漢字を通して「自学力」を高める
昨年度、2年生を相手に土居先生の漢字指導法を部分的に実践し、非常に高い効果が得られました。漢字が大っ嫌いで書きたくなかった子が、「先生!早く漢字タイムやりたい!」と言ってくるようになったり、まとめのテストで40点くらいだった子が90点くらい取れるようになったりしました。最後の50問テストを抜き打ちでやりたかったのですが、それが叶わずお互いに少し心残りがありました。
そこで、今年も4年生を相手に導入したのですが、どうも反応が悪くて「今年の子たちにはあんまり合わないのかなぁ。」と思っていました。賢そうな子がなかなか合格せず、「4年生だと難しい熟語も増えるしなぁ。」とも考えていました。時数が少ない中、このペースで進んでいくことに焦りを感じました。
しかし、3回目の漢字タイムでその考えが吹き飛ばされました。1ページ目をなかなか合格できなかった子達が、2ページ目からはすんなりと合格していくのです。漢字の難易度の問題かと思ったのですが、3ページ目もすんなり合格します。
そして、反応が悪いと思っていたことも反省しました。合格した子たちが本気で喜ぶ姿を見て、「ああ、この子たちは1ページ目を突破するために真剣に試行錯誤して、自分なりの練習の仕方を考えていたんだな。」と思いました。帰りには友達と問題を出し合いながら帰る姿も見られました。
そういえば、去年もそうだった気がします。最初はみんな合格できない。悔しそうな顔を見るたびに、「2年生には、ハードルが高すぎたかなぁ。」と考えることもありました。しかし、気付くと合格するスピードがどんどん上がっていき、3学期はあっという間にほとんどの子がドリルを一冊合格しました。
色んな子がいて、学びを委ねることに臆病になっていましたが、勇気をもって彼らの資質に期待してみることにします。
最初の1ページが鬼門。そこを乗り越えたら、この達成感は病みつきになる。今日の子供たちはそんな顔をしていました。
クラス全員が熱心に取り組む! 漢字指導法 ―学習活動アイデア&指導技術― https://www.amazon.co.jp/dp/4181064255/ref=cm_sw_r_cp_api_i_CR31EbXQP7QWT
UD授業入門④〜やりたきゃ勝手に参加する〜
前回はユニバーサルデザインにおける参加階層への支援を書いてきました。
しかし、いくら車を整備したところで、エンジンをかけなければ車は動きません。今回は、どの子もエンジンがかかりやすい参加のさせ方について「お笑い」を例に書いていきます。
授業とはお笑いである
いきなりですが、私の大学の研究室の先輩に細川さんというYouTuber(芸人?)がいます。その人の卒業研究がお笑いフレームで授業を面白くするみたいな内容でした。かなり衝撃的だったのを覚えています。「人はどんな時に笑うのか」を分析しそれをフレーム化して授業に組み込むというものです。当時大学2年生だった私は、「これのどこが研究なんだ…」と思いましたが(すいません)授業について学んでいく中で、あの研究はかなり価値の高いものだったのではないかと思うようになりました。
人はどんな時に笑うのか
人が「お笑い」を見て笑う時にはいくつかのパターンがあります。そのどれもに「緊張」と「弛緩」が組み込まれています。自分の予期していないことが起きると「緊張」し、自分の予期していることが起きると安心して「弛緩」が起きます。
例えば、「こちらでお召し上がりですか?」に対して「持って帰るよ」と答えが返ってきたら、次は「テイクアウトですね」という答えが返ってきそうなところを「ソルトレイクの方で…」とボケることで、「なんだよそれ」という不安から「緊張」が起きます。しかし、このままでは不安なままなので「テイクアウトだよ」と突っ込むことで、見ている人は安心して「弛緩」します。さらに「冬季オリンピックかよ」と一言入れることで、見ている方は「あ〜それそれ」と安心します。つまり、「笑い」は「緊張」と「弛緩」を適度に織り交ぜることで生まれるのです。「ズレの不安」と「納得の安心」と言い換えてもいいかもしれません。
それを授業に転化するとどうなるか
例えば、国語の授業で「音読をします」「主人公の気持ちがわかるところに線を引きましょう」「では主人公の気持ちを発表しましょう」という流れだったとしたら、お笑いでいう「緊張」がないのです。ずっと「弛緩」。これでは面白いとは思えませんし、せっかくやる気を出して話を聞いていた授業がこの流れでは、また床に寝転がってしまいます。
