適当に描写した。




強く、強く、強く。

キャスターとして呼ばれた私に遺された道はただ一つ、聖杯を乗っ取る事。




B「行くのか?」

少年は頷いた。

彼は教会へと足を進めて行く。

A(だって俺は間違い無く一般人だ。だからこそ言わなければならない。平和の中で平和を捨てた人でなし共に。)

A(そして何よりも、何よりも、こんな中身の無い戦いが、平和を害する事はあってはならない!)

扉の前まで来てこの少年は強い意志を持って、

A(なぜこの戦いは、この、この)

A聖杯戦争をやめろー!」

扉を大きく開け、ただ真っ直ぐにあの白髪で目細の紳士へと向かって行った。

その時、彼は背後から近づく一つの影を完全に見失っていた。

フワッ

彼の体は大きく宙を舞い、そしてそのまま頭蓋を後ろ向きに、

ゴチャッ

地面へと叩き付けられた。




ランサーは告げる。

「大方、このイベントってのは釣りだろ?分かる。いや、正確には分からない以外に無い。」

「結局よ、願いってのは人を超越するもんだ。どう足掻いても、これは必要悪にしかなり得ない。人のバイタルが刻む頂点級の現象。これが願望だ。」

「だからよ、お前は逃げろ。いつまでもこんなのに付き合ってると、それこそ善への扉の開け方まで失う羽目になる。」

そう言って、彼は槍を持って敵に突撃した。私はもう駄目だと思った。この想いを続けられない。この想いがまだ私の中で私を縛っているのを知ってしまった。もう私は、何も考えられない。

彼女は彼と真逆の方向へと駆け出した。それを持って最初の対称性は成される。並進対称性、それは聖杯の、願いにおける‘突き抜ける’という性質、即ち機械としての性質である。



だが、その認識は大きく誤っていた。背後の剣は15もある。数が問題なのでは無い。奇数である事が問題なのだ。セットではなく片方だけが欠けた形、攻撃力を下げるのを厭わず前提の一つを崩すのみの攻撃、それがこの土壇場で何を意味するか。

ドスッガスッバシ

三つ。恐らくも何も完全に意識が上手く回っていない状況で己を信じる事タイプのこの男は、一瞬の判断時に間違い無く前提を削いでくると確信していたが、、これは想定外の収穫。一つ目が深く入り内臓まで到達するかという状況。

(これなら

「貴様に最期の花束を渡してやろう。」

「!」

「結局最後まで見せる事は無かった。我が秘術の中の秘術!」

一泊置き、

私はキャスターとして呼ばれたのだよ。」

「なに?」


その、大英雄の自信をも砕く言に、双方は違う事を想像した。

(こいつは間違い無く聖杯を使い全てを無駄にしやがる

(お前は、この次の機会で私に串刺しにされるだろう。)

次の瞬間、彼は大きく息を吸い込んだ。


「ーーーーーーーーーー!」


世界が明転した。


「こいつは何だ?」

「これはね、私の願いの果てだよ。君は先程あの魔術師に逃げろと言い、ここへ突撃した。」

「あ?何が言いたい。」

「私はね、君と同じなんだ。進む以外に能がなく、進む先は戦い地獄の中だ。


そして、同時にあの魔術師と逆だ。」

つまり、曲がって走れねえって事か。」

「そうだ。そして君なら私の事を理解してくれると信じていた。

なあ、私と手を組まないか?最速の英雄と言われる君の事だ。私よりもさぞや激しい道を辿って来た事だろう。」

傭兵は例えを用いそう言って、手を差し伸ばした。

「傭兵

ねえ。ここはどうも俺の時代と違い過ぎる。だからか分からんがお前からは雇われの意味がそもそも違ってくるような感じがする。」

それはどういう事だ?」

傭兵は転送後の世界で保っていた肩の力を抜いた。彼と言葉で、心で応じる構えだ。

「俺の時代じゃあ、誰かの為になるってのは、俺の決めた俺の中の誰かに従うって意味だった。そう、契約っていう奴か?あれは自由の中にあったんだ。だが今は違う。お前は自由の無い世界で、機械のようにただ反復運動をしていただけど。確かに、そいつは相当キツい。そしてそうなら、心は弱まって行くだけだ。だからテメエが根を上げた所で、俺は変わんねえ。」

