OPアンプによるヘッドフォンドライバ
OPアンプをボルテージフォロワで用いたヘッドフォンドライバを設計・製作しました。ボリュームの調整は接続音源側で行うユニティゲイン仕様としました。
OPアンプはボルテージフォロワで使用できて出力電流が大きめのものとして、今回はNJM4580DDを使用しました。コンデンサはオーディオ用電解コンデンサとフィルムコンデンサ、抵抗はすべて金属皮膜抵抗です。回路は155mm×115mmのやや大きなユニバーサル基板に実装しました。
4 kHz, 振幅2 Vの正弦波を入力したときの出力電圧および出力電流のLTspiceでのシミュレーション結果です。負荷は37 Ωの純抵抗です。
出力電圧を周波数軸でみると
入力電圧波形と出力電圧波形はほぼ重なっています。出力電流は最大で50 mA超ですが見たところ歪みのないかなり綺麗な正弦波です。
以下、回路図です。
NJM4580DDは、1/2 Vccバッファ用に1個、左右チャンネルにそれぞれ1個ずつの計3個を使用しています。保安として500 mAのポリスイッチを電源部に用いています。
実際にウォークマンを接続してヘッドフォンを鳴らして聴いてみましたが、音質はソリッドでクリアな印象です。実際は十分な音量を得るのに入力電圧は2 Vも必要ないのでドライブ能力は十分です。
回路自体はローノイズですが、入力インピーダンスが高めなので入力のわずかなノイズを拾います。入力インピーダンスはもう少し下げても(R3, R4の値を多少小さくする)よいです。
OPアンプは他のものに交換してもよいかもしれませんが、訳も分からず変更するのは非推奨です。
電圧利得を十数dB程度にしてボリュームをつけると音量調節のできるヘッドフォンアンプになります。本機のような金属皮膜抵抗を用いたユニティゲインだとギャングエラーが発生しないという利点はあります。
OPアンプによるヘッドフォンドライバ
OPアンプをボルテージフォロワで用いたヘッドフォンドライバを設計・製作しました。ボリュームの調整は接続音源側で行うユニティゲイン仕様としました。
OPアンプはボルテージフォロワで使用できて出力電流が大きめのものとして、今回はNJM4580DDを使用しました。コンデンサはオーディオ用電解コンデンサとフィルムコンデンサ、抵抗はすべて金属皮膜抵抗です。回路は155mm×115mmのやや大きなユニバーサル基板に実装しました。
4 kHz, 振幅2 Vの正弦波を入力したときの出力電圧および出力電流のLTspiceでのシミュレーション結果です。負荷は37 Ωの純抵抗です。
出力電圧を周波数軸でみると
入力電圧波形と出力電圧波形はほぼ重なっています。出力電流は最大で50 mA超ですが見たところ歪みのないかなり綺麗な正弦波です。
以下、回路図です。
NJM4580DDは、1/2 Vccバッファ用に1個、左右チャンネルにそれぞれ1個ずつの計3個を使用しています。保安として500 mAのポリスイッチを電源部に用いています。
実際にウォークマンを接続してヘッドフォンを鳴らして聴いてみましたが、音質はソリッドでクリアな印象です。実際は十分な音量を得るのに入力電圧は2 Vも必要ないのでドライブ能力は十分です。
回路自体はローノイズですが、入力インピーダンスが高めなので入力のわずかなノイズを拾います。入力インピーダンスはもう少し下げても(R3, R4の値を多少小さくする)よいです。
OPアンプは他のものに交換してもよいかもしれませんが、訳も分からず変更するのは非推奨です。
電圧利得を十数dB程度にしてボリュームをつけると音量調節のできるヘッドフォンアンプになります。本機のような金属皮膜抵抗を用いたユニティゲインだとギャングエラーが発生しないという利点はあります。
AM送受信機(航空用、一般通信用)の実際
0. はじめに
基礎的なAM送受信機の理論や構成についての知識を前提に、少し詳細について述べたいと思います。
AM(DSB)での無線通信は現在もVHF航空無線で広く用いられています。一般通信用にはFMのほうが広く普及していますが、AM送受信機について知ることは送受信機一般の理解のためにも有用です。
航空用としては118~137MHzでAM無線電話による通信が広く行われており、この周波数帯を受信できる一般のAM受信機で聞くことができます。航空局用AM受信機(航空交通管制用AM受信機)も他のAM受信機と特別に変わっているわけではありません。
1. 航空局用AM受信機