そこで、国語の授業UDにおいては「教材にしかけを作る国語授業10の方法」(桂聖)というものがあります。その中では、①順序を変える ②選択肢を作る ③置き換える ④隠す ⑤加える ⑥限定する ⑦分類する ⑧図解する ⑨配置する ⑩仮定する という10通りの方法で教材に緊張を加え、子供が参加したくなる授業にするということが提唱されています。
この10のしかけですが、並列の関係ではないと考えています。
まず、正誤判定型が
③置き換える ⑤加える ⑩仮定する
の3つです。
次に、並べ替え型が、
①順序を変える ⑨配置する
の2つです。
また、②選択肢を作る と ④隠す はそのまま選択型、穴埋め型とも呼べるでしょう。
⑥限定する ⑦分類する と ⑧図解する は少し毛色が違うので、思考の可視化型とでも名前をつけましょう。そうすると、国語授業に限らず、正誤判定型、並べ替え型、選択型、穴埋め型、思考の可視化型という風にまとめて行くと、他の教科にも転用できるようになっていくと思います。今回はこの順番で少しだけ解説をしていきます。
正誤判定型
これはどの教科でも取り組みやすい発問の型です。教師が「〇〇ですね」とあえて間違い(ぼけ)子供に「違うよ!だって〜」と直させたり議論させたりする(ツッコミ)時に使えます。あえて間違うことで、そこに授業の内容を焦点化できるのも利点です。やりすぎるとくどくなります。
③置き換える
ダウト読みなんかでよく用いられます。内容を確認したければ「白い」→「黒い」などのように変えます。表現の良さを話し合わせるには、「ゆみ子の泣き顔を見せたくなかったのでしょうか」→「ゆみ子の泣き顔を見せたくなかったのでしょう」のように文末などの表現を違ったものにします。確認読みのレベルでは非常に有効だと思います。
体育などでは、あえて間違えのお手本を見せて何が悪いか考えさせるのも良いです。NHKの「はりきり体育ノ助」なんかで用いられる手法ですね。理科の実験の確認や、算数の筆算の手順の確認など、確認レベルでは他教科でも有用です。
⑤加える
あえて違う文章を埋め込むことで、もともとの文章の構造に気づかせるための手法です。あえて違う挿絵を用意するという手法もあります。
これは私はあまり他の教科では使わないかなと思います。
⑩仮定する
こちらはいわゆる「もしも発問」というやつです。「この文がもしも〜だったらどう?」と問うことで、元の文の良さを確認するといった手法です。③の「置き換える」に近いですが、そっちが確認のクイズから「なぜそうなんだろう」と迫っていくのに対し、こちらの方が元の文の良さを議論し合うのに有用です。高橋達哉先生からこの項目だけで著書が出ています。
あまり関係ないですが、小学生はロールプレイングが好きなので、「もしも市長だったら」で考える社会とか「もしも体操教室の先生だったら」で体育のまとめ書かせたりすると面白いですよね。
並べ替え型
全然関係ないですが、選択肢のカードを黒板の前でぶちまけるという茶番をよくやります。子供は「先生またこぼしたの〜?」とノリノリです。子供はお約束が意外と好きなのです。これも、予測していたことが起きる「弛緩」からくる笑いです。
①順序を変える
この発問は文章構造の中で「順序」に焦点化させる時に有効です。例えば、はじめ中終わりや、事例提示の順番などに焦点化した授業を行う時に活用できます。
国語以外では、社会の「時間的な見方を働かせて考える」授業や、プログラミング的継時処理を判断させる時に使えます。
⑨配置する
この発問は、「空間的見方を働かせて考える」のに適しています。挿絵などがどこの場所に当てはまるのかを考えて配置して、なぜその場所か根拠を本文から探します。例えば、やまなし(宮沢賢治)の対比構造を理解するために、5月と12月のかにの世界をそれぞれ図解していくといったように使います。
他にも、文を配置することで対応する箇所を探すことにも使えます。
当然社会においては地理的な(空間的な)見方を働かせることができますし、理科でも地学系の学習には適しています。
選択型
②選択肢を作る
