Dismaland訪問記-6 エピローグ
観覧車は回り続けていますが、たっぷり楽しんだDismalandを去る時間が来ました。
決して広くはない園内ですが、3時間以上は滞在したと思います。
人形劇や映像作品を見ていればもっと長い時間楽しめたでしょう。
(昼の部と夜の部があるので、昼の客は夕方には退園しないといけませんが)
日も少し傾いてきました。
お帰りはこちら。
もちろんBanksyの映画「Exit Through the Gift Shop」ネタですね。
実際におみやげコーナーがあるのですが、なぜか園内でそこだけが撮影禁止でした。
Tシャツやパーカー、ポスター、パンフレットがありました。
暴動鎮圧用のライオットシールドにピースマークのペイントをしたものが
開園時にはあったようなのですが、そこには売り切れの札だけがかかっていました。
ぼくもいくつか買い物をして、後ろ髪を引かれつつ退園。
ああ出てきちゃった。
外には本気でダルそうな係員。
おや、窓から見覚えのある誰かがお見送り。
さようならDismaland。楽しかった!
帰り道に浜辺に出てみました。
Dismalandはこんなところにあります。
こんなことがなければ
イギリスの田舎町に来て海を眺めることなんてなかっただろうなあ
アートなのか本気の掲示なのか分からなくなってきました。
ウェストン=スーパー=メア駅。
なんでもないけどいい雰囲気の駅で、帰りの電車を待ちます。
帰りは行きと違う駅で乗り換え。
乗り継いだ列車がバースを通過しました。
夕暮れ、古い町並みと尖塔、向こうに気球。美しかった。
(iPhoneが車窓に映りこんでしまったのが悔やまれる)
いくらでも眺めていられそうな景色。
7時前にロンドン・パディントン駅に到着。
ピカデリーサーカスの夕暮れ。
この2日後、9月27日にDismalandは閉幕しました。
滑り込みでしたが、行った甲斐があったと思っています。
閉幕後、Dismalandで使われた資材は
フランスの難民キャンプで使われると発表されました。
これで訪問記はすべて終わりです。
最後まで読んでくれた方、ありがとうございました。
Dismaland訪問記-5 屋内展示編
展示は屋内にもたくさんあります。
まずはDismalandの象徴、シンデレラ城に入りましょう。
入り口に立ち入り禁止の表示。
入り口では「シンデレラ」のハッピーエンディング、
シンデレラと王子様が馬車に乗って幸せそうに去っていくシーンが流れています。
このあと希望者はグリーンバックの前で写真を撮られます。
中へ入っていくと…
横転したカボチャの馬車。
フラッシュを浴びせ続ける、表情の見えないパパラッチの群れ。
馬車の窓からはお姫様の無残な姿が。
説明するのも野暮ですが、ダイアナ妃の悲劇をモチーフにしています。
日本の皇室に置き換えたら、と思うと、いかにとんでもないテーマか…
馬車のスペースをあとにすると、
先ほどグリーンバックで写真を撮った人は
「横転した馬車と、パパラッチの後ろでうれしそうに野次馬している自分たち」
の記念写真を買うことができます。
今度は別の建物へ。
Banksyの死神がカートに乗って、「stayin' alive」の音楽とともに
ステージ上をグルグルとダンスするかのようなパフォーマンスを見せます。
死神がstayin' aliveって…
けっこう大きいカートがステージすれすれまで使って
ブンブン動き回るので意外と迫力がありました。
紙吹雪も舞って、stayin' alive!
崩れたピースマーク。
次の部屋へ。
絵画や立体作品が並びます。
わりと直球なディズニーランドネタ。
これ好き。
ディズニー作品に登場する楽園の鳥たちが荒廃した遊園地の上を群れ飛んでいます。
…と思ったらこっそり枠外にディズニーじゃないヤツも?
