本と酒があれば、人生何とかやっていける

読んだ本の感想や気付きを中心に、雑感をつらつらと綴っていきます

〈本〉『苦しかったときの話をしようか ビジネスマンの父が我が子のために書きためた「働くことの本質」』

先行きに不安を抱えている、大切な部下にこの本を贈りたい。

 


P&G、USJユニバーサル・スタジオ・ジャパン)を経て、マーケティングで日本を元気にするという目標を掲げ、株式会社刀を設立した森岡毅氏が娘に当てた手紙。現代版『ビジネスマンの父より息子への30通の手紙』と呼ぶべきものだ。

 

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙    新潮文庫

ビジネスマンの父より息子への30通の手紙 新潮文庫

 

 

キングスレイ・ウォードが息子に宛てた手紙では、この格言が有名だろう。

 

礼儀正しさにまさる攻撃力はない

 
これは信じるに足る格言だと思うし、私の行動規範の一つだ。そして、来年4月から三年目に入る部下の女性に口酸っぱく言い続けていることでもある(もちろん、キングスレイ・ウォードの本は渡してある)。

森岡毅氏の手紙を読み、ガツンとぶん殴られた気分になった。礼儀正しいだけではなし得ないことがあるし、守れないものがあることを目の前に突き付けられた。そして、彼女に伝えなければならないと思った。

結果を出し続けなければならないということを。

結果が全てではない。この本を読み終えた今もその考えに変わりはない。しかしながら、社会では結果を出すことが求められる。しかも、彼女が4月から身を置く場所ではことの外にそれが求められる。

彼女は4月から私のもとを離れる。遠方の営業部署への異動が決まったのだ。彼女にとっての全てが変わる。環境、仕事、上司、先輩社員、挙げればきりがない。仲の良い同期とも離れ離れになる。

迷う時、悩んだ時、悲しい時、頭にきた時、拠り所となる何かが必要だ。これまでは手を差し伸べることができた。しかしながら、これからは叶わなくなる。苦しい時に本が助けになる。そう言い続けて本を渡し続けてきたが、これが最後の本になる。

結果を出し続けるにはどうしたらよいか。著者は娘にこう語り掛けている。

 

キャリア戦略とは、その人の目的達成のために、その人が持っている"特徴"を認識して、その特徴が強みに変わる文脈を探して泳いでいく、その勝ち筋を考えろということだ。


部下にはその特徴を何回も伝えてきた。残りわずかだが、これからも伝え続ける。これからは自分の特徴が強みに変わる文脈を探して結果を出す、問答無用の実績を積み上げていく必要がある。

望んでいる結果が望んでいるタイミングでやってくるとは限らない。それでも前に進み続けなければならない。先行きに対する不安は尽きないだろう。だからこそ、苦しい時に拠り所となるものを渡しておきたい。

この本が不安の全てを解消してくれるわけではないが、持つべき軸や指針を考えるヒントは示してくれる。彼女が新天地でその特徴を強みに変えて、問答無用の結果を積み上げていくことを祈り、この本を贈ろう。

〈本〉『史上最恐の人喰い虎 436人を殺害したベンガルトラと伝説のハンター』

【ハンター自身がことの本質を良く理解していた】

ノンフィクションの醍醐味が味わえる一冊

前回告白した通り、ここ最近は小説しか受け付けない身体になってしまい小説ばかり読み耽っている。しかしながら、そのような身体に関係なく本はやってくる。そして、当然ながら返却期限がやってくる。残念ながら読まずに返す本もあるのだが、この本はぎりぎりで読むことができた。久し振りに読んだノンフィクションだ。

 

史上最恐の人喰い虎 ―436人を殺害したベンガルトラと伝説のハンター―

史上最恐の人喰い虎 ―436人を殺害したベンガルトラと伝説のハンター―

 

 

読まずに返してしまう本については当然分からないのだが、この本は読むことができて良かった。ノンフィクションの醍醐味を味わうことができる一冊だ。

 

