h.Tsuchiya

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後知恵で観る『ブレードランナー』

 去る19日に映画『ブレードランナー』の俳優M.E.ウォルシュが亡くなった。デッカード(H.フォード)にレプリカント抹殺を命じる警部役だったがあまり記憶にない。なにせ40年前の映画。たぶんレンタルビデオで観たと思う。
 映画は衝撃的だった。酸性雨降り続くダークな世界観、芸者が映る「わかもと」の巨大看板、「2つで十分ですよ」と日本語で言う屋台のオヤジ、レイチェル(S.ヤング)の息を呑む美しさ、ハリウッドデビュー間もないオランダの俳優銀髪R.ハウアーの名演、監督R.スコット+美術S.ミードのウデは『エイリアン』で実証済み……ともかくSF映画好きには超人気の古典で、各種の新版も続き『2049年版』も公開(2017)された。
 後日、色んな情報が出てきた。屋台のオヤジが「2つ」と言っていたのはウドン玉でなくメシにのせるグロい深海魚のようなものだった。整腸薬「わかもと」は強壮剤扱い。主役のデッカードもまたレプリカント。その名称はこの映画の造語。R.ハウアーのラストシーンのセリフと白いハトは彼のアイデアだった……等々。
 こういう「後知恵」をつけてからこの映画を観直したらまた違う感慨を持つと思うけど、そこまでの思い入れはない。個人的には、この2年後くらいに公開された『未来世紀ブラジル』の方が好きだ。全体にユーモアというか英国流ナンセンス(監督は「モンティ・パイソン」のテリー・ギリアム)、デニーロの忍者?も怪演だった。これもエンディングに何通りかの版があるようだが、サンバ「ブラジルの水彩画」が流れる中で逃亡するハッピー版が好みだな。
 う~ん、映画の話になると止まらんね~(笑)

心の洗濯日「ジャブジャブ」

 心の情操部分に栄養が回らないと気分が暗くなる。美術館やコンサートに行ったり、痛快な本を読んだり見た目もステキな旨いものがその栄養になる……なんて気取った言い方したけど、要はたまには気分転換=「心の洗濯」が必要だという話。
 今日はその「ジャブジャブ」?ができた。メインは洗足学園音大(溝の口)の定期演奏会、それも邦楽だった。エスコートしてくれたのは篠笛のセミプロでもある老友イオさん。
 自由が丘で待ち合せてまずは腹ごしらえ。食べログのランチ評価が高い「大山生煎店」。名物の焼小籠包(生煎)と中華粥で980円。アツアツで旨い!
 洗足音大は初めてだが立派なホールがいくつもあって色々な演奏会が開催中。邦楽は、津軽三味線や箏、中国琵琶、尺八などの楽器を用いた多彩なプログラムだった。中でも認識を改めたのは「箏≒琴」だった。3名ずつ2組の奏者が、時に競うように、時に合力するような曲だったがその音色は深くてしかもカラフルだった。結構、体力が必要そうだ。
 ラストは全員での大合奏。「熊野古道」という曲だったが、親しみやすい展開でちょっとポップだった。それもそのはず。作曲したのは林哲司。たしか今、話題の80年代シティポップの代表曲『真夜中のドア』(松原みき)などを作曲した人だった(演奏会の配信動画は、同大のHPから視聴できる)。
 最近は80年代の洋楽ばっか聴いていたから、まったくテイストの違う邦楽はどんな風に聴けるかなと思ったけど、これも「あり」だなと思った。
 美術館は光悦展を見逃がしたけど、「キリコ展」など面白そうそうなのがあちこちで始まる。さぁ、また「ジャブジャブ」しに行かなくちゃ。どうですか?ご一緒に(笑)

好きだけど難解な曲5選

1,ボヘミアンラプソディ(QUEEN
 rhapsody(狂詩曲)なんだから色んな曲想が混在するのはわかるけど、「♪ママ~人を殺しちゃった」からの「ガリレオガリレオ……フィガロ」だぜ。それにイタリア劇の狂言回し「スカラムーシュ」とか「魔王ベルゼブブ」って何だよ。

2.青い影(procol harum)
 バッハみたいなオルガンとゲイリー・ブルッカーのしゃがれた声に引きこまれるが、のっけのダンス名からして意味不明になる。だが、miller(粉挽屋)の話をしたら彼女が突然血の気を失った(pale)になったという流れも???のまま。これは14世紀の『カンタベリー・テール』に出てくる寝取られ男の話なのだ。つまり彼女が浮気したことを自分が知った、だから彼女が青ざめたという話。

3.ホテルカリフォルニア(Eagles
 ダブルネックの綺麗なイントロで「ようこそ、このホテルへ」と歓迎しているのだが、なぜかワインは置いてないし「アリバイ作ってね」とか「人々がケモノを刺そうとしてる」とか不思議な描写。最後も「いつでもチェックアウトできますが、ここからは出られません」と……謎だ!