ピーターパンにティンカーベルもいますね。
突き立った刃物の上に風船がふわふわ浮いています。
キノコ雲から縄ばしご。
ラットの背中にクローン技術で人間の耳を培養したというニュースがありました。
植物も生き物です。
このDismaland内の作品の、
ネタにした企業への対応がどうなってるのか、気になって仕方ありません。
あのネズミを丸呑み。
保護なのか檻なのか。
3つめの部屋です。
ロンドンとおぼしき都市で暴動が起きた後の様子をジオラマにした作品。
数え切れないほどの青い無感情なパトランプが明滅して、
荒廃した街を照らしています。
バーガーキングで一息入れる警官たち。
巨大なジオラマです。
Banksyが残したストリートアートが、
その価値を知らない清掃員に消されてしまうということが何度かありましたが
それをテーマにしているのでしょうか。
牧歌的な田園風景が都市に駆逐されていく様であるようにも見えます。
こんどはまた別のテント内。
様々な抗議活動をテーマにした展示のようです。
また別のテント。
カップ&ソーサーに指が!
悪夢がテーマのテントだったようです。
~つづく
Dismaland訪問記-4 アトラクション編
園内には乗りものや射的のような遊べるアトラクションも多数あります。
例外なく頭にネズミの耳をつけた無愛想な係員がついていて
ときに無気力に、ときにはアグレッシブな接客を披露してくれます。
メリーゴーラウンドの馬が吊されて、白衣の男の座る段ボールには「ラザニア」。
牛肉100%を謳うラザニアに馬肉が混ぜられていた事件があったそうで、
それをモチーフにしているようです。
おいそこの係員、なんだか楽しそうじゃないか
「金床を落とそう」のコーナー。
金床をピンポン球で落としてゲットしよう!
できるわけありません。
お金を払うと精気のない顔をしたお兄さんが
無表情のまま3つのピンポン球をぞんざいに放ってよこしたり、
ときに客の足元に落として拾わせたりしてくれます。
惜しくも金床ゲットを逃すと、残念賞として
「何の意味もないゴムバンド」と書かれた赤いリストバンドを、
当然投げてよこしたり、あらぬ方向へブン投げてくれます。
弾痕だらけの射的コーナー。
ボートを操縦しようのコーナー。
ボートにすし詰めでやってくる難民か沿岸警備隊か!
さあ君ならどっちを選ぶ?
ボートから落ちて波間に浮かぶ難民の姿も。
あまりにもタイムリー。
パターゴルフのコーナーですが
GOLFのOの文字が破れてUになってました。GULF。壁からはオイルが。
客が途切れて係員さんが座り込んでます。
ラバーダック釣りのコーナー。
重油にまみれて力なく浮いているあひるちゃんを竹竿で釣り上げます。
釣り針の動きに意識を集中していると、
やる気のなさそうな係員のお姉さんがやってきて
釣ろうとしているあひるちゃんを竿でダイナミックに動かしたり、
用もないのに池と客の間を釣り竿を押しのけて通ったり。
万が一釣れてもあひるちゃんを保護することはできず、
なぜか頭上に吊されている紙に印刷されたサーモンの切り身を押しつけられます。
哀れなあひるちゃんは重油の池に放り込まれてしまいます。
なかなか釣れずにモタモタしていると、無表情に釣り竿をふんだくられて終了。
中央のペリカン。あひるちゃんのお母さんでしょうか。
口には空き缶がぎっしり。
アトラクションでは係員がダルそうに対応したり、
横柄な物言いで客を雑にあしらったり、
ボサーっとうつむいたまま突っ立っていたり、
お金を受け取っておつりを渡すのにたっぷり1分ほどもかけたり、
そんな光景があちらこちらで見られるのですが、
来園者のほうもそこはわかってらっしゃるので
そういったこの場所ならではの接客を、誰もが楽しんでいました。
むしろそれがこのDismalandの魅力の大きな一部分だったように思います。
こればっかりは写真には映らない、現地ならではの体験でした。
エントランスゲートの警備員が銃を携えて園内に睨みをきかせています。
こっそり撮影したら…見つかった!
