ストーリー
長編デビュー作「ヘレディタリー 継承」が高い評価を集めたアリ・アスター監督の第2作。不慮の事故により家族を失ったダニーは、大学で民俗学を研究する恋人や友人たち5人でスウェーデンを訪れた。彼らの目的は奥地の村で開催される「90年に一度の祝祭」への参加だった。太陽が沈むことがないその村は、美しい花々が咲き誇り、やさしい住人たちが陽気に歌い踊る、楽園としか形容できない幸福な場のように思えた。しかし、そんな幸せな雰囲気に満ちた村に不穏な空気が漂い始め、妄想やトラウマ、不安、そして恐怖により、ダニーの心は次第にかき乱されていく。ダニー役を「ファイティング・ファミリー」のフローレンス・ピューが演じるほか、「トランスフォーマー ロストエイジ」のジャック・レイナー、「パターソン」のウィリアム・ジャクソン・ハーパー、「レヴェナント 蘇えりし者」のウィル・ポールターらが顔をそろえる。
2019年製作/147分/R15+/アメリカ
原題:Midsommar
配給:ファントム・フィルム
劇場公開日:2020年2月21日
引用元:https://eiga.com/movie/91493/
登場人物・キャスト
登場人物のうち、ホルガの住人たちは主にスウェーデン人俳優が演じており、そのうちの何人かにはスウェーデン語を話す場面がある。また、ダニーの家族などの脇役数名はハンガリー人が演じている。
- ダニー・アーダー
- 演 - フローレンス・ピュー、日本語吹替 - 井上麻里奈[17]
- アメリカの大学で心理学を学ぶ女子学生。パニック障害を抱えており、自分自身の不安や焦燥感を共有してくれる友人が少ないことに苦悩する。
- クリスチャン・ヒューズ
- 演 - ジャック・レイナー、日本語吹替 - 前野智昭[17]
- ダニーと同じ大学に通う大学生。院試を控えているが、論文作成の題材が決まっていない。ダニーが家族を亡くす半年以上前から彼女と別れたがっていたが、切り出せずにいる。
- ジョシュ
- 演 - ウィリアム・ジャクソン・ハーパー(英語版)、日本語吹替 - 濱野大輝[17]
- ダニーと同じ大学に通うクリスチャンの友人。今回のスウェーデン旅行のほか、文化人類学でドイツや英国を巡る予定。
- マーク
- 演 - ウィル・ポールター、日本語吹替 - 沢城千春[17]
- ダニーと同じ大学に通うクリスチャンの友人。学問的な事よりセックスとドラッグの事にしか頭になく、仲間の中でも特に軽薄な行動が多い。
- ペレ
- 演 - ヴィルヘルム・ブロムグレン(スウェーデン語版)、日本語吹替 - 落合福嗣[17]
- ダニーたちの大学に留学しているホルガ出身の青年。仲間たちをホルガの夏至祭に誘う。
- サイモン
- 演 - アーチー・マデクウィ[18]、日本語吹替 - 三瓶雄樹[17]
- イギリスの農園で知り合ったイングマールの招待をうけホルガを訪れる青年。コニーと婚約している。
- コニー
- 演 - エローラ・トルキア[19]、日本語吹替 - 丸山ナオミ[17]
- サイモンの婚約者。イギリスの農園で知り合ったイングマールの招待をうけホルガを訪れる。
- ダン
- 演 - ビョルン・アンドレセン
- ホルガの村人の老齢男性。夏至祭の初日にアッテストゥパンの儀式に登場する。
- エバート
- 演 - マキシミリアン・スラッシュ・マートン
- ホルガの村人の若い男性。夏至祭の初日にアッテストゥパンの儀式に登場する。
引用元:https://ja.wikipedia.org/wiki/ミッドサマー_(映画)
感想
率直な感想は「気持ち悪い……」です(褒めています)。
いや~、こんな生理的な嫌悪感を感じる映画はそうないかもしれません(本当に褒めています( *´艸`))。
何なんでしょうね、この不思議な感覚は……。
何から、何まで少し気持ち悪いの積み重ねで、最後は狂気で畳みかけて来る。
カルト的な恐怖がよく表現されています。
アメリカの大学に通うダニー・アーダーはパニック障害(統合失調症のようにも見える……(・△・?)を患っており、追い打ちをかけるようについ最近、家族を亡くし精神的に追いつめられていたのです。
