最後にありがとうと言えたなら ~亡くなった方が教えてくれたこと~

大切な方とのお別れの仕方をご遺体が教えてくれました

生前葬の話②生前葬は自由なんだ

4月30日大阪で行われた生前葬

主催はエンディングコンシェルジュこと、おもいを遺す生き方ナビゲーターWILL 代表の谷口佳津子さん。

 

今回、谷口さんのやりたいことを詰め込んだ生前葬。その中身をご紹介します。

 

第一部が納棺式とプレイバックシアターと言われる即興劇をおこないました。

100歳になった未来の谷口さんが、納棺式を行う設定です(私もその設定だと90歳を超えてます)仏衣へ着せ替え後、皆さんに旅支度をつけていただき、納棺後来場いただいた方1人1人がメッセージカードを棺の中に入れます。

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目をつぶっていた谷口さんは見えなかったと思いますが、みんな笑顔でカードを入れていきましたよ。

私の後ろの祭壇は笑文字の講師もしている谷口さんが毎日Instagramにあげているもの使用しました。そして素敵なペーパーフラワーの薔薇。祭壇も自由!なんです

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そしてご友人の上原さんの弔辞。

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会場の皆んなが笑って泣いて。(棺の中の谷口さんも泣いていたようです)

また会いたいよー!帰ってきてー!の言葉に棺の中の谷口さんが居ても立っても居られず、復活しますー。 

 

まだ死んでへんでー!!

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そして、プレイバックシアターでは100歳の谷口さんが60歳から100歳まで歩んできたであろう人生が会場を巻き込んで、再現されていきます。

自分や人生を振り返るプレイバックシアター

生前葬との相性抜群です。

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第二部は谷口さんの周りの輝いている人達による演奏、歌、ダンスの上演です。

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大病を経験された高橋さん。左手だけで弾くピアノは力強く、繊細でした。

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看取り士の乗本さん。歌からも愛が溢れています。


夢に向かってダンスを初めることも、80才を超えてもダンスの先生としてリードする姿も、とても輝いてます。

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自分の周りの素敵な方を皆さんに紹介する

こんな生前葬もあるんです。

 

2部の締めくくり!スライドに動画が映し出されます。

初めて作った動画は今から生まれて来るまでを写真でつづたものでした。そして最後にご挨拶。

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ご主人からの歌のプレゼント

最後に愛はかつ(こ)谷口佳津子さんだからね

笑顔が溢れ、感動的な生前葬でした。

 

私も60歳になったらこんなパワフルで沢山の愛を感じる生前葬できるかなぁ。やりたいなぁ。

明日からの生き方が変わってくるような生前葬でした!

 

生前葬の話①裏側の話

4/30大阪 谷口佳津子さんの生前葬がホテルセイリュウで行われました。

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2年ぐらい前に谷口さんから生前葬をやりたい、その中で納棺式という時間を知ってもらうためにも、生前納棺式をやってみたいというお話しをいただきました。


その時、私の持つ生前葬のイメージは、余命宣告を受けた方など、生きてるうちに葬儀を前倒しで行うもの。『生前に行う自分の葬儀』でした。

でも、もっと楽しむための生前葬があってもいいんだなぁと、なんだかわくわくしました。


半年前から生前葬プロジェクトチームのzoom会が始まりました。

今回プロジェクトチームは自ら手を挙げて集まった人達で、住んでいるところも、活動もバラバラ唯一共通していたのは『谷口さんとの繋がり』だけです。

時には厳しい発言もあったりもしましたが、不思議な使命感と一つのゴールにむかうワクワクが私たちをつないでいました。

その中心にいたのは谷口佳津子さんでした。


当日、プロジェクトチームの『実物』に会う時点で、私の感動ボタンのスイッチがオンに!笑

だって頭の中だけで進んでいた話がちゃんと目の前で実際に実現してるんだから!