無言で(バン、バン)と撃たれました…
無愛想ですが彼らなりのサービス精神を見せてくれます。
来園者がどんなに笑顔でも釣られて笑ってしまったりはしません。
Dismalandの雰囲気を壊すことなく、この場所をサポートしている彼らは
「本物」に負けないキャスト、立派なプロフェッショナルでした。
~つづく
Dismaland訪問記-3 屋外展示編
日本から遠く9500km、ついにDismalandの地を踏みました。
眼前にそびえる朽ち果てたシンデレラ城、歪んだアリエル(リトル・マーメイド)。
天気が良すぎてあんまり陰鬱な感じはしませんが…
警察の暴徒鎮圧用放水車もいまは朽ち果てて噴水に。
巨大な砂のお城と風車。
案内窓口:24時間休業。
実際は中で無愛想なおねえちゃんがパンフレットを売ってます(5ポンド)。
子供向けローンのコーナー。
webサイトもあります。
子供の目線の高さに合わせたローン返済機が
かわいい声で「ようこそいらっしゃい」と迎えます。
広告の数々。
「劇的に大人っぽく。ニベア加齢クリーム」
「乳歯高価買取。トゥースフェアリー」
顔出し看板のセルフィーコーナー。
ベンチもねじくれてます。
2台のコンボイもねじくれて屹立。大迫力です。
園内は舗装などはされていないので
足元には水たまりがあったりします。
シンデレラ城の裏側はハリボテのトタン張り。
顔を描かない似顔絵描き。
釣りをしに出かけてしまった模様。
カモメにたかられる老婦人。
ベンチのとなりにかわるがわる来園者が座って
ツーショット(あるいはぶすくれた係員とスリーショット)を撮っていました。
朽ちた遊具と壁に張られたメッセージ。
アメリカでも警官が市民を射殺するというニュースが2015年は続きましたね。
ダジャレか。でも好きですこういうの。
いかにもBanksyというイメージ通りの作品。
トイレットロールなベンチ。
子供の滑り台になっていました。
「勝利することは固く禁じられています」
アリエル。
どうやったら立体でこんなふうに作れるんだろうか?
見れば見るほど変な感じ。
強い嵐の日に一回壊れて撤去されたという話でしたが
元通りの姿でした。
ほおづえ突いた係員がやる気なさそうに
ただただツンツンと上げたり下げたりするだけの人形劇。
人形劇をやってます。
飲食の屋台も3つほどありました。
園内は100m四方くらい。
絶えず気だるいスティールギターのトロピカルなBGMが流れていて、
ときおり「ピンポーン、ガゴッ…キィーン!」というハウリングとともに
園内放送が流れます。
この日はとにかく天気が良かったのでトロピカルなBGMもそれなりでしたが、
イギリスらしい曇りや雨の日だと一体どんな感じで響いているのか。
壁の向こうにはブリストル湾が見えます。
園内至る所に小ネタあり。
まだまだつづきます!
Dismaland訪問記-2 入場編
到着したDismaland前の芝生広場にはすでに長蛇の列です。
オンラインで予約した人の列と当日券の列が分かれていますが、
当日券の列はまったく動いていません。
おそらくオープンと同時の11:00からの分はすでに終了したのか、
あるいはこの日9月25日の夜間に園内で行われる特別ライブを
なんとか当日券で見ようと夜まで並ぶ列だったのかもしれません。
オンラインチケット組の長い長い列。
すでに開園時間を過ぎ、列は動いているのですが
先がどこまで続くのか分かりません。
なんか魂が抜けちゃってる人がいますね…
シルバーウィークは終わっているので日本人はほとんど見かけませんでした。
アートに敏感な若者ばかりという感じでもなく、
わりと老若男女、子供連れやおじいちゃんおばあちゃんもいました。
ぼくの滞在中はロンドンは非常に天気が良く、
この日のウェストン=スーパー=メアも快晴。
海に面した会場は風が強く寒いのではと思っていましたが、
日が照りつけてカットソー1枚で充分な気候でした。
webの記事で見かけた蛍光色ベストの係員さんがぱらぱらと見え始め、
いよいよゲートが近づいてきます。
もともとここはトロピカーナという屋外プールの跡地らしく、
地元の出身だといわれるBanksyが
廃れてしまったかつての行楽地であるウェストン=スーパー=メアを
こうやってもう一度にぎやかにしようという意図も
このDismalandというプロジェクトのひとつの目的と言われています。
出ましたハリボテセキュリティ!
