2024年5月下旬の日記

・友人と会う。展示を観て、話す。サボらないこと。別れ際、私が最近感じているじれったさを口にしたら止まらなくなって、そのままずいぶん引き止めてしまった。

・慣れないスーツで慣れない人混みに行く仕事が立て続けにあった。

・昼休み、公園のベンチで溶けていたら、知らない人たちに写真を撮られた。目が合ったらスッと立ち去った。至近距離で気づかない私もどうかと思うけど、スナップ写真…肖像権…。私は記念写真にもあんまり映りたくないし、あとやっぱりこう、変に見えたのかなとか考えちゃうじゃん。男性に見えた?とか、そう思ってしまうこと自体がいやだ。書きながらまたいやになってきた。

・カウンセリングをキャンセルした。

・地下鉄で編み物をしている人がいた。青と白と水色の毛糸。その人が環状線に乗り続けながら編み続け、編まれた段がのびていく想像をする。

・バス停に並ぶ男子校の生徒たちを見て、自分が男に生まれていたらどんな感じだったろうなと思う。そんなことを考えるのは初めてかもしれない。

・友人と会う。知り合ってからずいぶん経つ。背景を共有していないと話せないこと。サボること。かわいい小皿をもらった。帰宅後、目止めをする。

・キュウリをスライサーでやっていたら右手の親指もやってしまった。

・あまり面倒を見ていなかったモンステラが新葉を出した!えらいなぁ。

・観たもの:Tokyo Contemporary Art Award 2022-2024 受賞記念展 サエボーグ「I WAS MADE FOR LOVING YOU」(好き)/津田道子「Life is Delaying 人生はちょっと遅れてくる」、「ホー・ツーニェン エージェントのA」、「翻訳できない わたしの言葉」@東京都現代美術館横浜トリエンナーレ

・読んだもの:高橋美香、皆川万葉『パレスチナのちいさないとなみ』

・作ったもの:カレー、しゅうまい、ローストポークなど。ありもので作ったサンドイッチがおいしかった。

2024年5月中旬の日記

・偶然、クリップセオリー、クィアクリップタイムの考え方に触れた。今更なんだけど知らなくて、最近漠然と考えていたことに接続しすぎてびっくりした。文献を読むか。でもどうせ積むと思うと迷う。

・専門的な話をしている人のそばにいて、わかる範囲で面白がりつつも自分のものにはならない感じを、永遠に続けている。

・たぶん、またほんのちょっとだけ声が低くなった。

・床屋へ。いつもの理容師さんから、鍼治療を受けた話を聞く。私は子供の頃に近視対策で鍼灸院に通ったことを思い出した。効果はなく、体に触れられるのも嫌で、しかし嫌だと言えずに通った。毎回受ける視力検査の結果が下がるたびに母に怒られた。いっぽう理容師さんは子供の頃、治るものではないものへの治療のために謎の電気治療に通わされたらしい。今思えば詐欺だが、子供心に毎月の通院=遠出が楽しみだったとのこと。髪型は、すごくいい感じにしてもらった。

・八百屋でキュウリと葉生姜のぬか漬けを買う。おいしい。改正食品衛生法のもとでは食べられなくなるかもしれない。5月いっぱい。また買いに行く。

・四六時中緊張している。右手で何か作業をしている間、体に力が入って、気づくと左腕が骨折でもして吊っているような形でキープしている。疲れる。

・ 通勤経路を変更する。外出を減らす。しんどくなりそうな人とオフで会わない、連絡も一生懸命返さない。タスク名:「休み」を設定する。

・精神科通院。血液検査の結果がよくなかった。飲み続けている薬の副作用だから、近々処方を変えなきゃいけないらしい。また薬探しかと思うとダルい。自分で頼んだカウンセリングも正直ダルい。ところで今回の検査、女性の血として出されてしまった。

