2月14日の朝と夜

まえがき

二次創作です。小説の一場面にするためのスケッチ、のつもりだったのですが会話だけで長くなってしまったのでひとまずオチもつけてまとめました。全編会話文のみで、特に物語らしい物語はありません。

時間設定は原作無印の最終決戦から卒業式の間ということにしていますが、もしふたりの時間が正月明けから卒業式までワープしていると解釈すると、全体があり得ない会話になってしまいます。その場合はアナザーストーリーというか平行世界の話として許してください。もっとも、志穂や莉奈たちにはふたりがいつも通り存在しているように見えていたはずなので、最初の昇降口での会話は問題ないとは言えます。

  

1 朝の昇降口

莉奈 おはよう 

志穂 おはよう。見た見た見た? さっき校門のところで、剣道部の中島くんが女子に囲まれてたの。

莉奈 それを言わないでよ。私、それ見て自分のチョコ渡せなくなったんだよね。なんか近づけなくて。

志穂 あ、莉奈も中島くんに?

莉奈 うん。今日中にはぜったい渡すよ~。あ、なぎさ。

なぎさ おはよう、莉奈、志穂。ふう、参った、参った。

志穂 ね、ね、ね、その紙袋、全部チョコレート?

莉奈 ほんとだ。でもそんな両手に持ちきれないくらい、誰にあげるの?

なぎさ これ? あげるんじゃなくて、もらったやつだよ。さっき校門のところで女子に囲まれてさ。あ、下駄箱の中にもあった。このラッピングは手作りだね!

志穂、莉奈 はあ……

後輩1 あの、先輩! これもらってください!

なぎさ 私に? ありがとう。

後輩2 美墨先輩、いつも応援してます!

後輩3 なぎさ先輩!

後輩4 先輩!

志穂 なんかなんかなんか、不思議な光景だよね。

莉奈 一年の子たちはラクロスやってるなぎさしか知らないからねえ。

志穂 怖いよね、イメージって。

なぎさ 何の話?

莉奈 なぎさは相変わらずモテるねえ、って。

志穂 『私に? ありがとう』なんて、澄ましちゃってニクいよねえ。

なぎさ うふふ、この日は一年で一番楽しみなんだよねえ。学校中のチョコがぜんぶ私のものになるみたいじゃない?

志穂、莉奈 それは気のせい。

 

2 帰り道

なぎさ いやあ、きょう一日でたくさんもらっちゃった。まさに癖っ毛で綿だね。

ほのか 濡れ手で粟、ってこと?

なぎさ そうだっけ? へんなの。チョコなのに粟なんだ。

ほのか それはものの喩え! 大体そこまでこだわってて、どうして言い間違うのよ!

なぎさ まあいいじゃない。とにかくいっぱいあるし、ほのかにも一個あげるね。

ほのか くれた人に悪いわよ。なぎさへのプレゼントなんでしょう。ほら、手紙が入ってる。

なぎさ そう堅いこと言わずにさ。毎年お父さんと亮太にあげるぶんも、私がもらったのをそのまま渡してるんだから。

ほのか うーん。やっぱりもらえない。

なぎさ えー、ほのか喜ぶと思ったのに。何だかがっかり。

ほのか なぎさにチョコをくれた子たちも、なぎさの喜ぶ顔を想像しながら作ったり選んだりしてくれたんじゃない?

なぎさ ん……そうか、そうだよね。私、そんな風に考えたことなかったよ。

ほのか でも、なぎさの気持ちは嬉しいよ。

なぎさ うん。ほのかは誰かにあげるの?

ほのか まず忠太郎に……

なぎさ 忠太郎!? 犬にバレンタインのチョコなんて、あり得ない……

ほのか そうよ。犬はチョコレートを食べると中毒を起こすから、絶対にあげられないの。だから今朝は骨つき肉をあげてきたよ。いつもドッグフードばかりだから、こういう日はね。

なぎさ へえ……骨つき肉……

ほのか なぎさのぶんはないよ。

なぎさ わ、わかってるよ、それくらい。でもチョコレートが食べられないのか……犬じゃなくてよかった……

ほのか チョコの他にも、ネギやタマネギも食べられないから、台所に入って来たらいたずらして食べないように気をつけてなきゃいけないのよね。

なぎさ それなら大丈夫! タマネギは嫌いだもん。

ほのか 犬の話! なんでなぎさの話になってるのよ!

なぎさ だって……。そうだ、人間の男の子にはあげないの?

ほのか 藤村くんと木俣くんにはあげるかな。いつもお世話になってるから。

なぎさ 藤P先輩に……

ほのか なぎさはあげないの?