これは自分が最もよく使う中心発問で、いわゆるwhich型発問というものです。どっち?あるいは、どれ?を選ぶのは誰でもできます。さらに、その後の根拠をお互いに議論し合うので、とっつきやすく深まりやすいです。1対29みたいな少数派が最後に大逆転するようなこともあり、難しい課題設定でも食いついて議論してくれます。(持ち上げすぎ?)この項目だけで著書が出ていますので、よかったらどうぞ。
当然選択肢を作って選ばせるというのは、他教科にも応用できますし、職員会議でもA案とB案を持っていった方がまとまりやすいです。さらに、子供が自分たちで選択肢を作って話し合えるようになると、なおすごいですね。
穴埋め型
④隠す
これは、あえて隠すことで、他の情報を統合して隠れている部分を推察させることで、より本文を読み込むという効果が期待できます。まあ、簡単に言うと「焦らす」っていうことですね。
他教科でも、一旦立ち止まって考えさせたい時に使えます。社会の資料提示の時に一箇所だけ隠して配ったり、算数の文章題の条件を一箇所だけ隠して考えさせたり、汎用性が高い手法です。理科の実験では、ブラックボックスで演示実験したりすると盛り上がります。
田中博史先生がよくやるのですが、子供の意見を途中で止めて、「この続き、〇〇くんの言いたいことが分かった人?」というのも、子供の意見を「隠す」というテクニックですね。
思考の可視化型
ここからは、参加階層に対する食いつきのための手立てというよりは、わかりやすく整理して、議論を深めるための手立てなような気もします。
⑥限定する
先回の記事で、「刺激量を調整する」という項目がありましたが、⑥限定するはそれに近いです。一文だけ提示して、その文について考えたり、二つの文章だけに限定して提示し、比較させたりと、考えさせたい部分に焦点化させるのに有効です。
筑波附属の高倉先生が、音楽の鑑賞の授業で「最初の3秒だけ聞かせます」という「限定する」手法を用いた授業をしていました。鳥肌の立つ授業でした。
⑦分類する
浅い海と深い海を比較したり、ちょうと女の子を比較したり、戦時中と10年後を比較したりと、情報を整理して比較するのに適しています。
他教科だと思考ツールを使って様々な考え方をすることもできます。思考ツールといえば関西学院初等部ですね。
⑧図解する
図解するといえば沼田拓弥先生ですね。立体的に文章構造や関係性を捉えることができます。(内緒ですが、図解するの中にも10のバリエーションがあるらしいですよ。)
まとめ
長々と書きましたが、「やりたい」と思わせるには様々な手法があります。「参加」の土台にすら乗ってくれなければ、全員達成の授業にはなり得ません。やりたいと思わせるには、「ズレ」を作って「弛緩」から「緊張」にもっていきます。その方法を今回は国語を中心に10個簡単に紹介しました。これを頭に入れておくと、授業を考えるのがとても楽しくなります。だっていつも寝ているあの子がノリノリで少数派の意見を主張していたら、教師冥利につきますよね。
しかし、この手法だけではいわゆる「尻すぼみ」の授業になってしまいます。拡散しすぎてなんだかよくわからない授業、結局誘導みたいになってしまう授業、、、苦い思い出はたくさんあります笑 「ズレ」をつくってガツンと惹きつけ、全員を参加の土台に乗せて、これはまだスタートラインにすぎません。その後の授業づくりについてはまた今度…。
UD授業入門③〜まずは全員参加の環境づくりから〜
前回は授業のUDのモデル図(小貫悟2014)を基に、全員達成のバリエーションについて記事を書きました。
「で、結局何をすれば良いの?」ということで、今回から各階層毎に授業づくりのポイントを書いていこうと思います。
今回は、「参加階層」におけるつまずきと、それに対する手立てについて書いていきます。
参加階層におけるつまずきとは
みなさんのクラスは全ての子が活動に参加していますか?指導書の「◯◯しましょう。」という指示に対して、すぐに取り組める子とそうでない子がいます。具体的な姿としては、
・立ち歩き
・寝る
・逃げる
・関係ないことを口走る
・固まる
・他のことをしている(手遊び等)
・こっそりサボる(話し合っているようで話し合っていない、ノートに意見を書かない等)
などが挙げられます。この「参加階層」におけるつまずきを抱えた授業を続けると学級崩壊に近づいていきます。