 

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生前葬の内容については長くなるので明日アップしますー。


今回プロジェクトチームとして生前葬を作っていく中で、主催者の谷口さんは、見えないところで大変な苦労もされています。


例えば、生前葬に来てくださいというと、多くの方が「大丈夫?」と体の心配をされたそうです。そしてこの生前葬を死を軽く取り扱っているように感じた方とのご縁が切れてしまったこともあったそうです。


生前葬をやるならそのコンセプトを丁寧に相手に説明する。招待状にはそれをしっかり明記すると、くる方も主催側も心おきなく「生前葬」を楽しめる。これも今回の気づきでした。葬儀と一緒でアドバイザーが必要なんです。

今回自分のやりたいことをやり切った生前葬谷口さん、今後は生前葬のお手伝いなどもしていきます。きっと今回の経験があるからこそわかる丁寧なフォローができると思います。

 

そしてー。
今回もマイ棺と一緒に車で大阪を往復しましたがそこでのおしゃべりも大切な時間でした。

行きはお先に天国のイベントを一緒にしている白川さんと今回初めましてでお手伝いを頼みまくったじゅんこさんと一緒に。

帰りは村田ますみさんと2人で、ニヤニヤ、ゲラゲラの話をしてきましたが、生前葬とはなんだろうという真面目な話しもしてきました。


私の中で今回の生前葬儀は弔う、葬るのではなく、今の自分を感じ、ご縁に感謝しありがとうを送り合う新しいイベント「生前送儀」だと感じました。

ありがとうは生きてるうちに。

昨日は生命保険会社で模擬納棺式を行いました。

 

納棺式で出来ることやどんな時間なのかをお話し、その後、お葬儀の中の納棺式という時間を模擬納棺式として体験していただきます。

この日、少しの間あの世に旅立つ会社の上司を
一緒に働く社員の皆さんが遺族として納棺式を体験します。

上司に向けた手紙には
愛がたくさん詰まっていました。
生きてるうちに
この愛情、思いの受け渡しをしたら、信頼関係が大変なことになるのでは。と

**お手紙を一部抜粋してご紹介**

 

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〜略〜
「真剣に生きなさい」、、、叱咤の嵐

 

その叱咤が、本当は激励だと理解するのに、不思議と時間はかかりませんでした。当時悩んでいた私が、やっとの思いで眠りについたにも関わらず、夢の中にまで出てくるあなたに惑わされ、布団から飛び起きた事も、一度や二度ではありません。

 

そんな、あなたがー、今、安らかに眠っています。

 

そしてこの先、あなたが、二度と目を覚まさないように、今後の予定についてお伝えします。

あなたが生きてきた証は、私を含めた、あなたと関わりのあった、私たちの「心」に宿ります。何気なく過ごす私たちの日常、様々なシチュエーションで、私たちは、あなたを感じることを余儀なくされる事でしょう。

 

ダカラドウカ!...ドォカ、、安心して、お眠りください。


本当に、今までありがとうございました。

 

そして、
これからも見守っていてください。
この星地球上に沢山いる、あなたのファンの
一人より

 

 

大切な人が亡くなった時、残された人は目の前からその人が突然いなくなって、まるで繋がりが切れてしまったように感じます。
納棺式は新しい繋がり、絆を作る時間です。

生きている時とは違うけど、亡くなった後に作る絆は切れることはありません。

生きてるうちに一度棺に入って、お互いの存在について生きてるうちに、こんな愛情たっぷりの手紙や言葉をもらえる模擬納棺式や生前納棺式。

この愛情、思いの受け渡しを生きているうちにするべき。

素敵な時間のお手伝いをさせて頂きました。

パパっぽい

最近メイクを1人で任されるようになった後輩納棺師が、あるお父さんのメイクをした時、開いていた口が閉じて、白い顔に血色が戻って穏やかな顔のお父さんをみた娘さんが

「わー、パパっぽい」って言ったそうです。

 

それを聞いたお母さんとお姉ちゃんからすぐに、「いや。パパだから」ってツッコミ入りました。

パパっぽいのではなくパパ本人だよって、それまでピンと張っていた空気が緩んだみたいに、みんなが笑いました。

 

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納棺式で時々出会う一場面です。

パパっぽいと言われた時の安堵感や嬉しさは、納棺師なら誰もが想像、共感できる気持ちです。


私達、納棺師が1番嬉しい言葉は

「綺麗になったね」ではなくて

「〇〇さんらしいお顔ね」です。

だから、パパっぽい、おじいちゃんっぽい

お母さんっぽい、〇〇ちゃんっぽい

って言葉がすごく嬉しいのです。

 


それにしてもパパっぽいって言葉は

確かに、ついツッコミたくなるけど、この言葉にご遺族の心情がすごく表れているような気がします。

 

