キャプテン・シネマの奮闘記

映画についてを独断と偏見で語る超自己満足ブログです

第230回:映画『悪は存在しない』感想と考察

今回は現在公開中の映画『悪は存在しない』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

シンガーソングライターの石橋英子と世界各国の映画祭を席巻する濱口竜介監督の共同企画で誕生したドラマ作品。去年のベネチア国際映画祭で銀獅子賞(審査員大賞)を獲得しています。

舞台は自然豊かな長野のとある高原の町。そこで便利屋として働く巧(大美賀均)は、娘の花(西川怜)と共に穏やかな生活を送っていた。ある時、自宅近くにグランピング施設の設営計画が浮上。それはコロナ禍の影響で経営難に陥った芸能事務所が政府からの補助金を得るためで、計画には杜撰な点が多くあった。事務所側と町の住民との間に溝が発生していき…。

監督は濱口竜介。『ドライブ・マイ・カー』(2021年公開)でカンヌ国際映画祭脚本賞、『偶然と想像』(2021年公開)でベルリン国際映画祭銀熊賞、そして今作でベネツィア国際映画祭で銀獅子賞を獲得と世界三大映画祭全てで賞を獲得しています。前もどっかで書いたかもしれませんが、ポール・トーマス・アンダーソン監督ばりの怪物、とにかく賞に強い監督です。

主演、というか出演キャスト全員お初にお目にかかりますだったかと思います。濱口作品である『ハッピーアワー』(2015年公開)に出演されてる方も居るようですが、こうしたまったく馴染みのない方が占める映画を観るのってなかなか良い機会ですよ、新鮮なんでね。ってか5時間以上あるという『ハッピーアワー』は挑戦せねばいかんな。

調子崩し

この「調子崩し」って表現が適しているのか微妙ですが、なかなか掴みどころのない調子で進む印象を受けました。

まず始まって暫くは非常にスローテンポ。セリフも少なく抽象的な映像の連続です。これといった物語の展開もないので、この段階で正直言って“マズい、、、このままだと寝る”のマインドが働いてました。ちょっとボーっとしてたもん。当初はライブパフォーマンスのための映像として制作していたからなのかと勘繰ったりもしましたが、恐らくわざとそうしていたのでしょう。住民説明会のシーンあたりから急激に面白くなります。説明会の開催側にあたる芸能事務所の社員2人組がなかなか不憫。住民にはボコボコにされ、自社に戻って問題点を指摘してもいけ好かないコンサルや社長には相手にされない始末。基本顔は死んでるし、”そもそも芸能事務所なのにグランピングとか知らねぇーよ!”みたいに本音が漏れちゃうところとか良かったですね。作品内における丁度良い塩梅のコメディリリーフでした。

でそんな感じで楽しんでると、急にはしごを外してくる展開&ラストが待ち受けます。いや、あのラストはどういう事なんだ?私個人としては、あの二人は「自然」の化身というか代弁者だったというか。人間に対して普段は穏やかでも時に牙を向く存在というメタファーなのかなと。人よってかなり解釈が異なりそうです。

このように観客の予測や想像を上手いこと崩してくる事を意図的にやっているのが本作の特徴だと思います。実験的というかこんな方法もアリなんだという映画表現の可能性が感じられるような気がします。

まとめ

以上が私の見解です。

どうも世間には、映画を序盤の方で「つまらない」と決めつけ、途中で切り捨ててしまう方も居るみたいですが、本作のような最後まで観ない事には分からなかったりラストにドデカいカタルシスのある作品は多く存在します。そんな序盤でジャッチ出来るほど映画は単純じゃないと思いますけどねぇYouTubeじゃないんだから。

そんな人が多いから…というのは関係ないと思いますが、上映館数がめちゃくちゃ少ないですね。都内で2館ってなかなかハードル高いわ。でも思えば『ドライブ・マイ・カー』はシネコンでも上映してたはず。いや、やっぱりあれは米国アカデミー賞の獲得が大きかったのか。そもそもシネコンで上映し出したのって獲得後でした。つまり「米国アカデミー賞を獲った作品だから」という理由で観に行く人が一定数居るって事ですよね。凄いブランド力だ。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第229回:映画『ゴジラ×コング 新たなる帝国』感想と考察

今回は現在公開中の映画『ゴジラ×コング 新たなる帝国』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ…いや今回は割とガッツリネタバレしていくと思うのでご注意あれ。まぁネタ知っててもたぶん楽しめます。

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イントロダクション

2014年からスタートしたハリウッドでのゴジラシリーズ “モンスター・ヴァース”。その第5作目で前作『ゴジラVSコング』(2021年公開)同様、ゴジラとコングのダブル主演作となります。

地上世界にゴジラ、地下の空洞世界にゴングが君臨する世界となった地球。そんな状況を監視する人類の特務機関「モナーク」が異常なシグナルを察知する。そのシグナルに反応したゴジラとコングは、地上と地下のテリトリーを争う怪獣たちの覇権をかけた死闘へと突き進んでいく。

監督は前作同様アダム・ウィンガード。本シリーズでは初の続投監督となりました。って事は前作の評判は良かったって事だな?

