管理::KANRI

日本でいう"管理"業務は、英語にすると Management と通常は訳すことが多いようです。しかし、アメリカの一部のコンサルタントは、"管理"を KANRI と訳して利用しています。

実は、日本でいう管理は、計画業務、計画実行、結果確認、そして計画修正といった所謂 Plan-Do-Check-Act (PDCAサイクル) を実施する事を"管理"と定義している事があるためです。私が、本サイトで利用する"管理"は、全て KANRI として利用しています。常に "管理" という言葉を使う時には、この思想がバックエンドに流れています。

ここで、あらためて "管理::KANRI" を以下のように定義したいと思います。

管理とは、将来における活動を計画し、その計画を実施し、実施結果を確認し、結果をベースに新たな計画を立案、又は現行の計画を修正する一連の活動。

さて、管理という事にとことん拘った文献があります。既に古典の域になるかもしれませんが、藤本 俊著の管理の本質―「稼げる管理者への意識改革です。トヨタ系のサプライヤーに勤めていた著者が渾身をこめて書き上げた名著だと私は考えています。一度、目を通してみては如何でしょうか。実践した方の内容は、いつまでも脳裏に残ります。

3つの基本管理活動

企業モデルは、企業が成立している概念図でしたが、私は、この企業モデルを更に3つの基本管理活動に分割して考えるようにしています。その3つとは、企業戦略管理、基幹業務管理、経営資源管理としています。それぞれの定義を下記に示しましょう。

企業戦略管理:内部・外部環境を分析し、今後の企業の方向性を定める活動。
基幹業務管理:企業に利益を発生させるための商品を開発し、顧客へ届けるまでの活動。
経営資源管理:ヒト、モノ、カネ、情報を基本経営資源とし、それぞれに関する活動。

企業モデルに上記の3つの基本管理活動を重ねて考えるようにすると、以外に問題点が明確にしやすいというのが私の個人的な経験則です。また、上記の3つの管理活動をベースにした考え方は、よく会計監査の皆さんが利用しているモデルでもあるようですから、管理活動を漏れなくチェックできると考えています。

企業モデル

Enterprise Modelコンサルタントの業務は、主にお客様(この場合は企業になる)に対して、理想とする企業像を提案し、それを達成するために、何をどうやって実現していくかを明確にしていくことが重要であろうと考えています。そのためには、常に「理想とする企業像」が説明でき、それをどうやって達成するかの道程を設計しておくことが重要です。しかし、我々コンサルタントは、全ての業種・業界、さらには業務やビジネスプロセスにおいて専門であることはできません。ただ、最低限厳守すべきモデルというものは、存在するはずですし、活用することができれば、お客様への説得力が増すわけです。

私が利用しているのは、右図にある企業モデル (Enterprise Model) を常に頭に叩き込んで活動をしています。提案をする時、実際にプロジェクトを推進する時、問題を解析する時、自社内での業務を考慮する時、その他どんな時でもこの企業モデルが基本です。

実は、このモデルは1986年に構築・完成し、1987年にアメリカで初めて発表して大変好評でした。多くのコンサルタントからも評価され実際に利用しているコンサルタントも多いのが事実です。では、なぜこのモデルが評価されたのでしょうか。詳細を記述する前にまずはモデルの構築の歴史から説明しましょう。

Total Quality Management (TQM) とトヨタ自動車
1980年代のアメリカは、これまで君臨していた自動車やハイテクの業種が日本の企業に圧され、非常に危機的な状況でした。「Big Blue が日本に追い越される時」、「Big 3 が滅びる日」といった記事が新聞や雑誌を賑わせていました。説明は不要だとは思いますが、Big Blue とは IBM、Big 3 とは、Ford、General Motors、Cryslerの3社の事です。こうした企業はある種アメリカの誇りであり、絶対に世界一の座を譲ってはいけない企業だったのは周知の事実です。こうした企業が危機感をもったのは、膨れ上がったアメリカの日本に対する膨大な貿易赤字でした。IBM が圧倒的に強かったメインフレームが売れなくなってきた。Big 3 を猛追するトヨタ、日産、ホンダ。そうした環境下で、アメリカでは小手先の対策が打たれていました。輸入規制や関税増といった対策が国を挙げての対策でした。しかし、これに対して一石を投じたのが、今は知る人も少なくなりましたが、かの有名な「ヤングレポート」という当時ヒューレットパッカード会長が書いた政府向け日本企業に関する調査レポートでした。1985年に提出されたこのレポートには、日本では当たり前の事として扱われていた企業文化が詳細に渡って報告されていました。それは以下の4点だったと記憶しています。

  • 品質管理の徹底による商品価値の向上
  • トヨタ生産方式の活用による生産効率の向上
  • 改革ではなく改善の実施
  • 終身雇用による人的財産の徹底活用

