ゲット・ホームにカム・ホーム

便所からあつあつデリバリー。

ものさし

 

「ものさし」ってあるでしょ。

あれね、長さを計るだけじゃないの。

いろんなものを計れるのよ。

年収、学歴、容姿、社会的地位、その人の価値。

みんな何かを比べてる。

なにが正解かを知るため、損をしないため。みんなに褒められるため、みんなから羨ましがられるため。

 

でもねホンモノは見えないの。だから長さなんて計れない。

楽しかったことは、ただ「楽しかった」の。

嬉しいことはただ「嬉しい」の。

愛したものはただ「愛しい」の。

 

あなたが嬉しいことがあなたは嬉しいの。

あなたがしたいことが「正解」なの。

誰かがあなたに「それは嬉しいものなんだぜ」と言うものじゃないの。

 

慣れないうちはあなたが自分自身で真に望んでるものがなにかわからないかもしれない。

 

じっと心を澄まして。

あなたの「正解」を誰もが望んでいる。

 

 

 

おやすみなさい、会えないひとたち

 

ふかふかのベッドだ。

今日も1日疲れたのだ。頑張った、頑張った。

ラジオの電源を入れる。今日は大好きな芸人のオールナイトニッポンの日だ。

その芸人が人気のタレントをゲストにトークしている。

 

ああ、そういえばお笑い芸人を目指して上京したあいつは元気にやっているんだろうか。

次会うときはあれかな、いかにも業界の人みたいな格好で飲み屋に来んのかな。東京人ぶっちゃって赤坂がうんたらだ、目黒の飲み屋がああたらだとか言ってるのかな。

それよりもあいつ食えてんのかな。金は大丈夫なのかな。

本当にモテない奴で、童貞をネタにしていつも馬鹿話ばっかりしてたけどやっぱり「芸人です」っていうだけでモテるのかな。畜生、俺を置いて行きやがって。

 

そうそう、前東京にいた頃大好きだった山野さんは元気かな。結婚できたのかな。ふられちゃったけど、本当にいい娘だったよな。優しくて、明るくて、愛嬌があって、もうなんて形容したらいいのかわからないけれど、誰がみても魅力的だって言うに違いない、本当に素敵な人だったよな。もし俺が女性で付き合うことができない体だったとしても永遠に一緒にいたいって思っちゃうくらい、純粋な恋だったよな。今でもあの当時住んでた綾瀬は大好きな街の一つだよ。

 

恋といえば、中学生のころ大好きだった佳江ちゃんは結婚してうまくいってるのかな。成人式以来あってないけど、絵が好きで絵描きになるっていってたよな。中学生だった当時憧れが強すぎて緊張して全然話しかけられずにそのまま卒業しちゃったんだよな俺。本当に昔からダメなやつだったよお前は。

 

みんなみんなうまくいってくれてればいいな。

俺は幸せだよ、大丈夫。辛いこともあるけれど、どうにかなることばっかりだから。

こうして大好きなラジオを聞いて、大好きな人たちを思い出しながら眠りにつけるんだ。もう会えない人たちもいるけれど、僕の大切な人たち。

ありがとう、おやすみなさい。

 

 

君から僕へ

 

・・・おい、あんた。

・・そうだよ、あんただよ。

前3列に並んで歩いている友達の輪に入れずに後ろをテクテク付いて歩いているあんただよ。

 

なーに、怪しいもんじゃない。

そりゃああんた、こんな年末の活気ある飲み屋街で下むいて歩いてる若者見つけりゃ声の一つもかけたくなるものだがね。

 

あたしゃね、あんたを21年見てきたんや。

わかるかね?21年もあんたを見てりゃ愛着の一つも湧くがね。

いつ声をかけるべきか悩んだけれどもそろそろあんたも気付いていい頃や。

 

あんたはヒトに何を求めてるんや?

 

あんたは人が自信を持たせてくれるとでも思うとんのか?

 

 

確かにヒトはあんた以外のヒトを分かりやすい言葉で褒めることがあるかもしれへん。あんたの目の前で。

でもそれは彼がわかりやすい良さを持った人間やからや。

 

言葉のチョイスがうまい。だから話が面白い。一緒にいて楽しい。

かっこいい。かわいい。ノリがいい。だから人気者。

 

みんなわかりやすいやろ?褒めやすいやろ?

悪口を言うつもりや全然あれへんけど、言っちゃうと口下手なあんたでも褒められるで?ちゃうか?

 

あんたはわかりにくい良さを持った人間なんや。

あんたはええ人間や思うで。誠実や。真面目や。他のヒトが汚れていく部分を芯に残しとる。21年あんた見ててわし思うわ。

でもそんなん他のヒトからすれば詳しく見えへんねん。いい日本料理店のご飯の味の良さを即座にあんたはヒトに説明できるんかいね?

