2023オブザイヤー
2023年の振り返りとして、いろいろなよかったものを列挙する
よかったゲームオブザイヤー
新作部門:ARMORED CORE Ⅵ
言わずと知れたアーマードコアの新作。
インフォグラフィックっぽいものが飛び交うミッションブリーフィングなどアーマードコアっぽい要素がふんだんに散りばめられており、アーマードコアっぽいものが欲しいなと思っている身体の滋養になる。デカく、技があり、倒した時にスローモーションになるなど、ボスのサービス精神が手厚い。ヒロインぽいものもいるし、主人公を褒めてくれる魅力的なキャラクターたちも多い。「なんだかんだフロムは成長(???)したよな」と、キャッチーさを徹底的に廃した尖ったバンドがメジャーデビュー後にきちんとクリスマスソングをリリースしたような、そういう一抹の寂しさと誇らしさが同居する、不思議な気持ちになった。いや、グッドウィルハンティングのラストのベン・アフレックみたいな顔になっている。
「え!?????ティアキンも今年なの!!!????と」書いていて気がつく。
すごい年だ………ティアキンも面白かったです。
バルダーズ・ゲート3も今の所大変面白い。今年は面白いゲームにたくさん触れることができて、よかった。
リメイク部門:バテン・カイトス
私の口は、もはや喜びしか発しない。重ねるべき言葉は、ここにない。
よかったフィクション本オブザイヤー
萌え小説部門:百鬼夜行シリーズ
俺が読んだのは2023年だったから……。思ったより萌えキャラが多い。30代になったからこそ思うのか、30代男性たちが仲良くわちゃわちゃしていることの気高さ、尊さというものが実に沁みる。
川端康成の『片腕』とか、ちょっと退廃的な美学の本だとかを読んで暗黒微笑を浮かべる暗い青春を送った身としては、実家のような安心感を覚える。
長編部門:ペストの夜
まずアマゾンのあらすじをそのまま引用します
オスマン帝国末期の1901年。東地中海に浮かぶミンゲル島では、ペスト流行の噂が囁かれていた。ペスト禍を抑え込むため皇帝アブデュルハミト二世の命で派遣された疫学者は、何者かの手によって惨殺される。代わりに送り込まれたヌーリー医師と、その妻、アブデュルハミト二世の姪にあたるパーキーゼ姫は、ペスト撲滅のために島に降り立つ。だが二人は秘密裡に、疫学者殺害の謎を解き明かす使命も負っていた――。 トルコ初のノーベル文学賞作家、オルハン・パムクが、架空の島を舞台に人間と疫病との苛烈な闘いを克明に描く傑作歴史長篇、ついに開幕!
面白そう!!実際面白いです。
「公衆衛生」への取り組みによって「近代」が発生してしまう、というお話でもあります。公衆衛生と近代と地中海の東側が好きな人は読もう!
短編集部門:暗い庭: 聖人と亡霊、魔物と盗賊の物語
スペイン・ゴス・短編集。読むと全身がゴスになる、表紙もかっこいい。
窓際にいつもいる盲目の老婆だとか、高位の聖職者の死体だとかが出てくる。
カッコ良すぎる本きちゃった………
— アオタイ (@aoitile) 2023年7月2日
国書刊行会さん、かっこいい本をありがとうございます…… pic.twitter.com/RZdEnUFxZs
短編部門:鏖戦
ルビの一つ一つがかっこいい。「何度生まれ変わっても惹かれ合う二人」というロマンチックな筋と、異種の知的生命体との終わらない宇宙戦争を紐付け、「歴史の終わり」を語る作品。どういうこと?と思うかもしれないけれど、読めばわかる。
おまえたち、どうしてそんなにも惹かれあっているんだ
特別賞:小説集 Twitter終了
笑った。なんで商業化しちゃったんだろうね。僕も寄稿しています。諸兄らはもう読んだかな?読もう。
よかったノンフィクション本オブザイヤー
歴史部門:綿の帝国
Amazon.co.jp: 綿の帝国――グローバル資本主義はいかに生まれたか : スヴェン・ベッカート, 鬼澤 忍, 佐藤 絵里: 本
「綿」の歴史を通して奴隷制、植民地主義、強制労働…と、グローバル経済の成立過程を描いたとてつもない労作。「暴力と強制は資本主義の例外ではなく核心」というのがコアメッセージになりそうな勢いで、人々が暴力と強制によって『綿の帝国』と呼ぶべきグローバル経済に回収されていく様が、600Pくらい続く。
世界史をぐるっと包括的に捉えやすくなるんじゃないでしょうか。
これの後に岩波の『ハイチ革命の世界史 奴隷たちがきりひらいた近代』のような、新書の類に触れると ああこれ綿の帝国でやってたやつだな、といった結びつきが生まれて心地よい
ビジネス部門:データマネジメント知識体系ガイド 第二版
いわゆるDMBOK。家にあると心強い。これを個人で所有する意味がどこまであるかは考えなくて良い。こういうのは本棚にあるのが大事なので。
美術部門:増補カラー版 九相図をよむ 朽ちてゆく死体の美術史
