細客がセパレートアンプに手を出した話⑦

そうこうしているうちに1ヶ月経過。
A-48の入荷連絡を頂き、お店まで代金の支払に行ってきました。下取に出すプリメインアンプの見積金額を出して頂き、その差額を支払すればオーケーという太っ腹。試聴の時に加えまたも破格の厚遇、こんな一見の細客にいいんですか?

いや、だって、私が製品名を間違えて記憶していたらどうするんですか。どこか壊れていないかと買取前にチェックはしないのでしょうか。

これが写真レンズの下取交換なら、レンズの黴とか、ヘリコイドラバーの劣化とか、それこそ鵜の目鷹の目で現物をチェックする訳です。その結果としてWEB上に掲載されている買取金額とは似ても似つかない金額まで叩かれることはザラにある訳で。

いいんですか本当に?

かなり戸惑いはしたものの、箱やら取説やら保管できるものは全部保管しておいて良かったです。外観に目立った傷はないですし。
何か「やらかし」があれば担当営業さんにご迷惑をお掛けする事になる訳で、そうなったら次の機会は他を当たるしかなくなります、従い私としては、購入と買取の契約を分けてくれる方が気は楽でした。

ちなみに。
今回手放したプリメインアンプの利用料に相当する金額を計算したら、109,000円ポッキリ。ちょうど5年使ったので1年あたり21,800円でレンタルした事になる訳で、ちょっと申し訳ないです。

と言うのは、私は販売促進も行き過ぎは良くないと思うのです。アキュフェーズは正規特約店の数が少ないですが、価格拘束があれだけキツイと東京地区の販売店は下取優遇で差別化するしかなくなりますね。本稿④節で記載したAKB地区などは、客から見たお店の選別原理が今以上に激しくなると思いますし、アキュフェーズが販売店にとって「扱いにくいメーカー」という事にならなければいいですね。
ま、私は偏狭なのでこれを機会にTに天罰が下る事を期待していますが。

☆ ☆ ☆

代金支払の4日後にA-48をお迎えしました。
今回は引取とセットですのでお店の方に拙宅までお越し頂いたのですが、ちゃちゃっと箱を開封してあっという間にセッティング完了。おおおー。「これでどれだけ変わるか楽しみですね」とのお言葉。期待が膨らみます。

お店の方をお見送りしてからケーブルを繋ぎ込んで、試聴に使った曲を掛けて見たところ…

おかしくないか?

もっさり感がパネエ(汗)

やっちまったか?(滝汗)

いやそんな筈はねえだろ、試聴もしたんだし。これはエージングしないと評価が定まらないと気持ちを切り替えて、CDを掛けたまま食事に行きました。帰宅したのは通電開始から4時間後くらいです。

化けてました。僅かに纏っていた薄いベールのようなものが取れました。明瞭度の高い音で、美音です。
女性ヴォーカルは少し硬いかな。ですが、いずれ落ち着くと思います。暫くの間エージングは必要でしょうが、その後、毎日アイドリングが必須なのかどうかは現時点では判りません。

あ、このアンプ(C-2300/A-48)いいなと思ったのは、松岡直也のタッチ・ザ・ニューヨーク・ピンクを聴いた時でした。ウッドブロックというか木魚というか、目立たない打楽器の音が左チャネル側でずっと存在を主張していて「あ、これ、曲の最初から最後までこうだったのか」と気が付いたのです。
音の分離に関してはコントロールアンプの性能に依存するでしょうが、スピーカーをドライブするのはパワーアンプな訳で、4349が仕事をするかどうかはこいつの出来次第。作曲者、演奏者の意図のようなものがCD購入から30年以上経ってから分かったのは、ある意味で感慨深かったです。

最後に告白しますが私はアキュフェーズ的な無個性は嫌いでした。A-48を聴くまではね。恐らくE-800を選んだ人もそうだと思います。ああ俺はこっちだわ、ってね。
それでは最後にA-48についても第一印象を記載して終わりにします。

◾️デザインについて
・格好いいです。C-2300は機能的でよく纏まっていますが、A-48はエモーショナルでさえあると思います。
・何と言っても目を引くのはアナログメーターですね。C-2300にはdB表示がありデジタル表示ですから両者は一見対照的です。カテゴリーの違う製品ではありますが、視覚的な観点では断然こちらの纏め方が好みです。
ヒートシンクは萌え萌えです。今回、オーディオラックの脚を1組、各350mmのものに換装してその中にA-48を格納しました。プリメインアンプはヒートシンク部のスペースにボリューム部を格納している事になりますが、外形の格好良さは全く比較になりません。
・アナログメーター部を黒枠で囲み込んで、その枠内に製品名が薄く記載してあります。控えめで美しいです。パネルに直接黒で墨入れをしているC-2300はあまりにも直戴で比較の対象にさえなりません。
・こちらも英数字のフォントは意識して古い書体を使っています。製品名表示が美しいので気になりません。不思議なものですね。
・電源投入してランプが点灯した時の配色もこちらが綺麗です。Accuphaseランプが僅かに明るく、このあたりの細かい仕様まで統一してくれれば更に良かったです。
・C-2300はギリギリまで外装コストを切り詰めたのでしょうね。パワーアンプできちんと練られたデザイン文法を、コントロールアンプには転用できませんでした、という感じさえ受けました。そのくらいA-48は優美だと思います。

◾️同包品について
電源ケーブル
C-2300と同等品ですかね。電ケーについては拘り始めたらキリがないので私は変えません。

◾️操作感について
・電源ボタン
何故かC-2300とは微妙に押し込みの感触が違います。本当に何故違うのでしょうね。それ以外のスイッチは全く触りません。

◾️機能について
・音決めについては完全に好みの問題です。試聴の話のとおりで、改めて言及することはありません。
ヒートシンクはそれほど熱くはなりませんが、メッシュカバーからは路線バスの暖房の様な、ほのかな暖気が立ち昇ってきます。
・これには電気ストーブの異名を持つだけのことはあると思いました。メーカーの規定する設置方法は正しく守ることをお勧めします。
・いちばんいいのは機器本体の前後左右、上部を塞がない「平置き」だと思いますが、私としてはインナーケーブルの引き直し、買い替えは勘弁して欲しかったのでオーディオラックの脚を換装してカバー上部の空間を確保しました。
・dBメーターは-50から目盛りが刻んであります。ですが45W/8Ωなので、凄い勢いでボンボン針が振れます。気の毒なくらいです…

◾️総評
・お店で比較試聴させて頂いた時は上手く角を取った音だなという印象が強かったのですが、実際に自宅で使ってみると適度にソリッドないい音です。インナーケーブル、スピーカーケーブルが違うことが大きく影響しているのでしょうが、ボリュームを上げたくなる美音です。刺激感が少なく煩くなりません。
・拙宅のような貧弱な視聴環境におけるホームオーディオユースとしては充分なパワーですが戸建てで専用のオーディオルームを持っていらっしゃったり、効率の悪いスピーカーを鳴らす為にハイパワーが欲しいという方はブリッジ接続を検討したり、A-80が欲しくなるかも知れませんね。
・私にもし次があるとしたらパワーアンプのテコ入れでしょうか。A級パワーアンプの上位機種は型名こそA-80と名乗っていますが65W/8Ωだから悩ましいですね。外観のデザインもあまり好みではありませんし。絶対的なパワーが必要ならAB級に行くことになるでしょうけど、我が家の視聴環境では宝の持ち腐れかも知れませんね。
・来年あたりA-48の後継が来ると思いますが、デザイン文法は変えないで、かつ、お値段そのままでお願いしたいです。だけどこれ、どこをどうブラッシュアップするのでしょうね。それくらい完成度が高いと思います。

