【実話】出会い系で溢れ出るリビドーをぶつけるために二人の女性と連絡した結果、二人ともぼったくりだった。
女の子と仲良くなりたい……。恋人とまでは言わない。何でもいいから女の子と話したい……。
そう思いながら女性と連絡を取った結果、ピル代3万円をぼったくられそうになった男、僕である。
職場や学校であまりいい出会いがない男女が、お互いの恋愛や結婚願望を満たすためにこぞって登録しまくる、集客の戦略としては完璧過ぎてぐうの音も出ないサイト。
人呼んで出会い系サイト。
その運営側の思惑通り、僕も一時期出会い系に片っ端から登録していた時期があった。
その理由は己が生存本能が大いに高まっている時。分かりやすく言うと発情期に突入していたからだ。
ハッピーメール、with、Poy boy、tinder等、今の時代とてつもない数の出会い系サイト、アプリが存在している。
人は人に飢えている、その発露が生んだ結果と言えるでしょう。
当時全く彼女がいなかった僕も、勢い余って5個くらいのアプリに登録した。
とはいえ始めてそういう系のサイトに登録したので、かなりワクワクとビビりが同居していた事を覚えている。
いざ登録。アイコンを自分のカメラロールに入ってる中で、個人的に最も盛れている写真を選抜する。プロフィールを他の登録者が見てくれるように結構な時間をかけて作成し、ドキドキしながらアプリ上の自分を創造していく。
同性のアカウントは基本見れないので比較することができない。なので「これで大丈夫なのか……?」と疑問に思いつつ、自分の最大限を引き出していくしかない。
そんなわけで完成。
よし、
自分のアカウントでやるべきことはやった。完璧に決まった。自信はある。というか自信しかない。それほどのアカウントを作り上げることに僕は成功していた。周りと比較する必要など一切ない。これは間違いないと、僕自身が強く確信していた。
これで落ちない女?そんなのいるわけないだろう。やれやれ、冗談はやめてくれないか?
ふむ。
それでは女の方を見に行くとするか。この僕に匹敵する女性がいるといいのだが………。期待はしないでおこうか。
そのような心持ちで僕は女性のアカウント一覧に画面を変えた。
次の瞬間僕の目の前に多数の女性のアップの写真が出てくる。検索順位上位に来る者だけあって、最初に目に入ったほとんどの女性がかなりの美人だ。綺麗系から可愛い系、OLから学生まで幅広いタイプの女性がでてくる。
アイコンはアプリによる加工が入っているとはいえ、だからこそ映える。芸術ともいえる代物だ。
ふん、これはいい意味で期待を裏切られたな。中々に粒ぞろいではないか、この中で僕の眼鏡に敵う女性はどう見ても全員だなてかめっちゃ可愛くない??
あれ、
あれれ?