先ほどの記載の通り主演はゴジラ&コング。ゴジラに至っては去年公開の『ゴジラ-1.0』でオスカー像を咥える事に成功し、ハリウッドの名立たる俳優たちの仲間入りを果たしました。ちなみに芸能活動は今年で70周年。これからもどんどん街を破壊する好演を見せてくれる事でしょう。そしてコングは2005年の『キング・コング』で既にオスカー像を獲得しています。そう、本作はオスカー俳優共演作という事になった訳です。超豪華。

なお脇役として人類からはレベッカ・ホール、ブライアン・タイリー・ヘンリー、ケイリー・ホルトが続投。新たにダン・スティーブンスが出演しています。

↓前作についてはこちら。

captaincinema.hatenablog.com

キュンです

ここまでの内容ですが、我ながら何を書いているんだと思う次第。でも私が勝手に常軌を逸したわけじゃない!だって事実だもん!

前作について書いた際も言及しましたが、怪獣映画の宿命とも言える課題である「怪獣側と人間側の描写のバランス」。それこそ前述『ゴジラ-1.0』でも散々話題となった部分です。私自身ゴジラパートは楽しいのに人間パートはつまらないと書きましたが…。しかし『ゴジラvsコング』に至っては、怪獣たちを表情豊かにさせる事に注力しており怪獣ドラマとして観る事ができるため人間たちを脇役、というかお飾りに追いやるまさかの手法を取ってきました。今作ではそれにより磨きをかけくるという狂気の沙汰となっています。

全体的に人間かわす言語以上にギャァァァー!や ウホォォォー!みたいな鳴き声ばかりが目立つ映画。だからこそかちゃんと怪獣たちのドラマが進行し、怪獣たちの感情まで見えてくる演出に悶絶。逆に人間たちが会話しているシーンは状況や背景の説明ばかりで圧倒的につまらないという構成となっています。もう人間は物語を進行させるためだけのパーツなんですね。作り手たちの人間パートにさほど興味ない様が伺えます。ぶっ飛んでやがる。

それに今作では怪獣たちを「格好良く」ではなく「可愛く」描く事に挑戦したのではないでしょうか。だって虫歯には勝てずに地上世界にやって来たコングくん&世界各地で怪獣狩りに明け暮れるエンジョイライフなゴジラくん。このストーリーの走り出しの時点で可愛さが詰まってました。コロッセオで丸くなって寝るゴジラくんにキュン♡。エジプトにて突進してくるゴジラくんに"ちょっと待って説明するから!"と焦るコングくんにキュン♡。洗脳が解けた途端"どっちが敵?"みたいな顔して、最後は"お空綺麗"とポワ〜ンとしてるシーモくんにキュン♡…もうキュンが大渋滞。誰かロマンチック止めてぇ〜。でも”ハゲゴリラ”ことスカーキングは可愛くなかったな。あいつは単なるヤンキー、ちょっと強いからってイキっていちいちしたり顔すんじゃねーよw

怪獣たちを主演にするのは日本じゃいわゆる昭和ゴジラのシリーズが割とその路線だったと思いますが、CGの技術でその時表現出来なかったような事を体現したかったのかもしれません。

↓一応『ゴジラ-1.0』の記事も載っけておきますね。

captaincinema.hatenablog.com

まとめ

以上が私の見解です。
勿論可愛いだけじゃありませんよ。バカッコいいシーンもあります。ことごとく世界遺産を破壊し回る様は絵になるしゴジラくんなんて飛んだり跳ねたり躍動感たっぷり。終盤の無重力怪獣乱闘シーンは未知の領域過ぎるぶっ飛びアクションシーンでした。ただモスラくんにはもうちょっと出番が欲しかった。個人的にはキュンポイントもなかったので次回作に期待。せっかく復活したんだからがっつりやってくれい!