4.スカボローフェア(simon and garfunkel
 映画『卒業』の挿入歌。魔除けのハーブを唱えたり、反戦風メッセージがあったり、理解不能な恋人への伝言などが錯綜。バラッドなど古い詩形式を踏まえているらしい。この曲の話は前に「ローズマリー」のことで書いたので、少し省くね。

5.はいからはくち(はっぴいえんど
 岡林信康高田渡らのバックバンドをやりながら「日本語ロック」を追求していたが、『風街ロマン』(別名「ゆでめん」)アルバムで松本隆が覚醒した。「風をあつめて」の「♪摩天楼の衣擦れが~♪」もイイんだが、奇妙さにおいては「はいからはくち」を推したい。個人的には大滝の曲がやっぱりすごいと思うんだけど……

「♪2ペンスを鳩に♪」

 警備の仕事も「ラクじゃねぇ」と思うのは、今日みたいに冷たい雨の下で長時間立ち続ける時だ。でも、自分から見てもっと哀れなヤツが足元にいた。雨に打たれながらウロウロキョトキョトと砂をつつくドバトだ(写真は「京都旅屋」さん)。
 ハトやムクドリは工事現場の掘り起こした土が好きですぐ集まるが、何度も掘っては埋め戻してるガラだけの土には狙うような虫はいない。近所のスーパーの前の歩道や、公園のベンチの傍にも群がる。ここは近所のジジババたちがパン屑を撒くのでそれを当て込んでいる。ハトに混じって腕白そうなヒヨドリもいて、こいつは手に持っているサンドイッチさえ狙うからアブナイアブナイ。
 鳥や野良猫に餌をやって近隣に迷惑がかかる事案が全国で絶えない。餌やりを直接禁止する法律がないので、自治体が迷惑防止や環境美化などに関連した条例を定め、罰金を徴収するケースも出てきたが、ジジババたちの「動物がかわいそう」との思い込みはかたくなだ。ホントにやめて欲しい!
 古いミュージカル映画メリー・ポピンズ』の中で子供たちに寝物語として「鳩の餌を売るお婆さん」の話をする。その時の唄が「♪2ペンスを鳩に♪」(Feed The Birds (Tuppence A Bag))だ。英国が10進法になる71年より前の映画だから1シリング=12ペンスかな。「2ペンス」硬貨があって5円くらいかも。でも歌詞では「餌袋にTuppenceを」と唄う。非常に小さい額・量の意で「to care twopence(小さいことを気にする)。 for twopence なら「朝飯前の、最小限の励まし」の意になる。唄はこの意味だろう。小さな思いやりを可哀そうなハトに向けて、と言っている。だが、野鳥の専門家は給餌は不要だというし、平均10年は生きる。ワシとしては「♪feed the old guardman」と歌いたいけどな(笑)

「横(よこ)」はワルだった⁉

 のどがイガイガするので『じゃばら飴』を買った。「邪払」と書くがスダチ風の柑橘類。鬼も逃げるという酸っぱさで「邪気を払う」と古来から言われてきた。産地・北山村の話が面白いんだが省くね。なお、UHA味覚糖のは酸っぱくないよ。
 文字や言葉にアンテナが向いてしまう職業病で「邪」に注目した。訓で「よこしま」と読むがヘンな日本語。その語源を調べると「横様」が音韻変化したらしい。で、「横」であるのは縦方向の中心線からズレるので「正しくない=悪」と思われてきた(中国語「ヘン」でも「粗暴」の意がある)。
 言われてみれば、横行、横着、横柄、横暴、横領、専横、横死、横紙破り、横車を押す……ネガティブな言葉にたくさん使われている。調べてビックリだわい!(横綱とか無問題のものもあるけどね)。ついでに調べたけど、反対の「縦(たて)」が正義というのはなく「放縦」とか悪い意味もある。つまり昔の人は、横と縦を対概念で考えたのではなく。なんとなく垂直(上下)方向が基準というか「順である」と想っていたのだろう。重力、雨水の流れ、紙の漉き目、文章のタテ書き、はた織……世界観の一部なのだ。
 自分が今、準備している『ことだま百貨店』という本では、こういう話を蘊蓄で終わらせたくない。昔の人がなぜタテ方向を「順」と考えたのか、どうして横のつく悪字を増殖させたのか、まで踏み込んで面白く考えるものにしたいのです(笑)。色んなクリエイターさんに助けてもらわねば……