航空局用AM受信機はダブルスーパーヘテロダイン方式のものが多く用いられています。AM受信機は強い信号波でも弱い信号波でもなるべく同じレベルの出力を得るために、強い信号は利得を小さく、弱い信号は利得を下げずに増幅するためのAGC回路が用いられます。
AGCは通常、中間周波増幅器の利得を調節して抑圧しますが、航空局用AM受信機はアンテナで受信され同調回路で選択されたRF信号がAGCで制御される減衰器を通ります。また、中間周波増幅器の利得もAGCが制御して、両者で全体として中間周波信号の利得の制御を行います。
AGCは中間周波増幅器の利得を抑えるものなので、微弱な受信波に対してはほとんど動作しないことが重要になります。この特性を備えたAGCとして遅延AGC(DAGC)が用いられます。
また、中間周波信号の利得に加え、低周波出力の利得を制御することで最終的な出力を一定にすることを目的としたものがあり、オーディオAGCと呼ばれます。
同調回路あるいはその前段には可変容量ダイオードを用いたフィルタが挿入されます。可変容量ダイオードは逆方向電圧を大きくして静電容量を大きくするとQが低下する特性を有するので、並列に接続し個々の静電容量が小さい範囲で用いる工夫がされます。
Qは(同調周波数)/(帯域幅)で表される量です。
また、第一周波数変換部と第二周波数変換部の間に、近接周波数選択度を改善するための急峻な特性を持つBPFが挿入されます。クリスタルフィルタなどが用いられますが、今日では性能の良いディジタルフィルタが用いられるケースも増えてきていると思われます。
入力信号がないときに低周波増幅器の動作を止めて雑音が出力されるのを防ぐスケルチは、第二中間周波増幅器の出力をもとに動作するキャリアスケルチと検波器出力の信号成分より高い周波数の雑音を増幅して動作するノイズスケルチがあります。キャリアスケルチは強電界域での使用に適し、ノイズスケルチは弱電界域でも使用することができます。どちらも一長一短あります。
検波器は第二中間周波増幅器の後段に置かれ、変調された中間周波信号から音声信号を取り出します。検波器にはダイオード、コンデンサおよび抵抗からなる直線検波器、直線検波器のコンデンサを省略した構成の平均値検波器、ダイオードの二乗特性を利用した二乗検波器などがあります。平均値検波は出力電圧が直線検波の1/πに落ち、効率が低下しますが歪みが少ない性質があります。二乗検波は変調度が大きくなると歪みが大きくなる性質があります。
これらのほかに、同調回路からのRF信号または中間周波信号から、PLL回路による周波数シンセサイザにより搬送波を再生し、乗算回路でRF信号または中間周波信号と乗算したのちフィルタで必要な信号波のみを取り出す同期検波があり、IC・ディジタル技術の進展により広く用いられています。
検波器で取り出された音声信号は低周波増幅器でスピーカーやヘッドフォンを駆動できる電力まで増幅されます。
2. 一般通信用AM受信機
同様の構成です。AGC制御されるRF減衰器や第一周波数変換部と第二周波数変換部の間のBPFなどは省略されることがあります。AMラジオではスケルチがないことが普通です。
一般通信用AM受信機には、空電などによる衝撃性雑音を消去するノイズブランカを備えるものがあります。ノイズブランカは信号系と別系の雑音系で雑音を増幅し、増幅された衝撃性雑音によって信号系のゲート回路を開閉して衝撃性雑音と信号の両方を同時に消去するものです。
AM受信において、音声の聞き取りやすさや明瞭度はアンテナからの入力信号の大きさに左右されますが、変調度にもよります。
入力信号強度の変動はAGCによりある程度は吸収されますが、変調度は受信品質に影響します。一般に変調度が小さすぎると音声が小さくなりS/Nが悪化します。変調度が大きすぎて過変調となっている場合には音声が歪み聞きづらくなります。
変調度は(信号波振幅)/(搬送波振幅)で表され、1を超えると過変調となります。
変調度はAM送信機での変調によります。
3. 航空局用AM送信機
マイクから入力された音声はLPFで2500Hz以上の成分が除かれ、過変調になるような過大な振幅がリミッタで制限されたのち、変調器に入力されます。周波数シンセサイザでは搬送波を生成しこれを変調器に入力して、音声で搬送波が変調されたDSB波を出力します。
このDSB波を所定の送信出力まで増幅する方法を低電力変調といいます。航空局用AM送信機や一般通信用AM送信機は多くが低電力変調です。
低電力変調は変調に要する電力が小さく済みますが、歪みの少ない増幅器が必要になります。
変調された搬送波は、利得が可変の励振増幅器で後段を動作させるのに十分な電力まで増幅されます。その後、利得が固定の電力増幅器で所要の出力電力まで増幅されます。歪みの少ないAB級増幅器などが用いられます。
