寝過ぎると頭痛くなるぞ

本の感想や日常のことばかり

ふがない僕と蝶々

私は子供が好きだ。自分で育てられる自信は無いから上司や同僚の子供の話を聞いて心がぴょんぴょんするのと、街中で子供を見て内心ニヤニヤするくらいなのだけれど。ニヤニヤって書くと変質者みたいだな……。
なにはともあれ、子供が好きで、子供は社会の宝だと思ってる。だからスーパーなんかで金切り声で叱る親を見ると「ちょっと落ち着けよ」と親にげんなりする。この前は歩道の花壇にしゃがむ子供の背中に蹴りを入れていた母親を見た。エスカレートしそうだったら警察を呼ぼうかと思ったけど、迎えと思われる車が来たのでやめた。あの子は大丈夫だろうか。

さて。今回はこの二つの本を読んだ。


f:id:bunbunkokubun:20150503113239j:image

f:id:bunbunkokubun:20150503113227j:image

あれ。写真が逆になってしまった。「蝶々の心臓」は見切れてるし……(笑)
一緒に写ってるチーズケーキは近所のカフェのチーズケーキ。個人的に世界で一番美味しいチーズケーキだ。ただ、高いから一家月に一回食べれればいい方なのだが。

先に窪美澄さんの「ふがいない僕は空を見た」を読んだ。ファンの間では「ふがない」と略されている(らしい)。
元々、文庫版になる前にan・anのセックス特集で紹介された時に気になってハードカバーで読了済みなのだが、すっかり窪美澄ファンになってしまって、それ以来新刊を楽しみにしてる作家さんだ。「ふがない」も何回も読み返している。映画も見た。映画は主人公・斉藤くんの彼女・七菜ちゃんのターン「2035年のオーガズム」がほぼカットされていて肩を落としたが、それでも見ごたえのある映画だった。親の前で見るにはちょっと躊躇うけど。

「ふがない」は、高校生の主人公の斉藤くんがコミケで知り合った人妻・あんずとセフレになり、やがて斉藤くんがあんずにセフレ以上の感情を抱いてしまう連作短編集。これだけ聞くと物凄く安直な話に聞こえるし、冒頭の、斉藤くんとあんずの関係を描いた「ミクマリ」だけを読むと、あからさまなセックスシーンに引いてしまう。

けれど、読みすすめると子供の命について考えてしまう不思議な話という印象を抱く。単に「女性のためのR-18文学賞」を受賞した作品ではないな、と気づく。
冒頭の「ミクマリ」は、斉藤くんがあんずにセフレ以上の感情を抱き、「世界ヲ覆フ蜘蛛ノ糸」は姑から不妊治療を勧められ、断りきれずに病院へ通うあんずのモヤモヤとした感情が丁寧に書いてある。
「2035年のオーガズム」は、斉藤くんの彼女・七菜ちゃんの性の目覚め。「セイタカアワダチソウの空」は、痴呆の祖母との生活に苦しむ斉藤くんの友達・セイタカの成長。そして、最後の章「花粉・受粉」は助産師である斉藤くんの母親が子供の運命について考える話になっている。みんなが、どうしようもない・ふがいない感情を抱え、それでも生きていく・生きていくしかない話だ。ふがいない感情をどうやって抱えて生きていくか、という答えは作中にないし、はっきり言って救いようがない話なのだが、それでも読了後は満たされた気持になる。あれだ。女友達に相談したものの、明確な答えは出ないけど喋ったらすっきりした時の妙な清々しさに似てる。話を聞いてもらって、聞いてもらったことで自分な存在が肯定された時の状況に似ている。「こういう時はこうする!!」という押しつけもない。けど、心がなぜかストンと収まる不思議な話。

読んでいて印象に残ったのは斉藤くんのお母さんの章のこの一文。自分が取り出した赤ん坊が死んでしまった時の悲しみや葛藤について、かかりつけの漢方医に話すシーンだ。漢方医は「それはその子の寿命」と割り切るが、斉藤くんのお母さんは納得しない。

“あの子たちはほんの短い日数で自分の人生を全うしたのだと。でも、もし本当に寿命や運命だとして、なんだって子どもたちは、そんなに短い人生を過ごすために、この世に生まれてくるのか、その意味を私にもわかるように教えてほしかった。(中略)誰でもいいから、あぁ、あの子たちの短い人生にはそういう意味があったんですか、と私を納得させてほしかった。”