「!」

傭兵は瞬時に体に力を入れ-

「いいや違う、お前のこの言はただの飾りだ。


お前は、ただの偽善者だ。」


そうか、そうなら嬉しい、筈だ。だが実際は嬉しく無い。」

「応、そうか。」

「全くここに来て勘違いか。ヤキが回ったみたいだな。」

そう言うと赤い外套の大人は己の思想を‘世界に対して’念じた。


そこに、有り得ない光景が広がって行く。

無数の剣が、槍が、矛が、

無数の人を救った宝具が人を殺すように展開される。

「おいおい、冗談だろ?何でテメエみたいなどうでもいい一般人が」

「それを言うなら逸」

「ああ、良い。そんな言葉遊びは気に食わねえ。」

「凄いな。意識まで早いのか。

成る程、この状況でもまだ私では勝ち目が薄いという事か。」

「そうだ。テメエにはまだ必殺技を見せて無かった。」

「?」

「あるだろ。宝具には、真名ってのが。」

「ふっ、そこでは無い。全く、どうやら竜頭蛇尾のような奴だな。お前は。

心情の把握についてだよ。」

「ふっ、そうさな。ここまで心情なんざ碌に読んだ事も無かった。

だが何か、問題があるのか?この世は解決する事がねえ。そうだろ?ここまでの流れなら、この言葉はお前から聞く筈だったんだが。」

「確かにな。」


覚悟を決めた男は、全てに集中する。

(敵はアイルランドの大英雄、その耐久と神性を持って、どれほどの宝具が地のまま通るだろうか。否、それは無い。更に速さの問題もある。故に全てを、この結界ごとを、ぶつける!)

今までの知識の重点のみを瞬時に確かめ、結論を導く。

だがそこには真っ当な間も存在した。だがだが槍兵は動かなかった。

「はあああああああ!」


全ての魔力が形を変え武器に物理的な指示を与える手足と化す。

瞬間、そこに浮く全ての宝具は、魔力の減衰の為に縮小を余儀無くされた心象の泡のその速度を合わせ超加速された状態で槍兵を包み込-

その槍は大地に真の感謝を捧げる者の額が如く、運命に寄り添う動作で下がり、運命を嘲笑うかの如く上昇を見せた-


そこで世界は暗転した。


勝者は赤い外套を羽織る弓兵だった。

宝具の真名解放まで行った大英雄との対決をも制する程、彼の宝具()は恐ろしい能力を秘めていた。が、これは偶然でもあった。萎みつつある泡から、突っ込んでくる彼に対し動かなかったこの男はその中心から遠かった為あの槍が届く前外に出てしまった。そんなフレーム級での差が偶然により引き起こった。(確かに、歴史を見ても偶然が必然を凌駕することはある。)その後、魔力が発散するまでの間、魔術は当然続く。故に槍兵が対して受けた恐ろしい現象は、とある拷問器具の部品の一つ一つが宝具やそれと同等の効果を発揮する物で構成されるようだと言っても過言では無いのだろう。


何はともあれ、傭兵は勝った。

キャスタークラスからアーチャークラスへと転向した事ももしかしたら要因であったかもしれない。

そんな必然と偶然の狭間にある心で、

そうか。私は選ばれているのか。」

彼は一つの行動を取った。


赤い傭兵は聖杯の下に来た。触れ込みでは願望を叶えるだけだという装置、裏が無いはずも無いと彼の経験は感じていた。だが、目の前にあるそこからは純粋な力しか感じることは無かった。

(どんな英霊ですらこれには比べる事もできまい。

余りに、圧倒的だ。神霊の平均はある




「それと、今後、聖杯には一定の形に沿った出力のみに制限いたしましょう。邪な願いは貴方方も望むところでは無いでしょう?」

何も枷を持たずして、この聖杯が全て上手く行くとは限りません。)


ここまでこの始まりの聖杯は全ての聖杯の中で最も“強かった”。否、他の聖杯に対して“弱い”点を持たなかった。つまり、ここから先こそが何よりも邪悪な戦いである。




一人になった少年は告げる。

「我が名を以って、ここに平成の印を成す。」


世界に、一つの形が遺された。