そんな彼女の支えはクリスチャン・ヒューズという民俗学を研究する同じ大学に通う彼氏でした。
クリスチャンとダニーは付き合いだして約3年ほどになるらしいのですが、2人の仲はすでに崩壊寸前だったのです。
その原因は、ダニーの依存体質によるものだと仄めかされています。
「彼女が精神的に追いつめられていたら、それを支えるのが恋人だろう!」と言いたいですが、現実はラブストーリーのようにスイートではないんでしょうね(^▽^;)
例えば、物語に登場するヤンデレ・メンヘラ・ツンデレなどは可愛いと思うのに、現実ではそのような人と付き合うのは相当の覚悟を必要とするでしょう……(^▽^;)
だから、クリスチャンはダニーの重さに愛想を尽かしてしまったのです。
でも、バニラは一途な愛の物語が好きなので、クリスチャンは薄情な彼氏だと思いますが……責めることもできませんね。
そんな、精神的に追いつめられたダニーとクリスチャンをはじめとする、大学の仲間たちは、ペレという友達から自身の故郷であるスウェーデンの山奥にあるホルガ村に誘われることになるのです。
ホルガ村では90年に一度の祝祭が迫っていました。
クリスチャンたちは論文を書くという理由で、祝祭を見に行くことにします。
ホルガ村は牧歌的な雰囲気が拡がり、太陽が一日中沈まない白夜の時期で、まるで天国あるいはヒエロニュモスの『快楽の園』の絵のような少し不気味なコミューンでした。
美し過ぎるゆえに、恐ろしいという感覚はわかるでしょうか?
ホルガ村は美しいところなのですが、その美しさが不気味さを引き立てているのです。
本作はホラージャンルとされていますが、あからさまなホラー要素があるわけではないんですね。
画面も明るく、エログロ要素はあるのですが、それも印象的な場面で一二度描写されるだけで、あとは今いったような、人間の疑心から来る不気味さの積み重ねで、生理的な恐怖を煽ってくるのです。
以前観た『LAMB ラム』という映画にとても似ていると思いました。
『LAMB』もあからさまなホラー要素はないのですが、なぜか不安を煽られる映画なんですよね(^▽^;)
本作『ミッドサマー』でも、コミューンの人々の行動がとにかく不気味に感じられるのです。
ホルガ村にはホルガ村の文化風習があり、部外者が「ああだ、こうだ」口を挟むべきではない気もしますが、文化の違う人々が見たら、完全にカルトです。
特に日本人は宗教に対してアレルギーをもっている人が多いとされていますよね。
ちなみにバニラも、宗教=怖いという印象を持っています(^▽^;)
宗教自体が怖いものではないのでしょうが、歴史やニュースなどをみていると、宗教に対してあまり良い印象は持てません(>_<)
本作『ミッドサマー』はそんな、宗教の怖いところがいい意味で「これでもか」と描かれていました。
ホルガ村の人々は自分たちの文化・風習になんの疑問も持たずに盲信的に突き進む。
これは、宗教だけに言えることではありませんよね。
集団の恐怖とでもいうか、国などが一つの思想のもとに、国民を洗脳して誘導する。
いってしまえば、人間はその環境の常識に沿って行動しているのです。
この心理をうまく描いた話に『片目の猿』というたとえ話があります。
ある山に暮らす猿には片目しかありませんでした。
しかしあるとき、両目のある猿が生まれたのです。
片目の猿たちは両目のある猿を馬鹿にしました。
それに耐えられなくなった両目の猿は、片目の猿たちの山から離れ違う山に行きます。
そして両目の猿がたどり着いた山にいた猿たちには、両目があったのです。
この話の出典は『今昔物語』にあるようで、原話の方では目ではなく鼻がある猿とない猿の話なのだそうです。
それがいつから『片目の猿 両目の猿』になったのかはわかりませんが、この話は価値観の相対性がよく表れていると思うんですよ。
片目の猿たちの山では片目であることが当たり前で、両目の猿は異端者でしたが、場所が変われば当たり前になる。
本作で描かれるホルガ村はまさに、片目の猿の山であり、両目の猿たちが片目の猿たちの山を訪れ、「ミイラ取りがミイラになる」という物語なんですね(^▽^;)
予告
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