貴方も如何?毎日が本当に楽しくなりますよ。保証します。

-了-

※別途、補項を記載する予定です。

細客がセパレートアンプに手を出した話⑥

迷走迷走、また迷走。二転三転したその挙句、分不相応にも拙宅にセパレートアンプをお迎えすることになった訳ですが、コントロールアンプのC-2300は即納、パワーアンプのA-48は納期1ヶ月でした。
メーカー在庫が無い場合は次回のラインオフを待たないといけないので「1ヶ月待ち」なら運が良い方でしょうね。なお、製品サイクルから言うとA-48はそろそろ後継の話も出るところでしょうが、私は気にしません。というか知ってる人はみんな知ってる特殊事情により、2023年中に契約・購入するのがお得なのでね…(小声)

お迎えしたC-2300を開封したところ、大きさはともかく重さにびっくり。プリメインアンプ入門機みたいなみっしり感。おいおい…
今回の機器入替の改善効果を測る意味で、
SACDプレーヤー→
②コントロールアンプ→
③手持ちのプリメインアンプのパワー部→
④スピーカー
の経路に繋ぎ変えてみたらびっくり。ノイズレベルの低さが効いています。倍音成分や音の揺らぎが良く聞こえますし、ギターのソリッド感が凄い。何だこれは。

まあ、現有のプリメインアンプを改造してプリ部に80万ぶっ込んだ状態とも言える訳ですから、聴感上の有意差がなければ「怒るでしかし」となりますねえ。ですが正味な話、これで目標の8割は達成した感じでした。パワー部の入れ替え、要らなくないか?とまで思いました。

逆に言うと、プリメインアンプのパワー部はそれなりに使える気がしました。
実はC-2900に予算全額ブチ込んで、パワーアンプは別の機会に購入というのもひとつの考え方だったかも知れませんね。以下にファーストインプレッションを記載。

◾️デザインについて
・機能が全体の形を規定しており美しいと思います。パーツの配置や形状については弄りようがないですね。
・私は曲面を多様する装飾をやらないのは見識だと思います。同じ理由で上位機種のウッドケース、ウッドパネルも要らないです。
・全体のプロポーションも良いです。視覚的な纏まりの良さがあり異形デザインでない事も選択理由のひとつでした。
シャンパンゴールドのパネル色は好き嫌いが分かれるところだと思います。使用していない時は「仏壇デザイン」にしか見えず特にいいとは思えません。
・ところが、電源投入してランプが点灯した時の全体の配色は美しいです。つまり、使用中に限っては結構イケてます。
・英数字のフォントは意識して古い書体を使っていますが、格好いいとは言えません。それがエレガントかと言われたら違うでしょうね。
・製品名を機器のいちばん目立つところにデカデカと描くメーカーは稀です。昭和のクルマに良くありましたが、令和の今となってはデザイン文法は古いと思います。ですが、ニコンの懐古調デジタルカメラのように「装飾の変更」で需要喚起している訳ではありませんね。
・デザインはフォントに至るまで頑なに変えないというのを「方針」としてやっているのであれば、受け入れざるを得ません。そういう一貫性も含めての製品バリューだと思います。

◾️同包品について
・リモコン
使いません。電池も装填しません。依って使用感は不明です。
電源ケーブル
使用中の他社SACDプレーヤーのものより細いとは思わなかったです。びっくり。但し、電源周りにまで拘り始めたらキリがないので私は変えません。
・ラインケーブル
標準添付されているのは良いですね。1m程度のケーブルがノイズレベルに影響を与えるとは思えないのでわざわざバランス接続する必要もないでしょう。私は以前から使っている社外品のラインケーブルをそのまま流用しています。

◾️操作感について
・電源ボタン
理由があってこの設計にしている、というのでなければ改善して欲しいです。グニャッとした感触でどこまで押し込めばいいのか迷うレベル。
・インプットセレクタ
節度感があってとても良いです。スパッとした感触で切り替えられます。尤も私の場合「CD」から動かすことはないですが。
・ボリュームノブの動作
精密感があります。操作に遊びがないのは良いですね。
・ボリュームノブの回転量
本体に10段階の目盛が切ってあります。9時位置が2段階で-39dB。現実問題として拙宅は9時位置まで回したら間違いなく苦情が来る視聴環境で、MINと1段階位置の往復です。ノブの回転量と音量の関係は見直せるといいですね。

◾️機能について
・音決めに関しての絶対評価は難しいです。良し悪しでなく好き嫌いですので。
・従い、自分にとって好ましいかどうかという評価にならざるを得ませんが、これまで埋もれていた音がよく聴こえます。良いです。ちょっと元には戻れないですね。
・ボリュームを絞っても音が痩せません。ノイズレベルの低さが効いているのでしょう。まさか夜間にJBL4349から音を出せるとは思っていなかったです。
・バランス出力端子は1系統。「何が何でも2系統にバランス出力したい」方はC-2900に行くしかないです。私はライン出力しかしないので問題はないですが、念のため。
・トーンコントロール機能が付いています。かなり強力で、オリジナルの音色に影響を与えません。私はその時々の気分で高音域をプラス側に補正しています(JBL4349のトリムコントロール機能で高域・超高域のレベルを調整しても良いのですが、毎回変えるのは面倒なので本機のトーンコントロールのON/OFFで切り替えします)。
・音量レベル表示は便利です。最近はdB表示を見ながらボリュームの微調整をする習慣がつきました。

◾️総評
・思っていた以上の改善効果でした。満足です。
・コストに見合うかどうか、という考えはありませんでした。なお、C-2900は単に財布が無理だっただけです。A-48との組み合わせも予算からは少し足が出ました。
パワーアンプの選定は慎重に行うことをお勧めします。今回、コントロールアンプとパワーアンプの組み合わせによって音色はかなり変わる事を実感しました。

◾️その他
・C-2300+A-48とE-800について比較試聴はしていません。従い、どのくらい聴感上の違いがあるのかは解りません。スペックは近接していますが値段は5割増し。悩みどころですね。
・東京地区の店舗で、上記の組み合わせを同一フロア内で比較試聴が可能なお店は、私の知る限り1店舗だけありました。ですが今は展示機器をP-4600に変えたようです。
・それ以外のお店ではクラスが違うので別フロア展示の事が多いですね。従い「必ず何かしら購入するから試聴させて欲しい」と伝えてセッティングして貰うしかないと思います。
・E-800がBalanced AAVAを採用しているとしても、セパレートアンプ同等のプリ部という訳にはいかないでしょうね。パーツの選別とか、いろいろな意味で。それでも最後は音作りの方向性ですから、お好きな方をどうぞ。
・つまり、一体どっちが得なのか、なんて事で悩まない事です。私はE-5000なりE-800なりに百万出して、自宅で使って、それで駄目なら泥沼だと思ったからセパレートアンプを選択しただけです。こちらが聴感上優れていると思ったことはありません。
・聴感上の好みで選ぼうが、予算で選ぼうが、カタチで選ぼうが、設置場所の都合で選ぼうが、自分はこっちだと思った方を選択すれば幸せになれます。意思をもって選ぶことです。

◾️雑感
・同じ食材が調理法によって日本料理になったりイタリア料理になったりしますね。オーディオ機器メーカーのサウンドマネージャーがどんな方向性を希求しようと自由ですし、その反映としての製品がどんな色彩を帯びようが、それぞれ違って良いと思います。違いがあるからこそ、選択できる。有難いことです。
・私は「長く使えること」も選択条件のひとつにしていました。過去に何度も痛い目に遭っていますのでね。もし私に資金が潤沢にあって「何だったら使い捨てでも構わん」という立場なら、外国製アンプを選択したと思います。聴感上、私の好みに近いのはそちらでした。
・どういう訳なのか自分が選択しなかった機器を、鬼の首でも取ったように貶める輩が腐るほどいますが、信用しない事です。販売店のブログにも散見されますが本当に吐き気がします。
・写真機材でも何でもそうですが、使ってもいない機器に自分の主観を押し付けるくらいなら、自分の使っている機器の駄目なところについて言及出来ないのかと、私は心の底から思っています。
・いろんな前提条件があるのは仕方ありません。住宅事情や財布の中身。それはそれとして受け入れた上で、シンプルに何が自分の好みのテイストなのかという視点で機器選択すればいいと思います。

