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麻雀を始めてから雀魂雀聖になるまでに特に役に立った書籍10選

この記事では、麻雀初心者だった自分が雀魂雀聖(中~上級者程度)になるまでに読んだ麻雀関連の書籍の中で、特にためになったと思うものを10冊紹介する。麻雀初心者・中級者には特に読んでほしい。

なお、この記事では、基本ルールを把握して一通り打てるようになった雀魂の雀士・雀傑程度のプレイヤーを「初心者」と、基礎を習得して応用に取り掛かりつつある雀魂の雀傑・雀豪程度のプレイヤーを「中級者」と呼ぶことにする。

紹介する書籍は全てKindle電子書籍化されている上に、大半はKindle Unlimitedにより定額購読できる。読者の利便性のためAmazonリンクを貼っているが、自分個人の収益目的のリンクは一切無い。

 

ちなみに、自分が天鳳初段・雀魂雀傑になるまでにやったことについては以下の過去記事を参照。雀聖到達時の戦績はこちら

 

 

何切るドリル系

麻雀 定石「何切る」301選

G・ウザク (2018) 『麻雀 定石「何切る」301選 三才ブックス

有名なウザク赤本。いわゆる「何切る本」であり、手牌とツモ牌を見て、切る牌を選ぶ一問一答形式の書籍。多分7周くらいした。

この記事の中で一番強く推奨する書籍であり、これ1冊で学べる内容が著しく多い。まずコンセプトの時点で素晴らしく、プレイヤー間で意見が分かれる問題ではなく、ある程度難しいが上級者の解答は一致する問題だけを取り揃えている。そのようなクオリティの高い問題が301問も載っているのだ。ここで、無料のKindleサンプルで読める範囲から1問取り上げてみよう。


△Q1。p.7より引用

初心者は9s切りと答える人が多い気がする(自分も最初は9sだと思った)が、正解は下の画像にある通りである。この問題は、リャンカンという形を知っているだけでは不十分で、利点を把握した上で意識的にリャンカンを作れて初めて解ける。さらに次の問題では、よく似た牌姿で別の選択をする局面を取り上げている。類似状況と比較して、理解を深める工夫がなされているというわけだ。


△Q1の解答。p.8より引用

前述の問題のように初心者には少し難しいものが多いが、初心者でも基本的な形を把握したら是非この書籍にトライしてほしい。もし解答に納得できない問題があれば、ほぼ間違いなく初心者特有のズレた感覚によるものである。たとえば自分は字牌対子を切ればメンタンピンが見える手牌でも字牌を切らない悪癖があり、字牌対子を崩す解答に納得できなかった。しかし、受け入れ枚数や打点期待値の比較を通じて修正できた。

あえて欠点を挙げるとすれば雑談の類がほぼ全てのページにあることだろうか。この手の寄り道が好きな人もいるのだろうが、自分は雑談の代わりに1問でも多く問題を載せてほしかったと感じる方だ。

 

麻雀 傑作「何切る」300選

G・ウザク (2016) 『麻雀 傑作「何切る」300選』 三才ブックス

有名なウザク青本。前述のウザク赤本と同形式の何切る本である。出版はウザク青本の方が先だが、難しすぎたためウザク赤本を出版するに至ったらしい。

難易度が非常に高く、定石をほぼ習得した人が例外的なマニアックな牌姿を勉強するのに使える。雀聖でも多分必要ないレベルの本なのだが、やはりクオリティが高い問題ばかりで大変参考になる。ウザク赤本を安定して解けるようになってきたら挑戦していいだろう。

一応、こちらの書籍もウザク赤本と同じく上級者の解答が一致する問題だけを取り揃えているらしいが、正直少し疑わしい問題もある。やはりウザク赤本と比べると優先度は低いと言わざるを得ない。

余談だが、現在はウザク式何切るアプリがリリースされている。なぜか月額課金制という不可解な仕様だが、ウザク赤本と青本の中間くらいの体感難易度の新規問題が300問弱入っている。興味があればとりあえず1ヶ月使ってみよう。

 