亡くなってすぐのお顔は生前のパパの顔と合致してくれない。つまりパパじゃない人なんだと、どこかで否定していると思います。


ご遺族の心の中にいる亡くなった方と、今布団に寝ている人を同一人物だと感じるには、お布団で寝ている亡くなった方がその人らしいお顔であることが大切なんだと感じます。


現に開いている口を閉じて、顔色を整えて、赤みを足して、髪を生前の形に近づけていくなかで、ご遺族の物理的な距離が少しずつ近づいてくることがよくあるのです。

 

納棺式という儀式の中で、パパじゃない人からパパっぽい人に変わる瞬間です。

 

本当のパパなんだと落とし込むには、もう少し時間がかかるのかもしれません。それでも一歩前進だと思うのです。その人らしいお顔や、体に触れることの出来る時間にその一歩のお手伝いができるのが納棺師の特権です。

 

お葬儀という時間にその人らしい何かにまた、出会えたとしたら、ご遺族は亡くなったその人との死に向き合いお別れができるかもしれません。亡くなった人もきっとそんなお別れを望んでいるような気がします。

 

さて、私の家族は私らしさを何で感じてくれるでしょう。鼻の脇のホクロ?文句を言う時のへの字口?できたら優しく微笑んでいる顔がいいなぁ。

お正月も走る納棺師

2023年

お正月です。火葬場もお休み、葬儀もない元旦ですが、現場に向かう納棺師がいます。

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さすがにいつもよりは件数は少ないにせよ、年末から年始にかけて、日延する(火葬までの日数が長い)亡くなった方がいるということは、火葬までの状態変化を最小にするためにたくさんの納棺師が動いているってことなんです。

私も2年前までは現役納棺師として毎年お正月はいつ、連絡が来てもすぐ走れるように待機している状態でした。

 

『年末年始は仕事が忙しいから、家のことができない』

今まさにお仕事中の納棺師さん達には申し訳ないのですが、家事が苦手な私にとっていい口実だった。

 

2023年元旦の今日も、31日に作った煮物やお節のようなものを出してみたりしながら、実家の仙台で過ごしております。

ソワソワと申し訳ない気持ちが半分、家族で過ごすありがたい気持ちが半分。この気持ちはいつまで続くのでしょう。

 

2022年はブログからすっかり離れてしまい、どうやって文章を書いていたのか、わからないぐらい文章嫌いが復活しておりました。

というのも(宣言!また、言い訳します)昨年は人前で話す機会が急激に、増えて私自身なんだか空っぽになったような気がしていました。

 

それでも納棺師の卵さんたちと話したり、納棺師仲間と話していると、その想いに感動したり、自分の体験を思い出したり、また伝えたいと思うことが増えてきました。

 

2023年はまた、少しずつブログを書いていきたいと思ってます。今年もどうぞ宜しくお願いします。

亡くなった方からのご褒美

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「ご褒美」なんていい言葉。

私は自分によくご褒美をあげる

一つのプロジェクトをやり終えた!

育てた新人さんが無事社内試験に合格した!

子供が無事就職!

頑張ってブログを更新した!

頑張って家を掃除した!

だんだん頑張ったことがショボくなるのは置いといて・・・

これをやり終えたら沖縄旅行

頑張ったらエステに行こう

ハイボールと美味しい食べ物が待ってるぞ

と、この「ご褒美」はこれは無理かも・・・と思える壁さえも乗り越えてしまえるような絶大な効力を持っている

 

しかし、本当にうれしいのは神様からのご褒美。

例えば、仕事で頑張ったときに、自分を評価をしてくれる人が現れたり

今まで話をしたことない人との繋がりができたりする

これは神様からのご褒美

 

最近本を出しました。

これは文章を書くの賀苦手だった私が、ライティングゼミやブログで苦手克服?した努力の賜物。そして、たくさん手直しをして、この世に出してくれた新潮社の岡倉さんの努力の賜物なんだけど、この本を作っていく中で、予期せず私は、亡くなった父について何度も考えました。それは、そのたびに父がもういない寂しさや、私が父から受けた影響について何度も噛みしめるちょっと嫌な作業でした。

だけどそのお陰で、私は案外、父の落としていったパン屑をちゃんと拾いながら、私らしく生きてきたんだと気づくことができました。それはこれから先、ずっと父は私の横で歩き続けてくれることに気づけたことです。もうご褒美というか、宝物です。