・古い名前で届く郵便物がいくつかあり、ぎょっとする。先方に連絡しなければいけない。非常に腰が重い。

・手話教室は続けている。先生も生徒さんもずっと年上で、ほとんどが女性。「息子の年だわぁ」と言われる。自分では見てない朝ドラに詳しくなりそう。別の日の退勤後に、ろう・難聴・聴の交流会にも行った。こちらは参加者の年代もジェンダーも様々で、年の近い人ともしゃべることができてホッとした。

・飲めなかったコーヒーが、最近突然飲めるようになった。老化かな?と人に聞いたら、たぶんそうだねと同意された。

・作ったもの:冷やし中華、鶏むねソテーなど。鶏むねは去年仕込んだ梅麹をつけて食べる。

・観たもの:

シティーハンター鈴木亮平の実写版。セーフとアウトの加減が難しい。

2001年宇宙の旅」レコメンデーションに出てきたのは、最近のAIの躍進から連想する人が多いからだろうか。かくいう私もまんまと観ている。

アニメ「ピンポン」DVDボックスも持ってるけど配信でも視聴。牛尾憲輔の音が気持ちよすぎる。

名取事務所パレスチナ演劇上演シリーズ『Prisoners of the Occupation』『I, Dareen T. in Tokyo』
 以下、Peatixページから引用

2024年5月1日時点で、イスラエルは約9,000人の政治囚を収監していると言います。(ガザから連行・収監された人は含まない)
パレスチナ人男性の4人に1人は収監されると言われるほど、植民地支配・占領と、政治的収容は紐づいた体験となっています。しかし、刑務所という閉じられた空間で起こる人権侵害は、その性質上、広く伝えることは困難でした。

劇作家、俳優、人権活動家であるエイナット・ヴァイツマンは、自身のイスラエル人女性という立場を使い、出所したパレスチナ人と刑務所内の体験を刑務所外で再現する演劇『Prisoners of the Occupation』を作り上げました。『I, Dareen T.』は、SNS 投稿が原因で逮捕・収監され、世界的に有名になった詩人ダーリーン・タートゥールの体験から、占領と男性支配、二重の抑圧に抗うパレスチナ人女性の闘いを伝える独白劇です。2023年2月、両作品の日本版が、パレスチナ人と日本人の俳優によって東京都内で初めて公演されました。日本の俳優陣は、事前にパレスチナイスラエルにて元囚人らと面会し、理解を深めた上で演技に臨んでいます。

演劇内演劇のような入れ子構造や、一人n役(含む役者自身役)の構図で、パソコン画面の前に座る自分と舞台、パレスチナが接続する。
「私たちは劇場にいる。彼らは刑務所にいる」「世界は美しいですね?」

2024年5月上旬の日記

・4月末から5月頭にかけてバタバタして気力も体力も使ったせいか、その後調子が戻らずにいた。意味のある奔走だったと思いたい。

・人生の主人公になりたくない。仮に人の営みが1つの物語だったとして、登場人物のリストに載りたくない。「透明人間になったみたいだ」っていうのはセクシュアルマイノリティの語りでときどき聞かれる言葉かもしれないが、でも今、私は透明人間になりたい。人生の舵を取り、自分自身の主導権を握るとはどういうことだろう。

・職場で、男性が私の背中に触れながら話しかけてくる。同性同士のコミュニケーション?性別がどうだろうと、あまり触らないでほしい。先日、初対面の人たちに大学生かと聞かれ、複雑な気持ちになった。実年齢より若くみられがちなのはトランス(初期)あるあるだと、先達から教わる。

・そっか、終わったんだ。踏むべきステップをすべて踏んだという意味で「ゴールテープを切った」と以前書いたが、少し違う質感をもって、いよいよすべてが終わったのだ。これからはまるで何事もなかったかのように、しれっと歩けてしまう、歩くべきフェーズなのか。

・やっぱり私自身は変わってないのに、周囲のほうが変わった。

・もうひとつ気づいたことがある。私は「家族」への憧れを捨てきれない。いわゆる家族の血縁や地縁による以外の、共同体的な意味(もっとよい言葉があるような気がする)。 もちろんこれには自分が経験しえなかったつながり的なものへの幻想も大いに入り込んでる。何より私自身が「家族」のメンバーになりたいわけじゃないところがみそです。ただこの世にぽつぽつと、家族以外の「家族」が存在していて、当然独立した個も存在してほしい。そしてそこに私はいなくていい。