高校生の頃はこういう本ばかり読んでいました。実家に帰ったような心地がします。
九相図ってなんのために描かれていたの?どう受容されてたの?というところを掘り下げてくれる本。正直九相図は「スカッと要素のある美人画の亜種」としてしか認識していなかったので、大変学びになりました
エッセイ部門:酒の話・抱樽酒話
中国文学者、青木正児による食のエッセイ
河豚や蟹、塩辛など、主に酒の肴について中国古典の碩学がどしどしと語ってくれる。ああアレを食べたい、こう食べたい、といった欲がページをめくるたびに湧いてくる。来年は上海蟹をやりたいものだ。
よかった漫画オブザイヤー
WEB漫画:胎界主
この世で一番いい漫画です。
読切:遠い日の陽
ガチのいい漫画
https://comic-days.com/episode/14079602755391426482
連載:ダンジョン飯
胎界主Wiki初代管理人であることで有名な九井諒子先生の、言わずと知れた名作。完結おめでとうございます。ここ数日1巻から読み直しては最後まで読み、また最初から読み直すということを繰り返している。短編集時代から顕著だった「こんな種族がいる社会って、こうなるよね」というシミュレーションの面白さと、「よくあるRPG」のフォーマットと、「飯」というキャッチーさが結実した、奇跡のような作品。ライオスは本当にいいキャラクターをしている。あえて明言すると、全てのキャラクターがマジで可愛い。
https://www.amazon.co.jp/dp/4047301531?ref_=cm_sw_r_cp_ud_dp_VRFX0V2X7AH3VD2SJ0SM
エロ漫画部門:出会って4光年で合体
ド迫力のエロ漫画。語ろうとすると、「いやでもSFとして超面白くて〜」という、オタク趣味の言い訳をするオタク少年のような口ぶりになってしまう。でもマジで面白い大作です。
特別賞:女甲冑騎士さんとぼく
今年から連載が始まりました、注目作です。オタクと甲冑騎士が千駄ヶ谷で暮らす、異色のアーバンファンタジーかつ、様々な形の愛を描いた、素晴らしいコメディ漫画です。よろしくお願いいたします。
https://comic-ogyaaa.com/episode/4855956445048963659
よかったアニメオブザイヤー
吸血鬼すぐ死ぬ(2期)
本当にいいと思います。俺にはこういうものが必要なんだ。
よかった社会派ポルノアニメオブザイヤー
お兄ちゃんはおしまい
根が真面目なので「こんなものが許されていいのだろうか?」と眉を顰めてしまうところも多々あったが、圧倒的に素晴らしい作画や、もの凄い脚本などに打ちのめされる。『鉄鍋のジャン!』の大谷日堂みたいな顔で「こんなもので、こんなもので」と咽びながら、繰り返し繰り返し視聴し続けていた。個人的な好みで言えば、兄と妹で閉じていた序盤の空気が好きです。(ただし、まひろが同世代?の人々との交流を行うのは、まひろの物語として必然だとも思う。また、賑やかな空気があってこそ序盤の暗さが映える側面も否定できない。いずれにせよ、この作品はポルノアニメの一つの臨界点として、青井タイル史に永遠に記憶されることだろう。)
よかった長編アニメオブザイヤー
ゲゲゲの謎
水木がすごい。窓際のトットちゃんと迷いました。
スタッフロールと同時に「あれ」が始まった際、感動のあまり声が出るかと思った。
よかった映画オブザイヤー
マッコールさん(デンゼル・ワシントン)が本当に恐ろしい。
よかったアルバムオブザイヤー
喜哀 OMSB
「志人も参加しているしな」と同窓会に行くつもりで聴いたら、『Blood』にすごくやられた。アルバムを何周もするもよし、曲を単発で聴くもよし。いいアルバムです。
よかったソングオブザイヤー
The Circle Game パフィー・セイント・メリー
Twitter終了を実家に献本したところ、母から
"映画のいちご白書のテーマ曲 サークルゲームを和訳付きで聴いてみてください。君達の事です"
というLINEが飛んできたのが、あまりにも良かったため。
よかったLIVE映像オブザイヤー
Pinhas & Sons feat. Daniel Zamir, Nitzan Bar - Shir Hashomer
Pinhas & Sons feat. Daniel Zamir, Nitzan Bar - Shir Hashomer - YouTube
6:40くらいからのギター激うまマンとソプラノサックス激うまマンの暴れぶりが本当にすごい
今年の初めの方はPinhas and Sons (נחס ובניו)を中心に、イスラエルのジャズをよく聴いていた。現在の情勢には、胸を痛めるとともに憤るばかり。
よかった萌え萌え・ソングオブザイヤー