ゲートも監視カメラもすべてが雑なダンボール製です。
壁には大きな銃も掛かっています(当然ダンボール製です)
数人にひとりがガードにつかまって
なにか因縁をつけられていました。
僕もこのお兄ちゃんにガッチリ眼をにらみつけられましたが
「…go.」とひと言、無事通してもらいました。
そのあといよいよ園内に入ろうというところで
リーフレットを係員のガタイのでかい長髪お兄さんに投げつけられ
地面から拾い上げる洗礼を受けました…
そしてついに!
~つづく
Dismaland訪問記-1 往路編
2015年8月、イギリスで突如開催がアナウンスされた
Banksyによるテーマパーク(風アートイベント)、Dismalandへ行ってきました。
9月27日までのわずか5週間ほどの会期だったDismaland。
日本語での訪問記は数えるほどのようなので
せっかくだから私の記録を残しておこうと思います。
Dismalandへ行きたいがために急遽飛行機の切符を手配し、
ロンドンに到着して3日目の2015年9月25日。
日本の自宅からオンラインでチケットを正規に購入することのできなかった私は、
ebay.co.ukを利用してこの日のチケットを入手しました。
イギリスのオンラインチケットは、
写真のようなファイルがメールで送られてきて
自分で印刷して持って行くというシステムになっているようです。
チケットにはイスラム系の名前が記されていましたが、
「Dismalandのセキュリティがダンボール製のハリボテだってのは知ってるだろ?」
という相手の言葉を信じることにしました。
Dismalandは5ポンドのオンラインチケットだけでなく
3ポンドの当日券もあるのだけど
当日券も連日長蛇の列ということらしく、
後述する現地への交通手段の時間的・金銭的コスト、
限られた滞在時間とを天秤にかけて
「ぶっつけ本番で行ってみてダメだったらイヤ」
という結論を経ての選択です。
ちなみに訪問時1ポンド=180~190円。
しかし現地では1ポンド=1ドルくらいの感覚で物を売っているので、
何をするにも物価が日本の倍くらいに感じます。
フィッシュ&チップスが10ポンドなら2000円近いわけです。
Dismalandはロンドンから西へ200km、
ウェストン=スーパー=メアで開催されました。
ロンドンから電車を乗り継いで、早くても2時間強。
イギリスの鉄道はラッシュを避けた時間で予約すると割引になったり、
往復で予約すると復路はタダ同然の値段になるなど
日本にはない独自のルールがあり、今回ウェストン=スーパー=メアまで行く場合
ラッシュの時間帯で予約すると往復200ポンド(3.6万円!)
→ラッシュアワーを避けると86ポンドまで費用を圧縮できます。
つまり朝イチで(ロンドン午前4時出発とか)でDismalandの当日券を取ろうとすると
チケット代は安くなるけどそれ以上に往復交通費がかさみそうだったんですね。
というわけでラッシュを避けるオフピーク割引で一番早い便だと、
ロンドン・パディントン駅を8:45発、ウェストン=スーパー=メア到着は
Dismaland開園と同時刻の11:00という行程になりました。
これだと当日券狙いはきびしいですね。
車体がやたらデコボコして凄みのあるGreat Western Railwaysの特急に乗り込んで
ロンドンを離れます。
ロンドン・パディントン駅。歴史を感じさせる広々とした構内に旅情が刺激されます。
指定席はこんなふうになっていて
「ここの席はリザーブされてるから切符のないヤツは座るなよ」というのが一目瞭然。
コッツウォルズの田園風景を走り抜けていきます。
Chemical BrothersのStar Guitarが思わず脳内で再生されます。
特急から乗り換え。
イギリスでは自転車を鉄道に持ち込んで利用する人が珍しくないようです。
車内には自転車を置くことのできるスペースが取ってあります。
ウェストン=スーパー=メアに定刻で到着しました。
いなか町ですがDismaland目的の利用客がたくさん降りていきます。
道路にはステンシルでいかにもな経路が示されていました。
気分がいやがうえにも高まります。
いよいよ見えてきました!
~つづく