基本形・牌効率系

ウザク式麻雀学習 牌効率

G・ウザク (2019) 『ウザク式麻雀学習 牌効率』 三才ブックス

有名なウザク緑本。何切る問題で例示しつう、牌効率が良い(受け入れ損が少ない)基本形について解説している。

リャンカンから多面待ちに至るまで、基本形や牌効率に関するあらゆるテーマを網羅している。ウザク赤本との相性が良く、この書籍で扱う知識の多くはウザク赤本での何切る演習を通して再確認できる。自分はウザク赤本を先に読んだが、先にこの書籍で基本形や牌効率の解説を読む方が良いかもしれない。

難点は若干間延びした構成である点。so whatが不明瞭な受け入れ枚数一覧など少々余分な情報がある。また、おまけのマンガに目くじらを立てるのも無粋かもしれないが、封筒のパラドックスについて誤解そのままの説明をするだけで終わっている点も気になる。*1

ちなみに、同種の書籍にこれだけで勝てる! 麻雀の基本形80がある。こちらの書籍も基本形をしっかり押さえており、何切る問題のクオリティも概ね高い。しかし文体がキツく、端的に言って気持ち悪いので覚悟がある人にしか勧められない。

 

ガリ率5%アップ何切る (近代麻雀戦術シリーズ)

小林剛・竹内隆之(2020)『アガリ率5%アップ何切る (近代麻雀戦術シリーズ)』 竹書房

多面待ちに特化した書籍。前半は何切る問題であり、後半に多面待ちの解説がある。

多面待ちは麻雀という運ゲーにおいて実力差と得失差が明確に出る貴重な箇所であり、学んで損はない。玉の間以下の雀魂卓では待ちが表示されるとはいえ、テンパイ一歩手前の段階から多面待ちを目指す場面や、鳴きが関わる場面では自分で多面待ち形を把握している必要がある。この書籍のタイトルは胡散臭いものの内容は真面目で、多面待ちに限って言えば、確実に5%以上は和了率を上げてくれる有用知識が揃っている。特に書中の「順子をくっつけて待ちが増えるメカニズム」は必見。自分が見てきた多面待ち法則の中で最も汎用性が高く、多面待ちだけでなくノベタンや亜両面すらもこの法則で説明できる。なお、タイトルに「何切る」とあるのに「基本形・牌効率系」カテゴリに入っている理由は、前半の何切るは多面待ち確認用の恣意的な牌姿を用いていて、後半の解説の方がメインだと思ったからだ。

難点と言うほどではないが、多面待ちはそもそも難しいのでこの書籍だけで身につけるのは難しい。多面待ち問題集のバビィのメンチン何切るや、多面待ちを学ぶモチベから高めてくれるこちらのnoteで補完しよう。Android使用者ならアプリの麻雀待ち牌トレーニングもオススメ。

 

データ分析系

統計学」のマージャン戦術 

みーにん(2017) 『「統計学」のマージャン戦術 』 竹書房

みーにん本。天鳳の牌譜データを集計し、戦術に落とし込んだ書籍。

データを根拠とする現代麻雀の基本戦術を網羅しており、必ず一度は目を通したい。みーにん本無しに立直や押し引きの判断は語れないと言っても過言ではない。詳説されていないデータ表も有用なものばかりで、自分は通読した後も何度も参照している。また、ごく少量だが練習問題もついている。

どうでもいい点だが、統計学らしい考察が無いのにタイトルに「統計学」とあるのは少々気になる。もしドンジャラが本格競技麻雀と喧伝されていたら違和感を覚えるだろうが、その感覚に近い。

ちなみに、データ分析から戦術を導いた別の書籍に新 科学する麻雀がある。こちらは天鳳牌譜データから導出した状態遷移確率をトレースしたシミュレータを用いており、サンプルサイズを確保できない際どい場面の押し引きに結論を出している。しかし、そのような結論の信憑性には疑問が残る(データが足りない箇所の妥当性は直接検証できない)ため、データを直接観察しているみーにん本の方が重要度は上だ。

 

