Sa-iの日記

ねこのごきょうだい

お惣菜を買って帰る

くたびれて会社も早く切り上げて

どうにもご飯を作る気力が無いのでスーパーに寄って帰る。

どうにもこうにも面倒なので袋に入ったサラダ野菜と

お惣菜コーナーの揚げ物を盛大に買ってみる。

ボウナスでたし、このぐらいは良いのだと買って帰ってきた。

帰ってからダラダラしてたので、

さっきやっとこすっとこお風呂に入って、

今から(そう今はもう20時過ぎ)ご飯にするのだけれど

冷静に考えるとですね。もし今この時間に

このお惣菜をお惣菜コーナーで買えば、もしかして半額になってたりして

今日はトンカツなどを奮発して買ってみたのだけれど

この時間にご飯にすると、なんかもう実はこれって半額になってる感が否めなくて

早くご飯にすれば良かったと思うのだけれど

作るのが面倒くさいから買って帰ったわけだし

まぁいいんだ、そうなんだ、面倒だったからなんだ、

きっとここから愛なんだ

はじめることが愛なんだ

と思っちゃうところが

だめだめだめ

だめだよベイベー

少し悲しくなるBGM

町はずれに昔からある広いお屋敷に住んでいて

駄菓子屋に行った時もない、ドリンクバーも知らないような

いつも長いリボンなんかしちゃってるお嬢さまが

子供の頃から習っているお琴を専攻として音大に行くわけね。

その大学で知り合った口先だけのギター弾きと付き合ったのをきっかけに

ご両親と何か気まずくなっちゃって実家になかなか帰れなくなるのね。

まぁお父さんからはなんだかんだ良いマンション借りてもらってるし、

そもそもお母さんに仕送りももらってるんだけど。

彼氏が家からは金銭的に自立しなきゃホンモノじゃないとか言う主張に感化されて

自分で仕事を探してみるわけですよ。

頑張ってタクシーに乗って職安行ってみたり

学生課の前に貼ってある求人なんか見ちゃったりするけど、やっぱりしっくり来るものはないんだよね。

そんな中、夏休みの研究室で教授の本棚を片付けるお手伝いに来ていた怪しげな先輩の紹介で

琴の演奏するバイトをしてみない?とか誘われちゃうんですよ。

まぁ、あんまり通勤費とか出なくて時給も良くないんだけど、

自分でお金を稼ぐっていうのが目的になっちゃってるし、

先輩から頼まれたっていうのもあるから

週末に電車に乗って貧乏くさいビルにある会社のスタジオに行くのね。

もう暑いからレースのハンカチで汗を拭きながら。

そんなとっても綺麗な人が、子供の頃から鍛えてきた演奏の技術と

おばあちゃんの遺品の大切なお琴を駆使して

SMAPの「世界に一つだけの花」を

涼しげに奏でていると思うと

和食ファミレスでBGM聴いて

少し涙ぐんじゃうんだよね。

汽車にのりたい

汽車で少し遠いところに行きたい

実際は電車なのかもしれないけど

遠いところに行くのだから

汽車ってよびたい

一日で行って帰れるぐらいの

少し遠いところに

自動販売機切符を買って

キオスクジュース菓子パンを買って

窓の外を眺めて

なんとなく

音楽を聴きながら

向こうについたら

駅前商店街をぶらぶらして

少し美味しいものを食べて

お土産ジャムなんか買って

また切符を買って

もとの町まで帰ってきて

ごはんは外で食べて

風呂に入って

猫と話して

知らない町のことを思い出して

ぐっすり眠りたい

しんせつなひとのはなし

病気で休んでいるパートさんが、このままでは迷惑かけるから

できれば辞めさせて欲しいという連絡をくれた。

親切な人はとってもいい人なので、

そんな迷惑ではないですよ、

みんな待ってるから病気治して復帰してくださいね

と伝えていた。

休んでる間、いろいろ会社の提出書類があったので

いつまでに持ってきてくださいね、お手隙の時でいいですよと連絡したり

誰々さんが退職するから送別会をやるんですけど来ませんか?などと誘ったりしていた。

そのうち、病気の内容を伝えてやはり辞めさせて欲しいと電話があった。

親切な人はとってもいい人なのでホントそんな気にしないで欲しいと言っていた。

隣で自分がその病名を聞いたら、それは治るかわからない病気だった。

ただ親切な人はその病気の内容を理解していなかったし治るものだと思っているようだった。

自分の担当では無いので、越権行為だったけれど、

何も聞かずに辞めさせてあげなさいよと伝えた。

どのくらい時間を使えるかわからないのに、

それをパート仕事への気遣いに浪費させることはないし

そんな病気の内容を他人に言うのなんかとても嫌だったろうし。

親切な人はとっても親切なので全く悪気なんてないので

親切なだけなんだけどね。

普通に治るかもしれないことなので、余計なことをしたのかなとは思うんだけど

それはそれで治ってきてから話せば良いよね。

 

