翡翠輝子の招福日記

フリーランスで女性誌の原稿書き(主に東洋占術と開運記事)を担当し、リタイア生活へ移行中。2023年8月下旬からスペイン巡礼へ。ウラナイ8で活動しています。日本文芸社より『基礎からわかる易の完全独習』刊行。

やすらぎの里の"Life Goes On"

伊豆高原のやすらぎの里、今回の滞在は普通食コースなのに、うっすらとした空腹が続き、何か一口食べたい状態が続いていますが、それほど大変ではありません。今回、断食コースは活動的な人が多く、こちらのほうが断食しているみたいな逆転現象が起きています。

ネットに強い杏子さんがあれこれ準備してくれ、ゆみこさんの遠隔地協力もあり、ウラナイ8の易の配信ができました。滞在先からこんなことができるなんて夢みたいです。

あとは温泉に入って部屋でのんびりしています。断食の人は長湯厳禁なので露天風呂はほぼ貸し切り状態です。温泉から出たら、洗面器に入れた冷水にひたしたタオルを全身に当てて水風呂代わりにして、外気浴。流れる水や風に揺れる木の葉を見ながら温泉瞑想を楽しんでいるのでヨガと瞑想のクラスには出る必要がありません。散歩やマッサージ、各種講座もあるので時間を持て余すことはありません。

 

やすらぎの里に来るたびに、大沢先生ほど楽しみながら仕事をしている人はいないと感じます。朝の散歩ではマイクロバスで移動して景色のいいところやトレイルウォーキングに連れて行ってもらえます。運転するのは大沢先生。やすらぎの里はもう20年以上続けている施設なので、管理に回ってもおかしくないのに、伊豆高原のすばらしさを語り、滞在客をもてなすのがうれしくてたまらないようです。

文章を書くのが好きでライターになったのに、思い出すのは苦しいことばかり。これからはなるべく楽しいと思うことを積み重ねていきたいものです。もちろん大沢先生にしても、一からここまでの施設とシステムを作り上げるのは苦労の連続でした。

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何よりびっくりするのが大沢先生が全然変わっていないところ。最初にお会いしたのは20年ほど前です。断食施設をやっている以上、太るわけにはいかないのでしょうがスリムな体型をキープ。年齢を重ねると、ある程度ふっくらしたほうが老けないと言われますが、先生は見た目も変わっていません。

 

むしろ、看板犬の海ちゃんと再会して時の流れを感じました。たしかに犬は人より年を取るスピードが速い。

人間だったら70代。相棒だった宙くんはこの世を去り、見習いとしてトイプードルの風太くんがやって来ました。

 

朝の散歩で連れていってもらった、さくらの里。富士山も見えました。約40種類の桜が植えられているので、ソメイヨシノが散っても八重桜が満開です。朝の散歩は7時出発なので、ほぼ貸し切り状態で桜を満喫しました。

 

いつ会っても変わらない大沢先生にしても、永遠にやすらぎの里を運営するわけではないでしょう。桜の木だって寿命があります。そうした無常を感じながら、人生は続いていきます。

 

BTSの"Life Goes On"。ロケ地はどこなんでしょうか。伊豆高原に来て、緑豊かな環境に身を置くだけで心身がほぐれていくことを感じてました。


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伊豆高原のやすらぎの里で選択から解放される

ウラナイ8の夏瀬杏子さんと伊豆高原のやすらぎの里に来ています。

前回は2年前。高原館で3泊4日の断食コースです。

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断食はつらかったので今回は本館の6泊7日、普通食コースです。一日二食(午前10時と午後6時)で一食が500キロカロリー、糖質60グラム。ご飯に漬物、味噌汁、おかずは魚か豆製品、野菜です。

初日の夕食。

果物とコーヒーの朝食で自宅を出て、ランチを抜いていたので物足りません。しかし、来ている人のほとんどは断食コースで初日の夕食は具なしの味噌汁。食堂の隅で普通食をいただいているのが申し訳なく感じられました。禁酒禁煙なので、私の場合はアルコールを断つことの意味が大きいのです。

 

翌日の朝食。

一人だと時間を持て余しそうなので、同行者の杏子さんは貴重な存在。気心の知れた人とまた来たいけれど、真っ当な人は1週間の休みを取るのもむずかしいでしょう。あるいは「せっかくの長期休暇なら、観光スポットを巡っておいしいものをたくさん食べたい」という人には、やすらぎの里は向きません。

 

数えてみるとやすらぎの里の利用は今回で6回目。リピーターを名乗ってもいいでしょう。通常の旅行と違って楽なのは「どこに行こう」「何を食べよう」など選択しなくてすむこと。6泊ずっと同じ部屋にいるので、移動する必要はありません。時間になって食堂に行けば観光的な食事が提供され、飲み物はお茶。ヨガや講座のプログラムがありますが、自由参加なので今回はパス。適当に温泉に入ってのんびり過ごそうと思います。

 