なぎさ そ、そうか。お世話になってるってことであげてもいいんだ。

ほのか そういうことじゃなくて。

なぎさ だ、だってそういうことじゃない。

ほのか もう、今さら隠さなくてもいいのに。

なぎさ か、隠すって何を? ……あ、よし美先生。

よし美先生 あなたたちも帰り? 先生は先に行くわね。今日は早く帰らなきゃならないの。

ほのか さようなら、先生。

よし美先生 さようなら~、ららら~。

なぎさ よし美先生、なんか雰囲気がいつもと違くない?

ほのか きっと旦那さんと約束があるのよ。

なぎさ そっか、旦那さんと……新婚夫婦の、ラブラブバレンタイデー……

 

(妄想)

藤村 おかえり、美墨さん。今日の夕飯はチョコレートフォンデュだよ。

なぎさ 先輩! どうして私の好物を!?

藤村 美墨さんに喜んで欲しくてね。今日はバレンタインに誕生日も先取りして、デザートもチョコだよ。

なぎさ すごーい! 私、先輩とチョコさえあれば……。あっ、もちろんチョコより先輩の方が好きだけど……。でもチョコがあればもっと……

 

(現実)

ほのか なぎさ、なぎさ? 電柱に頭ぶつけてるよ。

なぎさ え、そう? 慣れてるから気づかなかった。

ほのか 慣れてどうするのよ! ほら、ちゃんと前向いて歩いて。よだれも拭いて。

なぎさ うん……。でもさ、新婚夫婦のバレンタインてどんなかなあ。外国の高級なチョコとか? あっ、大人だからウィスキーボンボンとか。

ほのか 結婚て一緒にチョコを食べることじゃないと思う。たぶん。

なぎさ あ、なんかやな感じ。自分だけ大人ぶっちゃってさ。じゃあほのかは、結婚ってどんなことかわかるの?

ほのか そりゃあ、ちゃんとわかるわけじゃないけど……私は、理想や目標を共有できる人と暮らせたら幸せかな。

なぎさ り、理想……なんか難しそうだね……

ほのか なぎさはそういうのないの?                                 

なぎさ も、もちろんあるよ? 理想くらい。ええと理想、理想……。あ、そうだ。結婚したら晩ご飯のおかずは毎日ハンバーグかからあげがいいな。

ほのか おかず?

なぎさ あーでもハンバーグの日はからあげが恋しくなるし、からあげの日はハンバーグがなくて寂しくなるよね? そうだ! ハンバーグのつけ合わせをからあげにすれば! 理想のメニューじゃない?

ほのか なぎさ、それじゃ野菜が足りない……ってそうじゃなくて!

なぎさ あれ、なんかおかしい? ほのか、ハンバーグ嫌いだっけ?

ほのか もういい……

 

3 夜

なぎさ お父さん、まだかなあ。せっかくチョコレートがあるのに。

理恵 そんなこと言って、お父さんが会社でもらって来たのを食べたいんでしょ。

なぎさ ぎくっ、なんでわかるんだろう。

理恵 なぎさの考えてることくらいわかるわよ。

なぎさ すごい。お母さん、何だかほのかみたい。あれ、じゃなくて、ほのかがお母さんみたいってこと?

理恵 相変わらず雪城さんと仲良しなのね。

なぎさ うん。なんか、ほのかは私のこと全部お見通しって感じ。今日もね、私が骨つき肉たべたいなあって思ってたら……

理恵 骨つき肉? ……あら、電話鳴ってる。亮太! 電話に出て!

亮太 は~い。もしもし? あっ……! はい、僕です。亮太です。そうだ、こんど宿題を教えてもらいに行ってもいいですか? それから僕、春の星座に興味があって……

なぎさ 亮太! それほのかからの電話でしょ。なんであんたがしゃべってんのよ?

亮太 ちぇっ、ケチ。

なぎさ もしもし、やっぱりほのかだ。ごめんね、亮太がバカなことばっかり言って。でも、どうしたの?

ほのか あのね……帰りに言いそびれたんだけど、こんどの土曜日ひまだったら、一緒にイズミ屋さんに行かない?

なぎさ いいよ。でも珍しいね、ほのかがお菓子なんて。

ほのか うん。きょう一日、ずっと考えてたの。もし顔を見て話せてたら、私たちからプレゼントをあげてた人たちがいるって。

なぎさ あ……

ほのか 私、今でもずっとミップルの声が聞こえるのを待ってる。

なぎさ わかるよ。私もいつもメップルとポルンに話しかけてるもの。

ほのか だから、ふたりでチョコレートを買いに行こう?