 

 

じぶんのもの

船の実習に行くときには、なるべく荷物を減らすのが必須だった。

持っていくのが大変というのもあるが、そもそも6人部屋で

自分に与えられるスペースはベット、ロッカー、引き出しがそれぞれ一つだけ。

制服や革靴、安全靴や防寒具、日々の着替えだけで結構な荷物。

ほかに風呂や洗面用具、洗剤とか日常生活に必要な物を持っていく。

なるべく小さくするのがコツ。

その当時、新発売になった洗剤アタックの小さいやつとか液体歯磨きには随分とお世話になった。

そのほかに自分の娯楽用具。

酒、つまみ、タバコ、お菓子、コーヒや紅茶、ココアなど。

お店に行くことなどできるわけが無いのである。

カルピスが小さい紙パックで発売されたのはとても便利だった。

そういう限られた生活と荷物の制限がある中で

何を持っていくかの選択はとても重大であった。

そのうちに慣れてくると、皆が持っている物は皆が持っている味気ない物に感じられてくる。

何か特別感が欲しくなる。

持っていって良かったのは、マグカップ

船の上では一人に一つ、プラスチックのコップが貸与されて歯磨き、朝飯の牛乳、夜の酒まで

それで済ますことができるのだが、みんな同じコップなのである。

そんな中、自分用の陶器のカップがあるのはとても良かった。

みんなが持っているものは、みんなが持てるものなのだよ

って思う様になったのはそう言うことがあったから。

 

裁判所で必要な仕事に

あの「勝訴」「敗訴」を書く屋さんになりたい

裁判所の入り口近くにある売店の隅っこに間借りして

制服は作務衣、カウンターに座ってお客さんを待つ。

日に何回か判決が出た人が走ってきて

「すいません、勝訴一枚お願いします」とか言うんだけど

入り口にある券売機をおごそかに指差して

あそこでチケット買って貰ってよいですか?とか返事するわけだ。

んで「あ、両替してもらえます?」とか言われたりして。

勝訴か敗訴のチケット持ってきたら、半券ちぎってお茶だして

キッチンに入ったら小さく、「えいやっ」とか言っちゃって

筆でサラサラと記すわけ。

んで、ちょっとだけ書いた出来を眺めたあと、うなずいて

お客さんに渡して半券も回収する。

サイズは大中小の3種類でよいかな。

たまにお釣りボタン押し忘れたお客がいたらラッキー。

今後はやっぱりネット予約にも対応しないとかなあ。

ポケモンカードとかつけたいし。

がんばろう。

僕らの寮に住んでいた猫のはなし



その灰色の猫は夏ごろから僕らの寮に住んでいた。

エアコンもない居室のドアは、いつも開けっ放しだし、24時間誰かが起きていて誰かが起きていたから

気が向いた部屋に入っては、ベッドで寝たり、餌を貰ったり、酔っ払いに絡まれたりしていた。

ぼくの周囲の友達からはタロウちゃんと呼ばれていたが、いろんな部屋に出入りしていたので沢山の名前を持っていたようだ。

タロウちゃんは、弁当が入ったコンビニ袋を開ける音を聞きつけると

コンクリートの廊下をカチャカチャと爪を鳴らしながら走ってきて、分け前をねだってきた。

授業をさぼって寝ていると、ベッドに入ってくるのだが多分ノミを背負っていたから、その後で体が痒くなったりした。

その秋にタロウちゃんは友達の先輩のベッドで子供を3匹産み落とし、僕らは彼が実は彼女だったことを知った。

冬になる頃、子供はいつの間にか1匹になっていたが、僕らもタロウちゃんも特に気にせず

いつもの様に暮らしていた。

冬休みが終わって2日目の朝、その街はいきなり何も無くなってしまった。

みんなで周りの家を掘りに行って、何人かを助けたり、助けられなかった人を中学校まで運んだりした。

くたびれて部屋に帰って寝た次の朝、廊下にタロウちゃんは1人でポツンといた。

いつも連れていた子供はいなかった。

僕はタロウちゃんに声をかけたけど、タロウちゃんは怒ったように向こうに走って行ってしまった。

僕はその次の日に実家に避難し寮に戻ってきたのはしばらく経ったあとで

タロウちゃんを見たのはそれが最後だった。

あれから25年もたったとはあんまり思えない。

記憶が薄れるとかそんなのは嘘だ。

 

 

《追記》

たくさんのコメントありがとうございます。

当時の記録などあわせて読んで頂けると幸いです。

https://www.jstage.jst.go.jp/article/jime/47/2/47_148/_pdf/-char/jaf:id:Sa-i:20200119111020j:image