電力増幅器の出力は不要な成分を除去するLPFを通過し、アンテナへつながる給電線へ送られます。
アンテナの効率が100%で給電線とアンテナが完全に整合していれば問題はありませんが、現実には不整合などで反射波が生じます。反射波が大きいと送信機を焼損するので、反射波の大きさに応じて励振増幅器の利得を制御する回路を備えて給電線へ出力する電力を自動的に調整します。出力は50W程度です。飛行中の航空機相手であれば370kmを超える距離の通信も可能です。
また、電力増幅器の出力を検波してサイドトーン(受話器から聞こえる自分の声)を得ます。
4. 一般通信用AM送信機
出力などに差はあっても仕組みはほぼ同様です。変調器出力をいったん中間周波信号としたのち中間周波増幅器の利得を制御する方式もあります。サイドトーンがない場合もあります。
5. 航空機搭載AM送受信機
航空局用AM受信機と航空局用AM送信機をひとつの筐体に入れて共用できる部分を共用し小型にして、若干簡素化したようなものです。受信中は送信機が停止し、送信中は受信機が停止する単信通信方式で、アンテナは送受信で共用します。送信出力は30W程度です。
6. VHFの伝搬特性
航空用と一般通信用のAM通信はVHFで行われることが多いです。VHFによる通信はその伝搬特性上、基本的に見通し線圏内となります。航空機が高高度で航行している場合には有効通達距離は数百kmになりますが、それでも洋上などで広い範囲が通信圏外となります。
航空では見通し線圏外とVHFでAM通信できる仕組みがあり、ER-VHFと呼ばれます。対流圏の大気の屈折率の不均一に着目し、高電力の送信機と高利得のアンテナ、高感度の受信機を用いて、放射した電波を大気が散乱することを利用して見通し線圏外との通信を行います。受信入力レベルが一定以下になると急激にS/Nが悪化するFMでは不向きですが、AMではこのようなことが可能です。
7. 終わりに
アナログAM送受信機は現役です。上記に加え、近年ではディジタル信号処理の発達に伴って、DSPによる信号処理でアナログAMの通信品質を向上させるということも可能になっています。各種回路はIC化されて小型軽量化・省電力化・高性能化・低価格化し、信頼性も高くなっています。
NIC(Intel I219-V)の詳細設定 ~高速・安定・低レイテンシ通信のために~
NIC、ここでは特にIntel I219-Vの最適な詳細設定のためにどうすればよいか、考え方とともに設定の一例を示します。チップセットはIntel H270です。「最適」とは高速・低レイテンシ・高安定性・低CPU負荷を実現し、これらのバランスを取るという意味です。
OSはWindows 10です。
まず最初に、ドライバを最新版に更新しておきましょう。現時点での最新のドライバのバージョンは 12.19.1.37 です。
よく「ハードウェアよりCPU処理のほうが速い」といわれているのを目にします。ハードウェアを活用しましょう。実際はハードウェアは高速です。専用ハードウェアはCPU・MPUより消費電力あたりのパフォーマンスが大変高いです。せっかく高速なハードウェアを積んでいるのですから有効に利用しない手はありません。
エンタープライズ向けネットワーク機器なども転送は専用ハードウェアが行っていることが多くあります。CPUはその名の通り中央制御装置として機器全体の制御を行い、実際のデータの転送はASICなど専用ハードウェアが行っています。
ハードウェアを利用する利点はまだあります。CPU負荷を軽減できる点です。ハードウェアで処理を行わないならCPUが処理を行う必要があるので当然です。
もうひとつ、レイテンシを小さくできるという利点があります。CPUで処理すると仮にスループットは上がったとしてもレイテンシはどうしても大きくなります。NICで処理してしまったほうがレイテンシの面で有利です。
通信を考える上ではジッターを無視することはできません。ここではパケット到着の時間的なゆらぎのようなものと思ってください。ジッターは小さいほど通信品質が良いです。ジッターは音声通話やビデオ会議など高いリアルタイム性が要求されるアプリケーションで重要になります。ジッターが大きいと通話品質や映像の乱れが起きます。ソフトウェア(CPUとメモリ)でジッターの吸収をしていることが多いですが、あまりにひどいと吸収しきれませんし、そもそも小さいに越したことはありません。CPUのプロセス管理や割り込み、メモリアクセスなどの影響を受けて通信のCPU処理はジッターが大きくなりがちです。専用のハードウェアで処理したほうが有利です。