原因としては「集中力の無さ」や、「見通しが持てないことへの不安感」などがありますが、結局は「やりたいと思えない」ということに集約されるのではないかと思います。子供がやりたいと思えるようにするには、「環境設定」と「授業のしかけ」が大切です。本当は後者について熱く書きたかったのですが、書いているうちに長くなってしまったので、今回は「環境設定」について書きました。授業のしかけについては次回書きます。
環境設定でバリアを減らす
小貫悟は参加階層におけるつまずきに対して、
①クラス内の理解促進(人的環境を整える)
②ルールの明確化(脱暗黙のルール)
③刺激量の調整(スッキリ集中)
④場の構造化(わかりやすい場づくり)
⑤時間の構造化(見通しをもたせる)
の5つの指導方法の工夫をあげました。それぞれについて簡単に説明していきます。
①クラス内の理解促進(人的環境を整える)
「一生懸命やることをバカにする」「間違いを笑う」といった雰囲気のあるクラスでは「頑張りたくても恥ずかしい」「分からないって言えない」と考えてしまい、参加しにくくなってしまいます。安心して授業に取り組めるような人的環境を整えてあげることで、多くの子が活動に参加しやすくなります。このことについて書かれた本があるので紹介しておきます。
https://www.amazon.co.jp/dp/B0849TXDNY/ref=dp-kindle-redirect?_encoding=UTF8&btkr=1
②ルールの明確化(脱暗黙のルール)
野球に参加するには、野球のルールを守らなくてはなりません。「ルールを守る」ことは参加の大前提です。しかし、ルールを守った体験が乏しいと、「ルールは守るもの」という感覚が希薄になってしまいます。また、ADHD傾向の子にとってはそもそもルール自体のハードルが高かったり、ASD傾向の子にとっては明文化されていない暗黙のルールを理解するのはとても難しかったりします。「ルールは明確に示す」「守れないことはルールにしない」「ルールを守らせるためには行動へのアプローチではなく先行条件へのアプローチを行う」「ルールを守る良さを経験させる(SST)」といったことを意識することで、活動に参加しやすくなります。私が読んだ本の中ではこの項目については以下の本が分かりやすかったです。
https://www.amazon.co.jp/特別支援教育の知識で全員を育てる!-ユニバーサルデザイン学級への6原則-前田智行/dp/B07MKPVT1C
https://www.amazon.co.jp/策略―ブラック授業づくり-つまらない普通の授業にはブラックペッパーをかけて-中村-健一/dp/4182400151
③刺激量の調整(スッキリ集中)
最近は「ユニバーサルデザイン」を掲げる自治体も増えてきて、「黒板周りに余計な掲示物を貼らない」「机の脚にテニスボールをはめる」といったものがこれに当たります。前者は視覚情報を後者は聴覚情報を減らし、授業内容に集中するための取り組みです。意識しているのと意識していないのとでは活動への取り組みやすさが全然違います。教師の言葉を減らすのもこの項目に当たると思います。
④場の構造化(わかりやすい場づくり)
みなさんの学校の理科室には、どこに何が置いてあるか分かりますか。しまう場所がわからないと散らかしてしまったり、どこにあるかが分からなくなってしまったりします。そして、そういった子はワーキングメモリが低いことが多く、物を探している間に授業に遅れて行ったりします。
また、「どのように人が動くのか」といった動線を意識した場づくりも、体育や理科などでは大切です。
⑤時間の構造化(見通しをもたせる)
ASD傾向の子にとっては、今から何をするのかが分からないと不安になってしまいます。授業の流れを黒板に掲示しておくことで、「この授業では何を何分行う」「あと何分で次の活動に切り替わる」という見通しがもてて、活動に参加しやすくなります。
まとめ
このように、環境に対してアプローチすることで子供達は活動に参加しやすくなります。しかし、これだけでは、真に参加しているとは言えません。上記事項はあくまで前提条件です。最初に書いた通り、こちらがいかに条件を整えてバリアをなくしたところで「やりたいこと」でなければ「やらされていること」でしかありません。いくら車の整備をして道の舗装をしても、エンジンがかからなければ走りません。次回はそのエンジンのかけ方、授業へのしかけ方を書いていきます。
↓次回
UD授業入門②〜全員達成なんてできるの?〜
