とってもハッピーで簡単な算数のおはなし
ある小さな町に、図書館で本を読むのが好きなかわいいキャシーと、そのキャシーを好きな司書のベンジーがいました。
ある日、キャシーが本棚を整理しているベンジーに言いました。
「ねぇ、ベンジー、算数の問題をだしていいかしら?」
ベンジーは手をとめて、
「突然どうしたんだい?…いいよ、こう見えても算数は得意なんだ。」
と答えました。
「それじゃあ、問題。」
キャシーは人差し指をたてて説明を始めました。
「トムは月に1回図書館に、月に3回本屋さんに通っていました。ある日、その町の図書館と本屋さんがひとつになりました。さて、トムは月に何回図書館に行くようになったでしょう?」
拍子抜けしたベンジーは、肩をすくめながら答えました。
「ずいぶん簡単な問題だなぁ。月に1回行ってた図書館と月に3回行ってた本屋さんがいっしょになったんなら、そこに行く回数は合計4回だろ。」
キャシーは出来の悪い生徒に手を焼く教師のように、ため息をつきながら言いました。
「いいえ違うわ、よく考えて。図書館と本屋さんがいっしょになったってことは、本屋さんに行ったときに図書館の用事も済ませられるってことよ。だから答えは3回。ある意味、トムはこれまでの3倍、図書館に行くようになったの。」
「あぁ、そっか、そうだよね。ちぇっ、あせってヘマしちゃったな。」
「じゃあ、もう一問ね。トムが図書館で本を借りる回数は増えたと思う?」
今度こそ間違えられないぞ、と思ったベンジーは、少し考えてから答えました。
「う〜ん、やっぱり増えたんじゃないかな。本屋さんに用事があって出かけたときも、図書館を一応チェックするだろうし、そこで思わず借りたくなる本を見つけて帰る、なんてことも起こるだろうしね。」
キャシーはうれしそうに笑いました。
「正解。そう、たぶんトムが毎月借りる本は、倍とはいかないまでも1.5倍くらいには増えて、前よりもっと本を読むようになったんじゃないかしら。ねぇ、これってとってもハッピーなことじゃない?」
「そうだね。なんにせよ、本をたくさん読んでもらえるってことは、図書館で働くものにとって何よりのハッピーだよ。それにしても…これっていったい何の問題なんだい?」
キャシーは、笑顔でこたえました。
「とっても簡単な算数のおはなしよ。」