知るだけで強くなる麻雀の2択

みーにん・梶本琢程(2019) 『知るだけで強くなる麻雀の2択』 竹書房

七対子の待ち選択における生牌字牌or1枚切れ字牌など、2択の期待値比較にフォーカスした書籍。

考える対象が2択に絞られているのでとにかく読みやすく、初心者は前述のみーにん本より読みやすいかもしれない。取り上げられている2択は実戦でよく見るものばかりで、要所で細かい参考データが載っている点もお気に入り。ちなみに、解析されたデータはみーにん本より本書の方が少し新しい。

欠点は分量がやや少ない点。紙幅を贅沢に使っており、取り上げている2択問題は65問しかない。Kindle Unlimitedに入っているのがせめてもの救いだ。

 

オムニバス戦術系

純黒ピン東メンバーが教える フリー麻雀で食う超実践打法

雀ゴロK(2015) 『純黒ピン東メンバーが教える フリー麻雀で食う超実践打法』 彩図社

雀荘メンバーが黒字を維持するための技術をまとめた書籍。

誤解を防ぐためにまず言っておくと、自分は麻雀でビタ一文たりとも賭けたことがないし、賭けるつもりも一切無い。それでもこの書籍を取り上げるのは、内容が極めて実用的で、初心者・中級者の観戦時によく見るミスの多くを見事にカバーしているからだ。書籍のタイトルを「中級者に共通する麻雀のミス」等にしても十分通用するだろう。特に書中にある「安牌を抱えるより受け入れ重視」は大事な基本戦術で、しかも徹底できていない初心者・中級者をよく見るが、この点を改めて強調した書籍は少ないように思える。書中で推奨されている戦術に数値的な裏付けは無いものの、データ分析系の書籍と整合した内容なので大きな問題は無さそうだ。*2

注意点は雀荘特有のルールの扱い。雀荘では面前や赤ドラ含みで和了ると祝儀が発生することが多く、それ前提の記述がある。打牌や判断が変わるほどではないが留意しておこう。

 

超実践 麻雀「何切る」「何鳴く」ドリル

雀ゴロK(2019)『超実践 麻雀「何切る」「何鳴く」ドリル』 彩図社

雀荘メンバーに対する指導内容を問題形式でまとめた書籍。

シンプルな何切る問題から始まり、立直判断や鳴き判断、押し引きまで手広く扱っている。問題形式の書籍でありながら、ここまで色々なテーマを扱っているのは珍しい。ただし、雀荘メンバーへの指導がベースとなっているだけあり難易度はやや高め。他の書籍で学習をある程度積んでから読むことを勧める。

難点は受け入れ枚数や期待値等の数値を示していないこと。前述のフリー麻雀本と異なり際どい場面を多く扱っているため、細かい所の説明がもう少し欲しいと感じた。

 

その他テーマ別書籍

麻雀・点数状況によって変わる強者の選択

平澤元気(2023) 『麻雀・点数状況によって変わる強者の選択』 マイナビ出版

点数状況判断と、それに伴う各戦術を扱った書籍。

オーラスやラス前の独特な立ち回りは一度学習しておくに越したことはない。点数状況判断は成績への影響の大きさの割になぜか注目度が低く、まとめて学べる書籍は貴重である。とはいえ初心者には難しいので、ある程度点数計算ができるようになった段階で読んでみるのが良いと思う。少量だが練習問題もついている。

難点は構成に難があり読み辛い点。これでもこの著者の他の書籍と比べるとだいぶマシなのだが、ほとんど理解に供しない図や、冗長な記述が散見される。「◯◯すべきか?」と問いかけておいて答えを明示しないことも多く、読解には多少の労力を要する。

 

麻雀手役大全 (近代麻雀戦術シリーズ)

ZERO(2020) 『麻雀手役大全 (近代麻雀戦術シリーズ)』 竹書房

麻雀の全役をそれぞれ考察した書籍。

ありそうで無かったコンセプトの本で、基本的な役の定石は勿論、マニアックな役含め狙い所や対策を一通り学べる大三元への対処法や、混老頭の狙い所を真面目に解説した書籍など、他に存在するだろうか。各役のデータが適宜記載されている点は便利で、一切脇道にそれない硬派な構成も個人的に好み。

少し注意が必要なのは、どちらかというと例外的な手牌進行がたまに推奨されている点。たとえば有効牌先切りが色々な所で推奨されているが、初心者はまず受け入れ最大に構える方を練習すべきなので気をつけよう。なお、誤植は非常に多い。第二版を切実に出してほしい。

