼の世界観が、満を持して見事に昇華したロマンティシズムの塊のようなアルバムがこれである。


Everything Must Go / Manic Street Preachers

[title]
Everything Must Go [エヴリシング・マスト・ゴー]
 9th album
 released: 1996/05/20

  1. Elvis Impersonator: Blackpool Pier
  2. A Design for Life
  3. Kevin Carter
  4. Enola/Alone
  5. Everything Must Go
  6. Small Black Flowers That Grow in the Sky
  7. The Girl Who Wanted to Be God
  8. Removables
  9. Australia
  10. Interiors (Song for Willem de Kooning)
  11. Further Away
  12. No Surface All Feeling

[artist]
Manic Street Preachers [マニック・ストリート・プリーチャーズ]
 origin: Blackwood, Caerphilly, Wales, U.K.

[comment]
 内省的で暗い作風の The Holy Bible リリース後、リッチー・エドワーズ (rhythm guitar) の失踪によりバンド解散の危機に直面していた彼らが、リッチー不在のまま3人体制で放った起死回生の一発。
 このバンドの成り立ちを考えると、サポート・ミュージシャンの力を借りることはできても、新メンバーを迎え入れるのは無理なのだと思う。
 逞しく生まれ変わった明るいサウンドは過去最高のヒット作となったが、反体制/反権力というデビュー当時からのイデオロギーは全く失われていない。


Coming Up / Suede

[title]
Coming Up [カミング・アップ]
 4th album
 released: 1996/09/02

  1. Trash
  2. Filmstar
  3. Lazy
  4. By the Sea
  5. She
  6. Beautiful Ones
  7. Starcrazy
  8. Picnic by the Motorway
  9. The Chemistry Between Us
  10. Saturday Night

[artist]
Suede [スウェード]
 origin: London, England, U.K.

[comment]
 バーナード・バトラー (guitar) の脱退によりバンドの行く末が危ぶまれる中、リチャード・オークス を加入させて放った起死回生の一発。
 その状況は、かつて、ブライアン・イーノ (synthesizer and tapes) 脱退後、エディ・ジョブソン (synthesizers, keyboards, violin) を加入させて名盤 Stranded で健在ぶりを見せつけた Roxy Music に似ている。
Suede にとって、このアルバムは過去最高のヒット作となり、初期の耽美な一面は残しながらも、その音楽性には生き生きとした力強さが加わった。


~ 総括 ~

 90年代の UK を代表するアーティストと言えば、OasisBlurRadioheadPulp あたりなのだろうか?

 他には 今回取り上げた Manic Street PreachersSuede も上述のアーティストに肩を並べられる存在だと思う。

Oasis は 1st を聴いて「なかなか良いかも」と思ったのだが10回くらい聴いたら飽きてしまい、2nd も「なかなか良いかも」と思ったのだが5回くらい聴いたら飽きてしまった。

Blur は 1st を聴いて「?」となり、その後、5th までは熱心に聴いてみたものの、3rd 以外はアルバムの最後まで聴くのが苦痛だった。

Radiohead は、1st と 2nd は好きだったのだが、3rd は名盤と思いつつ「?」とも感じてしまい、4th 以降は着いていけなくなった。

Pulp は、当時も今も大好きだ(ただし、一世代前のアーティストという感じがする)。

 筆者にとって、90年代の UK ロックのビッグ4は、今回取り上げた4組だ。

 偶然にも、イングランド(Suede)、スコットランド(Teenage Fanclub)、ウェールズ(Manic Street Preachers)、北アイルランド(The Divine Comedy) という具合に、現在の UK を構成する4つのカントリーになった。

 今回、UK のアーティストを取り上げたのだが、実のところ、50代半ばになった筆者は日常的に聴く音楽の嗜好が変わってしまったので、取り上げた4組のアーティストも殆ど聴かなくなった。

 何となく、当時好きだった UK アーティストとのお別れをするために、この記事を書いたような気がしている。

#0459) キャリアのピークを過ぎた後の名盤

Songs from Black Mountain / Līve

[title]
Songs from Black Mountain [ソングス・フロム・ブラック・マウンテン]
 7th album
 released: 2006/04/10

  1. The River
  2. Mystery
  3. Get Ready
  4. Show
  5. Wings
  6. Sofia
  7. Love Shines (A Song for My Daughters About God)
  8. Where Do We Go from Here?
  9. Home
  10. All I Need
  11. You Are Not Alone
  12. Night of Nights

[artist]
 Līve [ライヴ]
 origin: York, Pennsylvania, U.S.

[comment]
 このアルバムは、母国の米国では52位を記録し、オーストラリアではゴールド認定されているので商業的な成功は収めているのだが、米国だけで800万枚を売り上げて、1位を獲得した 2nd アルバム Throwing Copper 以降の快進撃と比べると、このアルバムの成績が地味に見えてしまうのは否めない。
 しかし、1曲目の "The River" から、いきなり聴く者の心に染み込む名曲であり、そのままアルバムが終わるまで、包容力のある優しくて美しい曲が続く名盤である。
 Ed Kowalczyk [エド・コワルクジーク ] (vo, rhythm gt) の歌が目立ちすぎの感もあるのだが、言い方を変えれば、彼の歌を存分に味わえるアルバムでもある。


Let Love In / Goo Goo Dolls

[title]
Let Love In [レット・ラヴ・イン]
 8th album
 released: 2006/04/29

  1. Stay with You
  2. Let Love In
  3. Feel the Silence
  4. Better Days
  5. Without You Here
  6. Listen
  7. Give a Little Bit
  8. Can't Let It Go
  9. We'll Be Here (When You're Gone)
  10. Strange Love
  11. Become

[artist]
Goo Goo Dolls [グー・グー・ドールズ]
 origin: Buffalo, New York, U.S.