(続きます)

細客がセパレートアンプに手を出した話⑤

意を決した私は、都内オーディオ店のハイエンドコーナーに向かいました。お店の方に「アキュフェーズのP-4600とC-2300を購入したいのですが」と用件を切り出した時には「これでもう後戻りできねえ」と思いました。安い買い物でもないので結構ビビりましたね。
自宅で聴感上の違いを何も感じなかったらどうしよう、何かが改善したとしても音楽を聴くのが楽しくなかったらどうしよう、金ドブになったらどうしよう…

店頭で具体的な製品名について言及したのはこれが初めてでした。定価ベースで150万する代物、それも一見の新規客ですので、店側にしてみたら「鴨葱キタワア」といった感じだったものと想像します。
私自身にはまだ、気持ちの揺らぎが多少ありました。私なりに調べて、消去法で残った仮説がこれという話に過ぎず「試聴した結果、何が何でも欲しいと思った」訳ではないからです。

当該機種はセパレートアンプとしては入門機同士の組み合わせですがそれでも予算ギリギリ。対抗はパワーアンプをA-48に差し替え、ですね。前述の理由により、外国メーカーのアンプはこの時点で選択肢から外しています。

正直に言いますが、スピーカーとコントロールアンプ、パワーアンプを一発で差替する訳ですから私の財力ではキャッシュがキツかったです。誰でも考えるC-2900は財布が無理でした。

え?C-3900?何それ。

それより下の価格帯だとプリメインアンプになりますね。ですが過日、プリメインアンプの視聴をさせて頂いた時にE-5000とE-4000の有意差はほとんど感じませんでした。5kのプリ部は回路設計上はC-3850ベース、Balanced AAVAです。一方の4kはE-480後継でAAVA。単純に考えたらノイズレベルの違いが聴感上の差として効いてくる筈ですが、それでも音色は4kの方が好みでしたからこの時点で5kは選択肢から落としました。

加えて。拙宅は夜間の時間帯にまで4349をドライブすることは考えられない環境なので、夜は当然、音量をかなり絞ります。それで音が痩せなければ、なお好ましいです。

まあいくら何でも全部が叶う訳はないですし、無いもの強請りだと分かっています。私はまさか機器を売る側に前項①みたいな◯脳がいるとは思いもしませんでしたが、視聴には前提があり、それぞれの事情というものが存在します。我々は仮想世界に住んでいる訳ではないという事は強調しておきます。

さて。果たしてこの人と会話のキャッチボールは成立するのでしょうか。

「私も配送で都内のお宅を訪問しますが、現実問題としては皆さん然程、住環境に恵まれている訳ではないですね。いずれにせよ、今お住まいの環境を考慮して、何がいいのかを考えましょう」

この人から買おう、と思いましたね。

「P-4600の発売時期は10月下旬ですので、ここで決めてしまわれるのではなく、試聴してお決めになられる事をお勧めします。価格的にはA-48と然程変わらないですから、両方お聞きになってみて下さい」
「ご自宅のスピーカーと揃えないと試聴の意味はありません。4349をセットしますから、試聴予約をなさって下さい。P-4600が入荷次第、お電話を差し上げます」

何ですかこの流れるようなプロの仕事。
レベチにも程がある。
この時「もうC-2300でいいや。後はP-4600かA-48の組み合わせで、どちらか好きな方を買えばいい」と思いました。

チョロいもんだなー、俺。
だけど、ここまで誰も私の財布の紐を解けなかったのは事実なんでね。みなさんは150万の売上なんか要らないと言ったのも同然ですから、それだけはきっちり表明しておきます。

つまり、営業の仕事はそんなものだと思うんです。人間の魅力を規定するのは立ち振る舞いや言葉の流麗さといった表面的な美しさでしょうが、その背景には知性の裏打ちがないとどうしようもないですね。数字が取れる人は結局、クレバーな人です。

中には客の出した機種名から1ランク上の機種を推す人もいます。経験上最低ラインは少し上で、専門家として「長く使うならこっち」という思いはあるのでしょう。そりゃ誰だってC-2900とP-7500の組み合わせが買えればいいとは思いますよ…

ですが、そんな提案をする気配が無かった事も好感度を上げました。コントロールアンプをC-2300に固定してP-4600とA-48に選択肢を絞りきったところが手練手管で、こちらとしてはお陰で「嫌々財布の都合でこうなった」という思いを抱かずに済みましたのでね。
客は実際に使ってみて駄目だと思ったら次の機会に買い替えする訳で、その需要も取り込んでしまえば一粒で二度美味しい。中古放出してくれたら三度美味しい。つまり、双方これで良いのです。

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

10月下旬になり、試聴の日が来ました。
ワクワクテカテカ
世の中に広く流布している評価は「ロック、ジャズ・フュージョンにはAB級アンプ」というものですね。私自身もAB級アンプを使っていましたので耳当たりと言うか慣れもあります。ですから私自身としても当然のようにP-4600を選択するものだと思っていたのですが。

さて。試聴機器は
DP750-C2300-パワーアンプ-4349です。

①P-4600
・エッジの効いた、解像感の高い音でした。
・時々ゴリっとした硬さがありました。但し、もう少し鳴らし込んでエージングが終われば落ち着いた音になると思います。
・音がスパスパ飛んできます。楽曲全体を俯瞰的に聴くのにはこちらがいいと思います。
・静寂感があって音が尖っている分、音数の少ない曲はこちらが圧倒的に良く聴こえました。
・「あ、この音どこかで聴いた」と思いました。ラックストーン、マッキントーンとは方向性が違い、ひたすら解析的です。聴感上のSNが高いので、盤質の悪い音源を聴くのにはこちらが向いていますでしょうね。
・帰宅して調べたらSN比は125db。A-48は117db。ひょっとしてスペックの差はあるのかな…

② A-48
・上手くカドの取れた音です。緩いのではなく刺激感を排除した音作りだと思います。
・楽曲を構成するパーツが等しく飛んで来るというより、多少の濃淡は感じました。
・P-4600より僅かに重心が低く、下が厚いかなと思いました。
・相性の悪いコントロールアンプと組み合わせない方がいいでしょうね。実態としてオマケでしかない「プリメインのプリ部」から繋ぎ込むことはしない方が…
・多少ソースを選ぶかも知れませんが、ハマればこちらが楽しいと思います。
ギターの音色の色気が凄い。と言うかはっきり言ってエロい。増幅方式の違いでは説明できません。エレキギターが弦楽器だと思ったのはこれが初めてです。

P-4600をまず先に聴いたのですが、普通に良い音だなと思いました。上述のとおり「あ、この音どこかで聴いた」とも思いました。オーディオ専門店の試聴環境に多いメリハリの効いた音です。
次に同じ楽曲をA-48で掛けて頂いたのですが、かなり混乱しました。全然違う。俺どっちが好きなんだっけ、何が違うんだっけ、と自問自答しないと選べないくらい違いました。

◾️P-4600
打率4割。ホームラン3本。
解析的。クール。
音と対峙したいときはこちら。
大事な商談に使うならこちら。
昼はこちら。
ヨーロピアサウンド好きはこちら。
実はクラシック向きだと思います。※但し、第一バイオリンの旋律を追うような聴き方をされる場合は除きます。

◾️A-48
打率2割、ホームラン48本。
煽情的。ウォーム。
音楽に浸りたいときはこちら。
おねえちゃん騙したいときはこちら。
夜はこちら。
アメリカンサウンド好きはこちら。
実はロック、ジャズフュージョン向きだと思います。

評価って奴は人それぞれ本当に違いますね。
A級、AB級の相違は優劣でなく増幅方式の違いと喝破された方がいらっしゃいましたが、これだけ違うと説明がつかない。
設計者が増幅方式の違いを、音作りの方向性の違いに反映させているのでしょうね。

ちなみにアテンドして頂いたお店の方は「これだけ違うと好みで選ぶしかないですね。私はP-4600が好きです」と仰っていました。
人間なんだから感想ってものがある訳で、練達のプロフェッショナルとそういう話をしたいのです。参考になるなあ。で、私は決めました。

A-48にします。

どうしてこうなった?