↓前回の記事
授業のユニバーサルデザインでは
「どの子も楽しく”わかる・できる”授業を目指そう」
ということを理念に掲げています。
現在学生で教職を目指している人は、「そんなの当たり前だろ」と思うかもしれません。どの研究会にしても、あえて明文化はしていませんが、「賢い子だけが輝く授業をしたい」なんて考えで研究を進めているところは無いはずです。
しかし、現場で30人前後の子どもたちを相手に授業をした経験があれば、この当たり前がいかに難しいかを実感しているかと思います。「そんなの無理だよ」と諦めてしまっている人もいるかもしれません。私も1年目は少し諦めてしまっていました。
そんな中、今日ご紹介するのは、授業の達成度をグラデーションで示した「授業のUD化モデル」というものです。子供の「できるか、できないか」にあるバリエーションを整理しておくことが、授業改善につながっていくのです。
①「わかる・できる」を4つの段階に分ける
下に示すのが、小貫先生の提唱する授業のUD化モデルの図です。
授業についていけない児童をさらに細分化し、各階層に合わせた指導方法の工夫がまとめられている図になります。
②参加階層におけるつまずき
内容以前に学習活動そのものができない児童がいます。例えば、
情緒的課題
・関心にムラがあり、興味がない(苦手な)学習では床に寝てしまう。(他にも、手遊びをしているなど。)
・気持ちのコントロールができず、休み時間のけんかをずっと引きずって怒っている。
・集中力に課題があり、指示を聞いておらず何をすれば良いかわからない。
・ずっと座っていることができず、立ち歩いてしまう。
能力的課題
・抽象概念が育っておらず、「感想を書きましょう」「気づいたことを書きましょう」のようなオープンクエスチョンに対し、何をするべきなのかわからない。
・ワーキングメモリが少なく、指示を覚えていられない。
・日本語がまだあまり理解できておらず、何をして良いかわからない。
…などのように、あげるときりがありません。しかし、一つ一つ何が本質的に課題なのかを考えることで全体指示の中で解決することもあります。
例えば、「ずっと座っていることができず、立ち歩いてしまう」のであれば、「ずっと座っている」授業を変えると、他の子にとっても参加しやすくなります。参加層でつまずいている子にとっては学校の時間は退屈でたまらないでしょう。全員が活動に参加できるしかけは授業UDにおいてとても大切です。
また、「学習環境」「人的環境」のような「環境へのUD的な支援」を行うことで、参加階層のつまずきを減らすこともできます。
③理解階層におけるつまずき
参加できたら次は「わかる」という段階です。中には「参加していないようだけど聞いていて理解はしている」という強者もいますが、LD傾向の子にとっては「参加しているし、一生懸命頑張っているのにわからない。」ということが起こっているかもしれません。
「わかる」または「わかった気分にさせる」には、「焦点化」「視覚化」「共有化」という3つの視点がとても大切になってきます。これについてはまた後ほど記事を書きたいと思います。
「何をもってわかったとするのか」→「焦点化」
「分かるための支援の一つ」→「視覚化・多感覚化」
「分かるための支援でもあり、活用の練習にもなる」→「共有化」
④習得・活用階層におけるつまずき
ここからは、いわゆる平均的な子にも多く見られるつまずきになります。1回の授業ではなんとなくわかった気になっても、うまく説明できなかったり、次の日には忘れていたりするものです。そこで、共有化の際に多くの子に言語化させて活用を促したり、常時活動や学びの構造化を図ることで内容を身につけさせていったりする必要が出てきます。
授業UDとは、苦手な子のために授業のレベルを下げることではありません。教師のしかけによって多様な子をそれぞれの学習のステージに乗せて、その子なりの「分かる・できる」を目指していくのです。
⑤ここ1年で読んだ本を独断と偏見で階層ごとに分けてみた
ここ1年間、にっせんはUDを追いかけて学んできました。そうすると、授業に関する本を読んでみた時に、「だいたいどの階層のためになるかな」という視点で読むようになりましたので、独断と偏見でオススメの本をまとめてみました。全て「主に」と入っているのは、当然どの本もその階層以外にも活用できる内容がたくさん書いてあるからです。授業UDに関する書籍はそれぞれの階層を意識して執筆してあるので別の欄を作りました。
