アル中の脳内日記

アル中親父による一人雑談ブログ

狭山の黒い闇に触れる 962

【公判調書3011丁〜】

                  「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

                                           *

松本弁護人=「それから証人は福地弁護人からの質問に対して、五月二日の夜、佐野屋前の張込みに加わったと仰いましたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「証人はこの時は、この捜査の、まあかなり中心的な位置におられたんでしょう。あなたが最高という意味じゃないんですよ、中心的にいろいろな張込み計画を立てたりするという意味です」

証人=「中心的というよりも、中心的な人物という者はもっとほかに上司として仰いだ人間がたくさんおったわけですから、経験は勿論、年数からいくと言うと私のほうが皆さんよりも多かったというようなものの、計画、その他については階級的にもっと上の人がやったわけです」

松本弁護人=「県警本部の捜査一課でいうとあなたの位置は何番目になるんですか」

証人=「課長がおりますね」

松本弁護人=「誰ですか」

証人=「当時、飯塚警視じゃなかったでしょうか。刑事部長が中さん、係長が私」

松本弁護人=「あなたは捜査係長だったんですか」

証人=「ええ、そうです」

松本弁護人=「それじゃまあ、捜査一課というのは大体何をするところですか」

証人=「私の立場からいうと強行犯凶悪犯を」

松本弁護人=「そうするとその係長といえばあなたが一番実際には課長を補佐しながら全体の係の人間を指揮していくという立場におられるんでしょう」

証人=「日頃の立場はそうかも知れませんが、当時の立場ではそうではなかったですね。早い話が中刑事部長が頭になっていて、私等はずっとまあ下のほうで仕事をしておった関係から、とにかく細部にわたるいろいろな関係については全部が全部タッチしたというわけにはいきませんのですね」

松本弁護人=「あなたは張込みをする前、五月二日の段階、一日の夜の段階、その時に中田善枝の家へ行って、例えば脅迫状が差入れられておる状況とか、自転車が置いてあった状態とかいうことについて聞込みをしたり、その場所を見たりなどはやりませんでしたか」

証人=「やりました」

松本弁護人=「いつ行きました」

証人=「その翌日あたりからじゃなかったですかな」

松本弁護人=「二日ですね」

証人=「いやいや三日頃からですね」

松本弁護人=「張込みの前に」

証人=「張込みの前には行きません」

松本弁護人=「あなたは中田家の誰かに張込みの前に会いませんか」

証人=「会いません」

松本弁護人=「登美恵さんを説得したりもしなかったですか」

証人=「やりません」

松本弁護人=「あなたは張込んだというんですが、どういう状態で張込んでいたんですか。場所は分かりましたけれども隠れていたんですか」

証人=「隠れておったんです。茶畑だと思いましたが、その中ですね」

松本弁護人=「あなたはその時に大体、張込みの全体図という風なものを分かっておったんでしょう。三十数人が張込んでおったらしいんですが、どの辺が重点であったということは」

証人=「大体、張込み計画というものについて、一応は当時頭に入れたわけなんだが、現在は記憶がありません」

松本弁護人=「石川君は逮捕されてからいろいろ図面で指示をしておりますけれども、ほとんど平仮名で書いてあって、全部といってもいいほど平仮名で、自分の署名以外、漢字はほとんど使っていないということに気が付きませんでしたか」

証人=「漢字はなかったんじゃないかと思います」

松本弁護人=「それはあなたの方で、なぜか聞いてみたりはしなかったんですか」

証人=「しませんでした。別に仮名を使おうが漢字を使おうが関心ありませんでした」

松本弁護人=「あなたは脅迫状の文章はご覧になりましたか。大学ノートの破ったところに書いた字は見ましたか」

証人=「見ましたね」

松本弁護人=「その事と関連付けて本人に尋ねたりは、なぜ漢字を書かんのかと追求したようなこともないんですか」

証人=「ありません」

松本弁護人=「本人は漢字を書くだけの力がなかったんではないんですか」

証人=「その点は・・・・・・・・・ないんですか」

松本弁護人=「書いてませんよ」

証人=「漢字書く力がなかったんかあったんか分かりませんが、と言ってどうして漢字で書かんということも聞いたことございません」

松本弁護人=「本人の字は何か押さえて太く書くような、そういう感じの字でしたか。先ほどの図面で記憶を喚起していただいて、細手の字ではないですね」

証人=「あれは鉛筆が太かったんじゃなかったんでしょうか。細い鉛筆で書けば細かったんじゃないかと思いますが」

                                            *

○弁護人は証人に対し、石川被告人が書いた図面には漢字が見当たらず、ほぼ平仮名による記入で占められていることを疑問に思わぬかと問う。これは漢字が含まれている脅迫状の文面を念頭に発問したものと推測するが、では石川被告人が平仮名に関しては一般的水準を満たしていたかと言えば、これも怪しい。