(続きます)

細客がセパレートアンプに手を出した話④

最大の不安は試聴さえしていない4349がまともに鳴ってくれるのかという事でしたが、導入初日から分厚い低音がばんばん飛んできます。音の重心が下がり、打楽器系の高い音も歯切れよく鳴っています。取り敢えずホッとしました。

現在、JBLスタジオモニターは全て2wayに集約されていますね。4429は最後の3wayとなりましたので、後継が無いと判明した折には一定の駆け込み需要が発生したものと想像します。
3wayをお使いの方にとって2wayへの変更はダウングレードのように見えますね。ましてこの日本の住環境で4wayの4344がバカ売れした訳ですから「2way?何それ」と感じた方も多かったことでしょう。

実際に4349を所有してみると形式はあまり関係ないなと思いました。帯域分割もスピーカーの構成がよりシンプルな分だけ高価なパーツを使えたりして、メリットもあるのでしょう。
つまりユニットは多ければ多いほど良い、という訳ではないのですね。前の所有機器と違って4349は音の定位感がしっかりしています。おかしな所から音が飛んでくることもありません。
ちなみに、ホーンの効果は分からないです。これは比較のしようがないので何とも言えないですね。

加えて言うとリスニングポイントを後ろに下げても違和感は感じません。拙宅ではスピーカーと机をそれぞれリビングルームの反対側の端に置いていますが、デスクワークをしながら聴いても快適です。チャンネルセパレーションはそこそこのレベルにまで落ちますし、高音も減衰します。ですが「ながら視聴」も楽しいです。
音楽に浸りたい時は、もちろん適切なリスニングポジションを取ります。現時点では不満らしい不満はありません。

さて。ここからが最大の課題について、です。
※この項、暫くの間、筆致がグルーミーになりますのでご了承下さい…

今回、機器の入れ替えを企図した理由を改めて記載しますと、楽曲の音数が少なければ何の問題もないのです。ところが複雑な構成の楽曲は音がもっさりします。一枚のCDの中の楽曲でさえこれはいい、これは悪いと評価が分かれてしまうのですね。

先に挙げたJeff Beckの「Wired」で言うと、「Led Boots」は何コレ?というレベルでした。
一方で「Goodbye Pork Pie Hat」は何の問題もありませんでした。良く鳴っていました。

各楽曲の、各パートの聴こえ方はレコーディングエンジニアの腕を反映したものかも知れません。それでは、イケてない録音のサルベージは僅かではあっても可能なのでしょうか?

今回、スピーカーの入れ替えで一定の改善は出来たと思います。それなら上流の機器を入れ替えすると更なる改善は望めるのでしょうか。

その場合、投資に見合うだけの改善効果はあるのでしょうか。また、機器に金を突っ込むならどちらが良いのでしょうか。
アンプ?それともSACDプレーヤー?

知見のない私には分かりませんし、知らないことは専門家に聞かないと解決できない訳で、私は専門店に教えを乞いに行きました。もちろん機器購入が前提です。が…

…お前本当に大学出たのか…

何処であっても聖人は存在するものですね。その一方で、どんな組織であっても下位の1割は箸にも棒にも掛からないと言うか、絶対この仕事向いてないだろと言うか、次の異動で総務か経理かどこか別の部署行けと言うか、お前の会社はパートさんの方がよっぽど使えるじゃねえかと言うか…

ま、こんな与太話が検索ヒットしても拙いですから実名は出しません。

①AKB T 第n店4階
「アンプなんか入替しても効果がある訳ない。今から4367に買い替えたらいいじゃないですか。あんたの住宅事情?そんなのウチには関係ない。ウチは売場にある製品を売るだけだ」

→私は思いました。
◯稚園からやり直してこい、低◯。
太客を沢山抱えて儲かって儲かって仕方ない売場なんでしょう。いい事ですね。
(◯の中に自分で好きな言葉を入れましょう)

ちなみに1階の人はカタログをくれたりしていい人でした。不良在庫と化した2階の外国製超高額中古に誘導しようとしたのが丸わかりで、本当にそれさえバレなきゃ良かったですねえ。とにかく何から何まで変わったお店でした。

②AKB nnnn店1階
「余程思いきったことをしないと改善はしないと思います」

→ 仰っていること自体は正しいですし、余計なことを言わないだけまだマシです。ですが、思いきったこととは何なのでしょうね。

私は、公職選挙は「バカの答え合わせ」だと思っています。誰かが正解を教えてくれる訳でなく、そもそも正解はどこにもない。だから何も考えていない奴に限って当選しそうな候補に乗る。大阪なんかがそうですね。

この業界も結局は「バカの答え合わせ」なのかと、暗澹たる気持ちになって来ました。
客は何をどう選択したらいいのか分からない。店は何も答えない。だから富裕層は黙って高い機種から買って行くし、その方が店には都合がいい。「情報の非対称性」を温存する方が。

このお店の人は「捨て三」だの「値段.com」の投稿だのを読んで、その気になったカモが葱を背負って飛んで来るのを待つのが仕事なのでしょうか。そこに網を張って一網打尽。ですが、店員の皆さんは知っている筈です。

そんなの買うバカ見た事ないってね。

もういっその事、オーディオ機器製造会社は自社ショールームでも開設して、メーカー直販の定価売りに業態を変えればいいと思いますよ。買いたい奴だけ買ってくれっていう商売に。
現にクルマなんかはそうじゃないですか。正規ディーラーは自社製品しか売らない訳で。

社会的不適合者の集う街、AKB。
ここはもう駄目だと諦めてロケーションを変えました。

③学生街のオーディオ店1階
「結局はソースですね。ですが蒐集し始めたらキリがないです。機器の入れ替えでは解決出来ないでしょう」

→ソースが大事ということ自体にはagreeですね。EL&PのBrain Salad Surgery なんかもう、CDは盤質最悪で聴く気もしません。今更アナログを探すとか金が掛かるだけでやりたくありません。そこまでは完全同意です。
こっちはじゃあ、機器側で出来ることはないのかって話をしているのに、そこで思考停止してしまうのは何故なんですか。

3店舗回って全滅とか、もう笑うしかねえ…
※遂に悪態の質まで悪くなってまいりました。

ここには試聴用の4349が設置してあります。持ち込んだCDでプリメインアンプの試聴をさせて頂きましたし、試聴したら買うという原理原則に従えばここで決めるべきです。それでも、どうしてもアンプを買い替えようという気にはなれませんでした。

某プリメインの5kも4k も0.8kも綺麗な音で鳴っています。ですが、アクセルとブレーキを両方いっぺんに踏んでいるような奇妙な感覚がどうしても拭えなかったのです。
今思えばそれは「会話して話が噛み合わない奴に媚びてまで高額商品を買って楽しいか?」というモヤモヤ感だったのでしょう。結局は、それがアクセルよりもブレーキをより強く踏んだ原因だと思います。

