社会科学読書ブログ

社会科学関係の書籍を紹介

散歩、図書館、おもちゃ

 子育てをしていると、子どもの成長には日常生活のあらゆることが貢献していることがわかる。子どもが日々成長していく中で、子どもの生活のすべてがその成長の材料となっている。その材料の中で、私たち夫婦が特に気を使っているものを挙げると、散歩と図書館とおもちゃになるのかなと思う。

 歩き始めるようになると、とにかく子どもは歩きたがる。そういう子供を外に連れていき、街並みや自然に触れさせるのはとても良いことだ。また、散歩の途中には公園があり、もしくは公園で散歩をさせることにより、成長の段階に応じた遊具での遊びが楽しめる。子どもは初めはできなかったことが少しずつできるようになっていき、それが達成感につながる。また、体を動かすこと自体が良いことだ。また、散歩は父親が一人で子どもを連れていける良いチャンスなので、散歩の時間に母親を育児から解放させることは、母親のストレス低減のために非常に有益である。

 絵本は子どもが言葉や出来事などについての理解を深めるために重要なので、それこそ赤ちゃんの段階から読み聞かせをする。2週間に一遍、必ず図書館に行く日を作り、そのときに絵本を更新する。また、図書館は広い庭を持っていたり近くに公園があったりする。絵本を眺めるだけでも子供は喜ぶが、庭を歩かせるのもいい。借りてきた絵本を、子どものペースに合わせて読み聞かせする。

 おもちゃは、手先の器用さや想像力などを養うとても大事なものである。私たち夫婦はおもちゃ選びが面倒だから大手教材メーカーのエデュトイを使っている。発達の段階に応じて、子どもの気に入るおもちゃはそれぞれだ。おもちゃを適切に選んであげることにより、子どもの一人遊びの時間を作ってあげることができる。

 とにかく子どもにはいろんな体験をさせることが大事である。すべての体験が子供の発達に影響を与える。その中で、散歩、図書館、おもちゃには特に気を使っている。

小林重敬『まちの価値を高めるエリアマネジメント』(学芸出版社)

 エリアマネジメントについての実例を交えた導入書。エリアマネジメントとは、都市全体から考える都市づくりに代わって、エリアという小さな単位で考え、そのエリアの地域価値を高める必要が認識され、エリアの再生を図る、ソフトな活動のことである。賑わいづくり、清掃・防犯・交通対策、情報発信、コミュニティづくり、オープンカフェ、エリアマネジメント広告などの活動を官民が連携して行っている。

 私は本書によってエリアマネジメントという概念を初めて知った。そして、このエリアマネジメントはすでに全国各地の都市で実施されており、一定の効果を達成している。私の地元でも、中心市街で活力が低下しており、このようなエリアマネジメントの活動が必要であろうと感じる。

姜尚中『アジアを生きる』(集英社新書)

 政治学者が自らの学問人生を振り返って、そこでアジアについて感じたことをつづった自伝的エッセイ。アジアは文明の後発地域として捉えられてきて、中でも韓国は常に後塵を拝してきた。アジアの中で日本は唯一の先進国として国際社会でも影響力を持ったが、その他の東アジアの国々は最近まで先進国として捉えられてこなかった。韓国出身である著者の複雑な思いがつづられる。著者はウォーラーステイン世界システム論に救済を得る。そこには西洋とアジアの格差を固定するのではなく相対化する視点があったからだ。

 政治学者が自ら学問を追求していく中で出会ったアジアの問題。それについて理論的な考察がなされているわけではないが、それについて率直に感じたことが書かれている。まずはこの違和感を表出することが大事であろう。理論構成や具体的な行動はここを起点にして今後行われていくであろう。なかなか楽しく読めた。

丸山康司『再生可能エネルギーの社会化』(有斐閣)

 再生可能エネルギーは注目されているが、それが社会に受け入れるためには一定の条件を満たす必要があるとしている本。人間は生活の基盤としてエネルギーを必要としている。これまでの化石燃料によるエネルギー調達は温室効果ガスの排出により気候変動を導いていることから再生可能エネルギーへの転換がはかられている。だが、風力発電にしろ太陽光発電にしろ、マクロな次元では好ましいかもしれないが、ミクロな次元、その設備が設置される土地の周辺では複雑な問題を生み出す。地域住民にいかに社会的に受容されるかが課題となる。

 最近もてはやされている再生可能エネルギーであるが、それが必ずしもメリットだけではなく、デメリットもあり、それゆえに設備を設置する土地の住民による社会的受容が必要であることを論じている。確かに、風車は景観を害するかもしれないし、バイオマスも周辺にとっては迷惑な話かもしれない。NIMBY(not in my backyard)の問題は非常に難しい。再生可能エネルギーの課題を社会的側面からとらえている好著だ。

藤田正勝『日本哲学入門』(講談社現代新書)

 「日本思想」ではなく、「日本哲学」の入門書。哲学の受容から始まり、西田幾多郎坂部恵田辺元などの思想を紹介している。西洋に特権的に「哲学」が存在するのではなく、日本にも固有の「哲学」があるのだとして、その概略を説明。本書は主にブックガイドとして用いるべきであり、これをもとに原典に当たっていくべき初めの本である。

 読んだことのある哲学者についての紹介も多かったが、まだあまり読んでいない哲学者についても紹介してあり、どんどん読んでいきたいと思わせる内容だった。上田閑照田辺元は集中的に読みたいと思った。もちろん西田幾多郎三木清も再読したい。読書意欲を増す本だった。