気概ではなく恐怖

ネパールとインドで436人もの住民を喰い殺した、"チャンパーワットの虎"と称されるベンガルトラ。436人という数字の信憑性を問う記述もあるが、はっきり言ってそこはどうでも良い。本書の主人公であり当の人喰い虎を始末した(それ以降も多くの人喰い虎を始末することになる)ジム・コーベットは大言壮語するような人物ではないからだ。つまり、436人という数字を信用しても良いということだ。

 

恥ずかしながら、私は住民のために自らの命を投げ出す勇気と気概はない。しかし、本書の読みどころと感じたのはジム・コーベットの気概や良しではなく、人喰い虎に立ち向かうジム・コーベットが恐怖に立ち向かうその描写だ。そりゃあ、恐いわな、当然。本人の回想録からの引用も含めて、ハンターの揺れる心情描写に引き込まれた。

 

虎という個体を知る

そして、世界最恐ハンターの一個体として名を連ねる「虎」自身に関する解説も本書に彩りを添える。彼らの主たる武器は隠密性と驚愕するほどの瞬発力(持久力には欠けるらしい)、そして生得のステルス能力(あの縦縞は動物界で最も効果的なカモフラージュ・セットだと説明されている)で、捕食されるものが僅かな空気の揺らぎを感じた瞬間にあの世へ送ることができる。一方で...

 

普通の虎は狩猟と交尾、そして縄張りから競争を相手を追い払うことにほとんどの時間を費やしており、人間などに感けている暇はないのだ。

 

と言うよりも、そもそも虎は人間を忌避しており、比較的幅広い動植物を常食としている割に「ありがたくも、あからさまに彼らのメニューから欠落している種がある」という表現で、人間を食用の対象としていないことも合わせて説明されている。

 

なにゆえに人を襲うのか

ではなぜ?というところも、本書の読みどころの一つ。そもそも防衛本能以外で人間を襲うことのない虎がなぜ、恐怖の人喰い虎になるのか。このことを、著者はシェイクスピアの戯曲から引用して的確に表現している。誠にもって耳が痛い。

 

どんな猛獣でも、少しは憐れみを知っていよう。ところが、この身はそれを知らぬ。つまり獣ではないということだ

 

何をか言わんや。結局、人間が生み出したものによって人間自身が苦しめられているということなのだ。シェイクスピアの引用が仄めかしていることを次のように表現して、著者は本書を締めくくっている。

 

すなわち、真の意味での猛獣としての行為という点にかけては──無慈悲に、理由もなく殺すということにかけては──より獰猛なのはわれわれの方であって、彼らではない。

 

本書の所感

チャンパーワットの虎以降も数多くの人喰い虎を仕留めてきたジム・コーベット。彼が人生最後の二十年間でインドの野生動物保護、特にベンガルトラの保護に身を捧げたことは、彼自身がことの本質を良く理解していた証に他ならない。

 

インドには彼の名前を冠した「ジム・コーベット(ジム・コルベット)国立公園」がある。いつか行ってみたいものだ。

小説しか受け付けない

【引き続き小説の海に溺れよう】

やや中毒気味

ここ最近、小説しか受け付けない身体になってしまった。多島斗志之の『症例A』以降、積ん読というよりも塩漬けされていた小説を中心にばくばくと消化中だ。まさに"小説まみれ"の生活を送っている。まみれというよりもやや中毒気味で、仕事以外のことが手に付かず少し困っている。

 

黒百合 (創元推理文庫)

黒百合 (創元推理文庫)

 

 

ピース (中公文庫)

ピース (中公文庫)

 

  

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

都市と都市 (ハヤカワ文庫SF)

 

 

繁殖 (小学館文庫)

繁殖 (小学館文庫)

 

 

誘拐 (ちくま文庫)

誘拐 (ちくま文庫)

 

 

『症例A』が面白かったので、同じく多島斗志之の『黒百合』を読んでみた。男と女、過去と現在、その他諸々の要素が複雑に絡み合い、頭の中がごちゃごちゃになる。何かと先回りして色々と調べる癖があり時にはネタバレもかましてくれる妻が、読了後に調べた「謎」をかくかくしかじかと解説してくれたのでスッキリした。なるほど、あの人はそういうわけだったのか。

