推しが死んでいないのに死んでしまった

※本記事は『コードギアス 復活のルルーシュ』の盛大なネタバレを含みます。

 ×レビュー ×解説 ◎感情の吐露

 

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運び屋シャーリー 

 なぜシャーリーの話からなんだと思われるかもしれないが、シャーリーの存在はルルーシュの過去を形成するうえで、非常に重要な役割を担っていたと思うからだ。

 

 アイデンティティの喪失

本作はTVシリーズの続編ではなく、劇場版3部作の続編である。

しかし私たちは当然TVシリーズのシャーリーを知っている。

TVシリーズではシャーリーが、父の敵であるゼロはルルーシュであるという記憶を取り戻しながらも、ルルーシュ自身が好きであると告げながら命を落としていった姿を見ているのだ。

「死ぬな、シャーリー!!」とルルーシュとともに願ったけれど、実際シャーリーが生きているとこれはシャーリーさんなんですかね?と感じるジレンマよ。

 

「何かを得るには何かを捨てなければならない」

 

シャーリーの命を救うには、シャーリーが命を落とすエピソードを無くさざるを得ない。

そのため、彼女の「ルルへの想い」というアイデンティティを置いて行かなければならない。

ルルーシュを安全な場所へ運び出すという、単なるお助けキャラへと変わってしまうのだ。

(やっぱりあの前作ラストのトランクの中にルルーシュを詰めてたんですか?そこが一番シュールだよなァ?!)

 

ラストワンカットの笑顔じゃ足りないです!シャーリーもっと報われて欲しいよお!!

 

苦労人スザク 

作品が新しく公開される度に新たに現れる苦労人スザクの一面。

 

ゼロレクイエム実行→(時系列だと逆ですけど)ジュリアスのお守り『コードギアス 亡国のアキト』→ゼロ代理人(今ココ!)

 

苦労人度が……増している……。

 

シャーリーも報われなかったが、スザクも苦労が増しているのに報われない人である。

 

もっと報酬をあげてやってください陛下!

 

ルルーシュへの赦し

 そんなスザクだが、彼はこれまでルルーシュへの友情を封じ、感情を制御してきた人である。

 

「ユフィを手に掛けた相手なのだから、前のように親しみを感じてはいけない」

「ゼロレクイエムを遂行させるために、ルルーシュを生かしたいと思ってはいけない」

 

ただし、常にルルーシュに対して友情は持ち続けていたのではないだろうか。

それが亡国のアキトでルルーシュに言った「二人でナナリーを迎えに行こう」という台詞に表れている。

(※ただ本人はジュリアスの介護疲れまたは育児疲れみたいな状態である)

全くしがらみがなければ、ユフィを失ってしまった彼は、ルルーシュとナナリーが一緒にいて、そこに自分がいて幸せに暮らしていくというのが目標だったのではないだろうか。

 

そんな友情を表に出すまいとしていたスザクが、今作では

「君が生きていて良かった」

と素直に口にできている。

これはすごい変化で、やはりルルーシュのことを赦すことができたからなのではないだろうか。

 

頑張ったねスザク……!!

 

ルルーシュ」という記号をやめたルルーシュ

本作ラストのL.L.となったルルーシュを見た第一の感想は、「どちらのルルーシュさんですか?」である。

 

 ルルーシュは対する人によって、相手にとってどんな人物であるかが全く異なる。

今作ではルルーシュに携わった人々が一堂に会するため、それぞれがルルーシュをどう見ていたのかがよく分かる。

TVシリーズや劇場版の本編で「ゼロ」という記号を演じてきたルルーシュだったが、しかし「ルルーシュ」という存在自体が人々の想いを反映した存在だったのではないだろうか。

 

カレンにとってはクラスメートで、多分今も好きな人なルルーシュ

 (「私にとってゼロは記号じゃないのよね」これは本当に良い台詞だなあと思う。今作で一番好きです)

ナナリーにとっては兄としてのルルーシュ

玉城や扇にとってはゼロとしてのルルーシュ

スザクにとっては昔からの友人としてのルルーシュ

そしてC.C.にとっては自分の不死を解いてくれるであろう共犯者としてのルルーシュ

 

これが今作までの認識だ。だが、今作のラストでは

C.C.にとって「自分とともに生きてくれるL.L.」

に変化する。今まで見てきたルルーシュではなく、いわばニュー・ルルーシュなのである。

 

推しが死んでいないのに死んでしまった

 

この気持ちは、今まで見たことのない新しいルルーシュ像(L.L.)に対する戸惑いなのだ。

ルルーシュランペルージ、ルルーシュ・ヴィ・ブリタニア、そしてゼロといった名前を捨てて、L.L.として生きることを決めたルルーシュは、全ての過去を捨て去ってしまったように感じる。 

 

だが一方で、一度死んだ彼は、「ルルーシュ」という記号から解放され自分の人生を歩んでいくのではないだろうか?

 

「私は人身御供か?」(冨野由悠季『機動戦士Zガンダム』、第37話)

 というZガンダムでのシャアの台詞があるが、まさにルルーシュはゼロ、そして皆の「ルルーシュ」として生きた人身御供だったのだと思う。

 

スザクやナナリーの元を去っていく彼に一抹の寂しさを覚えながら、どうか彼が今後幸せに生きていってくれることを願う

 

(けれど今後突発的事件が起こり、「ルルーシュ!やっぱり君の力が必要なんだ!!」とか言ってスザクが隠居したルルーシュを引っ張り出して、皆でてんやわんやする平和的スピンオフが見たいです)