各項目において詳細を説明することは避けますが、このレポートが提出された時、アメリカの企業は揃って日本から大量のコンサルタントを呼ぶようになりました。ただ、この時は、コンサルタントと言っても大学教授や会社の社長がほとんどでしたが。

さて、上記の4点が既に皆さんは気付いていると思いますが、品質管理、トヨタ生産方式、改善と所謂品質管理の用語が並んでいます。そこで、アメリカの多くの企業が、日本式品質管理を取り入れるようになりました。多くのコンサルタントアメリカへ行き、日本式品質管理を一種流行のように実施しだしました。しかし、当時の日本式品質管理は、マネージメントサイクル (Plan-Do-Check-Act) をベースにしたもので、企業全ての構成がこのマネージメントサイクルでモデル化されていました(トヨタ自動車がそうだった)。既に企業戦略論や企業戦術理論等が確立していたアメリカ企業ではどうしてもこれが受け入れられませんでした。実際には、日本の多くの教授や会社の役員等もモデル化にはマネージメントサイクルだけでは事足らずであることは気付いていましたが、モデル化よりも実践を重視していた日本企業ではモデル化すること自体はまったく問題ではなかったのです。

こうした背景のもと、企業戦略と戦術(戦略を実行する方法)とを分割して、さらにマネージメントサイクルを加えるたモデルができないだろうかという研究会が始まりました。と言ってもモデルが予想よりはるかに早く出来上がったので、この研究会は2週間程度で解散しましたが。モデルは、マーケティングの神様と呼ばれているフィリップ・コトラーのモデルから、内部環境と外部環境とが取り上げられました。コトラーは、企業戦略は、内部・外部環境をベースに立案され、それを実行すべき組織と業務を構築すべきであるとしています。これをモデル化することは簡単でした。さらに、業務という観点からマイケル・ポーターバリューチェーンの考え方を取り入れました。ポーターは、バリューチェーンが企業の根幹を形成していると説いています。さらにポーターの考え方をさらにエドワード・デミングがマネージメントサイクルとして説いていました。これらを総合的に図表化したのが上図であるわけです。即ち、全ての構成はアメリカの権威あるコンサルタントのモデルを適用しているわけですから、アメリカで受けるはずです。

中堅企業での ERP 導入プロジェクト 4/4

組織改革(KPIの設定まで)と計画業務の整備を実施しながら、並行してERPを導入することになります。ただ、ミドルサイズの企業では、其の企業の体力(要員アサイン)によりますから、一概には言えませんが、私は1年以上導入に時間が掛かっては意味が無いと考えていますから、ERP導入のためには、多少無理をして頂かなければなりません。

さて、ERP導入ですが、既に方法論が散乱していますからいまさら詳細を記述することは避けますが、ただ、ミドルサイズの企業におけるERPの導入は、下記のタスクを本格的な導入を開始する前に実施する必要があります。

  1. ERPのマスターデータの構造説明と現行システムのマスターデータ調査
  2. プロジェクト組織の早期構築とトップマネージメントによるプロジェクト推進の社内告知
  3. スコープの確定:業務領域と業務ロケーション、プロジェクトロケーション、システム領域、モジュールとバージョン、周辺システム

いかにも当たり前のような事項ですが、ミドルサイズの企業においては上記をKick-Offの前に実施することが特に重要です。特にスコープの決定は、Kick-Off後に実施しているケースが多いと思いますが、それではミドルサイズの企業では命取りになることがあります。つまり、プロジェクトがいざスタートすると業務改革が進まず、スコープがどんどんとずれていき、最終的にはまったく期待されないものになってしまう可能性が高いということがあります。

中堅企業での ERP 導入プロジェクト 3/4

中堅企業での ERP 導入プロジェクト 1/4において、計画業務の整備に関してもERPプロジェクトでは重要であることを記述しました。本稿では、この事について、概要を記述することにしましょう。

私は、ERP導入の最良の結果として、リアルタイム管理が上げられると考えています。これまでのビジネスの結果が、時間単位や分単位で出てくること、これがまさに最高の結果ではないでしょうか!?逆にいうと、リアルタイムでの管理が必要でない企業は、ERPの効果は半減、いやないと言っても過言ではないかと最近考えています。例えば、大型建築物(1年以上も完成に時間が掛かる)に本当にERPが必要でしょうか?それこそプロジェクト管理のきっちりとしたパッケージで管理したほうがはるかに効果が大きいと考えますが、如何でしょうか・・・

これから概要を記述する計画系業務の整備は、まさにリアルタイムマネージメントが必要な企業に限定しています。ただし、誤解していただきたくないのは、リアルタイムマネージメントを実施していないからといって、必要ないという事にはならないことを知っておいて下さい。

