物語を書きたくて
小説というとおこがましいが、物語を書き始めたのは約四年前だっただろうか。当時は、ただ頭の中で物語を想像しているだけだった。
ある日、友人が作家を目指していることを知る。そして、話を考えるのが好きなら一度くらい小説を書いてみてはどうか、と言われたことが始まりだった。
本は読むものだと思っていた自分にとって、それは未知なことではあったが、興味もあったので挑戦してみることにした。
今でも大いに悩みながら書いてはいるが、その比ではないくらい手探り状態だった。だけど、それが楽しかったのだ。思い浮かぶ物語を書きながら、溢れてくるイメージや気づけば勝手に動き回る登場人物。書く楽しさの一端に触れることができたのだ。
しかし、書いていくうちに自分には文才がないということにも気づいていく。書かない時期も多くあった。
初めて一つの作品と呼べるものを書き終えたのは、書き始めてから一年は経過していた。得も言われぬ感動がそこにはあった。
やりきったという思いも強くあり、それからはしばらく書くことはなかった。その間も物語は頭の中に綴られていった。
ここ最近になって、再び物語を書きたくなった。やはり、何かを書くこと、伝えることは楽しい。今は書きたくて、記したくてたまらない。
たとえ、文才がなかったとしても。
学園もの(仮) 4
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高校に向かうため最寄駅まで歩く。本来なら自転車に乗っていくところだが、今回はそうはいかない。対して母親は自転車に乗っているので、重たい荷物は任せることにした。自転車だと十分とかからない道を、二十分かけて歩いていく。革靴の履きなれない感触を確かめながら見慣れた街並みを歩いていく。どうしてだろうか。このありふれた風景をよく見ておきたかったのだ。いつもよりゆっくりとした足取りで進んでいく。
しばらくすると駅に到着する。目的地までの切符を購入し、ホームで電車を待つ。数分と待たずして電車がやってきたので、そのまま乗り込んだ。車窓から見える光景は、まだ馴染みのあるものだ。親しみのある電車、車内の雰囲気を感じながら、十五分ほど揺られていると路線の終着駅に着く。ここから電車を乗り換えて、約一時間したところに目的となる駅がある。
路線は無事に乗り換えることができた。もう見知った電車、風景はなくなっていた。電車は自分の気持ちなどお構いなしに、一直線に走っていく。車窓から見える景色は、都会的なビル群が徐々に減っていき、畑などが目立つようになっていった。それが気持ちをより沈めさせていく。
目当ての駅は開発が進んでいて、活気に溢れていた。だが、ここから更にバスで三十分かかることを知っていた身としては、そんなものはどうでも良かった。
バスに乗車すると、同じ制服を着た学生の姿があり、行先には間違いがないことがわかった。と、同時に間違っていて欲しかった気持ちもあった。直通の臨時バスのため、そんなことがないのはわかりきっていたとしてもだ。
バスが動き出してすぐに有名なお城が目に映った。これには胸が高鳴ったが、そのあとの田舎道や山道を通っているころにはすっかりと冷めてしまっていた。
山道を進んでいると、大きな二つの柱が顔を覗かせた。これから通う高校の門である。嫌だ嫌だと思っていた場所に、とうとう来てしまったのだ。
バスは無情にも門をくぐり、坂道を登っていく。道の両脇には、新入生を歓迎するかのように桜が咲き誇っていた。人並みの感情があれば、見事な桜並木だ、とでも思ったことだろう。だが、今の自分にはそのように思えなかった。
朝から雨が降りしきっていた。ここまでの道のりの全てが灰色に見えていたのもそのためだろうか。鬱々とした気持ちと空模様が相まって、桜でさえもこの気持ちを晴らすことなく、ただセピア色に色あせていた。
悪天候の入学式がまもなく始まる。
学園もの(仮) 3
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憂鬱な気分で起きる気力もなかったが、親に言われて仕方なく起きる。嫌な気持ちが身支度する足取りを重くさせていた。
先日に済ませておいた準備に不備がないか確認し、用意してもらった朝食を食べる。沈んだ顔をして黙々と食べる自分を前に、母親は心配して見ていただろう。親にとってもこれからのことは不安だったと思う。
朝ご飯を食べ終えたあと、着慣れない制服に身を通す。これを着るのは受け取ったとき以来、二度目である。すぐに成長するからと大きめに作られた制服は、まだまだ身の丈に合ってはいない。制服に着られている感じが傍からでも見て取れるだろう。鏡でその姿を確認すると、自分の気分とは裏腹に初々しい高校生そのものとして映っていた。それを目にしたとき、嬉しいという感情が少しだけ、ほんのわずかだけ胸の奥に去来した。高校生になれたという気持ちは決して嫌ではなかったということだろう。