以上の点から、NIC(ハードウェア)を活用した最適設定を行います。Intel I219-Vは優秀なのでしっかり活躍させましょう。
肝心のパフォーマンスは、条件が良ければインターネット上のサーバとの実際の通信で800Mbps超を実現できました。途中のブロードバンドルータのスループットの上限がそのくらいなので、ほぼワイヤスピードをフルに引き出せます。レイテンシも小さく、LAN内のブロードバンドルータに1482バイトのpingを64回行ったところ、往復に要した時間はすべて1ms未満という結果になりました。
安定性の面でも合格です。Intel I219-Vはそもそも発熱などの問題が少なく安定しているので長時間の連続通信や高速の通信でも途絶したり不安定になることは経験していません。
それでは、以下に実際に設定した詳細設定を示します。
・PMEをオンにする:有効
・PTP ハードウェア・タイムスタンプ:無効
・RSS キューの最大数:2キュー
・RSS ロード・バランシング・プロファイル:最も近いプロセッサー
・TCP チェックサムのオフロード (IPv4):受信/送信 有効
・TCP チェックサムのオフロード (IPv6):受信/送信 有効
・UDP チェックサムのオフロード (IPv4):受信/送信 有効
・UDP チェックサムのオフロード (IPv6):受信/送信 有効
・Wake on Link 設定:無効
・Wake On Magic Packet:有効
・Wake On Pattern Match:有効
・アダプティブ インターフレーム スペーシング:有効
・ギガビット マスタースレーブ モード:自動検出
・システム無動作時の節電機能:無効
・ジャンボパケット:9014バイト
・ソフトウェア・タイムスタンプ:無効
・パケット優先度とVLAN:パケット優先度とVLAN 有効
・パワーダウン時に速度を落とす:無効
・フロー制御:受信/送信 有効
・プロトコル NS オフロード:有効
・リンク・ステート・イベントのログ:有効
・リンクを待機:自動検出
・リンク速度バッテリセーバー:無効
・レガシースイッチ互換モード:無効
・ローカル管理されるアドレス:存在しない
・割り込み加減:有効
・割り込み加減率:アダプティブ
・受信バッファー:1024
・受信側スケーリング:有効
・省電力イーサネット:無効
・送信バッファー:1024
・速度とデュプレックス:オートネゴシエーション
・大量送信オフロード V2 (IPv4):有効
・大量送信オフロード V2 (IPv6):有効
・超低消費電力モード:無効
-----------------
筆者
・第一級陸上無線技術士
Cisco Business 250 スマートスイッチを導入してみた
CBS250-8T-E-2G 8-Port Gigabit Smart Switchの新品が1万円程で売られていたので導入してみました。ネットワーク機器(スイッチ)ですが分類上はL3スイッチになると思います。 スマートスイッチということで、PCとUTPケーブルでつないでHTTP/HTTPSでWebブラウザからグラフィカルに設定を行うことができます。コンソールポートがあるのでロールオーバーケーブルでつなげばCUIで設定もできますが、使えないコマンドも結構あります。
show run, show ip int, show cdp neighbors, show env all, reload などは使用可能です。
Webブラウザから詳細に設定できるのでコンソールはあまり必要ないですが、うっかりDHCPサーバに接続すると管理IPアドレスが自動で割り振られてしまうのでこの場合はコンソールで接続して show ip int を打つとわかります。
なにも設定しなくてもスイッチとして使えるのですが、さすがにそれでは面白くないのでいろいろ触ってみました。
ファームウェアの更新もPCからHTTP/HTTPS経由でできます。最初にやっておくと良いと思います。ファームウェアのバックアップも取れます。
システム時刻はインターネット接続があればWeb上のサーバからSNTPで自動的に取得します。サーバのアドレスはあらかじめ設定されてありますが変更もできます。代替ソースとしてPCからHTTP/HTTPSで取得することもできるようです。
ジャンボフレームはデフォルトで無効です。有効にした場合はリブートが必要です
STP, RSTPに対応しています。
SNMPにももちろん対応しています。