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

※ちなみに
鑑賞後、昼ご飯に豚の生姜焼き食べたんですね。そしたら肉片が奥歯に挟まりなかなか取れなくて。まるで虫歯を気にして歩くコングくんです。口の中の違和感って気になるよね。

第228回:映画『異人たち』感想と考察

今回は現在公開中の映画『異人たち』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

日本を代表する脚本家で、去年逝去した山田太一が手掛けた小説「異人たちとの夏」を原作としたドラマ作品。舞台は昭和の日本から現代のイギリスに変わっています。

幼くして交通事故で両親を亡くし、孤独な人生を歩んできた40歳の脚本家アダム(アンドリュー・スコット)。ロンドンのタワーマンションに一人で住む彼は両親の思い出を基にした作品執筆のため幼少期を過ごした郊外の家を訪れる。そこで30年前に他界した当時のままの姿の父(ジェイミー・ベル)と母(クレア・フォイ)に遭遇する。

監督はアンドリュー・ヘイ。私、監督作品は一つも観ておらず…あっ『荒野にて』(2017年公開)はロードムービーっぽいぞ。馬と少年の逃避行ってこれはチェックですな。

主演はアンドリュー・スコット。監督も主演も“アンドリュー”は混乱するぞ。TVドラマ「SHERLOCK/シャーロック」シリーズや『007/スペクター』(2015年公開)に出演しているようです。そしてその恋人役として登場するのがポール・メスカル。出ました、日本では去年公開し、まことしやかに話題となった『after sun/アフター・サン』の儚いお父さん。妙に後引く存在感なのよね。「グラディエーター2」の主演らしいのでそちらも楽しみです。

斬新な原作改変

私、本作観る前に原作にあたる小説「異人たちとの夏」を取り急ぎ読みました。そりゃ日本の小説がイギリスで映画化って聞けば気になりますからね。全体的に夏の湿気と「死」が匂い立つオカルトファンタジー。ただホラーのような描写はほどんとなく鰻屋のシーンとかは読んでてジーンとしちゃいました。

で、本題の映画ですがかなり違った印象を受ける原作改変がなされています。TVドラマの脚本では、変更/脚色を許さなかったと言われる山田氏。しかし今回の映画については自由にして良いとの事で、どのような映画になるのかを寧ろ楽しみにしていたそうです。(問題になった某漫画原作のTVドラマの状況とはまったく違うね)

まず主人公が同性愛者に変わっているのは一目で分かる点。これはストーリーにより深みを与えるものとなっていた気がします。とくに親にカミングアウトするのシーンは秀逸。言ってしまえば、現代的な考えを持ち合わる機会なく過去の価値観で時が止まってしまった両親になるので、あのリアクションは非常に説得力があるというか。親と子の対峙が同時に「時代」が対峙する構造にもなっているシーンだと思いました。

また、登場人物が減っているのも面白い点。実質1人しか登場しない映画になってるんですね。これにより孤独感や空虚さがより印象強くなっており、現代社会らしいポイントになっている気がしました。

ただラストの改変だけは個人的に腑に落ちませんでした。あれは「生」より「愛」を選んだんですかね?私にはそう受け取れましたが何だか原作の方向性からは違ってくる気がしました。思えば原作を読んでいる時に感じた匂い立つ「死」は無かったので、そもそもその要素はごっそり落としたという事なんでしょう。

まとめ

以上が私の見解です。

オチ以外は良かったですし、アンドリュー・スコット&ポール・メスカルのやり取りがめちゃくちゃ繊細。特にポール・メスカルのあの妖艶な雰囲気は凄いっすよ、やっぱ存在感強いなぁ~。

そういえば既に日本では大林宣彦監督で1988年に映画化されているようですね。そちらとも比較して観ても良いかもしれませんね。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

 

参考:

脚本家・山田太一さんの小説『異人たちとの夏』 イギリスで映画化 その魅力は | NHK | WEB特集 | 映画

第227回:映画『アイアンクロー』感想と考察

今回は現在公開中の映画『アイアンクロー』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

日本のプロレス界でもアイアンクローの必殺技で名の知れたアメリカのプロレスラー フリッツ・フォン・エリックを父に持ち、同じくプロレスの道を歩むことになった兄弟の栄光と悲劇を描いたスポーツドラマ。

1980年代、元AWA世界ヘビー級王者のフリッツ・フォン・エリック(ホルト・マッキャラニー)に育てられた4人の兄弟は、父の教えに従いプロレスラーとしてそれぞれが頂点を目指していた。事実上次男にあたるケビン(ザック・エフロン)が兄弟たちを支えていたが、世界ヘビー級王座戦への指名を受けた三男のデビッド(ハリス・ディキンソン)が日本でのプロレスツアー中に急死してしまう。