・一瞬、ベランダで過ごすのが流行った。

閃輝暗点が3回。

・通りがかった飲食店の網戸越しにジャックラッセルテリアが見えて、視線を合わせたらプレイバウしてくれた。でも犬が網戸にタッチしたために、店の人に犬がたしなめられてしまった。私が誘ったんです、犬は悪くない、ごめんね。

・作ったもの:いろいろ。紅茶の出がらしクッキー、フレンチトースト、新にんにくごはん、春菊ポテト、フォーなど。

・読んだもの:津村記久子『ポトスライムの舟』

・観たもの:「ここは未来のアーティストたちが眠る部屋となりえてきたか?」、「真理はよみがえるだろうか:ゴヤ〈戦争の惨禍〉全場面」@国立西洋美術館

・ジェノサイドをやめろ。殺すな!!殺すな!!殺すな!!!

2024年4月中旬の日記

・だるい性別関係の手続きも一段落した。はず。窓口担当者は慌てて担当を変わったり、声をひそめてしゃべりがち。みんな、大丈夫だから落ち着いてください。 大声で復唱されたり嫌な顔をされたりするよりはいい。

・4/20(土)、21(日)、TRPの日は仕事だった。以前は会場に行ったが、もう行けない。TRPへの思いは単純ではない。「昔はよかった」とは絶対に言わないが、しかし限界まで行ってしまったと思う。

・次世代の人たちの話を聞いた。少し前には私ら世代が上の世代から「隔世の感」と言われたけど、もっと若い人たちの人生は全く別のフェーズに入っている。すごいなぁ。

・性別に悩まされる時間が減って、自分の人生と生活に向き合う時間が増えている。侵食されずに、自分の領域を自分のものとする。それを日記に書く。日記を読んでくれてる人、会って話しかけてくれる人たち、感謝に堪えない。私はこうしてここにおります。あなたもいますか。

・近所の藤棚の藤が咲いた。甘い香りの中で、まるまるとしたクマバチがホバリングしている。通勤路のバラのつぼみも膨らんできた。花と葉の色が連動していて、特に若い葉はわかりやすい。赤いバラの葉は紅がかっている。黄色いバラの葉は黄緑。白いバラの葉は明るい緑。

・いろいろあってジェラート屋さんのお得意さんになっている。

・元気がなく、あまり自炊できていない。動悸はやりすごすしかない。

・出掛けに本棚から本を1冊引き抜いて持って行く。内容が気分やできごとにリンクすると楽しい。この間は、咲いていた花の名前を調べたあと、本の中に似た植物が登場した。オオアラセイトウ、ニオイアラセイトウ

・読んだもの:ヴァージニア・ウルフヴァージニア・ウルフ短編集』、堀辰雄風立ちぬ』、スケラッコ『ここは鴨川ゲーム製作所』。

・観たもの:映画『カラオケ行こ!』、青年団「S高原から」@こまばアゴラ劇場

 

舞台「S高原から」の下敷きの1つが『風立ちぬ』だった。トーマス・マン魔の山』もモチーフとのこと。こちらは未読。ちょうどEテレ「100分de名著」5月が『魔の山』らしい。本編は長くて読み切る自信がない。ひとまずテキストを買うか。

 www.aozora.gr.jp

2024年4月上旬の日記

・仕事帰り、歩道にソメイヨシノの花が落ちていた。花弁が揃っている。鳥がついばんで蜜を食べたあとだ。帰宅してから桜開花のニュースを見た。鳥たちはめざとい。

・通勤経路の公園に、大量の人が花見に…というか理由はなんでもいいのかもしれない、とにかく人々が大挙してやってくる。公園前はテーマパークの行列の様相。通勤中に花見客の滞留に巻き込まれて立ち往生しながら、引っ越しを決意した。