 

オススメの通読順序

上記の10冊の書籍は気になったものから読めばよいと思うが、参考程度にオススメの通読順序を挙げる。

  1. ウザク式麻雀学習 牌効率
  2. 麻雀 定石「何切る」301選
  3. 知るだけで強くなる麻雀の2択
  4. 統計学」のマージャン戦術
  5. 純黒ピン東メンバーが教える フリー麻雀で食う超実践打法
  6. 麻雀手役大全 (近代麻雀戦術シリーズ)
  7. 麻雀・点数状況によって変わる強者の選択
  8. 超実践 麻雀「何切る」「何鳴く」ドリル
  9. ガリ率5%アップ何切る (近代麻雀戦術シリーズ)
  10. 麻雀 傑作「何切る」300選

 

おまけ 麻雀の勉強について

「麻雀なんて運ゲーなんだから勉強しても仕方ない」という意見を聞いたことがある。確かに麻雀は運の影響が非常に強いゲームだが、勉強が無意味なほど運だけで決まるわけではないし、考察や学習は面白いと思う。

自分が思うに、麻雀は一部の熱狂的ファンが信じるほど実力ゲーではないが、多くの初心者が感じるほど運ゲーではない。確かに雀魂最上位のプレイヤーでも4着率が23%もあるゲームなので、上位帯同士の試合はほぼ運ゲーと言える。しかしながら、オフライン麻雀や雀魂友人戦で初心者と対戦すると、自分程度の実力でも4着率は10%にも満たない。初心者はテンパイが遅く、副露手の割合が低く、立直に対してほとんどオリない。だから効率的な手牌進行をして先制テンパイからの立直を目指し、もし先制立直されたら徹底的にオリるだけで4着にはあまりならない。つまり、初心者相手に勝てるかはともかく、負けないだけなら意外と何とかなるゲームだと感じている。

また、これは他の運が絡むゲームでも同じだが、運ゲーでも合理的な選択や期待値の高い選択は存在し、その考察や学習は面白い。たとえば受け入れ枚数最大の1打や、放銃確率最小の1打は常に存在するわけで、こういった選択が分かるようになるのは単純に楽しい。そして初心者・中級者の観戦をすると実感するが、こういう選択は学習しないとまず実践できない。学んだ内容を実戦で再現できるようになると、しばしば不運により裏目に出ることがあっても、数百打数千打と積み重なると初心者相手にあまり負けない差を生んでいく。

では麻雀の実力を上げるには何が近道かというと、やはり書籍による座学である。今振り返っても、実戦、観戦、座学のうち最も上達に寄与したのは、かけた時間がおそらく最も短いにもかかわらず、座学だと思う。配信や動画での学習も良いが、情報密度が高い書籍をオススメしたい。良質な書籍2, 3ページ分から得られる内容が、1時間の配信や10分の動画に相当することも珍しくない。この記事で挙げたのはどれもそのような書籍であり、他の学習手段より優先する価値は十分にあると思う。



 

 

*1:p.80の第3章のおまけマンガでは、以下のようなエピソードが語られる。「中身の分からない2つの箱のうち片方を選んだところ、その箱には5800点分の点棒が入っていた。選ばなかったもう片方の箱には、倍の点棒または半分の点棒が入っているという。このとき、もう片方の箱の点棒の期待値は(11600+2900)/2=7250なので、箱を取り替えた方が期待値的に得である」 これは封筒のパラドックスの類型であり、最初の箱の選択にかかわらず取り替えた方が得という結論になりそうな点がパラドックスとなる。勿論この結論は誤りであり、期待値は「不明」が正しい。最初の2箱の中身が11600, 5800点入りの場合と、5800, 2900点入りの場合から無作為に選択しているわけではなく、それぞれの場合の確率は不明であるからだ

*2:特に好手牌で受け入れ最大にしない損失については、この動画が分かりやすい例を挙げている。動画はMリーグの1打を扱ったものだが、「不要な字牌を残して受け入れを狭める」は自分も非常によくやらかしていたミスだ