きゅうくらりん いよわ
今年はやたらとパロディイラストを目にしたなと思い、年末に聴いたらぶったまげた曲。
褒めようと思えばいくらでも褒め言葉が浮かぶけれど、NewJeansおじさんの亜種になりそうなのでやめます。
DDLCのサヨリchangを想起せずにはいられない。そうなるとボカロソングを自殺を想起させる歌として解釈する中学生の心を取り戻しまう。どうすればいいんだ
よかったポルノ・アニメ・ソングオブザイヤー
アイデン貞貞メルトダウン
主人公のペニスの有無についてひたすら歌い続ける最低な曲。強烈な引力があり、激務の際俺は毎日陽が昇る前にこれを聴きながら近所を散歩していた。P丸様。のお声が実に可愛い
よかった買い物オブザイヤー
アラジンのトースター。温め直したカレーパンがカリカリなんだ。
https://aladdin-aic.com/product/toaster2
よかったご飯オブザイヤー(国内)
文芸のオタクたちと『Amets』で食べた、子豚の丸焼き。
子豚の皮はパリパリ。中はしっとり。Netfilixのバーベキュー番組で審査員がやたら「クリスピー」「モイスチャー」といった表現を使う理由がわかったような気がする。
よかったご飯オブザイヤー(国内:よそ行き)
大珍楼で食べた、潮州料理。華美さはないものの、大変美味しい。大満足。
大珍楼で潮州料理をいただきました。
— アオタイ (@aoitile) 2023年6月25日
感動しきりの3時間でした。
海鮮の扱いが抜群で、日本人の好みにも大変合うものなんじゃないでしょうか pic.twitter.com/aULuBEooJy
よかったご飯オブザイヤー(国外)
フランクフルト駅で食べた、メット
豚の生のひき肉を使った、日本においては理論上存在し得ないパン。
ツイートにもある通り、塩味は大変強い。生臭さのないネギトロといったような滑らかさがあり、なかなか美味しい。
「許されるなら生の豚肉を食べてみたい」
— アオタイ (@aoitile) 2023年12月10日
そんな憧れを叶えることができました。
豚のひき肉を生のまま使った憧れのバーガー、「メット」こと、Mettbrötchenです。
臭みゼロのネギトロといった趣きで美味しいです!!
塩が強いので酒が進みます。ドイツ旅行にビールの携帯は必須のようですね pic.twitter.com/FjO4Fv2nFu
よかったご飯オブザイヤー(国外:よそ行き)
TURK Fatih Tutak
「せっかくだし海外のミシュラン行こうぜ!!」ということで、トルコ旅行の際に立ち寄ったイスタンブールのレストラン。とっぱじめに最も評価の高いお店の一つに行ったことで、彼の国における美食の基本ルールを大まかに捉えることができたよかった。つまり、脂肪分の多さは、尊ばれるべきである。
よかった旅先オブザイヤー
ドイツ。
フランクフルト空港を中心に、ケルン、トリア、ヴュルツブルク、ローテンブルク、ニュルンベルクをうろちょろし、クリスマスマーケットを堪能しました。寒いところで飲む酒は美味しい!!
その辺の教会に入るだけでマジで美しいものを見ることができる。母方の実家が寺じゃなかったら改宗していたかもしれない。
あ゛〜〜〜〜〜
— アオタイ (@aoitile) 2023年12月11日
全身がゴスになる pic.twitter.com/gsib3aJJ7L
道路や鉄道についてはバリアフリーの概念がほぼなさそうだったので、周遊するならなるべく若く健康なうちに行った方がいいなと思いました。
よかった食べ物オブザイヤー
ひよこ豆のカレー
自分のためだけに料理をする際のレパートリー。トマトと豆の旨みで、大変幸せな気持ちになる。
よかった珍味オブザイヤー
冬籠り前の脂身は、香り高くて美味しい
ヒグマとツキノワグマの食べ比べに行った際、前菜として出たものだったけれど、その日一番感激したのがアナグマでした。(熊も美味しかったけどね)
普段は人との付き合い以外では肉を食べないのだけれど、「肉は『ありがたみ』を通して周囲の人間との絆や自身の霊的な強度を高める、宗教的な食である」「珍しい獣、調理法を用いた肉は、儀式としての機能が高い、」「野の獣を食べるのは、家畜を食べることより倫理的である」という感覚がなぜか自分の中にある。今年はよく野の獣を食べた。私はより他者との結びつきを強め、霊的に強大な存在に近付いたであろう。
よかった拾い物オブザイヤー
実家で拾ったBIALETTIのエスプレッソマシン
これで淹れたエスプレッソと豆乳でラテを作ると、グンバツに美味しい。
少年時代家族で京都旅行に行った際、父が買ったイノダのデミタスカップも同時に引き取ったので、いい感じのコーヒータイムを味わえている。
よかったことオブザイヤー
女甲冑騎士さんとぼく連載開始!!!