 

そう、『症例A』以降、妻に本を横流ししている。ノンフィクションだとこうはいかないが、小説なので気軽に受けてくれる。ちなみに、『症例A』は妻から息子へと流れた。息子も堪能したようで満足している。後は娘まで流れていけば家族四人が一冊の本でつながるので、娘にも是非読んでもらいたい。

 

次に手を付けたのが、樋口有介の『ピース』だった。これは塩漬けされていた本で、随分と前の読書会で紹介されたもの。連続猟奇殺人もので、ピースというタイトルに仕掛けがありなかなか楽しめた。『連続殺人鬼カエル男』のような、血がドバドバ流れる系の本が好みの娘(爆)はこちらに目を付けているらしい。娘よ、『症例A』も読んでくれ。

 

お次は苦手ながらも飽きずに挑戦し続けているSF小説。小説まみれの流れを受けて果敢に挑んでみたのは、ヒューゴー賞などSF関係の各賞を総なめにしたチャイナ・ミエヴィルの『都市と都市』だ。解説はミスターSF大森望が担当している(ミスターの解説は面白い)。やや分かりにくいところもあったが読み切った。最後は「あぁ、やはりそうなるのね」という終わり方だった。

 

そして、これまたいつから塩漬けされていたのかすら分からなくなってしまった、仙川環の『繁殖』を読んだ。集団食中毒が下敷きになっている小説で、食品関係の会社に勤める身としては興味深く読むことができた。例えば、黄色ブドウ球菌→エンテロトキシンなど。エンテロトキシン?何それ??という人は、戸梶圭太の『牛乳アンタッチャブル』をどうぞ。

 

さぁ、そして最終コーナー、今回までの一段落を飾る一冊は本田靖春の『誘拐』だ。こちらは実際に起きた誘拐事件をもとにしたノンフィクション。この本は加害者の側から見た「視点」が非常に良い。ノンフィクションだけになおさら良い。人間の暗い、とてつもなく深く暗い一面と、明るいという表現は語弊はあるが、希望を照らすような一面、その両面を見せてくれる良書だった。

 

今回の雑感

ワンクッション置いているものの、小説中毒が止みそうもない。他にやらなければならないことがあり、こちらに影響を及ぼしているのだが仕方ない。いまはそのような時期なのだろうと割り切って、引き続き小説の海に溺れようと思う。

〈本〉『トランプに学ぶ 現状打破の鉄則』

橋下徹の言うことは本当に腹に落ちる】

実行あるのみ

大阪府知事大阪市長である橋下徹の有料メルマガ「橋下徹の『問題解決の授業』」を加筆・修正して書籍化したもの。

 

トランプに学ぶ 現状打破の鉄則

トランプに学ぶ 現状打破の鉄則

 

 

以前に紹介した『橋下徹の問題解決の授業 大炎上知事編』と同じ流れを組むものだ。相変わらずの橋下徹節で、"自称インテリ"を徹底的にコケにしている。

 

本書では一貫してアメリカのトランプ大統領の言動をもとにした「現状打破の鉄則」を解説している。私には無理だなと思ったが、身近でまさにトランプの言動に倣ったかのような同僚がいる。そう考えると風貌もちょっぴりトランプっぽい。 

 

現状を打破するための交渉の基本は、「脅し」「利益・譲歩」「お願い」。 

 

最初に悪役キャラを強烈に出して、その後に少し善人な様子を出すだけで相手は安心するし、それで利益を得たように感じてしまう。これを「仮想の利益」と言うそうだ。確かに同僚の彼、その言動を振り返ると頷けるものがある。私には、難しいが。

 

そもそも、格調高い就任演説をすることになんの意味があるんだよ。政治家は文学者や詩人じゃない。オバマ前大統領みたいに感動的な話をしても、実行できないんじゃ意味がない。

 

