白昼夢日記

訥々と滔々と

破裂

酒と煙草で完全に胃が死んだのか、ついに食事ができなくなった。点滴を落とし終わるのに二時間もかかるなんて、身体だけは健康優良児の私は初めて知った。

食事ができず、カロリーが摂取できないと、とにかく眠くなるということも知った。仕事を休む旨を連絡して意識を飛ばし、次に気がついたら丸十二時間が経過していた。

今まで、体調が悪ければとにかく肉を食えばいいと思っていたのだけれど、それすらできないとなるといよいよ病院に行かねばならなくなる。病院は嫌いだ。前述したとおり私は身体健康優良児なので、どんな不調を医者に訴えても、医者はただ「ストレスですね」としか言わない。胃薬と鎮痛剤を出されておしまい。「治らなければまた来てください」も私には鬼門だ。その「また」がどれだけ難しいことか。

職場配置、住居、社会での立ち位置が急激に変わった二ヶ月だった。すでに二月の後半にはまた変更があることが決まっている。

酒と煙草と小さいストレスがどんどん積み重なって、胃を圧迫する。そのうち破裂するんだろうか。

幸福の返し方を知らない

時折、誰彼構わず幸福を振りまく天然記念物のような人間がいる。私が「幸せに生きてきた人間」と呼び、心底理解のできない生物。貯蔵している幸福が有り余っていて、好意で他人に押し付けることのできる人種。相手の都合を考えず自分の事情で動くことのできる人種。

 

幸せというものは自分の体ないしは金と引き換えに得るものだと思っていた。今も思っている。無条件に愛されるというのは顔もしくは性格が格別に良い人間にのみ与えられた幸せに生きてきた人間の特権であり、私のような外内面まとめて落第点の人間には縁のないもの。

そんな私に、妙に幸福にしたい人間ができた。玩具ではなく、人間として私のことを見てくれる人間。幸福を与えてくれる人間。
彼は何も求めない。体も金も、労働力としてさえも欲しがらない。何かしてほしいことはないかと聞くと、隣にいてくれればいいと言う。直してほしいところはないかと聞くと、そのままでいいと言う。私よりも労働時間がずっと長いのに私の体を気にかける。

 

何も返せない。

 

幸せだと感じている自分のすぐ後ろで、誰かがそう呟く。何も返せない。何もしていない。何もできない。もらった幸せの半分も返せていない。幸福の返し方を知らない。

 

幸福を持て余しているうちに、呼吸ができなくなる。何もできない焦りと罪悪感、捨てられたくないという汚い欲求に首を絞められていく。
私が幸せに生きてきた人間と呼んでいた彼らがおかしいのではなく、私の扱える幸福の総量が極端に少ないだけだった。彼らは上手に幸せを扱っていただけ。さらに悲しいことに、私はそれをよく知っていた。私がおかしいだけだということを他でもない私が一番よく知っていた。

 

底の浅いひび割れたグラス。注がれても注がれても誰の喉も潤すことができず、ただ溢れていくだけ。覆水盆に返らず。暖簾に腕押し。猫に小判。
消化しきれない幸福に溺れる。

魚は陸では生きられない

人間は疲れるし、生きるには向かないし、人生はままならない。
私に期待するな。どうせ失望する癖に。人間社会でもやっていけるんじゃないか、なんて希望を持たせないでくれ。魚は陸では生きていけないんだ。住み分けすればいいじゃないか。それに、どうせ上陸したってお前たちの餌になるだけだろう。
私はお前たちの餌じゃない。玩具じゃない。暇つぶしの道具じゃない。
人間になりたいなんて思うな。期待は絶望の始まりだ。諦めろ。笑え。自分を殺せ。酒と睡眠薬で眠りにつけ。音楽に溺れろ。煙草を消費しろ。他人を信頼するな。自分を信用するな。何度裏切られて何度裏切ったか思い出せ。自分を殺せ。二人でいるから一人が辛いのだ。
忘れるな。魚は陸では生きられない。

原因探しの自傷行為

自分由来の想定外が起こると水を得た魚のように自分の心をへし折る悪い癖を誰かなんとかしてくれないか、と思いながらの明朝五時。皆様いかがお過ごしだろうか。

この悪癖とはもう十年以上の付き合いになるが、それが急加速したのはつい数年前、某人からDVを受けていた頃だ。口癖にごめんなさいが追加されたのと同時期、私の頭はおかしくなっていた。そう、今でこそDVだと言える程度には回復(回復か?)したけれど、そのときはただひたすら自分のせいだと思い続けていた。ここまで書いて「いや、お前のせいだろ」という声が聞こえてくる辺り、洗脳はまだ終わっていないようだけれども。

空があんなに青いのも電信柱が高いのも郵便ポストが赤いのもみんな私が悪いのよと半ば本気で考えていた。あの時死んでおけばよかったが口癖に仲間入りしたのもこの時期だな、確か。常に自分が苦しい理由を探していた。

とどのつまり私は私を責める事象を常に探し求めているのだ。だって、あまりにも可哀想じゃないか。何も原因がないのに責められ続けるというのは。へし折られるだけの理由があったから、へし折られたのだ。運が、タイミングが悪かったのだというだけでは、あまりにも救われないだろう。ただ可哀想にはなりたくない。

白昼夢日記

心が折れたときや眠れないとき、PTSD発症したときなど主にメンがヘラったときに酒を飲んで泣きながら書き散らすブログを作りました。最近は心の平穏さんが訪ねてきているので更新頻度は高くないです。よろしくお願いします。