なぎさ 賛成。ふたりで一緒に選ぼう。

ほのか いつかまた会いたい人たちのために……

なぎさ 違うよ、ほのか。

ほのか 何が?

なぎさ きっとまた会える人たちのために。

ほのか ……うん、そうだね。そうだよね。ありがとう、なぎさ。

なぎさ なあにそれ。ありがとうだなんて。

ほのか なんでもない。ふふふ。

なぎさ へんなの。ふふふ。

亮太 姉ちゃん、何泣いてんの?

 

おしまい

 

あとがき

いつのことだったか、「なぎさって『そうだ! ハンバーグのつけ合わせをからあげにすれば!』とか言いそうだよなー」とふと思ったのが妄想の発端ですが、まさかこんなになるとは予想だにしませんでした。書き終えて気づきましたが、からあげがつけ合わせについてるハンバーグって弁当屋に売ってるハンから弁当ですね。

 

途中でなぎさが藤Pとの結婚生活を妄想しますが、これは原作とずれがあります。公式ではなぎさの覚醒時(?)の妄想は藤Pと並んで歩く、手が触れ合うなどささやかな内容で、寝ている時の夢は試験で100点を取る、藤Pとの結婚式など大それた望みになるのがお約束です。「ふたりはプリキュア」はこういうバカバカしいところまでとても丁寧に描いているアニメだと思っているので、ここは自分で書きながら不満が残りました。いつもは気弱ななぎさも、チョコをたくさんもらって舞い上がっているのだと理解していただければ。

 

誕生日やクリスマスの例から考えると、なぎさはほのかに言われなくとも藤Pにチョコレートをあげる計画を立てていておかしくなかったかも知れません。これについては、なぎさにとってバレンタインデーは自分がチョコをもらう日だったので男子にあげるという発想がなかったから、と考えました。なので妄想の中でも、藤Pがチョコを用意してなぎさの帰りを待っています。

 

最後になぎさが泣いているのはまったく想定外のことで、書き終えて自分で驚きましたが、でも納得もしています。原作を見た時、なぎさもほのかも14歳にしては泣かない子たちだなと思いました。特になぎさは単純に悲しいだけで泣くことはありませんが、しかし逆に考えれば、単純に自分が悲しいだけでない涙なら惜しみなく流すはず。

ラじゃなくてアだっつーの!!

◆まえがき

二次創作です。音声ドラマの脚本を想定し、公式30話から32話の間あたりの話として作ってあります。

   

◆登場人物

美墨なぎさキュアブラック

雪城ほのかキュアホワイト

メップル

ミップル

藤田アカネ

レギーネ

ウィズダム

ベルゼイ・ガートルード

ジュナ

インコ

執事ザケンナー

執事ザケンナー

 

 1.公園で

〔効果音〕自動車の音、人の話し声、レギーネの足音。

レギーネ はあ、どうすればプリキュアに勝てるのか……。

アカネ いらっしゃい、いらっしゃーい、おいしいたこ焼きだよー。

レギーネ ん? あれはよく二人がいるたこ焼きの屋台……。そうだ、このへんの物陰で待ち伏せて……。

アカネ そこのお姉さーん、焼きたてのたこ焼きいかがですかー!

レギーネ ……(ちっ、面倒だな)

アカネ おいしいたこ焼き、いかがですかー?

レギーネ ……

アカネ あ、あの、無理なら無理しなくても……

〔効果音〕レギーネの腹が鳴る。

レギーネ あ、あの……

アカネ え?

レギーネ ひとつください……

 

2.アカネさんの屋台

〔効果音〕たこ焼きを焼く音

アカネ お客さん、初めてですよね。お近くにお住まいですか?

レギーネ 住まい……? ええと……

アカネ あ、プライバシーですよね。すみません、変なこと聞いちゃって!

レギーネ 住まい……どこだろう……(そういうの、設定を考えてなかった……)

アカネ ……? あ、あの、差し出がましいのですが、ひょっとして……何か訳ありでしょうか? ……なんちゃって。

レギーネ え?

アカネ つまり家出とか……あ! ひょっとして記憶喪失!?

レギーネ えっ? 

アカネ もしかして、帰る家がわからなくなってるんじゃ?

レギーネ あ、あの。帰る場所はわかりますから。私の家ってわけでもないけど……

アカネ 帰るけど家じゃない?