「買うの迷っているんだけどどうだった?」というものがあったら、リプをいただけたらお答えします。もちろん独断と偏見です。
この記事を読んで、少しでも興味の湧いた人はぜひ何か1冊購入して、一緒に学びましょう。にっせんの記事なんかより、ここで紹介している本を読んだ方が53万倍ためになりますから。
↓でも次の記事を読むならこちら
UD授業入門①
Twitterで活動を始めてからもうじき2年が経とうとしています。今年度はずっとユニバーサルデザインを勉強させていただき、勝手にアカウント名にも使わせてもらっています。自分にとって、UDが今年度の学びの指針になり、とても助かりました。Twitterで情報を集めているけど、情報が多すぎて自分の学び方がよくわからないという方が、「UD学んでみようかな」と思うきっかけになってくだされば幸いです。
なお、自分はまだ学び始めて1年くらいしか経っておらず、どこかのUD授業の会に所属して、研究をしているわてではないので、ブログで興味を持ってくださった方は参考書籍を読んだり、UD学会の発表会に参加したりして深めていくことをお勧めします。
また、「にっせん君、それはちょっと違うよ。」というものがあれば、優しく教えていただけると幸いです。笑
合理的配慮とは
内閣府の障害者白書(H25)による通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある児童は
6.5%ほどいるとされています。これは、30人当たり約2人の計算になりますが、ご自身の学級はどうでしょうか。え?そんなもんじゃないって?私もそう感じます。
さらに、障害者差別解消法(H25)において「社会的障壁の、それを必要としている障害者が現に存し、かつ、その実施に伴う負担が過重ではないときは、それを怠ることによって前項の規定に違反することとならないよう、その実施について必要かつ合理的な配慮がなされなければならない。」とあります。要するに、過度な負担でない限り、学校には合理的配慮を行う義務があるのです。
当然、他の子と同じように学習するのに困難を抱えているのですから、教師としてはなんとかしてあげたいと思います。そして、1年目の私も、それぞれの特性を考えてどのような支援を行うべきなのかを学んで、実践しました。しかし、そこには落とし穴があったのです。
合理的配慮の限界
一人一人にあった教育がなされることはもちろん素晴らしいと思います。例えば、絵カードを提示してあげたり、個別に話を聞き出してから書かせたりと様々な個に特化した指導をすること自体は、過重な負担とまでは言えないでしょう。
しかし、その人数が7人、8人、と増えていった時に、他の20数人がどんどんと見えなくなっていきました。あくまで担任は30人なら30人の担任であり、配慮が必要な児童だけを見ていると、他がどんどん崩れていきます。このことに気づいたのは1年目の二学期でしたが、その時は、「自分には指導力がないのだから、がむしゃらに支援に走るしかない。」と考えていました。無知は罪ですね。
三段構えの指導
そんな私にともはる先生がUDを教えてくださり、いろんな書籍を読んでいく中で、小貫先生の提唱する「三段構えの指導」というものが、私の考え方を大きく変えました。
三段構えの指導とは、①まずは指導の工夫により、個別の支援が必要な児童を減らし、②次に個別の支援を行う、③そして、どうしても授業時間以外の指導が必要な場合には、さらに個に特化した指導を行う、というものです。
特別支援学級が1クラス8人までと決められているのは、それ以上の人数に支援を行うのはいくらプロでも難しいからです。まして、通常学級において、集中力が持たなかったり、何をしたら良いか理解できなかったりする児童が8人を超える状況を生んではいけないのです。
ですから、まずは一斉指導のやり方を工夫したり、環境を整備したりすることで、特別な支援を必要とする児童を含め、全員が取り組みやすい状況を作ることを最優先にします。では、どうしたら「全員が取り組める」学習活動となるのでしょうか。そのあたりを次回以降書いていきたいと思います。
↓次回
参考文献
⬇︎最初はこの本!
たかが整列、されど整列
みなさんのクラスは、整列に自信はありますか?
