ジオウ劇場版感想(ネタバレあり)

ネタバレ有りで書くので未見の方は読まない方がいいと思います。










 歪で妙な映画だけど、決して傑作とは言えないが面白く心に残るものがありました。

これからその心に残った部分を語ります。


ジオウ劇場版で施設の牢屋に「ライダーとして選ばれなかった者」として幽閉されていた木梨猛こと仮面ノリダー


今回の映画、お祭り映画ではあるのだが、裏に「平成という時代は歴史の1ページではなく、生きている俺たちにとっては現在だ」みたいなテーマがあった映画なのですが、その中で幽閉されながらも「それでもお前は選ばれた!俺みたいにライダーに選ばれなかった者はごちゃまんといる!」とジオウに熱く語りかけるノリダーにいたく感動してしまった訳ですよ。


振り返ってみると「平成」という時代は災害と凋落の時代ではありました。

バブル崩壊から始まった不景気を延々と引き継ぎ、東北震災を始めとした災害や世界中で起き続けるテロ、アメリカではトランプが当選してから向こうの政治も狂い出し、今は米中貿易摩擦の真っ最中。EUすらも軋みが聞こえてくる。


後、ノリダーを当時見ていた人達には、ちょうど就職氷河期と不景気の煽りを受けて色々現在の環境に

「こんな筈じゃなかった。21世紀はこんな現在を迎えている筈ではなかった」

という不安と不満を抱えている人、つまりは

「ライダー(ヒーロー、もしくは成功者)に憧れたけど実際には選ばれなかった者」と考えてる人は決して少なくないと思うんですよ。


そこに当時憧れたとんねるず木梨憲武がノリダーとして現れて、かっこよく「選ばれなかった!」と言い出す訳ですよ。こんなのノリダー世代に刺さらない訳ないじゃないですか。

(この辺り、「幽閉=引きこもり」なのかとつい邪推してしまう)


このノリダーの「選ばれなかった者」としての描写は徹底していて、クライマックスのオール平成ライダー大決戦でも出番はない訳です、選ばれなかった者だから(コミック版クウガまで出たのに)。


ただ、選ばれなかった者に意味がないかと言うと決してそんな事は無く、その声はジオウを動かし、そして戦いが終わった後に、ノリダーのSEはちゃんと響きわたる。選ばれなかった者達の存在を示すように(このSEがもともと1号ライダーのSEの使い回しというのがまたグッとくる訳です)。


そういう意味で俺みたいな人間には心に残る映画でした。


その上でラストで平成の残滓のように現れる、アナザーZOにしか見えないパパイヤ鈴木(そういやジオウってZOのもじりよね)を令和ライダーの01がフルボッコにするEDまで含めると、


「平成という時代、たとえ不遇でも生きた君達には価値はある。その上でもう元号変わって次の時代が来たからな!」


と語りかけるように、もういい歳になった俺は感じて感動してしまった訳です。


とりあえずジオウ劇場版を観て確かに俺個人は心に残るものがあったので、この映画には感謝しています。