この二枚の写真は、石川被告が書いた石田養豚場の見取り図を拡大したものである。写真一枚目の「いり"くち」の「"く」という表記は、本来なら濁音であることを示すため、清音(く)の右肩に二つの点(濁点)を打ち「ぐ」という文字として完成するのだが、写真のそれは左肩に二つの点が打たれ、読み手としては、打たれた二つの点の位置に違和感を覚えながらも「いりぐち=入り口」と認識し、その裏で、意識の中「これを書いた者の識字能力は低い」とも感じるだろう。

二枚目の写真に見られる「じゃべる」いや、「じゃるべ」か、どちらにせよ聞き慣れない言葉だが、この図面及び、図面を書くに至る経緯からして、これは要するに「スコップ」を意味するのである。昭和世代の者としては、あの頃はスコップとはシャベルと同義語であり・・・・・・などと、ここで昭和を語るのは慎むが、つまりスコップ=シャベル、このシャベルという表記を石川被告は「じゃべる」というか「じゃるべ」か、どう読むかよく分からないが、そう図面には記録されているのである。

漢字の筆記以前にまず平仮名の表記を学習した方が・・・・・・などと感じつつ、本件の重要証拠物を眺めてみる。

こちらの書き手は達筆ですな。

 

狭山の黒い闇に触れる 961

【公判調書3009丁〜】

                   「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

                                            *

松本弁護人=「(次に同、三十八年六月二十四日付警察官調書添付図面の内二〇七五丁を示す)それ時計を捨てた場所について本人が書いたものですね」

証人=「はい」

                                            *

裁判長=「最前その点について尋問がありましたね、証人はそれを六月二十九日と読むと言ったんですが、すぐ前のページにある図面と合わせて見せて下さい、比較した上で答えさしてほしいんです」

                                            *

松本弁護人=「(図、二〇七四丁の図面も示す)これは何の図面ですか」

証人=「石川君がいわゆる、とった時計の型を書いたんでしょう」

                                            *

裁判長=「それは図面に日付が両方とも書いてある、その一番目の日付を読まして下さい」

証人=「これがねぇ、なかなか書き方が上手に書いてあるから、四とも読まれるような字になっているんですよ、これは」

裁判長=「前の字は何て読むんですか」

証人=「四です」

裁判長=「後の字は九と言ったんですか」

証人=「九のような格好になっているんで二十九と申し上げました、比べて見ますと二十四と二十九とは大体まあ・・・・・・」

                                            *           

松本弁護人=「(前同、一九九九丁の図面を示す)先ほど見ていただいた図面ですけれども、この下のところに『やまがこを』と書いてますね。これは山学校のことですか」

証人=「山学校でしょう、と思います」

松本弁護人=「(同、二〇〇三丁の図面を示す)これの下の部分には『やまかこを』という風に書いてますね」

証人=「そうですね」

松本弁護人=「それからその左斜上に『がこを』と書いてますね。これは学校のことですね」

証人=「そうじゃないかと思うんですが」

松本弁護人=「『つ』が抜けてますね」

証人=「抜けてますね」

松本弁護人=「(同二〇一二丁の図面を示す)この左下の方に『なかださんにじてんしゃとてがみをもてけくときにあッたじどをしゃ』と書いてます。『け』とも『ゆ』とも見えますが」

証人=「ありますね」

松本弁護人=「(同、二〇六〇丁の図面を示す)左上の所ですけれども、『30ふんくらいまてエたところ』、待ってという意味だと思うんですが、と書いてますね」

証人=「はい、そうです」

松本弁護人=「その下真ん中あたりに『まてたところ』と書いてますね」

証人=「はい」

松本弁護人=「それで伺うんですけれども、何か本人は、普通は"がっこう"、" まっていた"という風に普通は教育を受けておれば発音を入れて書くんですが、そういうものを本人は書かん癖があるんですか。書けないというかそういう癖を、別に注意はしなかったんですか、ごく自然に書かしたんですか」

証人=「こっちからこう書けとか、ああ書けとかいう話はしませんから、自然に、そういう癖があるかないか分かりませんが、書いたんです」

(続く)