レギーネ あ、つまり……(しまった、ついバカ正直に……)

アカネ 無理に思い出そうとしない方がいいですよ。変なこと言うようだけど、無理に思い出してもどんな事情があるかわからないし……

レギーネ あ、あの、わたし本当に……

アカネ そうだ! 記憶が戻るまでさ、私のところにいたらいいよ。こう見えてもこの藤田アカネ、困ってる子を放っておくような了見でたこ焼き屋はやってないんだ。アハハ、なんちゃって。

レギーネ あ、あの……(ありえない……)

 

〔BGM〕サブタイトルの音楽

なぎさ、ほのか 闇色のオタフクソース!? レギーネたこ焼き屋さん!

 

3.帰り道

〔効果音〕学校のチャイム

なぎさ じゃあね、志穂、莉奈ー。

ほのか なぎさー。

なぎさ ほのか。科学部もいま終わったんだ。一緒に帰ろ。

ほのか うん。

〔効果音〕なぎさの腹が鳴る。

なぎさ あ、あははは、練習の後だから。

ほのか 運動部は大変ね。

なぎさ ご飯がおいしくなるけどね。そうそう、ポルンに明日の夕ご飯を予知してもらったらね、お父さんがお寿司に連れてってくれるんだって。

ほのか なぎさ、ポルンの力をそんなことに……。

なぎさ いいじゃない、減るもんじゃなし。

ほのか 減ったらどうするのよ。

メップル まったくなぎさは、あとさき考えなさ過ぎるメポ。

なぎさ なんですって!?

メップル 本当のことを言っただけメポ~。

なぎさ あのね。ちゃんと先のことを考えてたら、ポルンの予知に頼る必要なんかないでしょ!!

ミップル なんだかすごい理屈ミポ。

ほのか 考えてないのは認めるんだ……。

なぎさ えっ? あっ、そ、そうか……。あははは。とにかく、それだけ夕ご飯は大事ってことよ。

ほのか そ、そうね。お寿司はおいしいし。

なぎさ でしょ? 私ね、回転寿司ってだーいすき。でもお母さんが、ひとり十皿までしか駄目だって。でもさ、小学生の亮太が十皿なら、中学生の私は二十皿くらい食べてもよくない?

ほのか 二十皿……。あ、あのさ、なぎさはどんなお寿司が好きなの?

なぎさ 好きなお寿司かあ、たくさんあるなあ。

ほのか たとえば?

なぎさ ええとね、フライドポテト!

ほのか ポテト?

なぎさ からあげ!

ほのか からあげ?

なぎさ プリン!

ほのか ぜんぶお寿司じゃないじゃない。

なぎさ でも、ぜんぶお寿司屋さんにあるよ。

ほのか もう、なぎさったら。

なぎさ 明日はお寿司かあ。ね、今日はさ、アカネさんのとこ寄ってかない?

ほのか 今日も、でしょ。

なぎさ もう、ほのかは細かいなあ。で、どうするの? 行くでしょ?

ほのか もちろん!

なぎさ よーし!

 

4.アカネさんとレギーネ 

〔効果音〕たこ焼きを焼く音。

アカネ そうそう、そうやってクルっとひっくり返して……。おお、すごい! あんた筋がいいよ!

レギーネ (妙なことになった……)

アカネ 昼間はこうやって屋台の手伝いしてくれたら私も助かるし、夜は私の家に泊まったらいいよ。

レギーネ は、はい……。

〔効果音〕たこ焼きを焼く音。

アカネ いやあ、それにしても手際がいいなあ。初めてとは思えないよ。

レギーネ そ、そんなことは。

アカネ ん? 素人なのにたこ焼きを焼くのがうまい……。うーん、なんだろう。なんかひっかかるなー。

レギーネ え?

アカネ たこ焼き……初めてとは思えない手さばき……うーん、何かこう思い当たるような当たらないような……

レギーネ あ、あの、これはたまたま……(まずい、怪しまれてるのか?)

アカネ ああっ、あなたまさか……!!

レギーネ ううっ!?

アカネ 大阪出身なんじゃない?

レギーネ ……(帰りたい……)

 

5.レギーネとの遭遇

なぎさ こんにちはー、アカネさん……あれ? アカネさんじゃない?

レギーネ 私は、手伝いを……(プ、プリキュアの二人!)

ほのか 手伝い?

レギーネ て、手伝いっていうか留守番を……(気づいてない?)

〔効果音〕アカネが走って来る足音

アカネ あっ、あんたたち、いらっしゃい。

なぎさ アカネさん。

アカネ 待ってて、すぐに焼くから。

 〔効果音〕たこ焼きを焼く音。

アカネ この子ね、かわいそうなのよー。ほら、記憶喪失っていうの?