実行あるのみ。評論家はいらない。私の周りにもいる。文句ばかり言って当たり散らした挙句、具体的な解決策を示して実行しようとしない人物が。このような人が上にいると部下はとてつもなく苦労する。橋下徹が多用する"自称インテリ"を、私はよく"評論家"と表現する。もう、この""書きのような人達は反面教師にするしかない。

 

綺麗事だけでは、難題は解決できない。下品であっても、犠牲を伴ったとしても、根本的な的な問題解決に挑むのが政治なんだ。

 

美しい姿とは

政治でなくてもしかり。ビジネスマンだって同じだ。目の前に起こった課題や難題に対して、やつは馬鹿だ何だと吠えても何の解決にもならない。正論を振りかざすだけでは何にもならない。

 

橋下徹が「下品でも」「犠牲を伴っても」と表現している通り、解決に向けてある部分を譲りながらも実務を粛々とこなす姿こそが美しいのだと思う。たとえ、評論家から見て美しい姿でなくても。

 

苦渋の決断でいったん犠牲を甘受し、次の段階で、それを解決していく。このようなことを繰り返して、最終的に難題を解決する。これが現状打破の鉄則だ。理想論を語るだけでは、何ひとつ解決に向かわず、最悪な現状が維持されるだけだ。

 

本書の雑感

トランプのおっちゃん、ほんと大したもんだよ。

 

"自称インテリ"や"評論家"が唱える理想的な「美しい」かたちがいきなり実現するわけではない。まずは動かす、そしてできる限り正しいと考える方向に持っていく。これが橋下徹の考える、現状打破の鉄則。橋下徹の言うことは本当に腹に落ちる。周りの人間に比べて専門性に劣ることを自覚している身としては、これを意識して今後も取り組んでいこうと思った。

 

トップ自身が専門家と同じだけの知識を学ぶ必要はない。はっきり言って、トップにそんか時間はないよ。繰り返しになるけど、トップに求められるのは、有用な意見を言ってくれる専門家は誰なのかという「人」を選ぶ能力だ。いったん専門家を選べば、専門的な意見はその人に委ねる。これがマネジメントだ。

 

〈本〉『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』

【インプットとアウトプットの大切さを実感した】

幻想を打ち砕く

ビックデータ、ディープラーニング、言葉としてはインプットされていても、その意味を問われるとちんぷんかんぷんだ。何だか凄いことができるのだろうという「分かっていない人」特有の思考停止状態の自分に、まずはズドンと釘をぶち込んでくれた。

 

 

ディープラーニングは、「大量のデータを与えればAI自身が自律的に学習して人間にもわからないような真の答を出してくれる仕組みのことだ」と誤解されていることが多いようですが、そんな夢のようなシステムではありません。

 

AIの可能性と限界

AIと言えば、必ずついて回るのが「仕事が奪われる」ということ。この手の話になると良く引用されるオックスフォード大学の研究チームが予測した「10年から20年後に残る仕事、なくなる仕事」が本書でも引き合いに出されている。

 

ただし、このことを最初に提示したのは私である、そう著者の新井紀子氏はぶち込んでくる。

 

実は、この予測を最初に世に出したのは、オックスフォードのチームではありません。MITの「機械との競争」でもありません。私です。2010年に出版した『コンピュータが仕事を奪う』(日本経済新聞出版社)でそう予測したのです。ところが、日本人は真に受けませんでした。

 

このあたりの危機感が本書の随所に現れている。「東ロボくん」と名付けた人工知能で東大合格を目指すプロジェクトを立ち上げたのも、人工知能に東大合格をさせるためではなく、「近未来のAIの可能性と限界をすべての人がわかるような形で公開すること」だったという。そう、AIは凄いことばかりではないのだ。AIには可能性もあるし、限界もある。

 

怖いのはAIなのか

本書の主題は「AIは凄い!」ではない。その限界を理解している著者は、かのレイ・カーツワイルが提唱している「シンギュラリティ」を次のように評しており、これがまた何とも小気味良い。

 

私は、この言葉の賞味期限は長く見積もってもあと2年だろうと思っています。

 