狭山の黒い闇に触れる 960

【公判調書3007丁〜】

                  「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

                                            *

松本弁護人=「(原審二一四三丁の供述調書を示す)三十八年六月二十九日付の警察調書の二十一項ですかに関連致しますけれども、二一四四丁にまたがりますこの付近を見ていただきたいんですが、二一四四丁の表の、後ろから二行目『私がこの鞄を荷かけからおろしたのは鞄なんかをくっつけて自転車に乗っていると誰かに見られた時まずいと思って外したのです』それからさらに少しいったところに、『私は鞄を持って行って私が本を捨てたところへ本やその他の物が入ったまま、足で土をかっぱいで埋めようとしたが、あんまり厚みが厚いから鞄を持ち上げチャックを開いて逆さにして中の物をうんまけたのです』という表現がありますね、それから二十二項になりますと『自転車をころがして三十米くらい行って鞄を山と畑の間の深いところへ入れてその上へ藁(わら)をかけておきました。その時土はかけません』というようなことを言っているんです。その関係でいうと教科書を捨てた所と鞄を捨てた所の間の距離は三十米くらいということになっていますね。そこに、道路は越して行ったんだと、道路をまたいで行ったんだという表現は少しもありませんね、その点はどういう風に判断されましたか」

証人=「どう判断したという、判断の記憶についてはありませんな」

松本弁護人=「じゃ石川君は鞄と本の関係について、とにかく道路から見て一方の側だけに埋めたんだと、別々に道路を越してこっち側に教科書、こっち側には鞄ということを言わないで、両方とも道路の片側に捨てたんだという風に言っていたんじゃないんでしょうか」

証人=「当時、捜索に行った関係じゃなく、しばらく経ってからの話で、今のところどっち側に同じように捨てたものか、別々に捨てたものか、別々に捨てたという大体そういう供述をされた記憶でありますが、離れておったか、離れてないか、反対側だったか同じ側だったかという記憶はございません」

松本弁護人=「参考のために二二〇九丁の図面を見ていただきたいのですが

(同、二二〇九丁の図面を示す)

これは三十八年六月二十五日付検察官調書に添付されている図面ですが先ほど鞄が発見されたのは六月二十一日か二日ですけれども、数日経って二十五日の、検察官に対して石川君が作成提出したという図面、これを見ますと、山の方から行ってちょうど右側へ行ってまず本を捨て、鞄を捨てたようになっておりますね、道路の片側へ。あなたに向かってもこのような供述をしておったんじゃないんですか」

証人=「記憶ありませんなあ」

松本弁護人=「現実には本が出て来たのは二二〇九丁の図面で言うと道路をへだてた反対側、この図面で言うと左側の山の中だったんじゃないんですか」

証人=「分かりませんです、それは関さんが捜してると思います」

松本弁護人=「それでは次に別のことを聞きます。(同、二〇九一、二〇九二、二〇九三、二〇九四、二〇九五、二〇九六、一連の図面を示す)これは三十八年六月二十五日付の警察官調書の添付図面ですが、六枚の図面がありますけれども、これにはそれぞれ鉄筆で本人が書いた字の下辺りに、あるいは横付近にあらかじめ、何かの、何というんでしょうか、直接鉄筆でこの紙の上に書いた字のあと、あるいは何か薄い紙を上にひいてそれらの下にこの紙を当てて書いたような、そういう筆圧痕がありますね」

証人=「ありますね」

松本弁護人=「全部にあるんですが」

証人=「はい」

松本弁護人=「これはあるいは以前に証言されたかも知れませんけれども、そういう証言をされた記憶はありますか」

証人=「あります」

松本弁護人=「これはまあ一言だけだぶって聞きたいんですけれども、どういうことからこういう筆圧痕が生まれたんですか、理由がわかるでしょう」

証人=「これは何と言いましょうか、要するにそれぞれ謄本を作るというか写しを取った関係で」

松本弁護人=「二〇九五丁の図面を見ますと右上の方に六月二十五日石川一夫と本人が書いてますね。そして指印を押してますね、その下に別の人の筆跡で同じようなことを書いて指印として丸を書いたような、なぞったような跡がありますね」

証人=「ありますね」

松本弁護人=「謄本を作る場合にこういう風になるということはあり得ないんじゃないですか」

証人=「そんなことはないと思いますね、写しを取っていわゆる本部へやるとか、あるいは捜査関係にやったというのが、こういう風になっているんじゃないかと思いますが、当時おそらく清水君か平野君というのがそれぞれ謄本を作成しておりましたから、その人たちがこういう写し方をしたんじゃないかと思いますが」

(続く)

狭山の黒い闇に触れる 959

○教科書・カバンの発見場所の位置関係。写真二点は"無実の獄25年・狭山事件写真集=部落解放同盟中央本部中央狭山闘争本部・編、解放出版社"より引用。

【公判調書3006丁〜】

                  「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

                                           *

(石川被告による供述調書添付図面二〇〇三丁)

松本弁護人=「(同二〇〇三丁の図面を示す)これが本件のカバンの捜査に役に立った調書というか、図面ですか」

証人=「同じ日に二通供述調書を作っておるんですが、青木警部が作った調書だったらばそうです」

松本弁護人=「ところが、ここに先ほど福地弁護人からの質問がありましたけれども、ここに溝という表現が使ってありますね」

証人=「はい」

松本弁護人=「ところが、この供述調書を私、一読したんですが、二〇〇一丁の表の、終わりから三行目の『山と畑の間の低いところの土を少しばかり、履いていたゴム長靴でかっぱいで、本は鞄から出して鞄だけその土をかっぱいた所へ放り出し、そのそばにあった藁一束くらいを』伝々と書いてありますね」