やばいぞ?予想以上だぞ?ちょっと可愛すぎなのだが………。。
この瞬間、僕は自分の間違いに気づいた。
己の立ち位置、スタンスを完全に間違えていたことに。
出会い系。それは自分に匹敵する異性を上から目線で探すようなコンテンツなどではなかった。そんなものでは決してない、むしろ逆なのだ。
こちらが高嶺の花に向かって壁を上り、精一杯背伸びをし、腕を伸ばし、崖の上でこちらを見下ろしている女性の方々に鬼の形相で媚びへつらい、チャンスの機会を鼻息荒く窺がうためのものなのだ。
そうに違いない。
なぜ僕は意味もなく上からだったのか、社会の男尊女卑の浸透具合のせいだろうか。だとしたら僕のスタンスの間違いは社会のせいだったという事になる。
ならば僕は悪くない。社会が悪いのだ。
という茶番は置いておき、神界に咲く花々のような女性たちに緊張しながら連絡を取ってみる。
具体的にはメッセージを送ってみる。
僕自身陰キャ故に、ネットだからといって女性に連絡を取るなど難易度が高い。初めましての文字を打つだけでも三分かかると言っていい。
5秒で打って175秒は余韻に浸っているということだ。
「はじめまして、と。…………………………………………………………………………ふう」
こんな感じだ。
しかし、時間など関係ない。とにかく出会い系においては攻めなければ事は始まらない。3分だろうが3日だろうが連絡を取ったものが勝つのだ。
そして僕は己の心と真剣に向き合った結果、まず自分は発情期であることを今一度思い出す。つまりリビドーが膨大という事。そのことについて僕は何度も自問自答を繰り返した。
そして自覚した瞬間、僕の指は音を置き去りにする速度で動いていた。
気づいたときにはヤリ目募集の女性二人にメッセージを送っていた。
相手はどちらも年上の女性。
いや分かる。
あまりよくない事とはわかってはいたが、しかしあふれ出て輝きを放つ好奇心を止めることはできず、僕は行動を始めてしまったのだ。
結果的にその二人とはすぐに連絡を取ることができ、メールアドレスをすぐに交換した。
やった。
その状況に僕の心はかなり高揚した。
「なにこれw余裕じゃんwwこんな簡単に上手くいくなんてまじワロタw」
と余裕をこいていた。
そのままどんどん連絡を取ってお互いのことを知っていく。
そしてもうメールではなく、ラインで話してもいいのでないか、くらいに会話をし続けた頃、
僕はふと少しの靄を抱えることになる。
余りにもスムーズに話が進んでいるのだ。お互いの需要に合ったが故のものなのだろうが、だとしても相手側の物分かりの良さが尋常ではなかった。
ヤリ目の女性とはこんなにイエスマンなものなのだろうか。僕がどんなに自分を低く評価しても優しく受け入れてくれる。そのような聖母のような性格がこの女性には存在するのだろうか。
若干の違和感。少々の疑心が僕の頭をかすめる。本当にこんなうまくいくのか?いっちゃっていいのか?僕の疑い過ぎなのだろうか?
その疑問に対する答えはすぐに出た。
二人の内の一人が初めて会う時のすり合わせをしている時にこんなことを送ってきたのだ。
『そういうことをするってことはそれ相応の準備をしなくちゃいけないよね。だから避妊代3万円もらっていいかな?』
……………………なるほどね。
そうやって金を巻き上げるのか。それがあなたの、ヤリ目女子のやり口だということか。
その手法に騙されて素直に金を払った者が実際にいるのかは知らないが、冷静に考えて現状会ってもいない人間に差し出すお金など、僕にはびた一文たりともなかった。
僕はその女性との連絡を切った。
そしてもう一人の女性。
今の所変な返信や行動はない。表面上は上手くやれているといったところだ。
予防線を張るために、最初の女性のぼったくりの件も話した。
すると、
『あーそういう人いるよね……。』
と、自分は大丈夫だとでも言いたげな返信をしてきた。
本当だな?信じていいのか?信じちゃうよ?いいのかい?
結局その女性とは本当に待ち合わせの日にちと時間、場所を決めて会う事になった。
そして当日、変なワクワク感と緊張を携えて僕は電車で待ち合わせ場所に向かっていた。これで僕の華々しい出会い系デビューが始まるのかと、大いに期待していた。
その間も女性とのメールのやり取りは続いてる。会った後の生生しい話をお互いに繰り出していたわけなのだが、その時点でぼったくりの話はなかった。
僕はすっかり安心して、にやつきながら電車のつり革に手をかけていた。なんなら興奮で涎が出ていた可能性すらあった。
待ち合わせの最寄駅に到着。改札を出たところで僕は詳細な居場所を知るために相手にメールをした。すぐに返信が来た。彼女は自分がいる場所を僕に教え、その後にこう書いていた。
『~~~カフェにいるよ。初回だから避妊薬3万は割り勘にしてあげる。だから1万5000千だね。』
僕は無言で先程通った改札を通り、逆方向の電車に乗って帰宅した。
世の中そんなにうまい話はないという事か。
交通費返して下さい。