適当な言説で推奨機器をでっちあげて飯を食ってる評論家は論外だとしても、ここは実店舗ではないのですか。納得感の高いコンサルテーションをしてくれさえすれば、こっちは喜んで買う訳です…

さて。
前述したとおり、これらの販売点に共通する行動様式は、一種の自己防衛なんだろうなとは思います。何も言わない方が安全だ、客が指定したモノだけ売ればいいんだ、と。そうなったのには、何らかの理由があるのでしょう。ある意味でお気の毒さまです。

それでも、クルマみたいな値段を払って一連のシステムを更新するつもりなのに、客に「勝手に決めろ」「決めたら白紙委任状を出せ」というのは違うと思うんです。
自動車ディーラーには展示車があって試乗会があって、しかも担当営業が付く。オーディオ機器の販売もひとつのソリューションビジネスであって、客はお店に対してプロの見識を期待しているからこそ、実店舗に足を運んでいる訳ですよ。

分かるかな?分からねえだろうな…

現実は厳しくて、4店舗5フロアを回ってもこの人プロだわという見識を持った方とは遂にお会い出来ませんでした。皆さん操る日本語自体が稚拙で、絶対にこの仕事を好きでやってる訳ではないんだろうなと思いました。
こっちは問題意識という名のボールを投げてる訳です。だけど、そのボールが返ってこない。それどころかそのボールを私自身が拾いに行って、話の接穂を探し続ける始末。

これは一体どういう理由に依るのでしょうか。貴方たちは社会の最下層からも零れ落ちたゼロの人間なのでしょうか?

「お前たちはゼロか?ゼロの人間なのか?何をやるのもいい加減にして、一生ゼロのまま終わるのか!」っていうアレ…なんかもうスクールウォーズみたいじゃねえか。

多分、私の顔に書いてあったんでしょう。

細 客 っ て ね 。

仕方がないので、私はスピーカーのエージングをしながら、のんびり情報収集することにしました。実店舗よりもSNSを当てにせざるを得ないというのはかなり情けなかったですが、動画サイトでオーディオ専門店の「アンプ対決動画」を視聴するのは結構楽しかったです。

とは言え流石に、専門店が動画収録時に盤質の悪いソースはかけることはしませんね。彼等も機器を売るのが仕事であって、ボランティアでやっている訳では無いのでね。
私は動画を視聴して音が綺麗に鳴っているところ、音楽として意図を持ってソースを再現しているところといった個性の違いは感じました。JBLと相性がいいのはこっちだなと思ったメーカーさんも、一応ですがありました。

さて。
ここから先はありきたりの結論に向かっていきます。ここがこの一連の話の肝の筈なんですが全くつまらないので端的に書きます。

・会社で選びました。
・スピーカーもアンプも試聴して決めてません。
・我ながら、気は確かなのかと思います。

外国の有名ブランドのアンプについてあれこれ調べて行くと、検索エンジンの予測変換で何故か「修理」「中古」というキーワードが頻繁に出て来るのです。中古は分かりますね、高額商品ですから中古を探している人が沢山いるのは写真機材と同じことです。

じゃあ修理は何だろうと思って、検索ヒットしたサイトの記事を読んだらびっくりしました。モノはCDプレーヤーのようでしたが、一旦壊れたら代理店でも、正規ルートで本国送還してもまともに治せないというのです。
壊れるという話は聞きます。問題はそこではありません。きちんと治せない事が問題なのです。

その方は修理業者さんなのでしょうね。静かな筆致ではありましたが、怒っていらっしゃいました。興味を持たれた方は「ここだと思うメーカー名」と「修理」で検索してみて下さい。

こういうのを金持ちの道楽って言うんじゃないのか…

希望小売価格は頭抜けて高いのに、中古や店頭展示品の売価が安いのはこういう理由かと腹落ちしました。先の某店でも中古在庫の状況は検索が可能なのですが、誘導された機器は未だに売れた形跡がありません。
これはもう、当該製品は多少の不具合が発生する事を織り込んだ上で、富裕層がお遊びで買うものだと理解するしかないですね。

結論。
多少の事に目を瞑ってもアキュフェーズのセパレートアンプに行くしかない。それで駄目ならもう諦めよう。

(続きます)

細客がセパレートアンプに手を出した話③

この日の試聴の結果として、スピーカーはそれなりのサイズ感のものに回帰しようと思いました。我が家ではトールボーイ系のスピーカーをまともに鳴らせる気が全くしなくなったのです。

私の脳内にはNS-1000Mが刷り込まれていて、結局はあの形式と言うか、300mmクラスのウーハーに視覚的なものも含めた魅力を感じているのかも知れませんね。
ちなみに、敷居のあまりに高すぎるラックスマン&フォーカルのブースは横目で見ながらスルーしました。残るブースはJBLです。

いちばん奥の目立つところに4367が鎮座しています。デカっ!高っ!定価211万!むーん。
中の人と少しお話しさせて頂きましたが、お勧めはHDI-3600 GROとの事でした。少し頭を冷やそうという訳で、この日は帰宅しました。

後述しますが、オーディオ店の方が自分の意見を表明することは稀で、今から思うと珍しいです。私は店員さんが自分の意見を表明しないのは一種の「自己防衛」だと思っています。

この国にもクレーマーと呼ばれる手合いは相当数存在しますのでね。中には「お前があの時こう言ったじゃないか」と、言った言わないの水掛け論に持ち込まれた挙句、開封後の返品を要求される事もあるのでしょう。それを避ける為には「あくまでも客が自分の意思で選んだ」という手順を踏ませる必要があるのだろうなと想像します。

それにしても。何故にハーマンの中の人は4367を推してこなかったのでしょうね。理由は良く分かりません。加えてその方は「スタジオモニターは聴き疲れします」とのご高説を展開される始末で…自社製品をディスる社員…本当に大丈夫なのでしょうか。

エベレストだのK2だの、世の中には上の上がある訳です。オーディオは毎日の生活を豊かにするということを実証して更なる高みに誘導するのが販売店さんの仕事じゃないんですかね。
標高128mの七国山に登って登山気分を味わうのもいいですが、オーディオ機器の買い替えに際しては「横滑りは絶対に金の無駄」ですので、せめて斜め上の提案はして欲しかったです。

もっと平たく言うと、私は定価40万のスピーカーを使っているという現況をお伝えしている訳で、定価48万の機器を推奨されてもなあと思いました。同等品を買い替えするくらいなら、今のスピーカーを我慢して使えばいいじゃんねと誰だって思うでしょう。

いつもお世話になっている日本最強小売店の名誉の為に言うと、ヨドバシはポイントの還元で客の次の需要を喚起するというビジネスモデルですね。依って、ハイエンドオーディオのような高額商品はあまり数が出ないのかも知れませんし、お店としても推奨し辛いのかなとは思います。
100万のポイント1割付与なら、私は最初から90万のポイント無しを取ります。10万円は流石に大金だと思いますし、キャッシュをわざわざポイントで寝かせる理由は無いですよね。

なお、カメラ関連の新製品についてヨドバシの値付けが業界標準になっているのは問答無用で凄いと思います。専門店はそこから1割引した値段を初値にしますからね。プライスリーダーシップとはこの事ですね。
ですが、オーディオ機器に関しては探せば安い店は結構ありますし、JBLブースの方もその辺りを意識していらっしゃったのかも知れません。

ちなみに「販売員さんのベタ推し」は、時に絶版寸前の機器を捌きたいという思惑があったりしますので、それなりに注意は必要です。

いや、ひょっとすると…
私は世界のオーディオ事情は寡黙にして知りません。知りませんがJBLのお膝元アメリカでもピュア・オーディオは絶滅危惧種なのでしょうか?3600のカテゴリーはあくまでも「ホームエンターテインメントスピーカー」ですし、アメリカではスタジオモニターはあまり売れていない、なんて話も漏れ伝わってきます。本国に右へ倣えでハーマンの日本法人もこのカテゴリーを販売強化しないと自分の首が危ないとか…