証人=「はい」

松本弁護人=「溝という表現はこの供述調書全体を見たんですが、少しもないんですよ、ところがこの図面に溝と書いてあるんですがね、何かちょろちょろと草が生えてるような感じのものも書いてありますけれども、供述調書に書いてないものがどうしてこの図面に出て来るのか覚えてませんか、何かそういう理由があったんですか」

証人=「石川君が分かりいいように書いたんじゃないかと思いますが。あったものを」

松本弁護人=「それじゃ、この調書を作る時にはまずこの図面を石川君が書きますね、その書いた図面について供述調書が作成されるんでしょう。供述調書を作ってからこの図面が作成されるということはないんですね」

証人=「順序からはそうですが。図面が出来て」

松本弁護人=「そうすると図面に溝という表現が使ってあれば当然その辺りは解明されていいんじゃないでしょうかね」

証人=「そうですね」

松本弁護人=「どういうことで溝という表現を使われていないのか、警察調書の中では溝という表現ではなかったように見ているんですが、検察官調書は別として、現場は溝でしょう、カバンが発見された所はあなた後になって行きましたか」

証人=「後から行きました」

松本弁護人=「それは溝でしたか、どうですか」

証人=「低い所ですね」

松本弁護人=「私が聞いているのはカバンが発見されたのは溝の中からであったかどうかということですよ」

証人=「溝とも言えるし、低い所とも言える状況の所でしたなあ」

松本弁護人=「二〇〇三丁の図面によりますとカバンが発見された現実の位置もそうなんですけれども、あれは先ほどの同じ日付の調書添付の図面によって指示したところは教科書が発見されたところと道路一つ隔てた反対側の溝の中でしたね、カバンが発見されたのは。記憶ありませんか」

証人=「その点記憶ありません」

松本弁護人=「教科書の発見された位置は、その後で行って調べたりした記憶はないんですか」

証人=「行きましたねぇ、行ってると思います」

松本弁護人=「道路から見ると教科書が発見された方がやや高めに傾斜面を上がって行くような感じの所になるんじゃないんですか、やはり低い所ですけれども、反対にカバンが発見された所は道路からやや低く反対の方に降りていく所と、截然と別れているんじゃないですか、場所的には」

証人=「ただ、山でしたが低かった、ということきり記憶ないですね」

(続く)

カバン発見現場付近。

教科書・ノート発見場所。

○石川被告の自白では、カバンと教科書は同じ場所に捨てたということであるが、現実には、両者は百五十メートル以上も離れたところからそれぞれ見つかっている。これだけの距離が離れていながら、この矛盾点を突き詰めなかった警察・検察は、すると百五十メートルという範囲をも"同じ場所"という解釈で済ませたということになろうか。つまり被告の言う"同じ場所"という定義は百五十メートルぐらいは含むのだと、こういう恐ろしくも呆れた解釈で犯行の立証を敢行してゆくのである。

                                            *

カバン発見時、牛乳瓶、ハンカチ、三角巾などが共に見つかっているが、これらについては石川被告からは何の供述もされておらず、捜査側も追及した形跡はない。

 

 

 

狭山の黒い闇に触れる 958

【公判調書3003丁〜】

                   「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

                                           *

松本弁護人=「先ほどからいろいろカバン、あるいは時計の問題について、発見された関係の捜査に証人が関係されておったということに、供述を求めておったんですが、そういう場合に全てそういうことの捜索は本人が指示したと言いますか、図面を書いて説明した、その図面によって行なったというんですか」

証人=「さようです」

松本弁護人=「あなたは本件の捜査においては実質的には青木警部と並んで一番関係の深い立場におられたんでしょうねぇ、一番中心的な立場におられたですね」

証人=「さあ、中心と言えるかどうか、その点ははっきり分かりませんが、とにかく青木警部と一緒だったということについては間違いございません」

松本弁護人=「この狭山事件の捜査には非常に多数の警察官が捜査に従事されましたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「その中で一番の、それの最高責任者の地位におって指揮しておったという人は長谷部警視ですか」

証人=「事件の最高指揮者は当時の中刑事部長だと思いますが」

松本弁護人=「そうすると被告人に即して取調べをする関係では、だいたい青木警部とあなたが常時関与しておったということですね」

証人=「そのほか長谷部警視がおったわけです」

松本弁護人=「このカバン並びに時計の捜索に当たって、私どもの経験、あるいは世間一般に警察が行なう捜査方法としてはそういう、物を被疑者が捨てた場所については直接本人をその現場へ連行して、そして具体的にここに捨てたという指示をさせて、その場を捜索する、これが通常の捜査方法であり、最近の事件においてもそれは最も確実な方法として用いられておると思いますが、本件においては、本人をその現場に伴って行って指示説明をさせるということは本件においてはやりましたか、やらなかったですか」

