あべんじゃのブログ

学んだことや科学・技術・教育などについて書いて行けたらと思ったり思わなかったり。

物性物理のための群論学習

 

動機

 

 超伝導の対称性について知りたかったのですが、群論を知らないとお話にならなそうだったので卒論が終わってから群論の勉強を始めました。とはいえ、差し当たり数学的に厳密な本ではなく、あくまで物性への応用の為の本や文献で勉強しています。

 

使用した参考書

 まずは比較的お手軽そうなものをと思って選んだのが、小野寺嘉孝著「物性物理/物性化学のための群論入門」という本です。主に点群を用いた議論が分かったり使えたりすることが目標となっています。前半は群や類、表現、指標など群論における基本的な概念や応用上重要な定理と量子力学の簡単な問題への応用を交互に解説してあり、後半は分子振動や結晶場理論などへの応用が解説されています。

 この本は問題を解きながら読まないと勉強になりません。本書の冒頭にも、読者が問題を解きながら読み進めることを想定していると書かれています。巻末には問題の略解があります。ちょいちょい省略されていますが…。ただ、問題はそんなに難しくないので詰むことはないでしょう。自分も問題を解きながら読んだので、そのうちそれをまとめて公開できればと思います。

 

 

仙台の古本屋(理工書多めver.)

 宮城の実家に帰省するといつも仙台の古本屋に行くのですが、年々古本屋さんがつぶれて少なくなっていて悲しい…。少しでも宣伝になれば、ということでよく行っている古本屋を紹介したいと思います。

 

 

昭文堂書店

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(http://syoubundou.o.oo7.jp/)

 1番よく行くのが昭文堂書店(仙台市営地下鉄青葉通り一番町駅から徒歩5分)です。仙台の中心部にあるので気軽に行けるのが良いところですね。お店は基本的におじいさんがお一人で(たまにその奥さんが)店番をされてます。小規模ですが理工書の取り扱いは比較的多めです。

 この昭文堂書店、仙台の古本屋の中では理工系の本の取り扱いが多いのでよく立ち寄って散財してしまうんですよね。理工書多めの古本屋は仙台では少ないので。値段設定は東京の明倫館書店と同じ感じだと思います。参考までに、ここで買ったものとその値段をいくつか挙げてみますね。※()内は購入価格。

 

・J.J.サクライ 現代の量子力学 上・下(セットで2,000円)

・神部勉 流体力学 (2,100円)

中山正敏 物質の電磁気学 (2,600円) 

・小野寺嘉孝 物性物理/物性化学のための群論入門 (1,800円)

・小野寺嘉孝 物理のための応用数学 (1,700円)

・小出昭一郎 量子力学Ⅰ・Ⅱ (各1,700円、1,800円)

 

J.J.サクライは第2版ではありませんが破格だったと思います。他は大体定価の6~7割ぐらいでしょうか。あと、ブルーバックスなどの新書、岩波文庫などの文庫本は確か1冊100円です。

 

 さて、もう一店紹介したいと思います。

 

萬葉堂書店f:id:athand:20190928195417p:plain

 (http://www.manyodoshoten.com/index.html)

  2店目が萬葉堂書店です。こちらは仙台市太白区鈎取にあるため、仙台の中心部からは少々離れていますが規模は大きいです(HPによれば10万冊を展示販売しているとのこと!)。交通手段は、JR仙台駅から、あるいは地下鉄長町駅から宮城交通バスで「鈎取」バス停まで。車の方が行きやすいと思います。

 萬葉堂書店は規模が大きく、あらゆる分野の本が扱われていて、1階は歴史・宗教・民俗学・心理学の学術書や文芸書・実用書・新書・コミックなど、地下は理工・社会科学・教育関係の学術書や国文学、教養書などが置かれています。こちらも価格設定は明倫館書店と同じぐらい(やや安いかも)です。

 

 

 ここでは2店紹介しましたが、仙台に残っている理工書の取り扱いが多い古本屋はこの2店ぐらいではないでしょうか(あとは仙台駅前のBOOK OFFぐらい)。以前は青葉区に、尚古堂書店、熊谷書店という古本屋もあったのですが2年ほど前に閉店してしまいました…。今残っている古本屋さんには頑張ってほしいです。

ブルーバックス はじめてナットク!超伝導

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講談社ブルーバックスから出ている超伝導についての読み物です。著者はバルク超伝導磁石の研究者である村上雅人さんで、バルク超伝導体と永久磁石を用いた人間浮上のデモ実験(表紙がそのイメージ)でも有名です。本書は全編を通して対話形式で話が進み、読み物としてはとても読みやすくなっています。

 

目次(副節は省略)

