青の6号

The end meets the beginning.

直島の風景に殴られた(2)

 誰もいない海岸の透き通った波打ち際に足をそっと入れる。なんだこの海岸は!

 

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 一泳ぎしてから木陰のベンチに座ってそよ風にふかれながら、さっき行ったベネッセ美術館に思いをはせる。

 あの美術館のデザインは、そもそもどこに建築するかから始まったそうだ。穏やかな瀬戸の海に突き出したこの島に決まったのは当然の帰結のように思う。完璧な場所だ。岸壁の高低をそのまま利用して立体的な導線を作り出している。コンクリートで切り取った青空と、作品とのコントラストが見事だ。

 この美術館には順路というものがない。人々は好き勝手な順序で鑑賞してゆく。同じ方向だったり、ぶつかり合ったり、一カ所にとどまったり。美術館そのもの、つまり建築と作品との一体感がある。上下左右に続く道を歩みながら、京都近代美術館の退屈な構造と間取りを比較する。

 美術館へは徒歩と専用の小型バスでしかたどり着けない。この点も評価できる。車では行けないし、自転車でも行けないようになっている。周りの環境もこの美術館の一部なのだ。

 さて、次は家プロジェクトゾーンへ行くか!

直島の風景に殴られた(1)

 直島に来た。直島は変に澄み切った観光地ではなかった。口下手でそれでいていい作品をこしらえる芸術家肌の旧友のようだった。

 何事も「そこ」へたどり着くまで真意はわからないのと同じで、直島に来て初めて直島の良さがわかった気がする。

 そもそも船着場が前衛建築だった。乗降客はそんなことはつゆ気にとめず往来する。しかしその建物の遠景には確固たる主張が見出された。低く地平と平行に広がるシンプルな長方形の屋根は人を迎え入れる形にふさわしい。磨り硝子のような素材は、柔らかな島民の思いを代弁しているのだろうか?

 島の人たちはみな明るくて優しい。美術館の入り口に戸惑う僕に声をかけるボランティアさん。お風呂上がりですか?」と気さくに声をかけてくれる刺身定食を運んでくれた女性。そして、お風呂の番台に座る女性のとびきりの笑顔。

 その銭湯の名前は "I love 湯" だ。古い昭和の銭湯を想像していた僕はその外観にガツンとやられた。これはナンだ?  近未来、ブレードランナーのワンシーンにも出てきそうな、昭和のポストモダンの素敵な建築ではないか! 中に入って更に驚いた。脱衣所にあるリメイクした黒い木の長テーブルは、よく見ると端っこにちいさなモニターが仕込まれている。映像は、胸をあらわにした裸の海女さんが船から素潜りするまでの(映画なのだろうか?)様子だった。思わず僕は声に出していた。「これはやられた!」。

 この銭湯を人に伝えるために一生懸命観察した。女湯との間の壁の上には象がいる。文字通り像だ。ほぼ原寸大の子象だ。湯船につかると濃いブラウングレーのそれを見上げられる。

 壁に並ぶ洗い場の鏡は六角形だった。それが両側の壁に並ぶ。奥の壁ははめ込みのガラス窓で、その向こうにシュロやら何やらの観葉植物がぎっしりと覆い茂っている。風呂全体はレトロ感ある白いタイルで敷き詰められている。清潔感のある白ではない。ところどころ遊びがある白のタイルだ。

 真ん中に湯船がある。床は浮世絵の屏風をデザインした感じの意匠が施されている。天井は吹き抜けで、抽象画がさらっと描かれた磨りガラスから外の光が入ってくる。映像で伝えられないのが残念。(続く)

Life must go on

Listen, children.

Your father is dead.

From his old coats

I'll make you little jackets.

From his old pants

I'll make you little trousers.

There will be in his pockets

Things he used to put there,

Keys and pennies

Covered with tobacco;

Dan shall have the pennies

To save in his bank;

Ann shall have the keys

To make a pretty noise with.

Life mustgo on,

And the dead be forgotten;

Life mustgo on,

Though good men die;

Ann, eat your breakfast;

Dan, take your medicine;

Life must go on;

I forget just why.