ある研究員の blog

日頃感じていることや、楽しいこと、疑問に思っていること、技術的なものなどを綴っていきます。

生産性を上げるテクニックー結局

前回までのエントリーでは、いかに仕事を構築していくかを書いた。しかし、いざとなると書けないということも多々あるので、前回までの内容を、少しまとめてみる。

  • 何に白黒はっきりつけたいかという疑問を明確化する。

   →Aなのか、Bなのか議論は割とわかりやすく説得できる材料

   →それが本当に検証できるのか、検証すべき内容なのかを精査する。

  • その白黒つける内容の先に、より深い仮説があるかどうかを考える。

ということで、ここがはっきりすれば、イントロダクションを書く上では大丈夫なことが多い。

では、最近感じていることを改めて考えてみよう。最近思うこととしては、年齢を重ねるほど、自由な時間が無くなっていくということだ。いや、まじな話です、これは。時間がない中でもいかに研究を進めていくかというのが、最も重要なポイントだろう。自分自身この点については精査中だが、意識としてはタイムテーブルを決めるようにしている。自身の場合、朝7時半~9時は書く時間だ。タイムテーブルをしっかり作ることで、時間を決めて強制的に書くことになる。仮に書くネタがなくなってきたら、新しいアイディアをそこで考えて出して、それについても強制的にイントロダクションまでは書いてしまう。そうすることで、ネタは常に溜まるし、今後どのように自分自身の研究や、技術を進めていくかということの計画を立てやすくなるのだ。仮に自身の環境(例えば転職したり)が変わっても、以前考えていた論理構築を利用して、次の環境でも変わらず生産的に活動できる。

どのような疑問が良い疑問なのか?

先日のエントリーで、最初に研究における疑問点を明確に示す、ということを書いた。

では、どのような疑問が良い疑問と認識されるのだろうか?良い疑問の条件をここで考えてみよう。これはかなり感覚的な話になることをご容赦願いたい。

1.答えが本当に出るかどうか?

ここが最も重要なところのような気がしている。答えが出ない疑問点は考えても仕方がない。例えば、先日のプロセスA、プロセスBを例に出してみよう。

「プロセスAのフラックス、プロセスBのフラックスのどちらが大きいのか?」という疑問を考えたとする。余りにわかりにくいので、図に示してみた。

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この時、疑問を解決するためには、プロセスAとBのフラックスを求めなければならないことになる。しかし、これらのプロセスの反応は混じり合っていることが多々あり、通常だとハッキリと、xx mg/l/dayなどと計測できないこともあろう。つまり、現代科学においては、直接的に計測をすることが非常に難しく、解決できない疑問ということが多々あるのだ。(ただし将来的にはそれはできるようになるかもしれない)

そこで、このような場合には、どのような疑問を最初に考えるか、を再度論理構築する必要性に迫られる。その論理構築とは、解決できる疑問、白黒はっきりつく疑問を再度考えることである。例えば「生成物は、プロセスBよりプロセスAの方に強く影響される」という疑問であれば、どうか、、、等の検証を行うことになる。これであれば、数値的に大きい、小さい、という疑問ではなく、基質AとBの濃度を計測すれば解決できる疑問かもしれない。

2.その疑問に深いバックグラウンドがあること

深いバックグランドがあることは極めて重要な点だ。プロセスA,B議論の後ろに隠れていることが多い。つまり、上の例を再度持ち出すと、A,Bのどっちに強く影響を与えているかということがわかれば、これまで未知だったプロセス、あるいは謎とされた現象の一端を解明できるなどのことがあれば、それは極めて重要な知見として認識できる。つまり、イントロダクションではこのようなことをしっかりと意識しながら、文章を練っていくことによって、より重要な課題に対して解決する糸口を与える意識を持たせることが可能となるのだ。

どのような疑問を設定してそれを精査するか

前回はイントロダクションを書くときの心得らしきものを書いた。そこでは、どこに白黒はっきりつけるか、と言うことを書いたが、ではどのように疑問を設定するのかが問題となる。今回はその点について考えてみよう。
いろいろな本のなかには、「なぜその研究をやらなければならなかったのかを書くべきだ」と書いてあることが多いが、実はこの表現には誤解を生む可能性がある。何故なら、「それは人類にとって有益だから」という定義付けも可能になるからだ。実は経験が少ない場合、この点で躓きやすい。では何を書けばいいのか?
ひとつの答えは前のエントリーの中の例で考えれば、「Aというプロセスが現象の中で効いているという仮説がある。これは、比較的古くから考えられるプロセスで、◯◯et al.や、××et al.らが報告している。一方で近年ではBというプロセスも報告されてきているyy et al.。これらのプロセスは両方とも考えられるが、どちらが効くか理解しなければ、全体のプロセスが過小評価、過大評価される」などのin debateという考え方を書く必要があるのだ。
こうすることで、より議論の幅が広がり、うまくその重要性をアピールできる。