レギーネ ……(そんなことひとことも言ってないし……)

ほのか ええっ、何もおぼえてないんですか?

レギーネ はい……(私の顔をおぼえてないのはアンタたちでしょ……)

アカネ 唯一の手がかりは、大阪出身だっていうことなんだけど。

レギーネ ……(勝手に決められてるし)

なぎさ 大阪出身……それってほんとですか?

レギーネ は、はい? (なんなの。人をにらみつけて)

なぎさ 正直に答えて欲しいんです。

レギーネ 正直に……(うっ、今度こそ気づかれた?)

なぎさ お姉さん、もしかして。

レギーネ は、はい。

なぎさ お好み焼きを焼くのもうまいんじゃないですか!?

レギーネ は?

なぎさ ね、アカネさん、この人の記憶がずっと戻らなかったら、一緒にたこ焼きとお好み焼きの屋台をやったらすごくないですか? あー、どっちを食べよう。今から迷っちゃうよ~。

ほのか もうなぎさ、失礼よ。あ、あの、きっといつか名前もおうちも思い出すと思います! 人間が記憶を失っている状態にはいくつかの原因があって心因性でなければ脳で記憶をつかさどる部位は海馬って言うのですが

アカネ ストップ! ほのかもその辺にしときな! ごめんねー。この子たちも悪気はないっていうか、いつもはもっと……もっと……うーん、いつもこんな調子か?

レギーネ (なんなの、こいつら……)

 

6.邪悪な気配

メップル なぎさー。

ミップル ほのかー。

なぎさ あ、あのアカネさんごめんなさい。私たちあっちのベンチですわって待ってるから。

アカネ あ、そう?

〔効果音〕ふたり、小走りの足音。

ほのか どうしたの、ミップル。

ミップル いやな気配がするミポ!

メップル しかもすぐ近くメポ! 気をつけるメポ!

なぎさ 近くって……誰もいないよ?

ほのか そうよ、アカネさんの所に戻りましょう。

メップル メポ―。

 

7.レギーネ逆ギレ

〔効果音〕たこ焼きを焼く音。

なぎさ でね、アカネさん、今日の練習で弓子先輩が……

レギーネ (さっきは焦ったけど、本当に気づいてないみたい)

ほのか それでまた理科室を大破させちゃって……

レギーネ (例の二匹も私がわからないの?)

アカネ ……まー私も授業中は居眠りばかりしてたねー。

レギーネ (こいつら、全員バカなんじゃ……)

アカネ はい、お待ち。たこ焼き二人前ね!

ほのか わあ、おいしそう。

なぎさ もうお腹ぺこぺこ! いただきまーす!

レギーネ (もう辛抱たまらない!)

〔BGM〕「あなたなんてプリキュアってだけで、友だちでも何でもないんだから!」の時の音楽。

レギーネ ちょっと、おかしいと思わないの……。

なぎさ、ほのか、アカネ え?

レギーネ 私を見て何か思い出さない?

なぎさ、ほのか、アカネ は?

レギーネ 私を忘れるなって言ってんのよ!!

 

8.戦い

なぎさ な、何!?

ほのか 空が、急に暗く……

アカネ あ、何か猛烈に眠い……

なぎさ アカネさん!

ほのか 気を失ってるわ。

レギーネ そいつには眠ってもらったわ、戦いの邪魔だからね!

なぎさ なに言ってるの!?

レギーネ この姿なら思い出すかしら!?

〔効果音〕レギーネが本体を現す。

なぎさ あ、あんたは!

ほのか だましたわね!

レギーネ あんたたちが勝手に勘違いしてそっちのペースに巻き込んでたんでしょうが! でもお遊びはもう終わり!

ほのか なぎさ!

なぎさ うん!

〔BGM〕例の音楽

ほのか ガスの元栓しめなきゃ!

〔BGM〕例の音楽止まる。

なぎさ だああっ、そういう問題?

ほのか 火事になったら大変でしょ!

なぎさ はいはい。ええとガスボンベはと……閉めたよ。

レギーネ だから! 私を無視するなっつーの!!

メップル 二人とも何してるメポ! 早く!

ミップル 変身するミポ!

なぎさ じゃ、改めて……ほのか、行くよ!

〔BGM〕例の音楽

なぎさ、ほのか デュアルオーロラウェイブ!

キュアブラックキュアホワイト (例の名乗り)

〔効果音〕拳や蹴りのぶつかり合う音

キュアブラックキュアホワイト はあっ、はあっ。

レギーネ ふっ、もう息が上がってるの?