ならば安心だ(AIに仕事が奪われることはない)ということではない。著者が言いたいことはそんなことではない。タイトルの後半に示されているように、問題は我々がAIに追い越されることではなく、我々自身が劣化してしまっていることなのだ。

 

本題である第3章「教科書が読めない」で、著者は自身が懸念していること、我々の読解力が劣化しているということを重ね重ね繰り返している。この章で数多くの問題(読解力を試す例題)を提示しているが、恥ずかしながら結構な確率で間違えてしまった。怖いのはAIというよりも、我々自身の読解力が劣化していることなのだ。

 

AIにできることは限られている

詳しくは本書を当たってもらいたいが、AIは「係り受け」と「照応」には対応できても、「同義文判定」は難しく、「推論」「イメージ判定」「具体例判定」は不可能だとされている。

 

AIは自ら新しいものを生み出さない。AIは過去のデータを分析して判断する、つまり「過去の判断」を踏襲することしかできない。読解力に乏しいAIを過剰に怖れることはない。憂慮すべきは我々の読解力が劣化していることなのだ。

 

この読解力こそ、AIが最も苦手とする分野であるにも拘らず、その読解力を身に付けることができていない。このことを著者は嘆いているし、危機感を感じている。本書から感じられるのは、ここを何とかしなければという強い意思だ。著者の熱いが感じられるので、是非読んでみて欲しい。

 

本書の雑感

自身の研究に裏打ちされた鋭い指摘、レイ・カーツワイルの進言に対して賞味期限はあと2年だと言い切る威勢の良さ、後味の良い読書になった。

 

日本の教育が育てているのは、今もって、AIによって代替される能力です。

 

本を読む(インプット)。そしてこのような形で自身の感想を綴る(アウトプット)。これらの大切さを実感することになった。

 

嗜好を偏らせた場は複数持っておきたい

【男性だからこそ読むべき本】

大切な発掘場所の一つ

以前、Instagramは資源(本)が枯渇することのない永遠の漁場である、というような話をした。

 

 

もちろん、本を狩ることができるのはSNSに限ったことではない。新聞の広告は新刊の重要な情報源だし、以下で紹介したPRESIDENT Online(プレジデントオンライン)などのメルマガも大事な狩猟場所になっている。

 

 

今日は私の大切な発掘場所の一つを紹介したい。ちなみに、こちらの本はそこで見つけたものだ。

 

ちつのトリセツ 劣化はとまる

ちつのトリセツ 劣化はとまる

 

 

名前の通り、膣(ちつ)の取扱説明書で、著者の原田純氏がたつのゆりこ先生から、目から鱗がボロボロ落ちる「ちつのトリセツ」を指南される経過が、著者自身の赤裸々な告白も交えながら綴られている。

 

我が家は生活クラブという生協を利用しており、月二回この「本の花束」が折り込まれてくる。メジャーな本が紹介されないというわけではないが、どちらかというと心身の健康や季節毎の催事、時事問題などをテーマにした本の紹介が多い。私の大切な本の発掘場所の一つだ。ちなみに、「本の花束」と『ちつのトリセツ』の紹介はこちら。

 

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男性だからこそ読む

まぁ、この『ちつのトリセツ』は基本的に女性が読む本だと思う。表紙には注意として「明るく、まじめにご利用ください。男性のお客様は、間違った期待をなさらないでください。」と釘が刺されている。

 

ちなみに、女性の身体についてはブルーバックスの以下が名著だと思っている。

 

男が知りたい女のからだ―なかなか聞けない87の疑問 (ブルーバックス)

男が知りたい女のからだ―なかなか聞けない87の疑問 (ブルーバックス)

 

 

これは総合的に女性の身体を網羅したものだが、膣に特化してここまで深掘りした本は珍しいかもしれない。注意書きにある通り、明るくまじめな本だ。この手の本は男性だからこそ読むべきだと思う。パートナーのことを考えればなおさらだ。

 