生産性をあげるテクニック#2

前回から随分時間がたってしまったが、生産性を上げるテクニック、その2である。ではどのようにしたら、早く、正確に論文を通せるようになるのか。

おすすめのひとつはどの分野においても、理系の分野、文系の一部の分野では、「どこに白黒はっきりつけるか」を最初に考えることだ。例えば、「AというプロセスとBというプロセス、どっちが強く影響を与えているのか?」という疑問点を考えたとしよう。両方とも考えうるプロセスで、あり得そうなプロセスだと仮定する。その疑問点に対する答えが、その研究において、わかったこと、になる。

論文で最も重要なのは「わかったこと」を明確化することなのだが、上にかいたことが最初から明確に示されていなければ、どこのポイントを明らかにするのか、なぜそれをやらなければいけないか、がわからなくなるのだ。つまり、イントロダクションというのは、何をわかろうとするのか、と言うことを明確に書くところだと言い換えられる。白黒はっきりつけられるポイントと重要性を表明するところなのだ。

生産性をあげるテクニックー研究手法の開拓#1

常日頃研究業務に携わっていて、あるいは論文を書くという作業を実際に行っていて、生産効率を上げるテクニックは無いのだろうかと常に考えて仕事をしている。それについて、せっかくなので、これから数回かけて今まで考えてきたことを公開していこうと思う(最後まで続くかどうかはわからない、、、し、読者の反応によるかもしれないので、やる気に依存しているので悪しからず)。

日本において、研究というものを行う場合、(特に筆者は自然科学を対象としているが)私が学生の頃からある意味では伝統的な手法を用いてきた。仮にこれをメソッド1と名付けよう:

メソッド1:

→データをとりあえず全ての項目について出す

→データをよく見る

→データをある軸で統計解析あるいは相関を取ってみる

→なんとなーくとある軸に沿った違いが見えてきた

→論文を書いてみる

このような手法を用いることが割と一般的であろうと思う。特に学生時代はデータを出さないと!!!と思ったり、データを出すのが楽しいために、データ重視になることが多い。また特に最後の論文を書いてみるという作業は学生を含め、博士を卒業して研究者になっても(そして実は英語を母国語にしている人たちにとっても)割と苦戦する部分であろう。しかしながらこのような手法でしか研究というものはできないものなのだろうか?・・・と考えたのが数年前の話である。で、数年間考え続け、得られた結論としては、生産性を上げるメソッドは無限大にある、ということだ。しかしながら研究のメソッドというものを考えずにいると、思わぬ苦戦を強いられることとなることも多い。

・・・とここまで書いておいていうのも何だが、近年、筆者の分野においても英文で、インパクトファクター(結構賛否両論なんだけど・・・)の高い雑誌以外は評価しない風潮があることに言及しておく。つまりここに書くことはそこそこインパクトファクターがある英文誌に論文を書くことを前提で書いている。ついでに言及しておくと、筆者は30歳くらいまでは上記の伝統的な手法で研究を進めた経験があり(当時はそれしか研究方法が無いものだと思っていた)、近年用いている手法に切り替えた経験がある研究者である。つまり、どちらも経験しているので、両方のメリットデメリットを割と知っていると言えよう。

(話を戻して)では、上記の手順で研究・実験をやっていく場合、どのようなデメリットがあるのだろうか?

  1. どのような結果が出てくるかわからないので、割とワクワクしながらデータを出せる
  2. 面白い結果が出たときはすごく面白いが、何もわからない可能性もある
  3. もしわかっても、それがとある軸に沿っているかわからない→相関の罠
  4. いつまでどのくらいデータを出せばいいのかわからない
  5. 論文を最後に書くときに、どのように書いたらいいか良く分からない

 筆者は近年この伝統的な手法を使用していないので、少しデメリットを強くかいてしまったかもしれないが、何となくデメリットが大きいことがわかるだろうと思う。一方で、上記1に関していえばそれがサイエンスだ、、、という部分も否定できないので、この手法を全て否定しているわけでもないという点について言及しておく。そして最後の5のポイントは研究者にとって最も重要なポイントだろうと思う。実験も一年間やり続けて、最後の最後で「論文書けません」となりかねない。つまり当たり外れが大きいということだ。

inkscape

幾つか備忘録。無料描画ソフト、inkscapeを使用する際のtipsを紹介します。

シンボル(ギリシャ文字を使用する場合: 楽なのは日本語で書いて変換する方法。times new roman体で使用可能。

 

Unicodeを使用する場合:

文字入力状態、左のバーの中の文字入力を選択して、描画画面上でクリック、そこに「ctrl U」を押してunicodeを入力する。Unicodeは、以下のリンクが便利

Unicode一覧表

 

特にen-dash系は結構面倒なので、覚えておくと便利。「−」なのか「-」なのか、とか。ちなみにmicrosoft wordでマイナスを出したいときは、「ctrl」を押しながら、テンキーのマイナスを押すと便利。