キュアブラック うるさいわね! ボイスドラマでアクションシーンをやったら こういう演出しかないでしょ! 私たちだって音の出る武器とかあればもうちょっとやりようがあるっちゅーの!

キュアホワイト なに言ってるのブラック……?

レギーネ そうよ、なに言ってるかぜんぜんわかんないわね!

キュアブラック あっ、二人とも知らないふり? 私だけ悪者? そういうの、「ママが子をぶってる」って言うんだよ。

キュアホワイト ブラック……もしかして「カマトトぶってる」って言いたいの?

キュアブラック ううう……わかったんならどっちでもいいでしょ!!

メップル おい、仲間割れしてる場合じゃないメポ!

ミップル そうミポ! ホワイトもなんか敵と通じ合っちゃってるミポ!

キュアブラック ホワイト、一気に片付けるよ!

キュアホワイト うん!

キュアブラック ブラックサンダー

キュアホワイト ホワイトサンダー

キュアホワイト プリキュアの美しき魂が、

キュアブラック 邪悪な心を打ち砕く。

キュアブラックキュアホワイト プリキュアマーブルスクリュー

レギーネ くっ、これまでか!

〔効果音〕レギーネ撤退。

キュアブラック すごい、プリキュアレインボーブレス無しで撃退しちゃった。

キュアホワイト 同人ドラマにスポンサーは関係ないから!

キュアブラック あああああ、それ言っちゃったら……

メップル それだけは駄目だと思うメポ。

ミップル みんなが言うまい言うまいとしていたことミポ~。

キュアブラック ホワイトってさ、いちばん言っちゃいけないことをさらっと言うよね。

キュアホワイト 大丈夫だって! さっきブラックが商品名言ったからちゃんと仁義は切ってるわよ!

キュアブラック だからさー。

 

9.ま、いいか!

アカネ うーん。

なぎさ アカネさん。

ほのか よかった。気がついたみたい。

アカネ あれ? 私どうしたんだっけ?

なぎさ あ、あの、すごく眠いから5分だけ横になるって……。

ほのか そ、そうですよ。アカネさんすごく疲れてるみたいでしたよ。

アカネ うーん? そう? って、あれ、あの子は?

なぎさ あ、えーと、急に記憶が戻ったとかで。

ほのか しかも家族の方が迎えに来て。

なぎさ そ、そう。その、大阪から……

アカネ そっかあ、なんだかわかんないけど、よかった、よかった。

なぎさ、ほのか はあ……(ため息)

なぎさ とにかく、せっかく焼いてもらったたこ焼き食べようか。あれ? 私のたこ焼きは?

ほのか 私は知らないよ。

なぎさ わかってる。ほのかは盗み食いなんかしないもん。

ほのか そ、そう言ってもらえるのは嬉しいけど、じゃあなんで怖い目で私を見てるの……。

なぎさ あ、その、疑ってるわけじゃないけどさ。おいしそうだなあ、って。あははは。

ほのか もう、私の半分あげるから!

なぎさ ほんと? さすがほのか、話せるなあ。

アカネ あんたたち、本当に仲いいよねえ。前はあんなに他人行儀だったのに。

なぎさ、ほのか あ、あははは。

アカネ よくわかんないけどさ、無くなったものはもういっぺん作ればいいんだよ。一人前くらいまた焼いたげるって。私のおごりでね!

なぎさ、ほのか いいんですか!?

アカネ いいって、いいって、今日は特別だよ。

なぎさ、ほのか ラッキー!!

アカネ  やれやれ、なんか変な日だったけど……ま、いいか!

 

10.仲良く分けよう

〔BGM〕例の館の音楽

ベルゼイ レギーネ、なんだそれは。

レギーネ たこ焼き……撤退する時に持って来た……。

ジュナ うまそうだな。

レギーネ 8つだから3人で分けるのが難しい……。

ベルゼイ、ジュナ え?

レギーネ 3人で分けるのが難しい!

ベルゼイ、ジュナ わわっ。

ウィズダム 私も入れれば一人2個だぞ……。

インコ 一人2個! 一人2個!

執事ザケンナー1 僕たちも食べたいザケンナー

執事ザケンナー2 ザケンナー

ジュナ 結局、何人で食べることになるんだ?

レギーネ インコは、たこ焼き食べないと思う……。

執事ザケンナー1 ザケンナーはたこ焼きも食べるザケンナー

執事ザケンナー2 ザケンナー

ウィズダム 私も食べたいぞ。

インコ 私も! 私も!