では、このリアルタイムマネージメントが必要な企業とは、どうやって判断すればいいのでしょうか。私は、以下の判断基準で、お客様には、リアルタイムマネージメントが必要であろうと訴えることにしています。

  1. 日常業務での製品出荷の有無(有りであれば、当然リアルタイムマネージメントが必要です)
  2. 日常業務での購買業務の有無(これも出荷と同様、有りであればリアルタイムマネージメントが必要です)
  3. 日常業務での受注の有無(これも他の2業務同様、有りであればリアルタイムマネージメントが必要です)

この他にもありますが、上記の3つの業務に着目すれば、大方リアルタイムマネージメントが必要かどうかを判断することが出来ます。こうした日常業務が発生しているにもかかわらず、月間で計画を構築しているとなるとどこかで問題が発生しているはずです。これを見つけるのがコンサルタントの勝負どころです。

さて、リアルタイムとは、どこまでリアルタイムにするべきでしょうか。これは、出荷業務サイクルにあわせるのが基本です。例えば、出荷が1日1回の場合、日単位で管理、一日に数回の出荷があるようであれば、時間単位でのリアルタイムが必要です。この出荷の単位にマネージメントが合致していない場合、かならず全体業務の中にごまかしがあるはずですから、調べてみることが重要です。

さて、計画業務の整理ですが、まずはこの出荷における単位を確認して、時間でのリアルタイムが必要か、日単位でのリアルタイムが必要かを決定します。これによって、明確に目指すべきリアルタイムマネージメントをセットし、理想像をまずは絵にします。お客様は、リアルタイムマネージメントに関して、始めは抵抗することもあるでしょうけど、まずは耐えることです。理想形がないと直ぐに妥協していくのが人間ですから。

理想の計画業務を構築したら、次に計画に関連する全ての業務での現状を把握し、計画サイクルが変更された場合のインパクト明確にしていく必要があります。ここで注意して頂きたいのは、Fit/Gapではなく、Impactを分析することです。Fit/Gapでは、理想形に近づけるには、かなりの時間が掛かりますから・・・お客様も、それなりにプライドがありますから、「これくらいのインパクトは大丈夫ですよね?」と迫っていくことが重要です。すると、何とか合意に達することが可能です。

計画は、販売、生産、購買、と全ての業務に関連します。単純に一部門だけの課題ではないことは、私が詳細を記述しなくとも理解できるでしょう。

とにかく、リアルタイムの計画に近づければ近づけるほど、ERPの効果が大きくなってきます。これまで、実行系の業務をリアルタイムで管理するまでに至った例は多数ありますが、計画系をリアルタイムに持ち込んだケースは見たことがありません。

ちなみに、あるお客様においては計画自体が無かったわけですが、いよいよMRPでの生産に移行しました。生産現場では、現状の日々の計画では、マシーンがついていけない、といった悲鳴もあるようですが、ここは踏ん張りどころです。どうしてマシーンがついていけないのか、日々の計画を月単位に変更したら、また元に戻ってしまう!ここの調整がコンサルタントとしては、一番面白い!とは、簡単には考えられるようにはなりませんが・・・

中堅企業での ERP 導入プロジェクト 2/4

中堅企業での ERP 導入プロジェクト 1/4では、ERPプロジェクト、と言いながらも、5つのポイントを指摘しました。その中には、組織改革や業務改革も含まれており、ERPと呼びながらも、かなり広範囲に渡っている事が容易に把握できるでしょう。ただし、これまでは、こうした業務系のプロジェクトは単独で推進されている、または業務系のプロジェクトが上位にあって(優先されているということ)、ERPはあくまでも業務系のプロジェクトの下についていることが大半だったのではないでしょうか。私も、これまでは業務系のコンサルタントでしたから、情報システムが上位に位置付けすることなどもっての他でした。しかし、ERPを知るにつれて、徐々にその考え方に変化が生じてきたことは、今更詳細に記述することは止めておきましょう。

今回は、組織改革の部分についてちょっと詳細に記述しましょう。
組織改革では、以下の事に関してコンサルタントがメスを入れる必要があります。

  • 業務分掌の把握と改定
  • 組織構造の改定
  • 新組織構想に基づいた経営指標の設定
  • 方針管理の仕組み概要設計

これで ERPにおけるKPIを設定する必要が出てきます。私は、上記を実施するために Value Engineering (価値分析)という手法を適用するのが最も早いと信じていますが、それがBestであるかどうかは、未だに明確ではありません。しかし、経験上これが最もFitするようです。

まずは、ERPを実施しようとされているお客様に対して、業務分掌を見せて頂くように依頼すべきです。業務分掌には、通常各ポジションの要求項目(Skill-Set)、権限(意思決定できる範囲)、業務責任(業務範囲)が示されているはずです。これによって、部長や課長の役割が明確に定義されているはずです。ただ、通常は、この業務分掌が曖昧だったり、長年改定されておらず、現場での動きと相違しているのが通常ですから、コンサルタントとしては、間違いや誤りを指摘するには、格好の材料になるはずです。ちなみに、私が担当したプロジェクトでは、業務分掌の改定を実施しました。ただ、残念ながらこの業務分掌をもとに権限設定したかどうかは確認できていません。

