Shota's Movie Review

2003年から「CDジャーナル」誌(音楽出版社 刊)に掲載されてきた映画レビューを再録しています。

とことん異なる三世代をつなぐ家族という“絆”

 成功を夢見る父親に連れられてアメリカの片田舎に越してきた韓国系移民一家を描いたドラマで、一見地味だが、アカデミー賞助演女優賞サンダンス映画祭グランプリと観客賞を受賞した話題作。
 少年のような夫と現実的な妻、英語も話せない祖母、アメリカナイズされていく姉弟。さまざまな困難に翻弄される一家だが、喧嘩しながら、しぶとく、たくましく生きている。
 とことん異なる三世代をつなぐ家族という“絆”が静かな感動を呼ぶ。

不器用さが愛おしくなる変人ラブコメディの佳作

 数学オタクで浮世離れしている予備校教師と、恋愛経験もないのにそれを矯正しようとする女子高生。噛み合わない2人が“普通”を求め、ある男女をターゲットとして恋愛の練習をするが、その練習がまた“普通”ではないのが楽しい。
 4人がそれぞれいいキャラクターだし、ほぼワンテイクで撮ったという会話のテンポ、歯切れのよさがとにかく絶妙(とくに清原果耶!)。その不器用さが愛おしくなる変人ラブコメディの佳作。

上流階級の中での階層、都会と田舎、男と女などさまざまな格差や差別

 山内マリコの同名小説を原作にした岨手由貴子監督作。
 苦労して地方から有名大学に入った女子と、裕福な開業医の娘、さらに厳格な貴族的政治家一家の息子。同じ東京に暮らしながらまったく異なる生き方をする彼女たちを軸に、上流階級の中での階層、都会と田舎、男と女などさまざまな格差や差別を、怒りではなくさらっと描写する手腕がうまい。
 女同士の分断……と思いきや、そうならないところもいい。門脇麦がはまり役。

構成がとても巧妙、私的海外ドラマ最高作

私が初めてハマった海外のドラマ・シリーズで、86年~94年の長きにわたってシリーズ化された(日本でも深夜放送されていた)。
内容は『L.A.ロー 七人の弁護士』というタイトルのとおりだが、構成がとても巧妙で、1話ごとの起承転結の上に5~6話にわたる中型のテーマが乗り、さらにシリーズ全体を貫く大きなテーマが設定されていて飽きない。ロス暴動やLGBTへの課題など、当時のアメリカ社会の映し鏡でもあった。
(一応は)一話完結なので、途中から見てもOKなのがよい。  

金持ちと貧乏人の行ける「デジタルのあの世」の差がおもしろい

  ネット・ドラマ全盛の中、アマプラでは本作『アップロード』が私的に最高。
死に際して記憶や人格をデジタル世界にアップロードする話だが、お金持ちには優雅で豪華な世界が用意され、貧乏人は出来損ないのマインクラフトのような世界にしか行けない。楽しいはずのSFで、彼我の現実を思い出してシュンとなる。
 地上(?)のリアル世界と、デジタル世界の境を乗り越えた恋愛話もデジタルでありつつアナログ。よい。

 ただし、ネットドラマって、人気が出たらどんどんシリーズが増えて、なかなか途中参入できないのがつらい。“シーズン10”って、『名探偵コナン』か!(もうすぐ100巻でまだ途中)
 本作はまだシーズン1。見始めるなら今です。

常にその時代の暗い面をヒーロー活劇の裏に重ね描く

 日本を舞台にしたスピン・オフ作品のなかにはトンデモなものもあるのだが、この5枚組セットはどれも『X-MEN』の基本、出来は保証できる。
 このシリーズは全体的に、いつもその時代の暗い面をヒーロー活劇の裏に重ね描きこんでいる。特に初期2作は、監督がB・シンガー(ゲイ)で、完全に性的マイノリティの映画。自分の特殊能力に悩み、孤独で、葛藤する少年少女の姿はまさに当時の性的少数者の写し絵。父親を悲しませまいと浴室で必死に自分の背中の羽根を削り落とそうとする少年を見てほしい。

女性誌『CREA』の特集“ゲイ・ルネッサンス'91”と双璧をなし、90年代ゲイを救った

 まだ「LGBT」という言葉すらなかった'93年の日テレ系ドラマ『同窓会』。
 クローゼットの中に隠れていた日本の少年ゲイたちにとっては革命だった
。  バイで男にも女にも体を売る少年山口達也(ハダカが本当にキレイだった……再起を願う)、そして自分が好かれていることにも無頓着でノンキなノンケの髙嶋兄。彼にずっと恋し、横に寝ている彼の身体に手を伸ばそうとしてグッと拳を噛んで堪える主人公、西村和彦。全ゲイが枕に顔を押し付けて泣く。
 と、ここにもってきて視聴率が上がったのか、同時期の他局のドラマでも突然ゲイの人物がわらわらと登場。電博よ、ありがとう、恥を知れ。
 そして少年たちは、だんだんとクローゼットから出てきた(come out)。
 ドラマ『同窓会』自体は、最後は脚本の井沢満が大暴走、LGBTのイロハも無視して国分太一が女性化し、ウェディングドレスを着て終わる。なんじゃそら。だがその功績は大きかった('91の女性誌CREA』の特集“ゲイ・ルネッサンス'91”と双璧)。