・初めてヒバリのさえずりを認識した。大きな声で長時間鳴き続けていた。すごい。かっこいい。

苔むした木の幹に貼り付いたたくさんの桜の花びら。重なった部分は濃い桜色で、濡れた部分は透き通っている。

開花から数日後、強い風雨に散った花びらが幹に貼り付いていた

・新しい手話教室へ通い始めた。正直私には難しい。レベル分けがあまりされておらず、かつ常連だというクラスメイトの感じを見ても、この先ついていけるか不安だ。帰路、久しぶりに会う知り合いと食事をする。これからたまに会いに行くつもり。

・新しい床屋に行った。髪を切られている間は逃げられないから、相手が差別的な話を振ってこないか身構える。

・ちょっとずつ性別変更の手続きを進める。「長男」と書かれた戸籍謄本を見て、誰だよ…と思う。最近は、日常生活で女性扱いされることは、まじで、ない。

・数人に「痩せた」と言われた。腹は立たなかった。

代謝が上がったのか異様に暑い。

・人前で頑張りすぎることをやめられないなら、誰とも会わなきゃいいと思うし、そうしたいし、実際行動抑制的になっている。同時に、引きこもっていた母を思い出して苦しい。

・観たもの:阿波根昌鴻、深瀬昌久

・作った料理:サバ缶スパイスカレー、トマトソース、そら豆・ホタルイカ・新じゃがのソテーなど。あと、根芋という千葉県柏市の地場野菜を初めて買った。発芽した里芋をおがくずで包んで育てるらしく、ひょろっと色白。アク抜きして、おひたしと味噌汁にする。癖がなく食感も楽しい…と思ってすぐに、ひどくかぶれて食べるのをやめた。短い逢瀬だった。でも知らない野菜は楽しいので、また何か見付けたら食べてみようと思う。

2024年3月下旬の日記

・念願かなってヒスイカズラの花を見た。鳥のくちばしか鉤爪のような花が集まって花序を形成している。鉤爪が地面に落ちると、ポトン、ポトンと弾む音がする。散るというよりも落ちてくる。珍しい翡翠色の成り立ちについての新しい研究結果が興味深かったんだけど、どこで読んだのか、記事を見失った。

・公園に高齢の人たちが集まっていた。ベンチや花壇のふちに鈴なりになって、切り株に腰掛けている人もいる。近くで三波春夫生誕100周年コンサートがあるらしかった。またしても風が強い日で、誰か転んでしまうんじゃないかと心配になる。無自覚のうちに強風がトラウマになっている。

・スーツを着て写真を撮ってもらった。

・親知らずを抜いた。医者が歯へのあふれる思いを語り続ける。こちらはタオルで視界を塞がれ口に器具を突っ込まれている。にもかかわらず、医者は手を止めずに「わかりますよね?」とか聞いてくるからアガアガ答える。最後に「年齢の割に骨が柔らかい!2mmも動いた!」「すごく縫いやすい口だ!」と褒められた。知らないタイプの褒めだ。残った1本は大きな病院に行く必要がある。

・きょうだいに会った。頭と口が唸りを上げて回転している。こういう人だった。

・いま仕事で関わっている分野がどうしても好きになれない。

・臨時で入った現場、十数人のメンバー全員が男性で、知り合いも頼れる人もいないし居心地が悪かった。

・口角を上げると口の脇に皺が寄るようになった。嫌じゃない。

・久しぶりに絵を描いた。

・病院も裁判所も役所も混んでいて、まだ諸々の手続きが完了していない。

・なんとなく試しに、死ぬことを具体的に考えてみた。思い浮かべること自体はできるが精度と熱意が下がっている。希死念慮うつ病が考えさせているって言い方があるけど、確かに抑うつに手助けされていたのだと思う。ずっと感じている強い不安は、死そのものとは関係がない気がする。Netflixの「ハンナ・ギャズビーのジェンダーにモノ申す」(原題 Gender Agenda)でMx.Dahlia Bellが言っていた、トランスヘイトと死後の話を反芻している。

