大学数学 目次
集合・位相
複素解析
常微分方程式
ベクトル解析
環論
体論
多様体
測度論
線形空間 例 数列の空間
例(数列の空間)
実数列の空間を, \begin{align}\mathbb{R}^{\mathbb{N}} := \{(a_n) | a_1, \dots , a_n, \dots , \in \mathbb{R}\} \end{align}と定義する.但し,
に対して, その和を, \begin{align} (a_n) + (b_n) = (a_n+b_n)\end{align}で定義する.
, に対して, そのスカラー倍を, \begin{align} \lambda(a_n)=(\lambda a_n) \end{align}で定義する.
この加法とスカラー倍により, は線形空間になる.
解答
解答
(1)に対して, 加法に関する定義と体の定義により,\begin{align}
\{(a_n) + (b_n)\}+ (c_n) & =(a_n+b_n) + (c_n) \\
& =(a_n+b_n+c_n) \\
& =(a_n)+(b_n+c_n) \\
& =(a_n)+\{(b_n)+(c_n)\}
\end{align}
(2)零元だから,
定数列を考えると,.
に対して, 加法に関する定義と体の定義により, \begin{align}
(a_n) + (0) & = (a_n+0) \\
& = (a_n) \\
& = (0+a_n) \\
& = (0)+(a_n) \\
\end{align}
以下同様の議論でが線形空間の定義を満たすことを示せばよい.
定義・命題 一覧(左合同~準同型定理)
- 命題・定義(左合同、左剰余類)
- 定義(指数)
- 命題(ラグランジュの定理)
- 命題・定義(剰余群)
- 定義(準同型写像)
- 定義(同型写像、同型)
- 命題(同型の性質)
- 定義(核、像)
- 命題(核と像による群の構成)
- 命題(準同型定理、第1同型定理)
- 命題(第2同型定理)
- 命題(第3同型定理)
命題・定義(左合同、左剰余類)
定義(指数)
命題(ラグランジュの定理)
命題・定義(剰余群)
定義(準同型写像)
定義(同型写像、同型)
命題(同型の性質)
定義(核、像)
命題(核と像による群の構成)
命題(準同型定理、第1同型定理)
命題(第2同型定理)
命題(第3同型定理)
定義・命題 一覧 (群~正規部分群)
定義(演算)
集合.
の演算とは,直積からへの写像\begin{align} \cdot : G \times G \to G
\\ (x, y) \mapsto x \cdot y\end{align}のことである.
定義(群)
集合. :の演算.
組が群であるとは, 条件(1), (2), (3)を満たすときにいう.
(1)に対し, が成立する.
(2)が存在して, に対し, が成立する.このをの単位元という.
(3)に対し, が存在して, が成立する.このをの逆元という.
定義(有限群、無限群、群の位数)
:群.
に含まれる元の数をの位相といい, と書く.
の位数が有限のときを有限群という.
の位数が無限のときを無限群という.
定義(部分群)
:群. .
がの部分群であるとは, の演算によって, が群になっているときにいう.
命題(部分群の同値条件)
:群. .
TFAE;(1),(2):
(1)がの部分群である.
(2)に対し, が成立する.
定義(群における部分集合の積)
:群. . . \begin{align}ST &:= \{s \cdot t | s \in S, t \in T \} \\
S^{-1} &:= \{ s^{-1} | s \in S \} \\
aS &:= \{a \cdot s | s \in S \} \\
Sb &:= \{ s \cdot b | s \in S \} \\
aSb &:= \{ a \cdot s \cdot b | s \in S \} \end{align}
定義(正規部分群)
:群. :の部分群.
がの正規部分群であるとは, に対し, \begin{align}xNx^{-1}=N\end{align}が成立するときにいう.
命題(正規部分群の同値条件)
:群. :の部分群.
TFAE;(1),(2),(3):
(1)がの正規部分群である.
(2) に対し, が成立する.
(3)に対し, が成立する.
部分空間 例 n階線形常微分方程式の解空間
例(階線形常微分方程式の解空間)
:自然数. :上の 級関数.
階線形常微分方程式の解空間
\begin{align}V := \{y \in C^{\infty}(\mathbb{R}) | \frac{d^ny}{dx^n}=a_1(x)\frac{d^{n-1}y}{dx^{n-1}}+ \dots + a_{n-1}(x)\frac{dy}{dx} + a_n(x)y\} \end{align}は, の部分空間である.
解答
解答
定数関数は, 明らかにだから, \begin{align} V \neq \phi\end{align}(1)を任意にとると, \begin{align}\frac{d^n(y+z)}{dx^n}&=\frac{d^ny}{dx^n}+\frac{d^nz}{dx^n}\\
&=a_1(x)\frac{d^{n-1}y}{dx^{n-1}}+ \dots + a_{n-1}(x)\frac{dy}{dx} + a_n(x)y \\
&+a_1(x)\frac{d^{n-1}z}{dx^{n-1}}+ \dots + a_{n-1}(x)\frac{dz}{dx} + a_n(x)z \\
&=a_1(x)\frac{d^{n-1}(y+z)}{dx^{n-1}}+ \dots + a_{n-1}(x)\frac{d(y+z)}{dx} + a_n(x)(y+z)
\end{align}よって, .