これ、人生における苦難や困難にも当てはまる気がする。どうして自分はこんなに今つらいんだ。なんでこんな目に遭わなきゃならないんだ。そういう状況に陥った理由を自分で見つけるのは困難で、誰かにこうだ、と言われても納得できない。そういうふがいない感情を抱いて生きていくしかないのだ。ただ、それを悲観的に思い過ぎるな。この小説は、それを生と性、子供の命と死を主軸に優しく語りかけている気がする。

で、そこから話は子供がジャンプするように高く飛んで、次に読んだ「蝶々の心臓」の話をします(笑)

「蝶々の心臓」は、生まれつき心臓に疾患のある娘を撮り続けた格闘家の写真集。読むに至ったきっかけというのが、先に出てきた窪美澄さんの小説「水やりはいつも深夜だけど」の表紙に、この写真集の写真が使われたからだ。

f:id:bunbunkokubun:20150503181440j:plain


これです。この写真に心臓ズキューんとやられました(笑)ちょっと寂しげだけど可愛い、可愛いけどちょっと寂しそう。そんな彼女の表情にズキューんときた。このブログのアイコンにするくらい好き。
購入するまではこの写真の女の子が心臓を患ってるなんて知らなくて、本が届くまでの間にググって調べて知った次第なのだが、読んでる最中はこの子のパパである石川祐樹さんの本文での語り口が優しくて、それだけで泣きそうになった(本自体はブログ本なんですが、写真のクオリティが高いので写真集みたいです)。

あとがきでこんな一文があった。

“真優のような病気で生まれてくる確率を調べたら、数万分の1くらいなんですよね。(中略)悪いこともしていないのに、僕も妻も、タバコもお酒も一切やらないのに。タバコをバンバン吸いまくって、お酒をガンガン飲みまくっている両親からも、健康な子供が生まれているのに何故だろう、って思っていたこともあります。”

この一文、「ふがない」に通じるモノがあるかなと。斉藤くんのお母さんが抱く子供の命についての葛藤と、石川さんが抱く感情が繋がっている気がして、胸が痛くなりました。と言っても、後の文で石川さんはそういうことは乗り越えたと語っている。たまたまルーレットが僕に当たったと。

話はまた「ふがない」に戻る。

斉藤くんが主役の「ミクマリ」では、あんずとの関係に恋心から終止符を打てずにいる斉藤くんが、産まれたばかりの男の赤ちゃんに心の中で「おまえ、やっかいなものをつけてきたね」と語りかける。

斉藤くんの友達、セイタカが主役の「セイタカアワダチソウの空」に出てくる元塾講師の田岡は、自分の変態的な性癖について「そんな趣味、俺が望んだわけじゃないのに、勝手にオプションつけるよな神様って」と嘆く。

みんなそれぞれ、自分の中のふがいなさを抱え、それでも生きていくしかないのだと思い知らされる。
方や小説、方はフィクションだが、読み手の心に語りかけて、そして心が反応する本には久しく出会ってなかった。この二冊に出会えて本当に良かった。どうにもならない感情を抱きながら生きていくのを、自分の存在を肯定された気がした。

別に今、悲惨な状況でもないのだが、例えば過去の苦い思い出さえも肯定してくれるような、生まれて今を生きることを祝福してくれるようなそんな本だった。

猛烈に本を買いたくなるとき

無性に本を山ほど買いたくなる時があるんだけど、結局本屋に行っても三冊くらいしか買えなくて、でもレジに持って行ったら軽く5000円超えてて「たった三冊で5000円か……」って驚く時がある(結局買うけど)。

◎昨日買った本◎
f:id:bunbunkokubun:20150423125941j:plain
ナイルパーチの女子会/柚木麻子
正直言うと、柚木麻子の女性同士の関係飽きたんだよな~と思ってたんですが、密林で「柚木麻子っぽくない!!」というレビューを見て気になって購入。「王妃の帰還」や「本屋さんのダイアナ」みたいな円満復帰じゃなくてひたすら泥沼に落ちるのかな。楽しみ。

⚫ハケンアニメ!/辻村深月
初めての辻村深月。an・anで連載していた時から気になっていたけど、単行本になるまで我慢してた。

⚫マンガでよくわかる教える技術
タイトル長い💢💢💢💢💢💢💢💢でも初めて仕事で後輩ができたから買った。それにしてもマンガに出てくる登場人物の名前が複雑で覚えにくい……w


あ。



初めてのブログなのにこんないきなり本の話題でいいのかw?「このブログは○○なブログです!よろしくおねがいしまぁす٩(๑ơ ڡơ๑)۶♥」とか言った方がいいのか?知らんけど!


大半は趣味の本の話になりそうだけど、まぁ特に決めてません。本の感想はあるけど、考察はないかな