整列をさせる2つの意味
大人の関係性(特に若手)
はじめにはっきり書いておくと、列を揃えて素早く整列する力なんて、そこまで重要ではありません。もちろん、災害時に日本人がお行儀良く並べるのは、学校教育のおかげかもしれませんが、普通に並べればまっすぐきっちり揃っていなくても特に問題がありません。
しかし、整列ができていないと管理職から「〇〇さんのクラス大丈夫かなぁ。」と心配されてしまいます。指導力に定評があり、信頼されている先生は、多少列が乱れていたところで何も言われません。しかし、若手は言われます。「整列すらできないなんてお前のクラスは大丈夫か?」と。私はそこまで指導力に自信があるわけではないので、きっちり整列させます。笑
逆に言うと、整列ができるだけで、管理職の信頼を1つ得られます。(もちろんそれだけでは足りませんけどね。積み重ねです。)
子供のメリット
しかし、素早く整列できることは子供にとってもメリットがあります。
まず、体育では、素早く並べることで時間を節約できます。この積み重ねが運動量の確保につながります。何かアクティビティをやる時も、集合が早ければ2回戦ができるかもしれません。素早く行動できるというのは、集団の時間を確保する上で大切なのです。
さらに、災害時には、隣の人と列を揃えていることで、素早く人数確認をすることができます。列がぐちゃぐちゃだと数えにくいというのは2年生の算数で勉強します笑 体育のチーム分けだって列が揃っているとやりやすいので、時短にも繋がります。
素早く揃った整列をさせるために
しかし、どんなに整列の重要性を問いたところで、子どもには実感が湧きません。先にできる状態をつくることで、だんだん早く並ぶ良さが分かってきます。
入門期
4月の段階では、秒数を数えてあげると良いでしょう。バラバラから整列するまで30秒、そこから前ならえ10秒です。もちろんそんなにかかりません。そこで、「10.9.8.7なんだ4秒でできるのかい。甘くみてたわー。先生が数えたら4秒で君たちは前ならえができるのね。」とフィードバックをします。この言葉には、「先生がいなくてもできた!」につながる布石を打っています笑
別に毎回前回より早くする必要はありません。だって4秒でも5秒でも大して変わらないですから笑 しかし、10秒を超えたら「前はできてたのに残念だなぁ。もっかいやる?」と言って、必ずほめて終わるようにします。時々、「君たちは毎回整列が素早くて助かるなぁ。」とか、「今日は行動が素早かったから2回戦できるね。」とか言ってあげると良いです。当然、2回戦は最初からやる予定です笑
手放し期
そのうち、先生が声をかける前に並べる日が来ます。絶対にそこを見逃してはいけません。なんなら、少し声をかけるのを待ってみたり、忙しくて構ってられないフリをしたりすると、いいかもしれません。そこですかさず、「先生に声をかけられる前に並べたの?すごい!!拍手!!」ぐらいやります。はじめて自分たちだけで並べた記念日です笑
できるようになっても、油断してはいけません。継続して声をかけ続けます。今日もできたね。あの日から君たちは他のことも自分たちでやるようになったね。とここぞとばかりに使います。ある程度定着してきたら、声かけのペースを週一、月一と減らしていきます。
まとめ
・整列はできないよりはできた方がいい。
・低めだけど、ハードルを設定することで程よい緊張感を作る。
・継続して肯定的な声をかける。
おまけ
入門期に、隣の人とよろしくねの握手なりハイタッチをさせると、「あれ?僕どこ?」ってなりません。「僕たち仲良くするけど、全校朝会中は喋らないよねー。って隣の人と約束しましょう。」って言っておくと、いちいち指導しなくて済むので楽です。これも、帰ってきてから、「約束守れた人ー?」の指導とセットです。
4月は絶対に手綱を離すな②
前回の続きです。実際に来年度の4月から意識していくことを書いていきます。
前回の記事はこちら
黄金の3日間はすぐ終わる
昨年の3月末に、みはるさん、ともはるさん、kotaさんと新年度スタートダッシュセミナーをやらせてもらいまして、その時に黄金の3日間に何をするかというワークショップがありました。教科書配りや当番決めなど、やらなければいけないことを入れていくと意外とやりたいことにさける時間は限られてきます。何をどの順番で行なっていくのか、軌道に乗っていない最初の1週間は特に戦略的に時間割を組んでいかなくてはなりません。
初めて担任を持つという方は、戦略どころかやらなければいけないこともわからないと思いますので、着任してからの2日間で週案を一緒に作ってもらうと良いでしょう。初任と組む方は、3月中に週案を作り、4月1日に渡して説明してあげると親切ですね。