証人=「やらなかったと思います」

松本弁護人=「何故そういうことをしなかったんですか」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

松本弁護人=「理由があるでしょう」

証人=「そういうことを言うことは、いいか悪いかは別問題としまして、当時は非常に何というんでしょうかなあ、新聞の関係、テレビの関係その他たくさん詰めかけておりましたなあ、そうした関係じゃなかったかと思いますが」

松本弁護人=「この前、ごく最近のことですけれども、女子高校生など十人か何人か忘れましたが大久保清という犯人がおりましたね、誘拐しては殺害して死体を埋めておったという事件においては、逐一本人を伴って死体を埋めた場所を指示さして、そこから死体を発見しておりましたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「それに限らず現在も以前もそういう方法によるべきなので、事件が非常に有名であって世間の関心をひいておるかどうかと関係なしにそういう捜査方法が取り得たんじゃないかと思いますが、その点はいかがでしょうか」

証人=「だから今申し上げたように、あまりにもその新聞の関係、テレビの関係の人がわんさわんさ、と言うとちょっと語弊があるかも知れませんが、とにかく身動きの取れないほど車で来ておった関係もあったんじゃないんでしょうか」

松本弁護人=「(原審記録第一九九九丁の図面を示します)これをご覧下さい。これが六月二十一日作成の供述調書に添付してある図面ですね」

証人=「はい」

松本弁護人=「これは被告人本人が作成したものですか」

証人=「とにかく石川君が作ったものですね」

松本弁護人=「これで見ますと、これはカバンごと山の中におっぽったということに関係して、その場所を特定したものなんですけれども、内容は」

証人=「はい」

松本弁護人=「ここに✖️印の上に◯が書いてありますね」

証人=「あります」

松本弁護人=「その位置が、カバンがあったという風に思われる位置なんですね、つまり本人がここに捨てたという風に指示した場所ですね」

証人=「・・・・・・・・・」

松本弁護人=「違いますか」

証人=「さあ、だいたい書いたわけだねぇ・・・・・・」

松本弁護人=「そうすると、この供述部分を見ていただきたいんですが、一九九六丁に、『山を出はずれるところの畑から二十メートルくらいで、山の中から行くと道の左側で三十メートルくらいのところへ捨てたんだ』と、こういう風なことが書いてありますね」

証人=「はい」

松本弁護人=「その次には、カバンの中に帳面と本があったというようなことがあって、そしてカバンごと山の中におっぽっちゃったんだと、教科書も全部含めて、カバンごと放ったんだという記載がありますね」

証人=「はい」

松本弁護人=「これでいくと、山の中から出ていって道の左側だと、こう書いてあるんですよ。そうすると、この図面で見ますと、山の中から出ていって道の左側ということはこの✖️印を書いて◯をしてある所と逆の方向じゃないんですか。図面で見ると道路をはさんだ上の方に✖️印があり左側がインクで消してありますね、この付近のことを指しているんじゃないでしょうか、供述との兼ね合いで言うと」

証人=「・・・・・・・・・・・・」

松本弁護人=「つまり別の表現を使えば、供述調書で指示されている部分というのは、教科書が五月二十三日か五日頃にすでに発見されておりましたね」

証人=「はい」

松本弁護人=「覚えてますか」

証人=「教科書が発見されてるということは・・・・・・なんですけれども」

松本弁護人=「教科書が発見されておる場所、道路から見るとこの図面で見ると上の所、そこにカバンごと捨てたんだという風な供述になっておるんじゃないですか、分からなければ結構ですが」

証人=「カバンの件につきましては、今私が朧げながら記憶を辿りますと、関さんが巡査部長、これが最初図面を、石川君が書いたものを持って見つけに行って無かったということで、別に書いたんじゃないでしょうか」

松本弁護人=「その次の調書を見ていただきたいんですが、二〇〇〇丁から始まる六月二十一日付の調書がありますね」

証人=「はい」

(続く)

                                            *

引用文中にある、六月二十一日作成の供述調書添付図面・一九九九丁であるが、この肝心な図面が私の手持ち資料の中には無く、全く歯痒いばかりである。

                                            *

ここからは引用文とは離れるが、事件当時の石川一雄被告の識字能力がどの程度の水準であったか、実際に供述調書添付図面に残された文字を見て見よう。

自転車屋

学校。

追い越されたところ。

入り口。

お巡りさん。

狭山精密。

学校。上記の「がこを」と比較すると、一応「ツ」が入るが、それでも「がツこを」と表現されている。

封筒。

もはや、写真右側の説明文は私にはよく分からない・・・。

上に挙げた写真(図面)は警察の取調べ対し石川被告が書き残したものであるが、その石川被告にしても、相手が警察である以上、それなりに、持てる知能を駆使し図面作成などに対応したと思われるが、それでもやはりその語学力は写真で確認できる水準にとどまる。