CDPに加えLLDPに対応しています。試しに接続した892でshow cdp neighborsを打ってみるとちゃんと見え、CapabilityはR S IでしたのでこれからもL3スイッチであることがわかります。もちろん、CBS250から892もCDPネイバーとして見えます。
UTPケーブルを診断するカッパーテストというものがあります。正常性の診断に加え、おおまかなケーブル長の検出もできますがあまり正確ではありません。
IGMPスヌーピング、MLDスヌーピングを有効にできます。デフォルトで無効です。
DoS攻撃の防御機能がありますがデフォルトで無効になっています。また、SYN保護機能もあります。
認証は802.1Xに対応しています。
QoSはキューのスケジューリング方式として完全優先とWRR(重み付けラウンドロビン)を選べます。8つのハードウェアキューを搭載しています。信頼モードはデフォルトでDSCPになっています。CoS/DSCPにするとTCAM使用率が高くなりました。TCP輻輳回避機能もあります。
他にもまだ触れていない機能がたくさんあり、これらがWebブラウザからGUIで設定できるのでネットワークの基礎を実際に学ぶのにも悪くないのかなとも思います。コンソールからCUIでというよりは直感的に操作しやすい部分はありますしコマンドを覚える必要もほとんどありません。
スイッチとしての性能は大変優秀だと思います。高速でのフォワーディング時もCPU使用率は低く、システム温度も低いです。しかもファンレスです。
実用的に優れているのはもちろんです。全くの初心者だとかなりいろいろと調べる必要はありますがスイッチを実際に動かしてみて勉強するのにも使えそうです。基本情報技術者や応用情報技術者の参考書ではスイッチがどういうものかおおまかに書かれている程度で割と単純な機器に見えますが、設定してみると実際は複雑な機器であることがわかると思います。
安定化回路(OPアンプ変更と再評価)
以前の記事の安定化回路の変更と、出力電圧安定度、雑音特性の再評価です。
回路は以下の通りです。LM358NをNJM4580DDに変更しました。
今回は正確に出力波形を測定するためにプローブのフックチップおよびグラウンドリードを取り外してコネクタに直接プロービングしました。
LM358Nは単電源動作のOPアンプですが、この回路ではツェナーダイオードで電圧をシフトしているため、両電源動作のNJM4580DDでそのまま置き換えることができます。
OPアンプとしてはLM358NよりNJM4580DDのほうが利得やスルーレートなどの数値の点では有利です。発振したりせず思い通りに動作すればひとまず成功です。
以下、測定した出力波形です。
無負荷(出力開放)時も20 Ω負荷接続時も発振することなく安定して動作することを確認しました。
また、雑音も非常に小さく正確な測定が困難な程度でした。
出力電圧の安定度(ラインレギュレーションおよびロードレギュレーション)も正確な測定が不可能な程度に良好でした。OPアンプの非常に大きなDC利得が利いていると思われます。
NJM4580DDの安定性にも助けられて、出力の電圧安定度および雑音特性は非常に優秀な結果になりました。
LM358Nとの比較も行いたかったところですが、ICソケットを用いず直接はんだ付けしたことと、測定の精度が十分に確保できないので行いません。
安定化回路はこれでいったん完成です。シンプルな回路ですがなかなか優秀です。
OPアンプは当然さらに他のものを使うこともできるはずですが、ひとまずこの回路で安定動作を確認できたものはLM358NとNJM4580DDの2種類となります。
秋月のヘッドホンアンプキット(改)がなかなか良い
秋月電子通商のヘッドホンアンプキットAE-KIT45-HPAのパーツを一部変更したものが思った以上に良いので以下、変更した箇所や良い点、回路の説明などをします。
変更点は
・オリジナルではOPアンプにNJM4580DDが使われていますが、これを高スルーレートで低雑音のNJM2114DDに
・OPアンプ出力に直列に入っている出力保護抵抗 47 Ωを10 Ωに
以上です。
キットの電源電圧は12 Vで動作させています。
変更点について
・OPアンプはNJM4580DDと取り換えて特に問題のないオーディオ用でより性能が良いと思われるもので比較的安価なものということでNJM2114DDにしました。それ以上の深い理由はありません。