選択することが少ないとこんなに楽なのかと思います。

宗教施設に出家した人が「修行がきびしくて大変でしょうと言われますが、次にすることがすべて決められている生活はとても楽です」と話していたのを思い出しました。世俗の欲が強くてとても出家できませんが、たまにはこんなところに来て、選択から解放された生活を味わってみるのも生き方を見直すきっかけとなります。普通食でも1日1000カロリーだと胃腸を休めることができ、体もほっそりしてきます。

 

服はたくさん持っているのに今日着て行くる服がないとか、献立作りが苦痛でしかたがないという人は、選択肢を絞り込んでおくと楽になるかも。紬木麻子『ランチのアッコちゃん』に登場する有能な女性上司は、月曜日はカレー、火曜日はラップサンドとスムージー、水曜日は天丼といったぐあいに1週間のランチメニューを決めていました。ビジネス上でむずかしい判断を下すことが多いから、ランチは何も考えることなく自分好みのおいしいものをローテーションにしたいと考えたのでしょう。

 

完全にリタイアして、体力の衰えから旅にも出かけられなくなったら、暇な時間を持て余すのではないかと今から恐れていますが、曜日ごとにテーマとやることを決めておけば、日々をやり過ごしていけるのではないかと想像しています。

一家に一冊『鬱の本』

お花見に近所の公園に行ったら、入学式帰りの新一年生たちにたくさん会いました。ぴかぴかのランドセルを背負って、どの子もうれしそう。

若い人たちにとって春は始まりの季節ですが、人生のゴールが視界に入って来ると「あと何回、お花見ができるだろうか」と考えてしまいます。この季節は寒暖差も激しく、体調を崩して精神的にも不安定になりがちです。

 

とはいえ、毎日好きなように暮らしている私は友人から「同年代であなたほど楽しそうに暮らしている人はいない」と言われます。親を見送って介護は卒業、子供がいないから気を揉むこともありません。お金と健康の不安もなく、行きたいと思ったら気軽に旅に出る日々です。こんなに気楽でいいのだろうかと世間に申し訳なく思いますが、実家は鬱の家系なので私も発病する可能性があります。何しろ世俗的な欲が強く鬱とはまったく無縁そうな近親者が自殺未遂までしているのです。

 

そこで点滅社の『鬱の本』を手に取ってみました。詩人、文筆家、漫画家、編集者、書店やカフェのオーナーなど84人がさまざまな「鬱」について語っています。この本、薬のように一家に一冊、常備しておくといいかも。

あいうえお順で並んでいて、しょっぱなに出てくるのが青木真兵『鬱ベースの社会に』。

「テクノロジーの発展により身体という面倒くさいものを排除して脳だけを使うようになった現代社会に対するアラームが鬱。だから、人間は鬱をベースに社会を構築するべきだ」という流れに深く共感しました。命がけで狩りや漁に出たり、額に汗して畑を耕して作物を収穫していた時代には、鬱になる暇なんてなかったでしょうから。

 

最高だったのが瀧波ユカリ『Life Goes On』。

適応障害で朝から晩まで心配ごとが頭の中をぐるぐる回り、少ししか食べられずなかなか寝付けない日々。ようやく元気だった頃の7割くらいまで調子が戻ってきたところで友人たちが次々とBTSにハマり、話についていくためにメンバーの顔と名前を覚えることにしたそうです。

7人それぞれに呼称が複数あって難易度が高い。プロフィールなども読み込んで、ふと気付くと3時間経っていた。それだけの時間、心配ごとが頭に浮かばなかったのは久ぶりだった。

わかる! 私も最初はメンバーを見分けることができず、さんざん検索して時間を溶かしました。「いい年をして何やってるのか」と恥ずかしく思う反面、あんなに楽しい時間はありませんでした。

 翌日はYouTubeで動画を見ることにした。鍛錬によって磨き上げられた、完璧なルックスと歌とダンス。顔と名前と声と動きを一致させるべく必死に見ていたら、また3時間経っていた。頭がすっきりして、気分がいい。人間はずっと「美」を見つめていると体調がよくなるらしい。

 1日3時間のBTS研究を始めて1週間。なんと、なかなか戻らなかった残りの3割が戻ってしまった。ごはんがすいすい食べられ、目を閉じると眠れる。私には自分を忘れる時間が必要だったのだ。不安なことやつらいことを忘れて、美しい何かに夢中になれる時間が。

 

昨年の韓国旅行はBTS聖地巡りでとても楽しいものとなりました。釜山での一番の思い出はジミンが中学時代に通った食堂。タクシーの運転手さんが一生懸命調べてくれて、迷路のような商店街で目当ての店までたどりつけました。

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ソウルではBTSの寮だった場所がカフェになっていて、おいしいパンとコーヒーを楽しみました。

 

BTSのファンになったきっかけは、スポーツクラブのダンスレッスン。「踊るために許可はいらない」というフレーズに励まされて、老婆になっても体が動くうちは踊り続けようと決意したのです。