・以前ガザに送ったe-simが、いったんアクティベートされたあと使われず期限切れになっていた。更新されなくなった死者数。マスメディアが、イスラエルハマスの対立構造で記事を載せている。今更? 頭が焼ける。

スマホマクロレンズを持ち歩いて、草、朝露、花、布、土、手当たり次第に撮っている。

 

草むらの写真。細い葉の上に丸い水滴が乗っていて、水滴には周囲の葉が映り込んでいる。水滴が視線の高さにくるように撮影した写真。

 

・観たもの:安井仲治、アニッシュ・カプーア/宮脇檀、カンパニーデラシネラ、中原卓馬。

・作ったもの:ゆで豚、そら豆ごはん、アーモンドクッキーほかいろいろ。去年漬けた梅ハーブオイルが便利。

日記(戸籍の性別の取扱いの変更、ほか)

・2月中旬〜3月中旬の日記。いろいろなことがあった。なのになのか、だからなのか、気持ちが上滑りしてふわふわしている。

・申立て用の診断書のために婦人科を受診した。医者が繰り返しホモフォビックなことを言う。我慢ならず注意する。謝られる。いらんことも言ってしまい、病院を出てから反省する。

・家裁に申立て。窓口で用件を尋ねられ「性別変更です」と言うと「性別取扱変更ですね」と言い直される。

・風の強い日の通勤中、目の前で人が転倒して救急車を呼んだ。近所に住んでいるという人が手伝ってくれた。

・友達とちょっとだけ会ってしゃべった。応援している。

・家裁に行き面談。キモい。

・面談翌日、長く関わっていたプロジェクトの打ち上げ。酒は飲まなかった。順番にあいさつする的な流れで、酔った人に「彼女は」と名指される。ただでさえ人前が嫌で逃げたかったのに急にぶち込まれて大混乱しつつ、精一杯空気を読んでしゃべった。受けた。わあい。ちょっと泣いた。そのあとも何? ということがあって、ずっと何? だった。

・自分の姿が映り込んだ映像を見た。以前みたいに目を背けたくならなかった。手術してよかった。ついでに担当者として名前も公開された。改名してよかった。

・性別変更が通った。自分の場所ではないレーンを走り、ゴールテープを切った。望んでやまなかった「死んでも大丈夫な状態」を通り越してしまったかもしれない。後悔とも違う。どこだここは。

・でも事務手続きマラソンを終えたら、しれっと転職しようかなとも思う。

・過去いち上手に夕飯ができた。新じゃがいものごはん、春の豆3種を蒸したもの、鶏むね肉のソテー、ミネストローネスープ。豆は火を通したらすぐに食べること。包丁を使うのがド下手。

・遠方住まいの人と長電話した。遠くにいて、関係がないから話せることってある。私には老いが身近ではない。話を聞いて想像するしかない。私にできることはそれぐらいしかない。

・仕事中に警察から着信。先日転倒した人が亡くなったらしい。死亡診断書のために必要だと言われて、当時の状況を伝える。電話を切り、しばらくしてから仕事に戻ってしっかり納品した。

・いくつかの美術展、ギャラリー、取り壊しの決まっている古い建造物などをみる。

・『ガザとは何か』と『小山さんノート』を読む。『ダンジョン飯』を借りて読む。アニメも見ている。

・殺すな。やめろ。

・疲れた。

・3月11日。

 

どんよりした空を背景にした満開の桜を、ごく近い距離で見上げて撮った写真。桜は雨粒で濡れている。

オオカンザクラ

 

日記(不調、料理、犬)

・映画「M3GAN」を観た。友人とPrime Videoで同時視聴。噂に違わぬゲイムービーだと思った。ちょうど視聴の数日前に「M3GAN 2.0」の製作が発表されていて、日本公開は2025年末ぐらいか。でも続編とかって、ああでもないこうでもないと予想してるときが一番楽しかったりする。

・日常生活で男性扱いされるようになって、ふと自分の状態がゲイに「なっている」ことに気づく。ひとくくりにトランスだとかうっかりシスヘテロ男性だとか見なされるよりも一層自分ではない。こんな単語を見かけた。