褒めて思い通りに操作するためにゲームをしくむ
中村健一先生は著書の中で「4月は短いゲームをたくさん行う。」と書いています。「学級崩壊しているクラスではゲームが成立しない。」ともあり、確かに私が初任で持ったクラスは外国語のゲーム一つで、よくケンカになっていました。そもそも、「ルールを守ってみんなで仲良く遊ぶ」「勝ち負けだけにこだわらずにゲームそのものを楽しむ」ということができれば、学級は荒れません。トラブルの多くは休み時間の遊びの中で生まれるのです。また、「早く終わったら何をすれば良いかを考える」「肯定的な声かけをする」「困っている仲間を助ける」など、ゲームを通してSST(ソーシャルスキルトレーニング)につなげることもできます。いってしまえば、休み時間に起きるトラブルの予防接種のようなものです。
最初はなるべくシンプルなルールのゲームを行わせます。「みんなの行動が素早くて、時間が余ったから少しみんなで楽しいことをしようか」といって授業の残り10分でしりとりや古今東西など簡単なゲームをします。そこで、「Aは思いつかない人を助けられるように、ヒントを出していました。困っている人を助けられる子がいるこのクラスは素敵ですね。」「Bは友達の言葉に「なるほど!」などのリアクションをしていました。おかげでこのグループはすごくいい雰囲気で、盛り上がって楽しそうでした。」などとフィードバックをします。これは川上康則先生が講演で行なっていることです。
そうやって、子供を楽しませながら、学級として目指すべき姿を仕込んでいきます。「ルールを守ると楽しい」という経験を与え、言語化することで手綱を握り続けます。子供から「先生!今日も時間が余ったからゲームするの?」と言われたら絶対にやりません。「先生は僕の言うことを聞いてくれた」という勘違いをさせてはいけません。あくまで、4月のうちは主導権を握り続けるのです。
とにかく子供と遊ぶ
先ほども述べましたが、トラブルのほとんどは休み時間に起きます。休み時間に友達と楽しく遊べる状況であれば、そんなに問題は起きません。でも、子供たちはまだ発展途上です。起きてしまったトラブルを自分たちで解決するのは初めは難しいでしょう。しかも、前回紹介した”ユニバーサルデザイン学級への6原則”によると発達に課題のあるお子さんは、トラブルのせいでイライラすると脳が調子の良い状態を保つことができません。ですから、未然に防止するか、すぐその場で解決してあげないと、また次のトラブルにつながっていきます。子供と遊ぶということも仕事です。一緒に遊びながら、肯定的な声かけや、時には教師も「そんなにたくさんの人に追いかけられたら大変だよ〜」と不満を言っても良いでしょう。みんなで楽しく遊ぶ見本を見せながら、SSTをしくむのが4月の休み時間なのです。もちろん、子供には「先生は僕たちと遊びたくて遊んでいる」と思わせますから、「先生大人気ないよ〜」とか、「ムキになりすぎ〜」とよく言われます。策略通りです。笑
子供と同じようにムキになって遊んで、ほどほどの楽しみ方を手本として見せていると、「先生が負けた時に大声を出して、物に当たり散らかしている姿を想像してごらん。どう思う?」といった指導も使えるようになります。
声を出させる
最近、土居正博先生の”国語科基礎力トレーニング”の本を読み、今年のうちのクラスに足りなかった「活気」について考えました。話す・聞くの指導が甘かったと思います。授業中に子供が話す回数はおそらくかなり多いと思うのですが、その声量までは指導していませんでした。声を揃える、大きな声を出すといったことが習慣化されると、気持ちも自然と前向きになってくる。はず、、、。これに関しては今年実践できてないので、あまりよさをうまく説明できませんが、、、。
声を出すという活動は授業のテンポを生むためにも非常に有効です。中村健一先生は授業づくりの本の中で、何度も復唱させると書いていました。どこまで徹底できるか不安ですが、やると決めたらやります。
学級開きはシンプルに
今年度は、学級崩壊を恐れるあまり、ビクビクしながら4月を迎えました。しかし、学級びらきといっても特別な何かをする必要はありません。今年1年間の学級経営で大切にしていきたいことを、普通の授業の中に戦略的に組み込んで、徹底させます。日常を戦略的に過ごすのが4月なのです。
もし、自分はこうしているよ〜とか、これはこうなんじゃないという意見がございましたら、コメントしていただけたらと思います。
参考文献
私自身はまだまだペーペーですので、いつも他の人の知識を使っていきています。以下が今回参考にした書籍です。