序章 超伝導で人が浮く

第1章 電気抵抗ゼロの秘密

第2章 超伝導と巨大な電子の波

第3章 超伝導と熱力学

第4章 超伝導と熱力学(実践編)

第5章 高温超伝導を探して

第6章 超伝導を何に使うか

第7章 最初の人間浮上はなぜ失敗したか

 

内容紹介

 著者、村上雅人氏はある講演会で超伝導体を用いて金魚鉢を浮かせるデモ実験を実演する。しかし聴講者からは、人間までは浮かないだろう、との反応が。そこから、バルク超伝導体による人間浮上を実現するための挑戦が始まった。

 本書ではまず、この挑戦の内容を理解するために超伝導の基礎的な事柄を数式はほとんど使わずに定性的に解説してくれる。初めにゼロ抵抗からマイスナー効果、ピン止め効果といった実験事実を説明している。よくある超伝導体の磁気浮上実験はマイスナー効果のみで浮いているのではなくピン止め効果が本質的である、ということを説明するのが本書の目標の一つであると思われるが、それがよく達成されている。第1~2章では超伝導体の中で起こっていることを、量子力学に基づいて電子と原子核の相互作用などのミクロのスケールで解説、第3~4章では自由エネルギーやエントロピーという熱力学の概念を用いてマクロなスケールで解説している。第5章では1986年の高温超伝導発見に伴う超伝導フィーバーを懐古しながら高温超伝導探索の歴史を説明してくれ、当時の熱気を感じさせる。最初の発見者はIBMの研究者、ベドノルツ氏とミュラー氏であったが、その後の発展には田中昭二氏など日本人研究者も数多く貢献しており、その活躍の様子にはわくわくさせられる。第6章では、MRISQUIDなどの既に実用化されているものから、実用化する上で問題となる交流抵抗のことなどが紹介されている。そして最後に、失敗経験も織り交ぜながら人間浮上デモ実験成功までの経緯が描かれている。

 

おわりに

 本書は1999年に出版された本で、残念ながら現在は絶版のようです。しかし、読み物としてはとても面白いので図書館や古本屋さんで見かけた際はぜひ読んでみて下さい。きっとサクサク読み進められます。

外部院試結果など

年始以来の更新です。進路も決まったことだし何か書こうと思います。

 

 

学部4年(B4)になってから

 まず、B4として研究室に所属しました。今の大学で選んだ研究室は物性理論(磁性・超伝導)の研究室です。理由としては物性物理の勉強を学部生のうちにちゃんとしたかったからです。院試の勉強をするにはもっと緩くてやりやすい研究室がありましたが今の研究室を選んで正解だったと思っています(鍛えられるという点で)。

 

院試

 結果から言うと、第一志望の東北大学大学院工学研究科応用物理学専攻の外部・高専対象の推薦入試で合格をいただきました(7月上旬)。推薦入試は、自分の所属大学から推薦を貰えるぐらいの成績を取っておけば出願はできます。僕の場合はGPAは3.4ぐらいでした。そんなに厳しい条件じゃないので志望している大学院に推薦入試がある場合はダメ元でも出願してみると良いかと思います。

ㅤ推薦入試の内容は小論文と面接のみで、対策をどうしようかと悩んだのですが小論文を練習しておいたのが効きましたね。合格をいただいた後、来年からお世話になる教授にご挨拶に伺ったんですけど、小論文でちゃんと差がついたみたいです。ちなみに倍率は2倍でした。2倍ですよ、大学院入試にしてはなかなかの高倍率…まぁ、定員2名受験者4名というだけなんですが(笑)

 

合格後

 合格から1か月後ぐらいに、お世話になる研究室にあいさつに行って教授や先輩方と少しお話をして、あとは勉強用に過去の博士修了者の方の修論や博論をもらってきました。

 現在の所属研究室ではひたすら固体物理ゼミです。ただ、院試前は一般入試の勉強をしていた時間を好きな勉強に充てられるようになりました。最近は個人的な勉強としては丹羽先生の「超伝導の基礎」という本を読んでいます。最初は中嶋先生の「超伝導入門」を読んでいたのですが、あの本は行間の計算とかを逐一追おうとするとちょっとしんどくて…。

 

今年の4月から今までの大まかな流れは以上の通りです。7月上旬には院試は終わっていたのですが、世の中の院試受験者の多くは8月末~9月頭まで院試で大変なのでそれが終わるまではおとなしくしておこうと思ってすぐにはブログを更新しませんでした(言い訳)。これからは頑張ります(フラグ)。

 

 

 

 

2019年の目標

あけましておめでとうございます。去年の夏に思いつきでブログを始めたものの更新頻度がおそろしく低いので、今年はもう少し多く更新するよう頑張ります。

 