[comment]
 このアルバムも、母国の米国では9位を記録し、米国ではゴールド認定、英国ではシルバー認定されているので商業的には大成功だと思うのだが、5th アルバム A Boy Named Goo、6th アルバム Dizzy Up the Girl という過去のビッグ・ヒットと比べると、成功していないかのように錯覚してしまう。
 筆者にとっては好きすぎて客観的な評価が難しいバンドなのだが、このアルバムについては、過去のビッグ・ヒットと比べても何の遜色もない名盤だと断言できる。
 このアルバムに収録されている曲のメロディーからは前向きな希望が感じられるのだが、ある程度、年を重ねてから分かる切なさも併せ持っているところが実に良いのである。


The Silver Lining / Soul Asylum

[title]
The Silver Lining [ザ・シルバー・ライニング]
 9th album
 released: 2006/06/11

  1. Stand Up and Be Strong
  2. Lately
  3. Crazy Mixed Up World
  4. All Is Well
  5. Bus Named Desire
  6. Whatcha Need
  7. Standing Water
  8. Success Is Not So Sweet
  9. The Great Exaggerator
  10. Oxygen
  11. Good For You
  12. Slowly Rising
  13. Fearless Leade [hidden track]

[artist]
Soul Asylum [ソウル・アサイラム]
 origin: Minneapolis, Minnesota, U.S.

[comment]
 このバンドは、全米5位を記録し、グラミー賞も獲得した93年のシングル "Runaway Train" のヒットが際立って大きすぎるため、一発屋扱いされることが多いのだが、筆者はそれを非常に腹立たしく感じている。
 その後、95年には "Misery" も全米20位のヒットを記録しているので、二発屋と言って欲しい!...というのは冗談で、このバンドのソングライター Dave Pirner [デイヴ・パーナー] はインディー・レーベル(Twin/Tone)時代から良い曲を書いていたので "Runaway Train" だけでこのバンドを語ってほしくないのだ。
 このアルバムはヒット作とは言い難いので、殆ど知られていないかもしれないが、「生きることへの希望」と「挫折のほろ苦さ」が感じられる、バンド史上屈指の名盤なのである。


Major Lodge Victory / Gin Blossoms

[title]
Major Lodge Victory [メジャー・ロッジ・ヴィクトリー]
 4th album
 released: 2006/08/08

  1. Learning the Hard Way
  2. Come On Hard
  3. Someday Soon
  4. Heart Shaped Locket
  5. The End of the World
  6. Long Time Gone
  7. Super Girl
  8. Let's Play Two
  9. Curious Thing
  10. Jet Black Sunrise
  11. Fool for the Taking
  12. California Sun

[artist]
 Gin Blossoms [ジン・ブロッサムズ]
 origin: Tempe, Arizona, U.S.

[comment]
 92年にリリースされた、このバンドの 2nd アルバム New Miserable Experience は、全米で400万枚を売り上げた大ヒット作なのだが、当時トレンドだったグランジの殺伐とした雰囲気のとは無縁の爽やかなパワー・ポップだった。
 このアルバムは、97年に解散した彼らが01年に再結成してから初めてリリースしたアルバムなのだが、胸をキュンとさせる美メロには更に磨きがかかり、栄光と挫折を味わったことで曲の深みが増している。
 全盛期のような大ヒットにはならなかったのだが、個人的には当時と同等か、それ以上の満足感を得られるアルバムだと思っている。


~ 総括 ~

 あえて、そうしたのだが、今回取り上げた4枚は、いずれも2006年のアルバムだ。

Goo Goo DollsSoul Asylum、Gin Blossoms のアルバムはリリースされた2006年に聴いており、いずれのアルバムも、これといって買うあてもなく立ち寄った近所の「タワーレコード京都店」で、「えっ、ニュー・アルバム出てるやん!」という感じで購入した。

 Līve のアルバムだけは発見が遅れ、2~3年経ってから通販サイトで購入した。

 どのアルバムも、バンドとしてキャリアのピークを過ぎてからのアルバムなのだが、ピーク時のアルバムと比較しても遜色が無い上、むしろ楽曲に円熟味が加わり深い味わいを醸し出している。

 限りなく上昇して成功を続けられるアーティストは殆どいないわけであり、一定の成功の後には下降がある。

 そもそも、成功を得られないアーティストの方が多い。

 今回取り上げた4枚に共通している音は「優しさ」であり、たぶん、それは上昇の後の下降を味わったことにより得られた感情なのではないだろうか。

 自分が若い頃は「バンドなんか長いことやるもんやない」と思っていたのだが、50代の半ばを迎える今では「長いことやるのもええかも」と思うようになってきた。