二段目のひきだし

に、入れるようなこと

1204

トークイベントを聞きに池袋の本屋へ行った。

充実した二時間だったはずなのに、終わってみると何を話していたかさっぱり思い出せない。

民主主義がテーマだったんだけど実はあまり興味がないのかも。

 

隣接している百貨店は閉店時間を過ぎても惣菜の投売りをしていて、

買わなきゃ損のような気がして入店した。

半額のシールが貼られた揚げ物にグッときたけれど、よく考えれば別にそんなに食べたいものでもない。

本当に欲しいもの、を基準に買うものを探してみたけど、

結局欲しいものは何も見つからなかった。

 

1201

親切な担当相談員のおかげで、週に三回ほどハローワークに通っている。

問答無用でセミナーに予約を入れられまくっているからだ。

最近は顔見知りの職員もだいぶ増えて、「今日は寒いですね~」と挨拶しあう余裕も出来た。このままハローワークに就職したい。

セミナーの始まる時間と終わる時間はだいたいラッシュにかぶっている。

満員電車なんて見た事も無かった頃は、さぞかし中はうるさいんだろうなと思っていたけど、

意外や意外本物はかなり静かなものだった。誰も話している人なんていない。

8割はスマホに目を落とし、無表情で指先を動かしている。

LINE画面には表情豊かなキャラが楽しげに踊り、それを打ち込む人はクスリともしていない。

あとの2割は周りを遮断するように体を抱えて寝ている。

 

都会の暮らしは自然と離れ、人々の心は乾き…

地元にいる時はそう思っていたけど、自分も満員電車に揺られていると

「これが都会の自然なんだろうな」

と思う。掃いて捨てるほど人がいる自然。

 

東京で子育てするお母さんなんかは、「子供は自然で遊ばせたい」と思うらしい。

そもそも自然で遊ばせるという発想が不自然だから、やめた方がいいんじゃないかなと思う。

それとも田舎から見たディズニーランドが、都会から見た野山なのか。

 

東京の人が”東京の自然”を見つけにくくなってしまっているのは、

沖縄が沖縄を見失っているのと少し似ているような気がする。

 

1203

「丁寧に育てすぎたのは失敗だった」と母に言われた。

そりゃないだろう、と思ったけれど、特に反論も思いつかなかったのでそうかもね、とだけ返事をして電話を切った。

 

母の望む子になれなかったのは今でも心が痛いけど、そもそもどんな娘に育てたかったんだろう。理想像があるのなら聞いてみたい。

親は選べないけど子も選べないし、お互い交通事故みたいなものなので、なんとか穏やかにやるしかない。道徳の授業で何回も読まされた「感動の親子の絆」みたいなものを少し信じていたけど、あれは物語だから美しいんだろう。

道徳の本には載らないだろうけど、父がしてくれた無茶苦茶な絵本の読み聞かせはかなり楽しかったし。

 

 

母に電話口で言われたことを思い出しながら夕食を作る。

根菜を炊いて醤油で味付け、今日は寒いので生姜を入れて片栗粉であんかけに。

卵焼きを厚く巻く。

無意識に料理をすると自然と母の味に近くなる。

これだって文化の継承と呼ぶなら、そんなに悪くないかもしれない。