業務分掌をとりあえず確認して、現状と掛け離れているようであれば、新組織構築の提案を入れることが必要です。まずは、現状の組織図を見て(必ず、会社には存在するはずです)、問題点を指摘する必要があります。部長はどういうポジションにいるか、課長は、本部長は・・・肩書きと業務分掌がマッチしているかを確認することは、組織図を把握するには重要な作業です。これが、出来るようになれば、ちょっと自慢できるでしょう。世間のコンサルタント、特にERPコンサルタントでここまで可能なコンサルタントを見たことがありませんから・・・あくまでもERP導入が目的ですから、組織図と業務分掌が、ERPの権限設定とKPI設定には不可欠なことをお客様に説得することです。

私は、組織的に中小企業の組織は、最大で4階層程度が限度だと経験的に感じています。最近では組織というのはフラットがいい、といっていますがこれはコミュニケーションが出来ていない企業に限って、そうした発想になっています。階層があってもコミュニケーション手段と、権限と責任が明確に定義されていれば、上手く運用できるはずです。

さて、もし組織図に偏りがあったり、業務分掌と掛け離れているようであれば、新組織構築の提案を入れます。実は、組織構造には正解がありません。よって、こうしたらこれだけ良くなる、何てことはありえません!ただ、新しく組織を構築することによって、これまで眠っていた"モチベーション"が上昇することが多々あります。また、ある手法に基づいて構築した組織は、根拠があると錯覚をお越し、自身満々で業務遂行を継続することが多いようです。ここでいっている手法とは、"Value Engineering:VE" を指しています。詳細な手順はここでは記述しませんが、VE は、製品の機能を分析して、原価低減へ繋げる手法として良く設計で活用する手法ですが、かなり前から組織設計でも活用されています。

VEによって、一旦組織構想が完成したら、各機能に対して経営指標を設定していきます。各業務は、数値で計測が可能な尺度で測られるべきであって、感覚で評価すべきではありません。VEで作成された樹形図(詳細は、別の機会に記述します)全てに設定します。ここまで出来れば、新組織に基づいたKPIを設定できたことになりますから、ちょっとERPの雰囲気が出てくるでしょう。

私は、このKPIの設定が完了した後、マスタデータの設計をスタートさせる必要があると信じています。KPIを計測するために、マスターデータは揃っているのか、新しいキーが必要ないか、等々を設計していく必要があります。残念ながら、いままで実際に実施したことはありませんが・・・

さて如何でしょうか。どれ位把握できますかね・・・ここまで、Scopeを広げなくても・・・と考えている方もいるでしょう。それはそれでOKですが、少なくとも本当に効果があるERPは、まずはこれくらい範囲を広げておく必要があるでしょう。

中堅企業での ERP 導入プロジェクト 1/4

コンサルタントとして、一番魅力的なことは、中小企業、特に売上で1000億円以下の企業へのコンサルテーションを実施することによって、お客様が「あのコンサルタントのお陰で我々は変わりました・・・」と評価してもらうことではないでしょうか。大企業で、どんなに活躍したとしても、コンサルタントの名前は、自然に水面下に押しやられてしまいます。

まずは、コンカレント・コンサルテーションで最も効果があると考えられる、最近になってやっと中小企業で注目されてきた Enterprise Resource Planning (ERP) を再考してみましょう。

売上で1000億円以下の企業へのERP導入が最近多いようですが、大企業と比べるとやはり予期できない問題があります。その問題とは、概ね以下の通りです。

  • マスターデータの整備に時間が掛かる。
  • プロジェクトへの要員アサインが薄い。
  • 権限と責任が不明確。
  • 計画がルーズでのんびりしており、現場の力づくが目立つ。等々

これらは、中小企業に限らないかもしれませんが、最近関わっているお客様では特に目立っているようです。ERP導入するためには、こうした基本的な内容をまずは整備する必要があります。そこで、特に中小企業にERPを導入するためには、以下の活動を並行して実施する必要がありそうです。

  1. 組織改革(権限と責任の明確化:KPI設定)
  2. 計画業務の整備(リアルタイムマネージメント)
  3. マスターデータ整備
  4. ERP導入
  5. マネージメントシステムの確立(方針管理とPDCA

上記を統合して実施していくことが重要であると共に、我々コンサルタントが発揮できる最大の活動であるように最近考えています。更には、ISO9000、デミング賞、日本品質経営賞、等々・・・こうした世界標準やアワード取得にも貢献できると確信しています。