総括
よく食べ、よく読み、よく遊び、よく働いた。よく生きたと言えるだろう。
日記 10/23-10/29
10/23
起き抜けにジョン・ウィック一作目を見る。ゲームシステムがまだ異なる。
AC6のイグアスを可愛いなと思う。主人公のこと「野良犬」って呼ぶのが組織の人間っぽくて可愛い。発想が「駄犬」呼ばわりするスネイルに近い。
「昨日見たジャン・コクトー版の美女と野獣めちゃくちゃ良かったな」と散歩中思い返した。
人間の腕が生えた燭台がワインを注ぐ、ゴス城がよお。
10/24
酒を飲んだ。家のハムスターが可愛い。
10/25
有給
ギャレス・エドワーズの『ザ・クリエイター』を見る。ギャレス・エドワーズの映画っぽかった。deviantARTのコンセプトアートみたいな絵面がずっと続く、眼福映画だった。
2023年に「ベトナム戦争とかテロとの戦いとかやるアメリカってよくなかったよね」という話を真顔でしてくるギャレス・エドワーズの生真面目さには、不思議な好感を覚える。
このはてな匿名ダイアリーを目にした際、津田大介の生真面目さに不思議な好感を覚えたのと同じように……
あと暴力をめちゃくちゃ面白いものとして撮るブロムカンプって変な人なのかもしれない
10/26
角川つばさ文庫の作品ページの感想コメント欄は、本当に素晴らしい。
電車移動のある日だったので、持ち運びやすい青木正児『酒の肴・抱樽酒話』を読む。曰く中学四年の時分、父のために鮒寿司を買ったが、あまりの臭気に腐っているものと思い捨てて帰ったらしい。米も食べないものらしい。そんな臭いか?米も食べたぞ?俺が食べたのは紛い物の鮒寿司だったのか?と思い、諸々調べると、
とある。
昔の人は乳酸発酵の香りに慣れてなかったのだろうか。そういや美味しんぼでもくさや常食している人物がチーズと鮒寿司の匂いに拒否反応を示すくだりがあったような覚えがある。
10/27
サグカレーを作って食べる。俺は天才だ……
夜は秋葉原mograで『ディスコ元年』。しばらくイベントに出ていなかったので、ちゃんとパーティのテンションになれるか自信がなかったけれど、めちゃくちゃ楽しめた。
31歳でも徹夜ってできるんだあ。
10/28
1時間半千駄ヶ谷で仮眠をとり、漫画用の写真をバシャバシャと駅前で撮った後、赤羽岩淵へ。大学時代の友人たちと、芋煮会を催す。
とても美味しいし、楽しかった。ありがとう。アウトドアと料理に強い友人たちよ……。
秋葉原、千駄ヶ谷、四ツ谷駅、赤羽と青春時代に縁の深い場所を点々としていたので、なんだか葬式のようだった。
10/29
大学時代の友人たちと、ボードゲームアリーナのゲームやFeign、Witch Itなどで遊ぶ。まんがタイムきらら
*1:小堀 建将”ふなずしの変遷”京都先端科学大学人間文化学会 2023-10-26 https://lab.kuas.ac.jp/~jinbungakkai/pdf/2022/h2022_09.pdf
日記10/14-10/22
14日
劇場版ガールズ&パンツァーを見た。その後、千駄ヶ谷で漫画用の写真を撮る。
駅前のエクセルシオールで漫画の完成云々の記事を書く。
その後、田原町へ移動。文芸のオタクたちと『Amets』で子豚の丸焼きをいただく。
子豚の皮はパリパリ。中はしっとり。Netfilixのバーベキュー番組で審査員がやたら「クリスピー」「モイスチャー」といった表現を使う理由がわかったような気がする。
15日
来客がある。
お家を片付けたりお酒を飲んだり原稿をしたりする。
16日
出身大学のオタクたちと、人形町『あまからくまから』で、ヒグマVSツキノワグマコースを食べる。
要は食べ比べです。他のジビエも出ており、アナグマ、エゾシカを食べることができた。一番美味しかったのはアナグマです。脂が香ばしかった。
ヒグマとツキノワグマの比較で言うと、ヒグマの方が脂身がくどくくなく、肉の味がしっかりしていた印象があり、好感が持てた。
ただ、お店の人に言わせると個体差が大きいらしい。「ヒグマの方が美味しいよ」と断言すると、それはそれでにわかがバレてしまうのかもしれない。
17日
ガリア戦記に関連したツイートにうだうだ言ったり、Warframeの激マブキャラクター、Dagathのマブさに騒いだりする。
18日
AC6のエアを倒せない。
19日
「マッチングアプリに対する若者のスタンス」について、オタクたちと激論を交わす
『狂骨の夢』を読み終える。なんでこんな爽やかな気持ちになっているんだろうか?