なんかよう分からんけどうまい。そんなんちゃうか?

あんたの場合もせやねん。なんかようわからんけどええ人やねん。

 

それにあんたはたとえヒトに褒められようが、奥底では信じてないで。聞いてないんや。響いとらんねん。

自信がないからその褒め言葉、嘘や思うねんな。

もっと素直になろう。

 

自信を即座に持て、とはよう言わん。

でもな、ヒトに求めちゃいかんよ。

その友達もしんどなるよ。そして当然求める側のあんたもきついはずや。求めても帰ってこない返事が一番苦しいんや。

 

自分を褒めよう。もっと自分を大事にしてやろう。

あんたはあんたでええんや。あんたのままでええんや。ええ味しとるんや。

 

あとな、あんた自分の顔が嫌いで嫌いで仕方ないって言うてたよな。

おじさん、あんたの顔嫌いやないんや。ほんまやで?

言うて21年間の付き合いや。愛着だけかもしれんけどな。ははは。

 

ええこと教えてやろうか?

おじさんまたしばらくあんたの前からいなくなるかもしれへんからな。手土産や。

 

 

なにかが欠落してるひとはなにかに突出してる。

 

 

これ、もしあんたが自分になにかがない思うんやったら大事に持っとき。

不得手は得意の裏返しや。

 

いい年をな。下はなるべく向くなよ。おじさんとの約束だぞ。

 

 

 

 

とぶ夜空

星が綺麗だ。
僕は空を見上げる。
今日は流星群が見えるらしい。
オリオン座がくっきりと見えた。どこまでも煌めく三対の星が浮き出している。 

田舎は嫌いだった。なにもすることはないし買い物に行くのも電車に乗るのも一苦労だ。
でもたまに晴れた日、遠くの山が澄んで見えるのが好きだ。鳥の鳴き声だけが響く朝が好きだ。どこまでも広大な土地に沈む夕方の太陽が好きだ。
そんな些細な好きが重なって、いつからかここも悪い場所じゃないのかもしれないと思うようになった。

星がまばらにポツポツと夜空を染めている。
それを見ているとなぜか君のそばかすを思い出す。
君が大嫌いだったそばかす。まばらにぽつぽつと。でも問題はそこじゃないんだと僕はよく言った。
それがあろうとなかろうと、僕は君がとても魅力的なんだと。
だけど君は恥ずかしそうにうつむいて、首を振るんだ。
わたし、ダメなの。気にしちゃって。
うつむいた顔にかかる髪が微かに搖れて、僕の鼻を彼女の匂いが誘った。
なにもしてあげられなかった彼女。大好きな、大好きな彼女。
自信はつけてあげるものじゃない。僕が何を言ったって彼女の胸には届かなった。
何が彼女に残ったのか。
そこに僕がいればいいと思う。たとえ僕の姿がなくとも、言葉だけでも、そこにあればいいと思う。
いつか分かる日が来て欲しいと思う。
何光年もかからずとも、わかって欲しいと強く思う。
小さな子が大きくなって、やっと親の言っていた事が分かるように。
君はまだ輝ける。
シリウス

結局その夜流れ星は見つけられなかった。
でもまたいつか他の流星群で見れたらいいなと思う。
地球はまわっているのだから。

言葉を書く

 

よく思う。本当によく思うことがある。

多くの傷つけられた言葉。数知れず泣いた日々。失った自信。

取り返すことができない。取り返すことはできない。

 

こういう生まれなのだ。こういう生まれなのだ。

 

人間は言いたくなる生き物なんだろう。

直球に、えぐるように。たとえそれが目の前のものを壊したとて。

 

彼らにとって、目の前にいる人はたまたま使っているこのシャーペンである。

通りすぎる一介の雲である。

やがては去っていくのだ。人とは常にまちなかの~人生の~交差点で会った、ただその一点なのだ。

 

僕に向けられた多くの「気持ち悪い」はどこへ行くでもない。

ずっと深く、もっともっと奥深く、壊れた自己愛と眠っている。その言葉を放った人が去ったとて。

 

知らない人と街で目が合うと、バカにされ、笑われている気がする。

なんだ、その顔は。なんだ、その目つきは。

 

お前はきもちが悪い。

お前は気持ちが悪い。

お前は・・。

 

親を憎んだことも数知れず。

生まれたことすらも憎んだ。

死にたいと思った。

今も人といたって劣等感で死んでしまいそうだ。

 

そんなとき、僕は物語を読む。

言葉を読む。

それには力がある。感情がある。思いがある。

たまにそれで泣いてしまう。

泣いてすっきりする。

仕方ない、と思う。

明日からも強く頑張ろう、と思える。

一人じゃない。

 

だから僕もいつだって、どんなときだって、人を励ます強い言葉をつかっていきたい。

負けてしまわぬように。心折れぬように。