時間も差し迫ってきたので、忘れ物がないか再度確認する。母親もあれは持ったか、これはいらないのか、とせわしなく聞いてくる。苛立たしくもありがたい存在である。
準備に余念はない。そろそろ出立の時間であった。家族に挨拶を済ませ、重い荷物を携え、外靴に履き替えた。母親は入学式に参加するため、一緒に行くことになっている。
一歩外に出る。高校生として初めて外を歩く。悪くはないという気分と嫌だと思う感情が複雑に絡み合って、得も言われぬ。そういった心境であった。
これが高校に向けて家を発ったときの心境であった。
学園もの(仮) 2
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入学式当日の朝。時に狂いなく目覚まし時計が鳴り響き、暗闇に深く沈んでいた意識が引っ張り上げられる。入学式が楽しみで嬉しくて眠れなかった、ということもなく熟睡。今日から高校生だ、などというわくわくした気持ちすら湧いてこない。これからのことを思うと身体を起こすのも億劫だった。正直なところ、寝過ごしでもしたかったところである。
これから通う高校は家から離れている。自転車で通学できる距離でもない。そもそも地元ですらないのだ。ならばバスや電車による通学かというと、そういうわけでもない。いや、電車とバスを使用して高校には行くが、通う手段ではない。これが正確な表現だろう。自分と同じように遠方からの生徒もいるため、入学式としては少し遅いが、昼頃に行われる予定となっている。
当日を迎えた以上、じたばたしたところで事態が変わることはない。だからといって、そうすぐに理解することもできない。今日からのことを考えれば考えるほど、気持ちがより陰っていく。布団に横になりながら悶々としているうちに、徐々に意識が遠のいていこうとしていた。つまり、二度寝をしようとしたのだ。それならそれで構わない。そのほうが気楽でいい、と判断を下して睡魔に身をゆだねた。が、すぐに意識をすくいあげられてしまった。母親が時間になっても起きてこないことを心配して、起こしに来たのだった。
親にたたき起こされてしまっては、嫌々でも身体を起こさざるをえない。母親には、心底嫌そうに見えたことだろう。それもそうだ。心の底から嫌気がさしているのだから。
これが華々しい高校生活を迎えた朝の心境であった。
学園もの(仮) 1
春。まだ少し肌寒くも暖かな陽射しがそれの到来を告げる。ふんわりと流れていく風の中には、鼻孔をくすぐる芽吹いた草木の優しい香りが漂う。
春は出会いと別れの季節と言われているように、それぞれの人生で少なからず転機が訪れる。学生でいうと進学や進級があり、卒業がある。新たな人たちとの出会いがある一方で、親しい人との別れがある。そんな季節。それぞれの人生にとって、一歩前に進んでいく、そんな時季。
否応なく巡ってくるこの時を前に、ある人はやる気に満ち、夢を携え、希望を灯す。またある人は後悔し、絶望し、悲嘆に暮れる。この季節はすべての始まりでもあり、終わりでもある。誰しもがそれを知りながら、それぞれの人生を歩んでいく。
一歩外に足を踏み出すと、慣れない制服姿で初々しく学校に向かう学生や、スーツに着られる若者が目に入ってくる。その表情には、これからの生活に期待しかしていない者。不安を多く感じている者。期待と不安が半々に入り混じっている者など、様々である。だが、これからの日常を思えば、皆少なからず胸躍っていることだろう。
これから出会う友人のことを思う。まだ見ぬ恋人に思いを寄せる。新しい学校生活に思いを馳せる。進学できたことに思いを巡らせる。そう、想うのだ。これまでのこと、そして、これからのことを。
かく言う自分も、今日から高校生である。不安しか見えぬ先のことを想いながら……
書きたかったことを少しづつ
皆さん、初めまして。
秋篠目です。
日頃から面白いと思った物語を頭の中で想像しては、形にするまえに別のことに気をとられる性格。
そこをなんとかして打破したいと考えたのが、このブログである。
もともとブログに興味があったこともあり、この場で書くことに慣れていきたいと思います。
当分の間は、『書くこと』を習慣づける。これを目的にしていきたい。
そのうえで、書きたいと思っていたことを少しづつでも書いていきたい。
誤字・脱字などがないように気をつけていきますが、見落としや要領を得ない箇所もあるかと思います。ご指摘などがあれば遠慮なく。
よろしくお願い致します。