エアを倒した。やったね。
20日
胎界主が面白い。『鉄鼠の檻』も並行して読み始める。ロケーション選びが相変わらずいい。
出張編集部の話題でTLが賑わう。「返歌」のような形で編集側からのレポ漫画も出てきたが、カチコチのお勤め人の感性が眉を顰めてしまった。
漫画家からのレポは告発の文脈もあるので、良心に従って自由にやればいいと思うけど、会社に所属する側はもうちょっと不公正な立場にあることを考えた方がいいんじゃないかな……。業務で知ったことをネタにするのさ……という気持ちになる。
ヴォルタとイグアスを倒せない。
21日
わだつみのこえ記念館の主催するイベントに行った。
イベントとしては、映画の上映と、新藤浩伸准教授の講演から成る。
新藤氏は、博物館概論を東大で教え、その授業の一環としてわだつみのこえ記念館を度々訪問しているらしい。
映画は
『日本戦歿学生の手記 きけ、わだつみの声』(1950)
『きけ、わだつみの声 Last Friends』(1995)
の2本だった。
後者は怪作と言える。
会場にはパネルや資料が展示されていた。
一人一人の顔や経歴が分かる形で遺書や遺品を見ると、胸にくるものがあった。
夜はラーメンを食べた。罪の味。
僕はとにかくネギが好きなので、ラーメン屋ではとりあえずネギを盛る
22日
AC6で、ヴォルタとイグアスを倒した。
お外で本を読んだり買い物をしたり原稿をしたりと、のびのびとした良い一日になった。
夜は以前に宇都宮で買った、『めんめん』の冷凍餃子をいただく。半分は焼き、半分は水餃子にした。
あとオタクからいただいたマンゴスチンを食べた。上品な甘味と酸味を湛えた、実に爽やかな味。とても美味しかった。
「漫画の完成」に向けてやったこと
ピエール手塚先生が一作目を描いた際の記事が、大変面白かったです。
https://mgkkk.hatenablog.com/entry/2023/10/11/121525
もとになっている「漫画家になるためには〜」云々の話題は置いておいて、「こういうノウハウ共有めちゃくちゃいいじゃん!!」と思ったので、僕もやってみることにしました。行き詰っている人が外野から叩かれるだけのインターネットでは寂しいので、少しでも誰かの背中を押せると嬉しいです。
とはいえ人によって漫画関連のスキルツリーがあると思います。「僕の場合はこれで漫画描けた」という一事例にすぎませんが、まずは僕の立場と、この記事が誰向けであるかを説明したうえで、ノウハウのご共有に入りたいと思います。
- 前置き
- ノウハウ
- 普遍的方針:描けるか自信がない場合、どうやったら描けるようになりそうか、策を考える
- 作戦①:絵が描けない問題をなんとかする
- 作戦②話をコマに落とし込むのをなんとかする
- モチベーションをなんとかする
- むすびに代えて、ノウハウまとめ
- 以下、想定問答
前置き
著者の経歴・立場
僕は今、漫画原作者として連載に携わっています。
漫画を描き始めたのは社会人になってからで、はじめの作品はゲームの二次創作でした。その後はコミティアでシリーズものの一次創作ギャグ漫画を5冊出してました。今連載している漫画は、このシリーズをベースにしたものです。
※下記リンク先が今連載中の漫画です。
絵については、課題が多いです。特に、何も見なかったらキャラクターや表情の描き分けができない程度に線画が苦手です。物の立体感を捉えるのも苦手です。同じコマに人物が二人以上いると、高低感が破綻しやすいです。そういう人が考えたノウハウだと思って、お読みください。
ノウハウの前提条件①誰向けの記事なのか
この記事は、「漫画という表現方法に興味はある一方で、スキル的にきついものがある人が、なんとか完成に向けこぎつけるための技術」を説明するものです。なので、向いている人、向いていない人が当然います。
この記事が向いている人
なんとはなしに漫画を描いてみようかなと思っている人。
アイディア出し自体に苦痛はないが、それを漫画に落とし込むことに困難がある人
この記事が向いていない人
アイディア出しが苦痛な人
頭の中でずっと大切にしてきた物語や、永遠の乙女ヴェアトリーチェを漫画に落とし込みたいと思っている人。
自分が前者寄りだなあ、という方は是非お読みください。後者寄りの方も、お時間あればこんなやり方もあるんだなと、みていってください。
ノウハウの前提条件②どのタイミングのノウハウなのか
先ほど言った通り、僕はゲームの二次創作同人を出した後に、一次創作に取り組んでいます。今回のノウハウは初めての一次創作同人(つまり二作目)を描いた際のものになります。