ところで、脅迫状を見てみよう。

これは、必要事項が理路整然に書かれ、執筆者が相手に何を要求しているか一読して分かる。事実、脅迫状を届けられた兄はこれを読み終えた後、即座に駐在に向かったことがそれを証明している。

私の黒い闇の推測では、石川一雄被告は脅迫状とは無関係であり、むしろ事件当時、書けと言われても無理であったと、そう考えざるを得ない。脅迫状の文字や、筆の勢い、限られた(一枚の便箋)中での卓越した情報伝達技術を見れば、その識字能力の高さは石川被告に比べ明らに高い。しかしこれは、図面の表現と脅迫状の表現を見比べただけであり、科学的根拠は全く示せないのである。

 

 

 

 

 

狭山の黒い闇に触れる 957

【公判調書3000丁〜】

                    「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

                                           *

佐々木哲蔵弁護人=「それから、第三点ですけれども、石川がこういう犯行をすることになった動機ですけれども、あなたずっと立ち会っておられて、どういう風にご記憶になっておられますか」

証人=「その点どうもはっきりこうだとは申し上げかねますね」

佐々木哲蔵弁護人=「そうすると一番最初は競輪の金を稼ぐということになっておる、それご記憶ないですか」

証人=「はあはあ、なるほど、そういうのもありましたな」

佐々木哲蔵弁護人=「それから今度おしまいに何かお父さんの借金が十万円とか十三万円あるんだと、そういう風に変わった、そのことを思い出されましたか」

証人=「今言われると、そういうことがあったような感じがしますね、言われてみればああそうだなという感じはします」

佐々木哲蔵弁護人=「あなた、お父さんから立て替えてもらった借金払いでこういう大それたことをするということは動機としてちょっとこれはおかしいという感じはしませんでしたか」

証人=「それはしかし簡単にやる人もいますよ。深く考えなければやらん人もあります。それは人それぞれでわかりません」

佐々木哲蔵弁護人=「肝心の動機が、何十通とある警察調書の一番おしまいの七月六日の調書に、初めてお父さんの借金という動機が出てきているんですが、その点あなたご記憶出ませんか」

証人=「・・・・・・・・・・・・いえ」

佐々木哲蔵弁護人=「七月六日付の警察調書、これは一番おしまいの調書ですが、第五項に(記録二一五九丁の裏)『私がなぜ善枝ちゃんを殺すことになったかをよく考えてみますと、私はこのまえ話をした時、競輪がやりたくて金が欲しかったからだと言いましたが、それは嘘で、家の中のぼろを言いたくなかったからそう言ったのです。私は去年の夏頃オートバイを買う時の借金払いしていました』と、そういう下りになっていますが、一番おしまいに大事なことが出てきた。これは警察の方からそうじゃないかと言ったのか、それとも石川君の方から言ったのか、どっちから言い出したのですか」

証人=「結局、何かほかに動機があるんじゃなかろうかということで聞かれて言ったんじゃないかと思いますが、尋ねられて言ったことからそういうことを石川君が自ら話して来たんじゃないかと思います」

佐々木哲蔵弁護人=「今までの動機が少し分かりにくいということですか。警察としてお調べになって、どうも今までのところは分かりにくいということで、一番終りのところで聞いたと、そういうことですか」

証人=「そこははっきり申し上げかねます」

佐々木哲蔵弁護人=「ところで、警察がお調べになっている時、検察庁とやっぱり緊密な連絡を取ってお調べになっておられたんでしょうね」

証人=「それは上司がおそらくやったんじゃないかと思いますが、その点は私の方は検事さんの方と伝々ということはやったことはございません」

佐々木哲蔵弁護人=「私のこれ一つの考えになるんですけれども、今申しましたお父さんの借金やら東京へ出稼ぎに行く費用を動機として言い出したのは、検察官調書は七月二日なんです。警察の方はそれから四日あとなんです。で、同じような動機になっているんです。前も同じであとも同じだから検察庁から何かそういう連絡なりがあって、それに基づいて石川君に追及して警察調書がこういう風に出来たのかと私共には読めるんですけれども、そういうようなことはございませんでしたんでしょうか」

証人=「今、弁護士さんの仰られる日付の点から言うと、そういう風にお考えになるかも知れませんが、我々は検事さんと相談をしながらというようなことは上司の方でやることで、私らは検事さんと相談をして伝々ということはございません」

