WAKU JEWELRY Blog

和久譲治のジュエリーブログ

 

2024-01-08 WAKUコレクション(22)18世紀後半 ロッククオーツカット石のブローチ

 

 

18世紀後半、マリー・アントワネットが処刑され、ナポレオンの登場へと続くフランスの混乱期、イギリスは産業革命を推し進め、新興富裕層が生まれていました。彼らの要求を満たすための新しいジュエリーが作られ始めます。17世紀のバロック様式から続くジュエリーの石留テクニックは、そのテクニックの中で表現方法を探り、18世紀末から19世紀初頭にかけての「Open setting」や「Pave setting」の準備段階に入ります。この時期の特徴をいくつも持ったジュエリーです。

 

(1)ロッククオーツ、シルバー、ゴールド ブローチ

 

 

(2)Hammered cloissone settingとCutdownを伴ったCisele setting

 

(3)Hammered cloissone setting

写真(2)と(3)を見比べてください。石と石の間のシルバーを鏨で上から叩き潰して石を固定しています。18世紀末までのジュエリーでは、穴の後ろは閉じているため(Closed setting)、水や空気に出来るだけ触れないために、石の周りを叩いて石に被せ密閉したのです。その後爪のように見える最小限の金属を残して、彫り鏨(Graver)で上からそぎ落とします。(Cutdownを伴ったCisele setting) 写真(2)では、中央左の大きな石だけがCutdownを伴ったCisele settingをしています。花びらの輪郭は被せたままになっています。そのため見かけは次の時代に行われる「Pave setting」に似てきています。この頃、宝石のCutは進歩して、石座(この頃は石を埋める穴)の底を開ける(Open setting)ことが始まりかけてきます。このジュエリーは「Open setting」や「Pave setting」の始まる少し前のものになります。

(3lOld English Star Cut

使われているロッククオーツのCuttingは「Old English Star Cut」で、18世紀を通して進歩したCuttingです。小さな石は、古い「Old EnglishSquare cut」も使用されていて、その歴史が見られます。

 

(4)ゴールド板材の裏張り

後ろに金合金の薄板を貼るのもこのころの特徴です。白い金属としてはSilverしかない時代です。白い宝石にはSilverが使われたのです。そこで、変色から衣服を守るためにGoldを裏に張りました。

このまま続く   「Pave setting」とこの石留の違いも描きたくなりました。 

 

(5)フック式金具


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