  •  2019年最大の目標

 今年、2019年の最大の目標は大学院の入試合格です。他大学の物性実験系(特に超伝導・磁性・スピン流など)を狙っています。既に夏のうちに第一志望候補の2研究室にはお邪魔してきたので、あとは春にもう1、2研究室訪問しようかと思っています。あとは勉強ですね、TOEICで3月までに700点台に乗せたいところです。加えて、物理数学・力学・電磁気・熱統計力学量子力学、物性物理学もしっかり勉強しなければなりませんね。試験のための勉強はあまり楽しくないのですが・・・

 

  • 次点、というかその他にやっておきたいこと

 他には、現在在籍している専攻での学部4年生の研究室配属では物性理論系の研究室に入って物性物理の勉強をしっかりしておきたいですね。アシュクロフト・マーミン固体物理の基礎や中嶋貞雄超伝導入門などの本、志望研究室から出ている論文を読んで大学院以降研究室を移ってもいきなり研究できるように勉強しておきたいところです。

 

あまり欲張っても仕方ないのでこのぐらいにしておきたいと思います。

超伝導体の磁気浮上

超伝導を研究対象とする分野には理論から実験、基礎から応用まで色々ありますが、応用超伝導、その中でもバルク材料についてまとめてみようと思います。

バルク材料というのは、薄膜に比べて厚さがあり、線材に比べて短いという、塊状の材料を指します。

応用超伝導分野では、送電線やコイルへの応用目的で線材や、デバイス目的で薄膜が研究対象になることが多いように思います。これらはバルクより色々な応用先がありますからね。

逆に、超伝導バルク材料にはどういう特徴、用途があると思います?

「ただの塊でしょ?浮かせてデモ実験するぐらいしかないんじゃない?」

確かに!

いや、確かに!じゃなくて、ちゃんとバルクならではの特徴と用途があるんです。ただ、その前にそのよく見るデモ実験について考えてみたいと思います。

応用超伝導分野では往々にして第Ⅱ種超伝導体が研究されていますが、この第Ⅱ種超伝導体では、外部から磁場をかけていくと、始めはマイスナー効果を示しますが、ある磁場(下部臨界磁場)で超伝導相と常伝導相が混在する混合状態が現れます。そしてさらに大きな磁場(上部臨界磁場)をかけると超伝導状態が破れます。

この混合状態の時、一部の磁場が超伝導体を貫通していくわけですが、それは超伝導体が、外部磁場を一心に弾き出すより、ちょっとだけ受け入れた方がエネルギー的に得だからです(深くは言及しませんが)。

ただ、超伝導体内に侵入した磁束は、そのままでは超伝導体が動いたときなどに動いて電場が変化し、変に電流を生じたりして不安定です。

ここで、あえて超伝導体ではない物質を混ぜます。そうすることで超伝導バルク材料内に常伝導相ができますね。外部磁場はこの常伝導相目掛けて侵入し、常伝導相の外、つまり超伝導相には侵入しようとしにくくなります。その方がエネルギー的に安定だからです(2度目)。

こうして、超伝導バルク材料の中に磁束を受け入れる不純物を最初から混ぜてやることで、磁束はその常伝導相に侵入し、固定されることになります。

これをピン止め効果と呼ぶのですが、このピン止め効果によって、超伝導体の磁気浮上やフィッシング効果が実現することになります。マイスナー効果だけじゃないんです。マイスナー効果だけだと宙ぶらりんのフィッシング効果は実現しませんよね。

長くなってきたような気がするのでとりあえずここまでにして、超伝導バルク材料の応用についてはその2に書くことにします。

進みたい分野について書いて考えただけのもの

夏休み中に色々な人と会って、身を投じる分野について考えたけど未だ迷いが…というか面白そうなことが多くて困る。

超伝導などの物性物理の理論だって勉強したいし、実験で新しい物質作って物性見たいし、既存の物質を使える材料にするのも面白そう。

ただ、なんとなくだけど理論で研究をやっていくのは向いていないと思う。理論を勉強するのは好きだけど、理論を自ら打ち立てたり切り拓いていく気概はない。アカデミック業界を目指す場合、ポストの取り合いも熾烈そうだ。

そうなると、物性実験か、材料工学だけど、材料工学だとその材料にかかりきりになってあまり多くの物質には触れなさそう。

今のところは物性実験が最有力かなぁ。物理か応用物理・物理工学かは未定だけど。

B4では物性物理をしっかり勉強するために物性理論の研究室に入って、M1では他大学の物性実験の研究室に進んでガツガツ研究、というのが理想的な気がする。