「二次創作を一回描き切った上でのノウハウなら、話が違うじゃん」と思う方もいるかもしれません。おっしゃる通りなんですが、そこはご容赦ください。初めての同人誌に僕は無策で挑み、散々な目にあいました。形にはなったけれども、苦労が多かったのです。「作品・キャラクターへの熱に浮かされてる二次創作ならいざ知らず、オリジナルの作品を出すのって結構無茶なんじゃないかな」という心境でのノウハウなので、お役に立てるのではと思います。
ノウハウ
結論:何をやるのか
人間の可処分時間には限りがあります。なので、この記事でお伝えするノウハウを、はじめに述べましょう。言いたいことは、一つの普遍的方針と、私に当てはまった三つの作戦からなります。
普遍的方針
- 描けるか自信がない場合、どうやったら描けるようになりそうか、策を考える
私に当てはまった三つの作戦
- 描けないものは描かずに済むようにする
- コマ割りの型を作る
- 発表の場でモチベーションをコントロールする
それでは各論に入っていきましょう
普遍的方針:描けるか自信がない場合、どうやったら描けるようになりそうか、策を考える
理想状態を定義する
まず、自分が漫画を完成させるうえで、どういった作戦を立てる必要があるのかを模索します。これはどのようなスキルツリーの人であれ、有効なステップであると思います。自分に何が必要なにかは理想と自分の現状のギャップがわかれば導きだせます。
というわけで、はじめに漫画を完成させる上での理想的な状態を定義しましょう。当時の僕は、以下のように考えました。
- 絵が描ける
- ネームがつくれる(漫画という表現形式にストーリーを落とし込める)
- 漫画を描くモチベーションがある
今見ると整理の粒度に若干の疑問の余地がありますが、そこはご容赦ください。
現状・課題を整理する
さて、理想状態が定義できたら、次は自分の現状のスキル状況(の至らない部分)を、とにかく分解・列挙します。
で、僕の場合は以下のような感じ書き出しました。長いし一つ一つは重要ではないので文字サイズを下げます。
------------------------------------------------------
- 絵が描けない
- 人間が描けない
- 人間の顔が描けない
- 人間の顔の描きわけができない
- 人間の表情によって感情を示唆することができない
- 人間の右目や、読み手から右側を向いている顔を描けない
- 人体が描けない
- 全身像が描けない
- 腕や指など、細長いものが描けない
- 適切に配置できない
- 高低感が把握できない
- 人間の顔が描けない
- 物が描けない
- 立体感をつかめない
- 物の形が明確に思い出せない
- 線が引けない
- 描こうと思った線を描けない
- 人間が描けない
- ネームが作れない
- コマワリがわからない
- 各ページ、どのようなサイズ感で、何を描いたコマを配置すればいいのかわからない
- コマ割りによる視線誘導ができない。
- コマワリがわからない
- 漫画を描くモチベーションが維持できない
- 作業に着手する動機がない
- 作業を続行する動機がない
------------------------------------------------------
うだうだと列挙しました。これを課題としておおまかにとりまとめると、こんな内容になりました。
- 絵について
- 人物について
- 人物の顔を描けるようにする
- 人物の身体を描けるようにする
- 人物の位置関係がわかるようにする
- 物について
- 登場する背景や物が、描けるようにする
- 線について
- 思った線を引けるようにする
- 人物について
- ネームについて
- コマ割りがなされている
- コマによる視線誘導がなされている
- モチベーションについて
- モチベーションを発生・維持するきっかけが存在する
繰り返しになりますが、漫画を完成させられる気がしない場合は、はじめにこのような整理に取り組んだ方が良いと思います。作業を進めて途中で「やっぱ無理かも」となってしまっては、とても悲しいですからね。
作戦①:絵が描けない問題をなんとかする
絵に関してはとにかく課題が多いです。初めて二次創作を描いた際最も辛かったのは、絵を描かないといけなかったことです。難しいんですよね。絵って。顔のある人間となると尚更です。
人物が描けない問題を乗り越える
【顔が描けない問題を乗り越える】
というわけで、僕は顔のある人間が登場しない漫画を描くことにしました。幸い僕の頭の中のストックに、適した題材がありました。常に兜で顔を覆っている騎士と、メガネの奥の瞳が描かれないオタク二人からなるギャグ漫画です。厳密に言えばオタクにも顔はありますが、目を描かずに済むなら御の字です。その上、美的に優れた形で描かなくて良いなら、多少粗があっても読者へのメッセージがぶれません。いいものですね。
【身体を描けない問題を乗り越える】
身体を描かなければええ。というわけで、話は基本的にバストアップで進行させます。