この宝物は神様からというより、亡くなった父からのご褒美でした。

亡くなった方からのご褒美は、一生ものの宝物。

大切な人が亡くなったときに私たちの心や体にはいろんな反応がおこります。失った人の存在が大きければ大きいほど最初のうちは痛みを伴う反応です。多くの人は普段の生活をこなしていくために、蓋をしていることが多いのです。

その痛みと、いつ向き合うかは人それぞれの、タイミングがありますが、もし向き合わず、蓋をしていたとしても、その心の痛みは蓋をして抑えきれるものではありません。

私自身、長く蓋をして、生活をしてきましたが、時に身体に病気のような症状ととして現れたり、感情の面で突然落ち込んだり、涙があふれ振り回されることも多くありました。

私は、グリーフサポートという死別によって自分に起こった様々な反応を、学ぶ場所に出会えたおかげで、安心・安全な場所で自分の気持ちに向き合うことができました。

この悲しみに向き合う作業をしたとき、亡くなった方は私たちにたくさんのご褒美をくれます。

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若くしてご主人を亡くした奥様は、亡くなってからご自身の気持ちをどんな風に、整理していけばいいのか、ご主人への想いをどうにか表現しようとが頑張っていらっしゃいました。

多分それは大変な痛みを伴うことだと思うのです。

それでも彼女の周りにはそれを聞いてくれる、サポートグループやお友達がいます。

そんなお話を伺うたびに、ご主人が奥様に贈ったご褒美は「奥さんをサポートする人との出会い」のような気がします。

先日こんな話をお聞きしました。

5年前結婚式を挙げたホテル。結婚記念日ごとにこのホテルを利用したくてご主人が選んだ場所でした。

2年目からはコロナのこともあり、ご主人と行けたのは最初の結婚記念日の一度きりだった。でもね、と奥さんは嬉しそうに私に教えてくれました。
ずっとこのホテルに二人で行けなかったことが気になっていたから、一人で行ってきたんです。そしたら、ホテルの方が以前ご主人と泊まった部屋にグレードアップしてくれて結婚記念日を同じ部屋で過ごすことができたんです。

ご主人との思い出を振り返ろうとする奥様をサポートしてくれる人が現れる。その結果、亡くなった後にもこんな風にご主人との思い出を増やしていけるなんて、とても素敵なことだとおもいます。

もちろん奥様の素直な、かわいらしい雰囲気のせいかもしれません。しかしそれと同時に、頑張っている奥様へ、亡くなったご主人からのご褒美に見えるのです。

 

もし大切な人を失って、苦しい、辛い時間を過ごしている方がいたら、今はその気持ちを横に置いておく選択肢もあります。だけど思い出してほしいのです。

辛い気持ちにはちゃんと理由があってその理由を知ろうとするとき、亡くなった人からのご褒美が待っているということを。

 

繁忙期

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一月ももう、終わってしまうのですね。

この数ヶ月は新しいことに囲まれて時間の流れのスピードが「私のスピード」ではない中を浮いたらり沈んだりしながら進んでいました。

2021から2022年、私にとって11月に納棺師を卒業したことが1番の変化でした。最初は急に開放された気分でしたが、だんだんと寂しい、物足りない気持ちになりながら、それでも前に進んで行かなきゃいけないと踏ん張ってきました。

つい、自分のセルフケアを忘れてしまいがちな、1月ですが、ちょっと立ち止まって自分をゆっくりながめる時間も出てきて、あー、もう少し、私自身を大事にしてあげようと感じてます。

 

当たり前ですが、セルフケアは自分のことなので、ちゃんと見えていればどうにかする方法が見つけられるのですが、自分ではどうにもできないことも。

 

納棺師にとって、12月〜2月は忙しさのピーク。今年はオミクロンで濃厚接触者が急増てるなかで、人が足りていない状況だと聞いてます。

葬儀が縮小するなかで、せめて亡くなった方を綺麗にして送ってあげたいという方も多く、納棺式や納棺師の需要は依然と変わらないか、増加傾向にあります。

たくさんの納棺師が、このピークをどんな思いで乗り越えようとしているのか、外からでは応援しかできないのです。

今年の繁忙期は、納棺師にとって厳しい環境です。どうか、体や心に気を配りながらこの数ヶ月を過ごしてほしいです。