ま、それは無いか。
いずれにしても私はテレビの脇に置くスピーカーを探してはいない訳です。折角機器を推奨して頂いたにも関わらず、ご期待に添えず申し訳ございません。

私はこうして秋ヨド4階のオーディオコーナーを一通り回りましたが、大型小売店のブースを回っている限り、例えばハーマンインターナショナルの方が「タンノイが良いですよ」とコメントする事は絶対に無いですよね。
という訳で、ここから先は専門店に河岸を変えるしかないと思いました。
ヨドバシカメラさんには写真機材をはじめ、書籍、事務用品、プリンター用消耗品、音楽ソフト、記録用メディア、食品、その他諸々、毎年しこたま金を落としていますので、何卒ご容赦の程。

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

さて。専門店で試聴をすると言うことは、少なくとも当該機器を含め、何らかの購入を伴うものでなければいけないと私は思っています。全員が全員、利酒しかしなかったら酒屋は潰れてしまうのと同じですね。
と言う訳で、日を改めてスピーカーの「購入」を前提として秋葉原の専門店に突撃しました。

ところがですね。
私の思惑とは違って、専門店さんでのスピーカーの選定は雲を掴むような話でした。

ヨドバシアキバさんのように、まずは大部屋に行って、次にメーカー別ブース行くという方法が取れれば良いのですが、秋葉原の専門店さんは機器の価格帯で設置階を分けています。
依って、フロアが変わればSACDプレーヤーやアンプを含めた試聴機器のパッケージングが変わってしまうのです。スピーカーに当てがうアンプはと言えば、1階はプリメインですが上のフロアはセパレート。比較にならないのです。

あるスピーカーを手持ちのCDで試聴させて頂いた時に「こんなに音が緩いのか」と感じた事がありました。やんごとなき方々の為のデモ音源はクラシックと相場が決まっていますね。ディストーション掛けまくりのヘヴィメタルが大音響で炸裂するなど、お店側は最初から想定もしていないでしょう。
私は機器本来の実力はそんなものではないだろうとは思いました。ですが、ベタ置きしてある試聴用のコントロールアンプを変えてくれとは言えませんよね。

要するに、専門店の試聴用機器は「804を使っているけれどグレードアップしたいから802を試聴させて欲しい」というように、ターゲットが明確に決まっている方の為にメーカーから貸与されているのだと思います。
言い換えると「専門店は雲を掴むような曖昧なニーズを具現化する為に行くところではない」のでしょうね。専門店で出来ることは「試聴機器をWEBで公開している店舗に行って、その機器をピンポイントで試聴することだけ」と考えた方が精神衛生上良いと思います。

私のようにB&W、JBL、KEFあたりの量販価格帯で機器の入れ替えを考えていた人間にはヨドバシアキバで機器を比較して購入するのが手っ取り早かったですね。
804D4や4367のように200万円クラスまではデモ機が置いてありますし設置台数そのものも多い。メーカー間の比較もしやすく便利です。
但し、各ブースの方に試聴をお願いしたら、そこで買わない訳にはいかなくなります。
人間なんだから仁義ってものはある訳です。ところが、実際の販売価格は専門店の方がかなり安い事も多いので充分下調べをしてから望むことをお勧めします。

尤も、これが貴方のような太客になると話が変わる訳ですね。量販店では取り扱いしていないソナスや何たらアコースティック、果ては1億円オーバーのマジコM9あたりを考えているあなたは、専門店に直行して指名試聴からの指名買いしかないです。はい。

細客は辛いっす。
太客になりたかったねえ…

それにつけても。太客さんを相手にした商売はどこも至れり尽くせりなのでしょうねえ。
外国製ハイエンドは高い方から売れるという話ですし、伊勢丹三越だの高島屋だのの金持ち相手の外商部みたいなもので、オーディオ店も「富裕層を掴んだら絶対離すな」みたいな感じなのだろうと想像します。
機器の自宅貸し出しという、腰を抜かしそうなサービスを提供するブランドとお店があるのもその証左で、貸出機を自宅試聴出来る方は人生勝ったも同然ですね。ある意味で成功者の特権と言えるでしょう。

例えば某C-3850を使っている方の所には…
「もしもし!いつもお世話になります。早速ですがC-3900が入庫致しました。お客様の為に1台確保してあるのですが、まずはご自宅で試聴など如何でしょうかあああっ(はぁと)」などといった擽りの電話が入ったことでしょう。

太客ウラヤマス。鴨葱ともいいますが←

で、結局どうしたかと言うと。
・3回出直して最後はエイヤで買いました。
・試聴機ありませんでした。
・男は黙ってブルーバッフル。
・JBL4349
・定価1,188,000円。

どうしてこうなった…

(続きます)

細客がセパレートアンプに手を出した話②

冒頭注: 今回入れ替えした機器に関し、里子に出した製品名は書きません。オーディオは「製品の優劣ではなく、ほんの細部が好みか否かという問題でしかない」というのがその理由です。手放した機器も充分現役で行けますし大切に使っている方も沢山いらっしゃると思います。
本稿はあくまでも馬鹿者の与太話ですので為念。

⭐︎ ⭐︎ ⭐︎

Covid-19 以降、私はとにかく自宅で過ごすことが増えました。既往症持ちの年寄りは自宅リビングで大人しくするに限ります。
ソニーの史上最高益更新も「巣篭もり需要」に支えられての事のようですが、私個人も本やCDを通販することが増えました。
表記製品を購入したお店で話を聞いても「お陰様で売上には影響がありませんでした」との事で、ハイエンドオーディオも巣篭もり需要の恩恵に預かった業界ということになるのでしょう。

ちなみに私は、定価50万クラスのAB級プリメインアンプと、定価40万クラスの3ウェイ4ユニットスピーカーを使っていました。所謂トールボーイですね。

さて。
今年1月に、敬愛して止まないJeff Beck氏の訃報が飛び込んできまして、私は強い衝撃を受けました。高校3年の時に、金もないのに広島から倉敷までコンサートを見に行った事を昨日の出来事のように思い出します。アンコールは「Blue wind」だったなあ。しみじみ。

そこで私は久しぶりにロックギターの金字塔である「Wired」を聴こうとしたのですが…

1曲目の「Led Boots」のイントロでいきなり「ハア?」と思った訳です。ナラダ・マイケル・ウォルデンの超技巧変態ドラムが「ブリキの太鼓」にしか聞こえないではありませんか。

これは一体、どうした事か…

とにかく低域がスカスカで音の張りが無いのです。大元の音源がそんなものだと割り切れば、それまでの話なんですけれど。

拙宅はマンションという名の「犬小屋」です。リスニングルームの設置など夢のまた夢。リビングルームの長辺をスピーカーに背負わせても短辺を背負わせても、バスレフダクトのスポンジを入れポン出しポンしても有意差がなく何の改善も出来ません。

リアバスレフのスピーカーは、本当に設置が難しいですね。これは困ったぞ…

私はオーディオで一番重要なのは、結局はソースの盤質だと思います。レコーディングエンジニアの腕もあるでしょうが、全てのソースを好きな音で鳴らすなど不可能だと解っています。
それでは、自分の大好きな楽曲の盤質が悪かったり、音圧が異常に低い場合は諦めるしかないのでしょうか。機器の適切な選定やアクセサリーの差し替えで、一定のサルベージを図ることは出来ないのでしょうか。

まあ、ここが沼の入り口なのでしょうね…

私は財力の範囲で出来るだけやってみようと思いました。もうそんなに生きない訳ですし、人生って奴は楽しむ為にある訳です。故障や経年劣化以外でオーディオ機器の入れ替えを目論んだのは、実はこれが初めてです。