どうしても、というシーンについてはポーズ集や自撮りを駆使して誤魔化すことにします。ネームを切る際は、手元の資料や自撮りとして撮りうる角度を考慮しましょう。
人物を空間に適切に配置できない問題を乗り越える
密室のバストアップならなんとかなる。あとは主役格の身長差をデカくすればいい。
物が描けない問題をなんとかする
描けるものだけが登場すれば良い。ということで、舞台は現代日本かつ自宅や近所が舞台一択になります。撮った写真をトレスすれば良い。この時点で現代日本で甲冑騎士とオタクが一緒に暮らす話ところまで決まりましたね。
線が描けない問題をなんとかする
初めて同人を描いた際は板タブでした。これが力量のない僕には辛かった。自撮りをトレスしようにも、思ったところに線が引けないので四苦八苦するのです。というわけでiiPadProの、画面がでっかいやつを買いました。これなら安心してオタクの顔を描く際自分の輪郭をなぞることができます。iPadなら、漫画を描く習慣がなくなったとしても、タブレット端末として利用できますからね。絶対におすすめです。オリコの無利子ローンに感謝……。
絵に関しての総括
これで絵についての課題は乗り越えられました。コツは「徹底的に描けるものだけ描く」ことです。「スキルを理由にキャラクターや舞台を制約して良いのか?」というツッコミはあるかもしれませんが、僕はこれで良いと思っています。僕は可愛い女の子を描くスキルや熱量がないし、学校に自由に出入りして写真を撮影できる立場ではありません。そんな人間が無理して学園ハーレムものを描こうとしても、痛みや悲しみが生まれるだけです。
作戦②話をコマに落とし込むのをなんとかする
はじめて描いた漫画は「鬱屈とした主人公がなんかいい感じの会話を他の人物とすることで若干鬱屈としなくなる」という内容だったので、いい感じのエピソードとモチーフをいくつか作り、それっぽい絵やセリフを並べることでなんとかしました。形にはなりましたが、「これって読者に理解してもらえるのか?」「話としてこれで良いのか?」「漫画になっているか?」という不安と共に莫大な作業時間に身を投じることになり、辛かったです。また、やりたいエピソードが先行していたので、所定のページにきちんと収まるかどうかも不安がありました。
というわけで、話を作る前にコマ割りの大枠を決めました。「読者に趣旨が伝わる漫画にするには、どのようなコマ割にすればいいのだろう?」ということを突き詰めてから、話を作るのです。絵が上手く描けないということは、「こちらの意図が読者に伝わりにくい」ということに他なりません。僕は題材をギャグ漫画に設定していたので、読者が「ここはオチなんだな」ということがわかるよう設計しました。
僕なりに考えたコマ割りルールは、以下のようなものです。
僕の作品を例にすると、P1では「現代日本が舞台であり、主人公がオタクの社会人であること」を開示した上で、ページめくり後P2上段で、「甲冑騎士と暮らしている」という、漫画の主題となる情報を提示しました。その後は「現代日本での騎士との暮らしあるある」というコンセプトで、2P単位のネタを配置していきました。 P4-P5の形式を繰り返した上で、最後は「作品としてのオチ」「終わりのためのコマ」を配置して終了です。
このフォーマットのおかげで、プロット・ネーム作成が一気に楽になりました。この後は簡単です。「題材・状況設定から考えて絶対にやらなくてはいけない展開」を書き出し、並べた上で、各展開のオチを偶数ページ上段(めくり直後のコマ)に配置していきます。その後は 「このオチに運ぶためには、この振りが必要」、「この前振りに向けて話には、こういう展開が必要」と逆算しながら小さなネタを詰め込んでいけば、絵が下手では意図が通じる漫画になると思います。
限られた可処分時間の中で、わざわざインディーズの漫画を読んでくれる人は、そもそも漫画に読み慣れています。大事な情報が来るべきコマに大事な情報を配置すれば、それが大事な情報なのだとわかってもらえるし、自身なんらかのリアクションをとるべきシーンだということもわかってもらえるはずです。
ネームに関しての総括
要点を言うと、「コマが話に先行する」です。これまたマジかよと思うかもしれませんが、綺麗な話を作った上で適切にネームに落とし込むのは相当熟達したスキルがないと厳しいのではと僕は思っています。少なくともプロット段階で各ページの上段中段下段どの辺りで描くつもりなのかの目測はつけたほうが良いと思います。
これで絵はなんとかなるし、漫画としてもなんとかなります。後はモチベーションを維持するだけです。
モチベーションをなんとかする
モチベーションを発生させる