ジュナ 8わる3、8わる6……どうやっても余りが出る……!

レギーネ 早くしないと冷めちゃう……。

インコ 冷めちゃう! 冷めちゃう!

ベルゼイ 静かにせんかー!!

 

―おしまい―

 

◆おぼえがき

公式の雰囲気を再現しつつ、本編のどのエピソードよりもバカバカしい話にすることを目標に書きました。反省点としてはストーリーらしいストーリーが無かったこと、肝心な部分のギャグを楽屋オチにしてしまったこと、でしょうか。

この脚本では茶化してしまいましたが、公式30話以降でもレインボーブレス無しで勝利している戦いはあり、プリキュア自身の成長がうまく描かれています。そういった製作者の工夫も好きな要素の一つであること、野暮ではありますが念のため申し添えておきます。

実はこの部分のホワイトの台詞は、

レインボーストームの口上を書くのが恥ずかしかったらしいわよ、作者が」

というのも考えていましたが、どのみち楽屋オチではあります。

最後の館の場面は省略しても話は完結するようになっています。その場合はなぎさとほのかのやり取りの中で、たこ焼きがレギーネに奪われたことを疑う台詞を入れておけばよいでしょう。

 

ちなみに、「ふたりはプリキュア」のアポリアとして、中学生の小遣いであんなに頻繁にたこ焼きが食べられるものなのか? 一方アカネさんはあんなにしょっちゅうおまけして大丈夫なのか? ということがあります。この話ではレギーネに練習させたりなぎさにおごったりとアカネさんの持ち出しが多くなっていますが、謎は謎のままとして特に合理的な説明はしませんでした。

ぼくがかんがえたウルトラマンオーブオリジンサーガ

1.

「うるせえよ!」 クレナイ・ガイは二段ベッドの上から通路へ首を伸ばすと、下段の客を怒鳴りつけた。確か19歳といったその少年客は、よりによってドミトリーに女を連れ込んで事に及び始めたのだ。

(白人はところかまわず盛りやがる……。しかも脱いだブーツがくせえんだよ!) 人種的偏見にまみれた悪態をつく彼は、しかし宇宙人だった。あの戦いから100年、全てを失って地球を放浪し続けた彼は、バンコクカオサン通りの安宿に沈没していた。半年前、東京のブックオフで見つけた『深夜特急』に、彼は今さらかぶれていたのだ。

ドラッグに溺れては、たまに路上に出て些細なことから喧嘩を繰り返す日々。わずかに残った光の戦士の力で相手に重傷を負わせてしまうこともしばしばだった。「また、やっちまった……」 虫の息で横たわる相手を見下ろしながら、一方でガイは堕ちるところまで堕ちてみよう、そんなことさえ考えるのだった。反省、成長、彼にはもっとも無縁な言葉だった。

 

2.

「どうしてあなたが呼ばれたか、わかっていますね」 ここ数十年でようやく実体を取り戻しつつあるタマユラ姫は、ジャグラーの目を見据えて問いかけた。

「最近、入らずの森にトトロがいるって近所の小学生が噂してるやつの正体はあなただってことですか?」

「え? そんな噂が……?」

「ガイの話じゃないんですか?」

「そ、そうです。大きな災いがこの星に迫っています。それを止められるのは光の者のみ、そして、光の者を闇から救い出せるのは、あなただけです。ところでトトロのことですが……」

「ご冗談でしょう。今は闇の勢力に身を置く俺が、あいつを?」

「あなた達は光と闇、光あるところ必ず闇がある。そして、闇はつねに悪しきものではありません」

吐き捨てるジャグラーに、玉響姫はおだやかなまなざしを向ける。

「ほう? そこまでご信頼とあらば、協力もしますよ? それ相応の見返りはもらいますがね……」

タマユラ姫がゾフィーのカードを持っていることは、知っていた。

「その話は後です。今はトトロ……あっ」

ジャグラーの姿は、すでになかった。

 

3.