佐々木哲蔵弁護人=「どういうわけで突如そういう動機が変わってきたかということはわからない」

証人=「はい」

佐々木哲蔵弁護人=「最後に、お調べになる時は、ざら紙に、あるいは罫紙にメモ用のものを書くと仰いましたね」

証人=「ええ、申し上げました」

佐々木哲蔵弁護人=「それを書くのは誰が書くんですか、調書の下書きになるもの」

証人=「調書の前は場合によっては私も書きますし、もちろん主任官も書いた時もあります。全然書かない時もあります。あながち全部が全部下書きをとって書いたということはおそらくありません」

佐々木哲蔵弁護人=「それはほんの一部でも全部でもよろしゅうございますが、ざら紙に書きますね、罫紙に書きますね、メモ用のものを。これはずっと調べてるうちにだいぶ大部(注:1)の物になりませんか、溜まるでしょう」

証人=「メモそのものは、そこへ他の綴りと一緒に置くなんてことはないですから」

佐々木哲蔵弁護人=「私の経験から申しますと、やはりざら紙にずっと殴り書きされているのがあるんです。それ、かなりの大部の物になりまして、実はある事件でそれを警察から出していただきまして、非常に参考になったことがあるんです。だからあなたがさっき言われました、ざら紙にそのメモ用のものを、あるいは罫紙に書いたと、それはこれだけ何十通というものを取っておられればかなり溜まると思うんですよね、その綴りはございますか」

証人=「そういうものは現役ならどうか分かりませんが、退官も退官、しばらくの退官ですから」

佐々木哲蔵弁護人=「その綴りみたいなものがその当時はあったでしょうね」

証人=「その当時はありました」

佐々木哲蔵弁護人=「そういうのは今ないでしょうか」

証人=「ありませんね」

佐々木哲蔵弁護人=「ないというのはどうして言われるの」

証人=「燃やしちゃったですからありませんよ」

佐々木哲蔵弁護人=「それは普通燃やしてしまうんですか。燃やしたというのはあなたは知ってるの」

証人=「いや、自分のだから。それは青木さんのはあるかどうか分かりませんが。私は当時あったかも知れませんよ」

佐々木哲蔵弁護人=「かなりのものになるでしょう、二十通も取ったら。そのためにやっぱりメモを取るんでしょう」

証人=「そんなことないです。とにかくメモを取るなんてのはそうたくさんあるものじゃないですよ。メモなしで調書がどんどん、どんどん取れるんですから」

佐々木哲蔵弁護人=「あなたご自身のメモ用のざら紙の綴りは燃やしちゃったと」

証人=「燃やしちゃったと、こう申し上げましょう。とにかく分からないんですから」

佐々木哲蔵弁護人=「分かんなかったらどうなったか分かりませんと言って下さいよ」

証人=「どうなったか分からないと言うと見つけろということになるでしょう、どうなったか分かりません」

佐々木哲蔵弁護人=「燃やしたというわけでもないんだね」

証人=「そういうことは分からねぇですから、私は」

佐々木哲蔵弁護人=「綴りはあったけれども今はどうなっているか分からない」

証人=「分かりません」 

佐々木哲蔵弁護人=「青木さんの分も分からない」

証人=「青木さんの分も分かりませんな」

佐々木哲蔵弁護人=「現役であるんだったらお持ちになってるんじゃないんですかな、狭山事件と言えば大事件ですからね」

証人=「現役ならどうか分かりませんが、どうも辞めて十年も経ってから、とにかくここへ来るんでようようなんです。年が年なんですよ、私は」

                                                                  (以上  重信義子)

(注:1)大部=一つの書物などの冊数や巻数が多いこと。また、そのページ数・紙数の多いこと。

 

狭山の黒い闇に触れる 956

【公判調書2998丁〜】

                    「第五十六回公判調書(供述)」

証人=遠藤  三(かつ)・七十歳

                                           *

佐々木哲蔵弁護人=「あなたは立会人ですから問答をずっと聞いておられる」

証人=「はい」

佐々木哲蔵弁護人=「だから見方によってはあなたが一番よく覚えている」

証人=「そうですね」

佐々木哲蔵弁護人=「そうすると被告の言う通り要領を書かれるというんですがね、この調書には "よく考えておきます" という文句があるんですけどね、まあその一つの例として六月二十八日の調書の八項ですと『私は善枝ちゃんの体のうち、なわでしばったところは足だけで、そのほかの手とか首とかをしばったことは覚えていませんが、よく考えておきます』という言葉があるんですけれどもね、このよく考えておきますというのは石川君がそういう言葉を使ったんですか」