どうやったら描くか?締め切りがあれば描く。というわけで、コミティアに申し込みました。締め切りの観点から、今から二つ離れたコミティアが適切でしょう。直近のコミティアでは過酷すぎるので。
モチベーションを維持する
ネームなどで「オチ」や「来るべき絵面」が見えている状態で、ずっとペン入れし続けるのはかなり苦痛です。特に僕のような絵に課題のある人間の場合、「ペン入れすることで説得力のある絵面になり、面白さが増す」ということがありません。結末のわかっている作業をずっと繰り返し続けることになるのです。とうてい黙々と作業し続けるモチベーションは維持できません。
と言うわけで僕はちょっと面白いコマができたら適宜Twitterにアップすることにしました。幸い僕はTwitter中毒です。Twitterでリアクションが返ってくるのが楽しく、モチベーションの維持に繋がりました。「作業の進捗を共有する」というのは有効なプロモーションにもなるので、Twitterにアップすればするほどお得です。Twitter、ありがとう。愛しているよ。
モチベーションについて総括
モチベーションの維持にはとにかく「発表の場をコントロールする」のが大事なのだと思います。締め切りという中期的な目標に向け、短期的には進捗報告でモチベーションを維持、というのが僕にハマったパターンになります。
むすびに代えて、ノウハウまとめ
改めて僕がやったことを振り返りましょう
普遍的方針
- 描けるか自信がない場合、どうやったら描けるようになりそうか、策を考える
まずは漫画を完成させる上での理想状態、現状、課題を整理し、そこから打ち手を考えました。
私に当てはまった三つの作戦
「描けないものは描かずに済むようにする」
描けるもので話を進められるよう、舞台設定や登場人物をコントロールしました。
「コマ割りの型を作る」
漫画っぽくするために、コマ先行で話を作りました。
「発表の場でモチベーションをコントロールする」
コミティアに申し込み、進捗をTwitterにあげまくりました。
すごく邪道かもしれませんが、実際漫画にはなったので、間違いではないんじゃないかなと思います。「漫画を完成させてみたい」という方には、一考の余地があるんじゃないかな……。
こっちのノウハウの方がいいよ!といったご意見はもちろんあると思います。僕としては、いろんな人がいろんなノウハウを共有していくと、漫画文化としてすごくポジティブな流れになるんじゃないかなと思います。繰り返しますが、今踏みとどまっている人が叩かれるだけのインターネットは、つらく、かなしく、むなしい……。
以下、想定問答
Q:なんでゴールが「漫画の完成」なの?
A:僕は基本的に漫画を描く人が増えること自体を善だと見なしています。
Q:ネームについて、ギャグ漫画でしかコマ割りの型化は可能なのか?
A:可能だと思います。たとえばメインヒロイン・ヒーローの魅力で牽引していく話を想定すると、型化の余地が見出せるのではないでしょうか。
Q:フォーマットに落とし込まれたネームでは魅力に欠ける。もっといいやり方があると思う
A:フォーマットに疑問を持ち、改良すべき点を見出せたなら、「完成を目指す」というステップを卒業したということなんだと思います。
Q:「自分のスキルツリーで描けるネタ」を考えるのが大変なのでは?
A:「スキルを伸ばす」よりかは、具体性と期限があるため、アクションとして実現しやすいのではと思います。
Q:描けるものしか描かないと、スキルが伸びないのでは?
A:僕は今泣いている。ただまあ自分を振り返ってみると、少しは上手くなったんじゃないかと思います。なんだかんだで描いているうちに多少はスキルが伸びていきます。
Q:向かない人として、「頭の中でずっと大切にしてきた物語や、永遠の乙女ヴェアトリーチェを漫画に落とし込みたいと思っている人。」が挙げられてたけど、どういうこと?
A:描けるものやコマ割りが先行する形での製作方法なので、ずっと心の中で大切に温め続けてきたお話や理想のキャラクターを漫画に落とし込むにあたっては、基本的に不適切です。
女甲冑騎士さんはある種僕の中での理想的なキャラクターではありますが。
僕にとってのヴェアトリーチェは「身長が3-4mあり、腕が6本以上で各腕に肘関節が2つ以上ある、顔のない黒い女性」です。腕をたくさん描くにはそれだけ立体的に物を捉える必要があるので、どう足掻いても描けません。肘関節が二つ以上ある腕というのも、トレスではどうにもなりませんからね。これを仮に「身長1m70cm程度で腕が2本の顔のない黒い女性」に改めたら幾らか描きやすくなりますが、僕の中にいつまでも後悔が燻り続けることになると思います。皆さんも心の中にヴェアトリーチェを温めていると思いますが、納得のいかない形で彼女たちを形にするのは、幸福なことだとは思えません。潔く手を引き、来るべきときに、納得のいく形で挑みましょう。