今から5年前の事。長年連れ添ったスピーカーであるNS-1000Mの入れ替えをしたのですが、その時に住宅事情を優先した選択をしたのは失敗だったという事になりますね。これが所謂「授業料」という奴なのでしょう。
それでも、サイズ感の割には良いところも沢山ありました。スコーカーで音決めをしているような感じがあり、中高域の再現性が良かったのです。松岡直也さんのようなピアノを前面に出す楽曲にはアタック感がありましたし、平原綾香さんや岡村孝子さんのような女性ヴォーカルは、オケよりヴォーカルが前に出る感じでこれも良かったです。

つまり、量販価格帯のスピーカーには設計意図に起因する僅かな得手不得手があって、購入するための試聴をするのなら、いちばん好きな楽曲でやらなきゃ駄目だという事ですね。
手持ちの盤質のいいCDを選び、オーディオショップに持ち込んで試聴をしても、きちんと鳴るのが当たり前。ほとんど意味は無いです。
そうではなくて、試聴に際しては「最も好きな楽曲を好きな音で鳴らす選択をする」「機器の粗を暴く」くらいの気持ちが必要なのだと思います。

そこで今回は
①低音の絶対量確保
②楽曲の各パートの分離
を目標に、機器を入替する事にしました。

なお、入れ替えに際しては「先にスピーカーを入れ替えして、それでも駄目なら上流で音決めしているアンプを入れ替えよう」と考えました。全く根拠はないのですが、私は音に対する支配力、影響力の大きさは、まずスピーカーで、次がアンプのプリ部だと思っています。

さて。取るものも取り敢えず行動開始。

まずは問題の「Wired」を持ってヨドバシアキバに行き、4階の大部屋に展示してあるスピーカーを片っ端から鳴らしてみました。あそこは「スピーカーをポン置きしてある展示場」とも言えますが、とにかく機器の絶対数が多いです。物理的なサイズ感と音の傾向を掴むのには秋ヨドが便利ですね。SACDとアンプも現有機器のメーカーと合わせることが出来ました。

結論としては、トールボーイ系のスピーカーは今回の狙いとは合わなかったです。やっぱりと言うか案の定と言うか、低音が前に飛んできません。加えて何となく「人為的に整えたような音」だなあと私は思ったのです。

もちろん、聴く人が聴けばちゃんとした評価を下せるんだろうなとは思います。ですが、今回は上記の視点で機器を選定しようと思いましたので、私の狙いとはたまたま合致しなかったという事です。それだけです。

あの大部屋の展示機器の中では、唯一702S3は端正な音でいいなと思いました。ですがB&Wは本当に高くなりましたね。700シリーズで定価114万とかマジっすか。私は店頭で腰を抜かしそうになりました…
(注:グロスブラックの希望小売価格。実勢価格は現在70万円台まで下がっています)

その後、念のためB&Wのブースにも行ってみたのですが805D4GBの破格のお値段。なにこれ。スタンド抜きで定価135万とか。うわー!
800シリーズの仕上げはぶっちぎりで美しいですし、見ているだけでも所有欲を満たしてくれそうです。ただ、筐体が物理的に小さいので低音の絶対量確保は難しそうなのと、今以上に設置に気を使わないといけない可能性が高いと思い、今回は見送りました。

ブースにはラスボス804D4も常設展示してありました。でも現行804のグロスブラックに至っては、なななな何と定価231万円!!無理ですね、無理。絶対無理。宮大工の作る家具か…
で、スペックを調べたら165mmウーハー2発なんですね。良かったです。もう少し大きければ食指が動い…無理です。買えないです。もちろん憧れの対象ではありますが(汗)。

現状では広く世界を見渡しても4〜5ユニットのトールボーイ・フロア型スピーカーが主流です。B&Wと同じイギリスのKEFもそうですね。だけど、自分には何となく違うんだろうなという事でこれも見送りました。
ただ、デバイス屋のソニーがメカ屋のニコンを圧倒したように、いずれはハイテク満載のKEFがゲームチェンジしてB&Wを圧倒する日が来るんだろうなという気はします。青山に新社屋も完成しましたし、これから怒涛の進撃が始まるんだろうなと。

ちなみになんですが。
パテック・フィリップだの、オーデマ・ピゲだの、B&Wの800シリーズだのをお買い求めになる方は、決済はどうされているんでしょうか?
与信限度額青天井のダイナーズだのアメックスだのでポンと1回払いとか?(滝汗)

お店に現金持ってっても嫌がりますよねえ…
札勘しないといけませんよねえ…

要するに人間には釣り合いってものがあって、私には決済出来ない804Dは買えないって話です。買おうと思えば買えるということと、当たり前にさらっと買えるということは、違うと思います。

(続きます)

細客がセパレートアンプに手を出した話①

誰かが言っていました。手段自体が目的化してしまう事を趣味と言うのだと。私は、こと写真に関しては「機材の蒐集も含めての趣味」だと認識しております。従い、この言説には謹んで同意する次第です。

写真機材の中でも、とりわけ広角レンズは実際に購入して使ってみないと分からない事が多いです。周辺光量落ちが酷い、いくら絞っても周辺光量落ちが解消しない。フレーム外の光源をゴーストとして拾ってしまう。歪曲を後付で補正したら想定した画角で使えない、等々。このため、このカテゴリーだけは未だに機材を取っかえ引っ換えしている始末で、収束する気配すらありません。我ながら困ったものです。

カメラ本体は、手持ちのα1も来年あたり更新が来ると思います。後継機はおそらく100万円を超えてくるでしょうね。私が買うか買わないかはさておき、必ずバカ売れすると思います。でも要らないひとには要りません。
同じように動きモノを撮らない方にはα9IIIの驚愕の高性能、グローバルシャッター&120fpsの超高速連射機能は必要ありませんね。こちらもお値段ど高めの想定価格88万円。風景やポートレートを中心に撮影されている方は「120fps?何それ。そんなもの犬にでも呉れてやれ」と思っていらっしゃる事でしょう。
また、何が何でもパンフォーカスという撮影意図がある場合は、レンズの選定で悩むよりも別のフォーマットに手を出すほうが手っ取り早い。画質には多少目を瞑ってでも、被写界深度の深い1インチフォーマットを選択することになるでしょう。

このように写真という趣味は「何をどんな風に撮りたいか」さえ決まれば機種選定は半分終わりです。必要なスペックから機材を選定し、後は財布と相談すれば良い訳ですね。要らない機能に無駄金を突っ込む理由は一切ありません。
欲しいけど費用が出せないと思ったら、豊富な中古製品から製品を選ぶと言うのもひとつの方法です。

さて。
機材の購入・商品価値の減耗という視点で見ると、趣味性が高くかつ高額商品である写真機材とオーディオ機器は、同じ特性を持っていると思います。

新品買ってテンションアゲアゲで自宅に帰っても、開封した瞬間に価値半減。製品寿命は4年程度。販売終了後に保守部品の保有期限が切れたらサヨウナラ。
幸か不幸かセカンドマーケットというものが存在し「修理不能になるのを嫌うなら値段が付くうちに売り飛ばして次を買え」ってところまで同じです。

写真機材に関しては、私は「下取り交換を活用してばんばん製品を入れ替えてしまえばいい」と考えています。イメージセンサーであれ、エンジンであれ、レンズエレメントであれ、まだまだ進化の余地がありますからね。
一方のオーディオ機器については、私はどちらかと言うと一旦音決めをしたら機材は大事に使いたい派なのですが「授業料」を払うことを躊躇わない方は沢山いらっしゃいます。
これは「どちらが正解か」という議論をしたい訳ではなくて、どちらも正解。単に「機材の購入や入れ替えに関する行動様式には類似性があると思う」という話で大事に使うもよし、頻繁に入れ替えするもよしです。