証人=「石川君が使ったんじゃないですか」

佐々木哲蔵弁護人=「よく考えておきますと、これは石川君がそういう言葉を使ったのをその通り書いたわけですか」

証人=「その通りでなくちゃなんねぇわけですね、だから青木さんそのものがその通り書いたと思います」

佐々木哲蔵弁護人=「ところがね、たとえばこの条項だけ見ましても、体のうちで縄で縛った所は足だけで、そのほかの手とか首とかを縛ったことは覚えておらないで考えておくと、これはちょっとおかしいことないですか、そうすると殺しておいて縄で縛った所は足だけで手とか首とかを縛ったことはこれは一番肝心なことじゃありませんか」

証人=「そうですな」

佐々木哲蔵弁護人=「それを考えておく、しかもこういう調書自体でですよ、こういう調書自体であなた、おかしいと思いませんか」

証人=「私はおかしいと思いません。思うわけがないです。とにかく石川君の供述をそこへ載せたものですから私はおかしいとは思いません」

佐々木哲蔵弁護人=「あなたはですね、おかしいんじゃないかとか、違うんじゃないかというようなことを被告に問いただしたことはないと仰いましたね」

証人=「ありません」

佐々木哲蔵弁護人=「そういうことはありますか。警察官が被告がこういう風に言った場合にそれは君、おかしいんじゃないか、違うんじゃないかということを言ったことはないですか」

証人=「状況が分からなければそういうことは言えないですよ」

佐々木哲蔵弁護人=「そういうことはあなた、言ったことはないの」

証人=「ありません」

佐々木哲蔵弁護人=「ただね、常識なんですけれども、実際に殺したとすれば、一番大事な、縄で縛った所は足その他の手とか首とかを縛ったことはこれは考えるも何もないんじゃないかと、私は思うんですが、いかがですか」

証人=「そうですね、それは仰られる通りです」

佐々木哲蔵弁護人=「だからこの内容はちょっとおかしいな」

証人=「内容がおかしいということは私は言えないと思います」

佐々木哲蔵弁護人=「もっと追及するのが当り前じゃありませんか」

証人=「こうじゃないかという追及ができればこれは別ですけども、全然わからなくて追及したからて(原文ママ)、石川君が言ったことをそこへ書くより他にないじゃありませんか」

佐々木哲蔵弁護人=「だけどあなた方は石川君は本当に犯人だと思っていたというんでしょう」

証人=「そういうことは断定出来ませんな。最初から石川君が犯人だなんていうようなことはこれは毛頭考えられるものじゃないです。捜査の過程においてだんだん考えられるわけです」

佐々木哲蔵弁護人=「考えられないにしても、その疑いをもって調べておるわけでしょう」

証人=「もちろん被疑者ですからね」

佐々木哲蔵弁護人=「だから、縄で縛っている足ということは思い出している、その場合に本当にやったんだとすれば一番肝心な手とか首とかを縛ったということを、本当にやった人はそれを思い出すのが当り前じゃありませんか、あなた方が追及するのが当り前じゃありませんか」

証人=「そういう風にやっていくのが本当かも知れません」

佐々木哲蔵弁護人=「もう一つは、" あとで間違ったことがあったならば訂正します " という下りが所々あるんですよ。たとえば六月二十五日の調書でございますが、その十六項、『私は今まで話したことに大体間違いないと思いますが間違っていたことがあったらあとで直します』 せっかく言ってるのにこれはあなたのご記憶では、警察の方から今まで言ったことで間違いがあったらあとで直すか、という風にお問いになって答えたものか、それとも石川の方から自分で進んで言ったものか、どっちですか」

証人=「それは一応間違いないかということは念を押します。それに対して答えられたんじゃないかと思いますが」

佐々木哲蔵弁護人=「こういうのは私はあまり経験ないんですがね、つまり石川が今まで言ってることが何かちょっと頼りないところがあると、それで、もし違ったことがあればあとで訂正するというようなことを特に調書に書いたと、そういう感じであなた方は石川の話を聞いておったんじゃありませんか。その現れじゃないですか」

証人=「そうじゃないです」

佐々木哲蔵弁護人=「こういうのが所々あるんです」

証人=「そうですか、一応とにかくそれで間違いないかと、こう念は当然押されます。それに対して間違っておったら訂正しますよというのは当然のことだと思います」

(続く)

                                            *

追記:入間川河川敷を管轄とする猫について。

左・・・右・・・左・・・、

そしてまた右と、振り子のように振られる尻尾を見ているうちに、やがて私は催眠状態に陥っていった。気がつけば、コンビニで以下のものを買わされ、左・・・右・・・とつぶやきながら私はそれを与えていた。

こちらが受けた洗脳が解けぬよう、最後まで光線を送ってよこす姿はどこかの宗教団体を彷彿とさせ、事実、私は再びこの教祖に接触することを心に誓っていた。もちろん、次回は高級チュールをお布施させていただくつもりである。