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ソウル、東京、台北、あるいはカミーノ

台湾の地震。我が家にホームステイしたフィンランド人のヘンリク君が台北で働いていますし、スペインの巡礼で知り合った台湾人の友人もいます。

そして、韓国人のスンニ。オリソンの山小屋で出会って、3日連続で同じ宿に泊まりすっかり仲良くなりました。

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先週、スンニから「台湾にいる」と連絡がありました。結婚式の準備のためだそうです。

スンニはカミーノを歩くのが二回目だったのでゆっくりしたペースで進み、アストロガの巡礼宿でボランティアをしつつしばらく滞在していました。そのときに知り合った台湾人の男性と結婚の運びとなりました。

スンニは仕事を休みカミーノを歩いていました。お母さんはフランスに留学し、お姉さんは日本留学の経験があると聞き、裕福な家のお嬢さんなんだろうなと思いました。60代の私は仕事をほぼリタイアして気ままな巡礼でしたが、30代で独身のスンニはこれからの人生行路を探しながらの巡礼だったのでしょう。儒教精神が日本より強い韓国では、女性が独身のままではかなり生きづらいのかもしれません。

国際結婚ですから、むずかしいことも多いでしょうが、カミーノを歩き同じ場所でボランティアをしていたとなれば価値観が重なる部分が大きいのでは。

 

スンニと一緒に歩いたロンセンバージェスからブルゲーテへの道。

 

スペインの巡礼に行けば人生が変わるかと期待したのですが、帰国後もあいかわらず怠惰で意志薄弱な日々を送っています。それでも「この世は生きる価値がある」という肯定感は、巡礼の大きな成果。国や年齢が異なる人たちと出会って温かい交流ができた日々を思い出すたびに満ち足りた気持ちになります。

 

スンニとはソウルか東京で再会しようと約束しましたが、台北になるかも。新婚旅行で5月にカミーノを再び歩くそうですが、私は6月に行くので残念ながら合流できません。何度も巡礼路を歩くカミーノフリークが何人もいましたから、再びスペインで会うかもしれません。

「いつか会おう」と約束しても、世の中は何が起こるかわかりません。台湾の地震を知り、会いたい人には機会を作って会っておくべきだと改めて感じました。

沖縄酔いどれ紀行

昨年のスペイン巡礼で一番避けたかったのは、ワインの飲み過ぎ。

巡礼で歩いたリオハ州はワインの名産地で、地元のワイナリーが巡礼者のために無料でワインを提供しています。石造りの壁に蛇口があり、ひねると赤ワインが出ます。巡礼メニューには赤ワインがついてくるし、スペイン人は昼から飲む人もたくさにます。

 

結局、それほど羽目を外すことなくほどほどに飲んで歩き続けることができましたが、これは毎日新しい刺激があって楽しかったから。日本に帰国すると元の木阿弥に。

つまらないから飲むのです。そして、今日一日、立派なことが何もできなかったという苦い思い。憂さ晴らしに一杯飲むと「また飲んでしまった」と自分を恥じてまた飲むという『星の王子様』に出てくる酔っ払い状態になってしまいます。

 

しょっちゅう旅に出ているのは、旅先では毎日が刺激に満ちていて飲まずに済むから。しかし、夜に外食するとアルコールを頼まないとお店に悪いと思い、地酒などを楽しみます。

 

先日、沖縄旅行で泊まったオリオンホテル。昨年改装したばかりのすばらしいホテルなのですが、ビール会社が経営しているだけあって、一階はティールームではなくビアダイニング。ウエルカムドリンクでビールが選べます。しかも部屋の冷蔵庫に入っているニールも無料。とてもいいホテルですが、アルコールに流されがちな私には罪な場所でした。

 

ホテルでいい加減飲んでるのに、近くのバーへ。沖縄と南米を融合した「エルレキオ」。

大航海時代、沖縄に来たスペイン人とポルトガル人が琉球を「レキオ」と呼んでいたそうです。ガルシア=マルケスにあこがれコロンビアに行くことを夢見ている私はぜひ行っておきたいバーです。

 

人気店なので午後7時の開店直後にお邪魔しました。カウンターには関西出身だという若い女性のバーメイド。お客さんが少ない時間帯だったので話が弾みました。


大谷翔平の事件で依存症の怖さが知れ渡りました。やめたいと願っているのにやめられないのが依存症の恐ろしさです。

 

バーレキオでは2杯目はノンアルコールのカクテルにしました。

NHKのラジオビジネス英語の舞台はロンドンに本社があるワイン商社。イギリスのパブでノンアルコールのドリンクを飲む人が目立つという表現がありました。

It seems to me that almost half of them are drinking non-alcoholic drinks.

 

そして、ある調査によるとパブの客の3分の1近くが、まったくアルコールを飲まないそうです。

According to one survey, nearly a third of pub-goers in the UK are now completely alcohol-free.

 

世界の潮流は「ソバーキュリアス」。英語のsober(しらふ)とcurious(好奇心)を組み合わせた造語で、ビジネス英語でも取り上げられていました。アルコールだけが唯一の依存先だと深みにはまるので、旅行やダンス、読書、ドラマなど依存先を複数にしてなんとかこの一生を逃げ切りたいものです。

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