MarioPamuk’s diary

海外文学と学術書の短文感想&忘備録

「共喰い」

田中慎弥著 2中編 戦争で分かる通り人間の本質は本能の趨いた暴力性だ 従い”暴力”と”性”を的確に描く作品は良作と言える “共喰い” 芥川賞受賞作 典型的オイディプスコンプレックス作品 しかし展開とテンポが上手く面白い “第三紀層の魚” 一転して曾祖父と祖母と母の家族の絆を描くケア文学

「カルタゴ興亡史」

3度に及ぶシケリア戦争とポエニ戦争 レバノン本国ティルスからの自立 ヌミディア人の統率 ギリシア植民市シラクサ科学者アルキメデスと王ゲロンとの対立とハミルカルの勝利 スペイン建国 ローマとハンニバルの覇権抗争 スキピオによる殲滅作戦 グラックスカエサルのローマ化政策

「イブン・バットゥータの世界大旅行」

実は黒海沿岸もベトナムも中国も行ってない? マリーン朝ロッコ稀代の旅人 「諸都市の新奇さと旅の驚異に関する観察者たちへの贈り物」 別名「大旅行記」完訳者の研究書 メッカ巡礼とアラブ放浪 インドとモルディブ法官時代 晩年のアンダルシア聖戦とマリ王国

「アルハンブラ物語」

ワシントン=アーヴィング著 アメリカ作家・大使・随筆家 アンダルシアの歴史と遺跡に魅せられアルハンブラ宮殿に滞在した美文作家のイスラムの香り漂う旅行記・伝説集 ウマイヤ朝 グラナダ王国 ナスル朝 サルマン・ラシュディムーア人の最後のため息」のボアブディル王も登場

「ドン・キホーテの旅」

セルバンテスの名著「ドン・キホーテ」 決闘→指名手配→レパントの海戦で隻腕→アルジェで捕虜→娘の結婚詐欺始末→59歳で刊行 元祖”信頼できない語り手” 諧謔と風刺と滑稽 最後の騎士道文学 最初の近代文学 愛馬ロシナンテ サンチョとの奇妙な2人組 人文主義 旅人 国語形成

「ひとり日和」

青山七恵著 1長編1短編 芥川賞受賞作 “ひとりではあっても孤独ではない” 20歳の平凡なフリーター女性は中国に転勤する48歳の母から遠戚の71歳の元気なおばあちゃんの元に居候を勧められる 各々が恋を経験し”ひとり”とは何か考える 題名で分かる通り文体も音楽的 バランス良い優等生作品