友を選ばば……歳寒三友

 仕事休んでまで世田谷へ観梅に来たというのに、寒さが逆戻りし雨まで降る展開に。これが週末なら甘酒か抹茶を頂くなんて楽しみもあったのだが、平日だから全部閉店。前夜は「てるてる坊主」の念力頼みまでしたというのに、力及ばずだった(LINEスタンプの「てるてるさん」)。  
 昔の中華文人は梅を好み、松(あるいは水仙)と竹と梅を「歳寒三友」という。寒い冬に心温めてくれる3つの友(植物)を詩や絵の題材にし。縁起良いものとされた。日本でも「松竹梅」は酒の名にさえなっている(さらにめでたく鶴をあしらった絵は田能村竹田)。そう考えると、こんな荒天で梅を愛でるのは、その有難みが余計に分かるってことか?
 旧三高寮歌の一節に「~♪友を選ばば書を読みて 六分の侠気 四分の熱♪」がある(与謝野鉄幹『人を恋うる歌』)。侠気というのは「義のあるところ火をも踏む」という漢(おとこ)の生きざま。明治男たちの汗臭く大時代がかったアツさは令和の今はムリ。でも冬の氷雨のような、あるいは貧病苦の厳しい局面においても変わらぬ厚情を示してくれるのは、本当の友人ということには変わらないと思う。それは人生の財産で、自分もまた誰かの財産になれるということでもあるね……う~ん、最悪の梅見散歩が、えらくマジメな人生勉強になっちゃた(笑)。まずは梅林に、そして付き合ッてくれたイオさんに感謝したい!(焼き鳥屋で乾杯した)

こどもだってタメ息、つくよな?

 夕方下番時、立哨現場のゲートを閉めていたら、小学3~4年くらいの男の子が自転車で目の前を通り過ぎ…と思ったら止まって、少し夕空を見上げる感じで「フウ」とタメ息をついた。驚いた!どうみてもフツーの子がタメ息……だよ。一体、彼に何があったんだ?なぜ?なんで「フウ」?
 でも帰り路、よく考えたらこどもにだってタメ息つきたくなる理由はたくさんある。いちいちあげないけど。とにかくある!だから驚くこともなかった。自分にも経験はあったわい。
 こどもは幼い、でもそれなりに完結した一人のヒトなんだもんね。こどもにも宇宙はあり、壮大かつリアルな生がある。なめたらイカンのです。
 そこで思い出した曲がある。BEGINの『おつかれさん』。歌詞意訳=(1番)とうちゃんは町内の人に会うたびに「おつかれさん」というのにボクにはいってくれない。(2番)ボクが真似してばあちゃんにいったけど、びっくりして笑ってほほをつねられた。(3番)子犬のシンバと散歩してたら大きなシェパードに吠えられた。全力で逃げて、シンバに「おつかれさん」。そしてグッとくる(4番)(寝入ったボクに向けたとうちゃんの言葉)お前はな、まだまだ疲れを知っちゃあかんよ。それよりな、たくさん楽しい事があるやろ。ぐっすり眠ればまた明日、元気が湧いてくる。たっぷり食べればもう一度、勇気が湧いてくる(中略)いつか旅立つのか、お前の未来に今夜『おつかれさん。おつかれさん……』
 やっぱこれを作った比嘉栄昇は天才だな。
(©NHKみんなのうた」,絵くずおかひろし)ちなみに「シンバ」は『ライオンキング』の主人公ね。(🄫劇団四季
 今日の「タメ息男子」はきっと近所の子だからまた見かけるだろう。どんな成長?するか見ていきたいな(笑)