2時間後、ジャグラーは成田空港でバンコク行きタイ航空便の貨物室に身を潜めていた。ガイの居所などだいたい見当がつく。奴が日本を離れる直前、ブックオフ沢木耕太郎を買っていた。ならば……。あの日、ジャグラーは100円文庫の棚の陰からレジで会計をすませるガイを見ていた。

そもそも魔王獣は俺が復活させる予定だったのだがな。タマユラ姫の前では隠していたダークリングを胸に抱きながら、ジャグラーは今後の計画について考えた。まあいい。俺は俺で魔王獣を利用する。

離陸した飛行機が高度を上げると、貨物室に容赦なく冷気が忍び込んで来る。寒い場所は苦手だ。特にあれ以来、寒さはO-50戦士の頂、あの吹雪を思い出させやがる……。ジャグラーは狭い隙間で折り曲げた膝に顔をうずめた。チケットを買って客席に乗るという発想は、彼らにはなかった。

 

―つづかないので誰か続きを書いてください―

 

桃坂町年表をつくりたい

かんかん橋を読んでいると時系列や事実関係がわからなくなることがたまにある。その一つがトキ子が川東の小学校にエアコンをつけたというエピソードだ。

32話で萌と鮎が聞き込みをした時には、「カラ梅雨のすごく暑い夏 小学校の全教室にクーラーをつけてくださったの」という証言があったが、しかし55話の竜王丸の回想では、「ある寒い冬に僕が風邪をひくとすべての教室にエアコンと加湿機が備えつけられていた」と言う。いったいどういうことなのか戸惑ったのだが、恐らくは竜王丸が通っていた学校にエアコンを取り付け、その後で全ての学校に拡大したということなのだろう。

時系列ということでは、作中に何度も出て来る「30年前」という言葉がある。この表現は徹子の回想でトキ子が市毛家に輿入れする前後のこととして出て来るが、その後、市毛日輪子の逝去も30年前とされている。トキ子の結婚時には日輪子は確実に生きていたし、千春と竜王丸の年齢が登場時で28歳、彼らの出生時にもまだ存命だったと思われるから*1、「30年」は概数なのだ。このあたりも、注意したいところである。

 

 

*1:人物の年齢や逝去年代については、また別な機会に書きます

タコが自分の足を食べるような

ここのところ西日本の水害をきっかけに避難所のあり方や小中学校のエアコン設置が問題になっているが、やはり二つは分けて考える問題だと思う。ひとまずは、災害避難所はホテルや旅館を借り上げる、小中学校はドイツのように所定の気温を上回った日は休校にするというのが解決策だろうか。

避難所にエアコンは必須なのは論を待たないが、引っかかるのはこれを機に小中学校でのエアコン設置、使用を広げようとする動きだ。もし近年の猛暑や水害が温暖化の影響だとすれば、温暖化の結果に対応するためにCO2を増やし、排熱でヒートアイランド現象を激化させるのは何とも道理に合わないことではないか。ならば人命に関わるほどの暑い日には休校にするしかないように思う。

ただそれにもやはり不安はある。家にエアコンや扇風機のない児童生徒を熱中症の危険にさらしかねないし、各家庭でエアコンを使うことにより電力の消費量はさらに上がってしまうかも知れない。児童生徒を守ることと、気候変動をこれ以上進行させないことと、短期的には取るべき対応が矛盾しかねない目標だが、しかし長い目で見れば同じことのはずだ。私には、根性論はやめろエアコンを設置しろの大合唱がそれはそれでひどく短絡的に聞こえる。

 

廊下は走るなと言われ続け老化の足が速い

昼間、自転車に乗っていてふと古い喫茶店が目に入り、むかし一度だけ来た記憶が蘇ったがいつだったか思い出せない。確か誰かと待ち合わせをして仕事の打ち合わせをしたような気がする。自分は外で打ち合わせということがあまり無く時期も相手の候補もかなり絞られるので、はっきり思い出せてもいいはずなのだが、最近はそんなことも思い出せなくなってしまった。

そんなこんなで、この頃はなんだか老化が人より早いのではと思うことがある(実は、ある部分については早い方だと医者に指摘された)。

他人を理解するのはとても失礼なことではないのか

オウム関連の事件を振り返る際、その教理や麻原の心性よりは入信した人々のプロファイリングに関心が集まるのはちょっと面白い。オウムの教えや麻原という人物は異常すぎて検討する価値もないということなのだろうか。

ネトウヨは若者だったとかいや中高年だったとかいう話でもそうなのだが、間違った言動はまずその間違った言動の理路を分析するべきであって、それを口にする人々の心理やら背景やらについて云々するには慎重であるべきだとおもう。単純にそんなのわからないだろうということの他に、それを指摘しても不毛だと思うからだ。例えば、オウムに入信するような人間はどこか現実感のないサブカルでとか、ネトウヨは今までインターネット文化に触れてこなかった層が急にネットデビューしてとか人に言われ、仮にそれが図星だったとして自分の思想や言動を改めるだろうか。私ならとりあえず、バカにしやがって何を偉そうに、と思いますね。