・出力の47 Ωの抵抗というのは下手するとヘッドホンのインピーダンスよりも高いです。説明書にはOPアンプ本来のポテンシャルを引き出すには0 Ωとする(リード線などで短絡する)と良いと書かれています。しかし、この抵抗は「出力保護」ということですが、OPアンプの保護だけでなくヘッドホンの保護でもあるので気休めとして10 Ωを入れることとしました。電源投入時のポップノイズもいくらかは軽減できそうです。
電源電圧はNJM2114DDの仕様から少なくとも6 V以上としなければいけませんがキットの仕様の上限は15 Vなので、十分な電圧で条件を満足する12 Vにしました。
まず実際に動かして聴いてみた感想ですが、低域が自然にしかもかなり低いところまでしっかり出ていて驚き。
入力のカップリングコンデンサは10 μFです。回路図を見ると、OPアンプは入力インピーダンスが高いのである程度低くするために10 kΩ(R3, R7)が仮想GND(後ほど触れる)との間に入っていて、回路の入力インピーダンスは10 kΩと考えられます。
カップリングコンデンサとこの抵抗がハイパスフィルタを形成します。カットオフ周波数を計算すると約1.6 Hzです。入力インピーダンスが高いので入力のカップリングコンデンサは10 μFで十分です。
出力のカップリングコンデンサは470 μFと大きめのものが使われています。これが負荷(ヘッドホン)のインピーダンスとハイパスフィルタを形成します。ヘッドホンの低周波でのインピーダンスを35 Ωとして計算するとカットオフ周波数は約10 Hzです。
入出力のカップリングコンデンサが邪魔をしないのが低域がちゃんと出るひとつの要因といえそうです。
このキットでは単電源で両電源用OPアンプを使用する工夫として、電源電圧を4.7 kΩの抵抗2本で分圧してGNDから電源電圧までの半分の電位を仮想GNDとしています。
これだけではインピーダンスが高くなるのでインピーダンスを低くするために470 μFのC1, C2でインピーダンスを下げています。
この仮想GNDを使用することにより、R5, R9をコンデンサを介さず仮想GNDに直接接続できます。回路の利得を決定する抵抗なので、コンデンサを介するとどうしても低周波でのインピーダンスが高くなり低域の利得が落ちてしまいます。仮想GNDを用いることでDCまで利得がリニアになり、これが低域がちゃんと出るふたつめの要因といえそうです。
もうひとつ要因があるとすれば、このキットがもともと入門用、学習用のため回路がシンプルであることです。フィルタ等で補正をしているわけでないのでOPアンプの特性が素直に出ます。基板もコンパクトです。OPアンプはもともと低いほうはDCくらいまでかなりリニアな特性であることが多いのでそれが素直に聞こえるというのはありそうです。
出力保護抵抗の47 Ωというのはやはりアンプの性能を十分に出すにはやや大きくて足かせでしょう。直感的にはとりあえず10 Ωで悪くない感じです。VRを回すと相当大きな音も出ます。あまりに大きい音が出たのでびっくりしたほどです。最初にヘッドホンをつなぐときはVRを左いっぱいに回しきっておくことと、耳から外しておくべきです。
コンデンサはキットの標準品でも極端に悪いということもありません。オーディオ用に変えればもっと良いかもしれませんが、安価で簡単なキットですしパーツにあまり高価なものを使うのももったいない気はします。
低域以外についても良い感じです。廉価な市販のヘッドホンアンプより良いと思うくらいです。動作も安定しておりなかなか良い音を聴かせてくれます。
音量調整のVRが左右別々にあるのできちんと左右で音量合わせをするのが少し難しいかもしれません。おすすめの方法は、ベースの定位が中央の音源を聴きながら合わせていくとやりやすかったです。アナログ録音の音源などがあれば、サーという雑音が左右でバランスするように合わせるのも良いと思います。もしこのキットいまいちだなと思ったならまずはきちんと左右の音量合わせをしてみてください。
なお、NJM2114DDは低雑音のOPアンプですが、雑音の多い電源を用いたのでは台無しです。電源も相応に雑音の少ないものでないと真価は発揮できません。
本キットの製作上の注意点は、部品を間違えないこと、コンデンサの極性を間違えないこと、コネクタおよびICソケットの向きを間違えないこと、はんだ付けを綺麗に適切に行うことくらいです。
OPアンプを交換しても1,000円もかからないキットでこれだけ鳴れば個人的には十分です。
もともと学習用キットなので、OPアンプのバーチャルショート(イマジナリーショート)や利得、特性など基本的なことを確認しておく(知らなければこの機会に学ぶ)ことが一番大事かもしれません。