ところで。両者には明確な違いもあります。
写真機材は「スペック」に対して対価を払うものと言い切っていいと思います。しかも機材には民生用、業務用の区別がありません。ある意味で珍しい業界だと思います
写真には撮影を生業とするプロがいます。頂点に立つごく少数の写真家は尊敬の対象で、私にとって前田真三荒木経惟、操上和美、久留幸子はほとんど神です。一方でプロと呼称される人の中には「作例プロ」という謎のカテゴリーがあり、私はヒトバシラー伊達さんだけは個人的に敬愛していますが、彼等は特定メーカーの長所だけを気持ち悪いくらい持ち上げます。ですが写真機材を正しく評価し、駄目なところは駄目だと指摘する「評論家」は只のひとりもいません。

理由は簡単でメーカーに都合の悪い事を「評論」しようものなら、明日から干されて飯の食い上げになるからです。太鼓持ちの仕事もなくなれば、機材の無償貸与も無くなる。先の広角レンズが典型的な例で、誰一人としてダメ出しをした「評論家」は存在しません。故に私はメーカーの紐付き広報であるほとんどの作例プロを評価していませんし、本当に残念ですが、食うためなら人間はここまで卑しくなれるのかと断罪せざるを得ません。

ではオーディオ機器はどうか。機器の購入とはスピーカーの効率や、アンプのダンピングファクターといった「スペック」に対価を払う事ではありませんね。映画館やライブハウスを対象にしているような業務用機器は分かりませんが、そもそもCDやレコードを鳴らして飯を食っているプロはいません。
一方で、こちらは写真とは違って何故か評論家と呼ばれる人達が沢山います。はっきり言って私は口舌の徒は嫌いですし、オーディオ誌は一度も買ったことがありません。

極言してしまうと、私は、オーディオとは「好き」に対して金を払う趣味だと思います。

だから奥が深く、かつ始末が悪い訳で、他人の評判を鵜呑みにしてオーディオ機器を購入したら、只の散財になる可能性が高いです。
(※それだけは止めてください)他人の好きと自分の好きは、多くの場合違います。

言動の怪しい自称評論家に加え”値段.com”あたりには自分が選ばなかった製品をひたすらディスる方がいますね。本当に見苦しいです。
買って実際に使い込んでからここが駄目だという話をするのならともかく、使ってもいないモノをひたすら貶めて一体何が楽しいんですかね。そんなにしてまで歪んだ承認欲求を満たすより、少しくらい勉強してまともな大学にでも入り直せばいいと私は思いますが。

それとは逆に、自分の購入した機器に両手を上げてひたすらオール5を付けるのもちょっと格好悪いかなと思います。機材を自分でちゃんと使い込んでいけば、必ず改善要望事項は出てくるでしょうから。
あなたがオーディオメーカーと言う名の新興宗教に入信したのなら止めません。ですが、あなたが買ったのは例えばプリメインアンプであって、壺ではないと思いますよ。

そのどちらにも属さない人達と言うか、世の中にはどんな趣味であれ好事家というものが存在します。そこまで突き抜けたひとは自分でホームページを開設したり、X(Twitter)の専用アカウントで情報発信をされていらっしゃいます。
酸いも甘いも噛み分けた方の評論を拝見するのは本当に楽しいです。しかしながら逆立ちしても私はあの領域に到達するのは無理ですし、そもそも私にそんな財力はございません。

それでは一体何を信用するのか、ですが。

オーディオの機器選定に際しては自分の「好き」を正しく認識し、正しく言語化することだと思いますね。信じるのは自分の耳です。

その上で信頼に足りるお店の方にアテンドして頂いて、会話しながら機器を試聴して購入を決めるのが良いです。
運が良かったんでしょうね。私は最後の最後でたまたまそんなショップさんを見つけました。

別の稿で言及しますが「ジャズ、ロックはAB級アンプ」とよく言われます。ですが私は真逆の結論に達して純A級パワーアンプを購入しました。私にとっては「ジャズ、ロックはA級アンプ」という結論になったという事ですね。
繰り返しますが信じるのは自分の耳だけで良いのです。「王様の耳はロバの耳」と思って下さい。

ちなみになんですが。
私は過去に会社の選定を間違えたとしか思えない事例をいくつも経験しています。機器を長く使うつもりなら、購入する会社の選定も大切だという事は念の為言及しておきます。

私は「保守部品の保有期限が切れている」という理由でDENON DCD-3500Gの修理を門前払いされた事があります。日本コロムビアも会社が傾いた頃だったし、仕方なかったですかね…それでもトレイ閉開の不具合なんて腕のいい修理業者さんなら楽勝だと思いますし、私はそれ以降同社の製品については長く使うのではなく、期限を切って入れ替えすべきものという前提で使っています。

それでも想定している耐用年数を使い切っただけDENONはまだ良くて、YAMAHA A-2000に至っては買っていきなり絶不調。保護回路の不具合なのか、断続的に音が切れるという謎の故障に手を焼いたその挙句、頭にきて粗大ゴミに出しました。勿体なかったなあ。でもスピーカーケーブルの短絡でなければ、後は中身の問題ですもんねえ。

そう言えばONKYOにも謎の不具合が…
Integra A-DS939。絶対に押してはいけない謎のキルスイッチみたいなのがあって、いくら取説を読んでも復帰の方法が分からない。メーカーの方を自宅に呼んだら呆気なく復元しましたが、すぐ再現。片っ端からスイッチを押しても復帰しないので、諦めてこれも捨てました。今思えば、故障じゃないから売却すれば良かったですかね。そうこうしていたら…会社自体が無くなってしまいました。

それからPioneer。こちらは会社のあり様が大きく変わりましたね。アンプ、CDP、カセットデッキレーザーディスク、ミニディスク。自分で言うのも何ですがパイオニアはかなり好きで社長は俺に感謝状出せってくらい買いました。ですがもう現有機器は壊れたら修理は無理でしょう。同社の製品は経年劣化はありましたが、故障で使えなくなったのはレーザーディスクプレーヤーだけです。大変残念な事で、ため息しか出ません。
どうせならパイオニア三洋電機のオーディオ部門と合併できなかったかなあ。昔、OTTOというブランドがありましてねオットー・パイオニア。略してオッ…いえ何でもないです。

これまで使った製品で、結局、いちばんまともだったのはSANSUIだった気がします。故障で捨てた経験がありませんのでね。惜しい。実に惜しい。やりように依っては日本最強のプレミアムブランドになっていた可能性もありますからねえ。OBの方がメンテナンス会社を作られたんでしたっけ。今となってはその存在が僅かな救いですね。
※ゾノトーンの創業者でいらっしゃる前園俊彦さんはサンスイにいらしたんですね。「前園俊彦物語」には当時の興味深いお話が記載されています。是非ご一読ください。

DENONYAMAHAONKYO、Pioneerといずれ劣らぬ名門をディスってしまい本当に申し訳ないのですが、いずれも当時の収入を考えると決して安い買い物ではなかった訳です。擦り傷やら大怪我やらいろんな不具合に接して何度もアイタタタタ…結果として、機材に大金を払うならよくよく調べてからにしないと酷い目に遭うという「羹に懲りて膾を吹く」式の行動様式が私の身体に染み付いてしまった訳です。

趣味で使う機材に大金を払うならよく調べてから、という自己規制は一種の踏み絵みたいなものだと思いますね。写真機材であれオーディオ機器であれ、思ったとおりの性能を発揮してくれないこともある。最悪なのは壊れて直せないことですが、諦めて「授業料」の支払いが必要なこともある。それを許容できるか出来ないかが「趣味」たり得るかどうかの分岐点だと私は思うのです。

(続きます)