ずっと、相手によって自分のあり方が勝手に変えられていく感じがする。こちらからは何も変えてないのに…? いや変えたわ、めっちゃ変わったじゃん。でも変わってないんだよ。

職場のエレベーターで男性社員の後頭部を見ながらぼーっと考えていた、この人と自分が同性とは思えないなあ、でも女性やってたときも女性のことを同性と思ってなかったなあ、そのときの感覚と差はないかも。でも傍から見たら男性に同化してる今のほうが、女性に同化しきれてなかった昔より浮いてないはず。それぞれの性別に期待される姿からどれほど逸脱しているか。その期待される姿の幅は同じではない。

私は自意識過剰な自覚がある。言い訳させてほしい。他者の目にどう映るか、どう装ってどう振る舞えばどういう印象を与えるのか、意識せずにはいられないんだ。

・毎日、人と接したくない気持ちを新たにしている。出勤したくない。習い事の集まりにももう行かないと思う。本当に苦手だ。診察時にでも医者に伝えたら社交不安とか全般性不安とか言われそうだけど、病ではなく、そういうものとして付き合っていったほうが幸せな気がする。(ずっとこんなふうに緊張して自他の一挙手一投足にビクついていたらそれは疲れて当然だ、と、たった今、思った。)

・いつもの公園に犬がいっぱいいて喜んだのもつかの間、犬がたくさんいるところには人間もたくさんいる事実にぶち当たってしまい、しおれた。

・週末、床屋に行ったら隣の客が芸能人の性加害の話をしていた。その人はずっと楽しそうで、理容師も笑顔で相槌を打っていて、私はひたすらいやだった。その場に男性しかいないと思うからそういう態度なんだろうか。それともいつでもその調子で、笑いが取れる鉄板ネタだと思っているのだろうか。その後も良いことがない日だった。歩道に立ち尽くして一瞬泣いた。でも涙も出づらくてどうにもならない。ケンタッキーフライドチキンを買って帰った。パンとポテトサラダとレタスを買い足して腹いっぱい食べた。

・献立を立てるのに慣れてきた。家にある食材の把握と、食事以外の時間に食事について考えることが重要だとわかった。常に食事に脳のリソースを割かれているようで楽しくはない。でもおいしくきれいにできると嬉しい。マイブームは根菜スライスを電子レンジで乾かして作るチップス。サツマイモとジャガイモがよい。

・犬が愛しい。馬も好き。犬になりたいけど馬にはなりたいと思わないのはなんでだろう。そういうことばかり考えていたら、近所の商店街で馬の写真を見て「あ、いぬ」と口走ってしまった。犬=馬=好ましいものの同義語だと思う。

ヤマガラを覚えた。鳥類図鑑がほしい。

日記(過去の捏造など)

・きょう人と話しているときに、ちょっとミスった。やったことのあるバイトの服装規定ってどんなのがあった? というテーマだった。なんの気なく「自分のバイトではスカートとかアクセサリーはだめでしたね」的なことを答えてから、それって男性としてバイトしてたらあんまり出ない内容だ…と気づいた。ただ、勉強中の手話でしゃべっていたので表現するのにいっぱいいっぱいで、そこまで頭が回らなかった。

先日は職場で過去を捏造した。雑談で「合唱コンの練習は男子と女子でやる気がちがった」「はりきった女子に、ちょっと男子!ちゃんとやって!って言われるよね」的な、どうでもいい、業務の息抜きのおしゃべりだった。私はかつて男子学生だった人間として扱われて、少しむずむずした。自分でないものにチューニングする点では、女性をよそおう感覚と共通してはいる。「永遠にトランスジェンダー」ってこういうことかな。