(2)とを任意にとると, \begin{align}\frac{d^ncy}{dx^n}&=c(a_1(x)\frac{d^{n-1}y}{dx^{n-1}}+ \dots + a_{n-1}(x)\frac{dy}{dx} + a_n(x)y) \\
&=a_1(x)\frac{d^{n-1}(cy)}{dx^{n-1}}+ \dots + a_{n-1}(x)\frac{d(cy)}{dx} + a_n(x)(cy)
\end{align}よって, .
以上から, の部分空間である.
線形空間 例 無限回微分可能な関数全体がなす空間
例(無限回微分可能な関数全体がなす空間)
級関数全体がなす空間を
\begin{align}C^{\infty}(\mathbb{R}) := \{f: \mathbb{R} \to \mathbb{R} | f:C^{\infty}\verb|級関数| \} \end{align}とする.
に対して, その和を, \begin{align} h(x) = f(x) + g(x)\end{align}で定まる写像:で定義する.
, に対して, そのスカラー倍を, \begin{align} h(x) = a \cdot f(x) \end{align}で定まる写像:で定義する.
この加法とスカラー倍により, は線形空間になる.
解答
解答
(1)に対して, 加法に関する定義と実数体の性質により,\begin{align}
\{(f + g) + h\}(x) & =(f+g)(x) + h(x) \\
& =\{f(x) + g(x)\} + h(x) \\
& =f(x) + \{g(x) + h(x)\} \\
& =f(x) + (g + h)(x) \\
& = \{ f + (g + h)\}(x)
\end{align}よって,
(2)零元だから,
で定まる定数関数:を考えると,.
に対して, 加法に関する定義と実数体の定義により, \begin{align}
(f+\tilde{0})(x) & = f(x)+\tilde{0}(x) \\
& = f(x)+0 \\
& = f(x) \\
& = 0+f(x) \\
& = \tilde{0}(x) + f(x) \\
& = (\tilde{0}+f)(x)
\end{align}よって,
以下同様の議論でが線形空間の定義を満たすことを示せばよい.
定義・命題 一覧 体
定義(体)
:集合.
が体であるとは, に加法と,乗法が定義されていて,
次の条件(1)~(9)が満たされるときにいう.
(1)に対し, が成立する.
(2)で, に対し, を満たすものが唯一つ存在する.
(3)に対し, を満たすが唯一つ存在する.
(4)に対し, が成立する.
(5)に対し, が成立する.
(6)対し, 及びが成立する.
(7)で, に対し, を満たすものが唯一つ存在する.
(8)に対し, が成立する.
(9)に対し, を満たすが唯一つ存在する.
定義・命題 一覧(線形空間~部分空間)
- 定義(線形空間)
- 定義(部分空間)
- 命題(共通部分・和による部分空間の構成)
- 定義(線形結合, 線形独立, 線形従属)
- 定義・命題(生成される部分空間)
- 定義(生成系)
- 定義(基底)
- 定義(有限次元, 無限次元)
定義(線形空間)
:体. :集合.
が線形空間であるとは, に加法と, の元によるスカラー倍が定義されていて,
次の条件(1)~(8)が満たされるときにいう.
(1)に対し, が成立する.
(2)で, に対し, を満たすものが唯一つ存在する.
(3)に対し, を満たすが唯一つ存在する.
(4)に対し, が成立する.
(5)とに対し, が成立する.
(6)とに対し, が成立する.
(7)とに対し, が成立する.
(8)に対し, が成立する.
注意
- 線形空間の元を, ベクトルという.
- 線形空間のことを, 上の線形空間, ベクトル空間ともいう.
- のとき, 線形空間のことを,実線形空間 という.
- のとき, 線形空間のことを, 複素線形空間という
- スカラー倍の記号はしばしば省略され, をと書くことが多い.
- 体の定義はこちら 定義・命題 一覧 体
定義(部分空間)
:線形空間. .
がの部分空間であるとは, 次の条件(1),(2)を満たすときにいう.
(1)に対し,
(2)とに対し,
命題(共通部分・和による部分空間の構成)
:線形空間. :の部分空間.
(1)和\begin{align}W_1 + \dots + W_n =\{x_1 + \dots + x_n | x_i \in W_i , (i=1, \dots ,n)\}\end{align}はの部分空間である.
(2)共通部分\begin{align}W_1 \cap \dots \cap W_n =\{x | ^{\forall}iに対し, x \in W_i\}\end{align}はの部分空間である.
定義(線形結合, 線形独立, 線形従属)
:線形空間.
に対し, \begin{align}c_1x_1 + \dots + c_nx_n , (c_1, \dots , c_n \in K)\end{align}の形のベクトルを, の線形結合という.
また, \begin{align}c_1x_1 + \dots + c_nx_n=0 , (c_1, \dots , c_n \in K)\end{align}を満たすものが, のみのとき, は線形独立 という.
さらに, が線形独立でないとき, 線形従属であるという.
定義・命題(生成される部分空間)
:線形空間. .
このとき, ベクトルの線形結合全体のなす集合 \begin{align}\verb|<|x_1, \dots , x_n\verb|>|=\{c_1x_1 + \dots + c_nx_n | (c_1, \dots , c_n \in K)\}\end{align}はの部分空間であり, から生成される部分空間という.
定義(生成系)
:線形空間. .
であるとき, はの生成系であるという.
定義(基底)
:線形空間.
が次の条件(1),(2)を満たすとき, の基底であるという.
(1)は線形独立である.
(2)である.
定義(有限次元, 無限次元)
線形空間が有限個のベクトルからなる基底をもつとき, 有限次元であるといい, 有限次元でないとき, 無限次元であるという.