今回の雑感

一つの場所で本を拾っていると嗜好が偏る場合がある(そういった意味では、Instagramは千差万別の趣向を持った人がいるのでバランスが良いかもしれない)。それなので、ある一定のフィルターを掛けて嗜好を偏らせた場は、複数持っておくことは必要なのだと思う。これからも「本の花束」は、私の大切な漁場の一つであり続けるだろう。

 

さらっと書いてしまうが、やはり心と心を通わせたセックスは大切なのだと実感することができた。繰り返しになるが、この『ちつのトリセツ』は男性だからこそ読むべき本だと思う。

〈本〉『池上彰の世界の見方 中国・香港・台湾 分断か融合か』

【さすが池上彰

これほど付箋を貼りまくった本はない

東京都立桜修館中等教育学校での講演がもとになっている。池上彰に「いい質問ですね」を連発させる生徒の皆さんが素晴らしい。中国という国の成り立ちを改めて学習するのに最適な一冊だった。

 

池上彰の世界の見方 中国・香港・台湾: 分断か融合か
 

 

なぜこの本を読もうと思ったのか、中国と香港と台湾の関係について改めて学習するにあたり、この三つのキーワードで検索したところこの本が出てきたからだ。池上彰なら間違いないだろうということで手にした。

 

いや、分かりやすいの何のって。これだけ付箋を貼りまくった本はない。

 

植民地政策の話

やはり中国はとんでもない国だ。しかしながら、日本もかつてはとんでもない国だった。やはり日本は良い国だ。しかしながら、良い国だから国民が考えなくなり、行動しなくなってしまうという側面もある。そのようなことを感じた。

 

ここで中国・香港・台湾の成り立ちをつらつら綴っても仕方がないので、上手い説明をするなと感心したことを一つだけ紹介したい。日本が初めて手にした植民地である台湾を引き合いに出した植民地政策の話だ。

 

植民地をどのように統治するのかは国によって様々。イギリスは統治する優秀な人材を育てるため植民地に高等教育機関つまり大学を作った。フランスは優秀な人材を本国の大学で教育してから植民地に送り返した。ポルトガルは資源を収奪するだけで人材を育成しようとはしなかった。

 

イギリスの植民地だった国は独立後の国づくりが比較的上手くいき、フランスの植民地だった国は独立後に国を動かす人材の育成に苦労した。ポルトガルの植民地だった国は独立してから大混乱することになった。さて、日本はどうだったのか?

 

日本は超一級の人材を送り込んだ

 

全ては教育

後藤新平新渡戸稲造らを送り込み、大学を作って教育水準の向上に努め、医療制度を整備して公衆衛生に対する意識を養い、農業の生産性を高めるための灌漑事業などを進めて文明化に大きく貢献した。

 

もちろん、良いことばかりではない。まずは徹底した日本語教育を強制したので反対運動が勃発。日本軍による弾圧で数多くの住民が殺害されたという事実もある。しかしながら文明化に対する貢献もある。素晴らしいのはそれが(つまり悪いことも良いことも)台湾の教科書にきちんと書かれていることだ。某国とはえらい違いだ。

 

人づくり、国づくりの基本は教育だということを改めて考えさせられた。そして、日本は良い国ゆえに国民が考えなくなった、行動しなくなったと感じながらも、学ぶ環境が整っている日本はやはり素晴らしい国なのだと再認識することができた。

 

本書の雑感

ようやく子供たちが大きくなってきたということで、三年前から夫婦で旅行を始めた。三年前は九州に、二年前は四国に。昨年は夫婦水入らずの旅行をいったん打ち止め。子供たちがダブル受験だったからだ。

 

二人とも無事に受験を終えたものの、教育費は馬鹿にならないので今年も旅行には行けていない。二年続けて旅行して、二年続けて旅行なし。果たして来年はどうだろうか。

 

次は海外に行こうと決めている。妻の口から出てきたのは台湾だった。私も台湾には行ったことがない。いまのうちからしっかりと勉強しておいて、親日国・台湾を心から満喫できるように準備しておこう。そのようなことを思いながら本を閉じた。

 

それにしても、さすが池上彰。台湾旅行に備えて、中国・香港・台湾の歴史をしっかり辿っておかなければ。