・自分が身につけてきたふるまいは「女性的」で、それを手放したほうがよさそうな場面がある。ずっと女性たちとの距離が近く、過剰適応の結果なのか知らないが私のコミュニケーション方法はかなり「女性的」だ。話題の選定とか、気遣いのやり方とか、しぐさとかいろいろ。でも男性とみなされたとき、相手の心の開き方が全く違う。私自身は変わっていないつもりでいるけど傍目にはもうだいたい男性なのだった。相手を害したくないから気をつけたい。では男性同士のコミュニケーションは? こちらは学習機会が少なくて苦戦している。積極的に(シスヘテロ)男性に擬態しようとも思わないが、極力、無害な存在になりたい。上書きの難しさがある。

・セクハラされていない。会話で求められているリアクションが違う。語弊があるけど、今そう感じるので書いておく。自分が普段いるコミュニティとも関係していると思うけど。クソな実験か?

・低い声が出るときの喉の振動が新鮮で楽しい。

・友人から連絡があり、急遽、先週会った別の友人と3人で会うことになった。その人とは数年越しに会う。名前を変えたことは伝えてあるが少し不安。

・右下の親知らずが生えてきてしまった。前に歯医者で「根っこが神経に触れているから大病院で抜歯しろ」と言われていた。保険証の切り替えが済んでから抜こうと思っていたのに、間に合わないかもしれない。いやだぁ。保険証というのは、戸籍の性別を変更するから保険証も新しくなるという意味です。

・家事の合間に「ブラッシュアップライフ」と「ロシアン・ドール:謎のタイムループ」を雑に観ている。両方30代女性のタイムループものだ。30代女性主人公といえば、2016年版「ゴーストバスターズ」を再生したら、えっ、こんなだっけ…?って悪い意味で引いてしまって途中でやめた。当時、池袋新文芸坐で観たときは割と楽しんだ記憶がある。感覚のアップデートだと思いたい。

・夜まで仕事で、終了後も気分が落ち着かない。近所の公園のベンチでぼーっとした。また公園。最近改築されて、地面は全面弾力のあるラバー素材で、チャイルドシートみたいな作りのブランコがある。植物は生えていない。

日記(散歩、最近読んでいる本など)

・今日は昼休みが長めに取れたので、職場近くの公園のベンチで昼食を食べた。風が強く、コンビニであたためてもらった豚汁の粗熱がとれる。巻き上げられた砂埃が降り掛かって黒コショウみたいな見た目だわ、と思いながら食べた。上空で1羽のカラスが同じくらいの体長の真っ白な鳥をしつこく追い回していた。仕事終わりにも同じ公園に寄って、ツグミハクセキレイキジバトとドバトを見比べた。人が通らない場所で微生物が分解した落ち葉が葉脈のレースを作っていた。枝から離れて時間を経た葉の質感は、岩絵の具のそれだと思う。胡粉の感じがする。芽吹きは透明水彩っぽい。

・先日、15年来の友人と飲みに行った。飲酒のペースと真面目さと不真面目さの塩梅が近い。年に1〜2回会って、自分が過去から連続した人間であることを確認する。

・五月あかり、周司あきら『埋没した世界 トランスジェンダーふたりの往復書簡』を読み始めた。今までになったことのない感情になっている。読み終えたらちゃんと感想を書きたいけど、数行読む間にあれもこれも頭に思い浮かんで、その全てを取りこぼさずに表出するのが難しい。とにかくお二人に、書いてくれてありがとうと伝えたい。

www.akashi.co.jp

刊行されてすぐに買ったまま読み進められずにいた周司あきら『トランス男性によるトランスジェンダー男性学』も開いてみたら、読めた。今の私は読めるようになっていた。これは、書籍を手にしたあとに自分が「なりゆき上」男性として扱われるようになっていったことと、絶対に、関係がある。

www.otsukishoten.co.jp

・「トランス35歳寿命説」を当然だと思ってたから、30代半ばになる自分(たち)がいま生きていてしかも未来が存在するらしいことに呆然とする。するよね、という話を人とした。

・精神の状態はあまりよくない。自分でもびっくりするくらい、些事から何から全てに緊張しつづけて疲弊している。公園をひとりで散歩すると気が休まるから、機会を増やそうと思う。