監督はショーン・ダーキン。『マーサ、あるいはマーシー・メイ』(2013年公開)の監督ですって。あぁなんかあったね、カルト教団に陥る 女性(エリザベス・オルセン)の話だったような…あんまり印象にないな。

主演はザック・エフロン。『ハイスクール・ミュージカル』(2006年公開)や『グレイティスト・ショーマン』(2017年公開)で人気の歌える俳優というイメージの方。それはそうと『テッド・バンディ』(2019年公開)観ないとな。

そして観ている間はまったく気付けなかったのがハリス・ディキンソン。この方『逆転のトライアングル』(2022年公開)のイケメンモデル役ですよね。あれ面白かったな。

呪いの正体

まず先に言っておきますが、私プロレスに関してはほぼ知識のない弱者でございます。リリー・ジェームズが演していた女性が主人公に「プロレスって”やらせ”なの?」って聞いてるシーンがありましたがまさに私もその程度。選手本人たちが真剣なのは承知の上ですが、どこまで段取りを組んでいるのか分からないですしプレースキル以上にスター/アイドル性なんかもチャンピオンになるには必要だろうなと。

そんな訳ですがプロレスガチ勢の方々には有名な話らしい“呪われた一族”フォン・エリック家。数々の悲劇を引き起こしたその呪いの正体とはマチズモが過ぎる家父長制だと本作からは読み取れます。プロレスで世界一になる事が正義、悩みや心の苦しさは他人に見せなるな、常に強くあれ!こんな事を幼い頃から叩き込まれ内在化した兄弟たち。兄弟間の仲は決して悪くないのに、父親を前にするとみんな萎縮するという歪んでいるけど固い絆で結ばれた家族が描かれていました。

こうした現象は親子2代でスポーツ選手みたいな家が陥りやすい環境なのかもしれないと頭を過りましたが、悩んだ時に両親がまったく頼りにならないというのが深刻でしょう。「兄弟で解決しなさい」ってそんな残酷な… 。結局主人公が悲劇的な結末を迎えなかったのは悩んだり苦しんだ時に支えてくれる存在が居たからですよね。弱さは負けじゃありません。

まとめ

以上が私の見解です。

なかなかヘビーな内容ではありましたが、しっかり映画観たなという満足感に浸れます。終盤のボートのシーンはまさに映画的な救済でしたし、ラストのポロポロ涙を流すケビンに対し子供たちが”泣いて良いんだよ~”みたいな感じで寄り添うシーンも良かったな。こっちまで泣きそうになったわ。ってか悲壮感が顔に貼り付いているのかと思うほど覇気のないザック・エフロン、良い演技でした。

ちなみに劇場内にはプロレスファンの方の結構居て…というか多分ほとんどの客がそうだったんじゃね?おっさんしか居ませんでしたよ。”まぁ結末は分かってんだけどさぁ…”みたいな会話も聞こえてきましたし。良い映画なだけに何だか内輪だけでしか話題になってない感じは勿体無い気がするなぁ。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第226回:『マッドマックス:フュリオサ』公開記念 凄いぞ!豪州映画の世界

ついに今年のビッグイベントである『マッドマックス:フュリオサ』の日本公開が5月31日に決定しました!その嬉しさに乗じて今回は前々から温めていた企画を放出しようと思います。

1979年に公開された記念すべき1作目『マッドマックス』と人気シリーズに押し上げた1981年公開の2作目『マッドマックス2』はオーストラリアで製作された映画。3作目からはハリウッドが携わる巨大シリーズとなりましたが、元はと言えばいわゆるB級、自主製作映画だったのです。

そんなシンデレラストーリーを体現した本シリーズを筆頭に、調べてみると気付いていないで観てる可能性があるほどオーストラリア産映画を色々発見しました。しかも関連しているのか分かりませんが、案外出身俳優も多くいる事も。そんな訳でオーストラリア映画の世界をちょっくら掘ってみようという事でございます。そこまで内容に触れる話は出ないかと思いますが、毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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↑内容と関係ありませんが桜の季節ですよ。この時期が一番好きかも。

多いぞ!出身スター

では、まずは出身スターについて触れていきましょう。

まず、言わずもがな「マッドマックス」でスターとなったメル・ギブソン。プライベートはなかなか大変な方ではありますが、「リーサル・ウェポン」シリーズへの出演や監督としても活躍する大スター。あれっ?リーサル・ウェポンって新作出るんでしたっけ?やるやる詐欺じゃなきゃ良いんだけど。それと監督作品として再び沖縄戦を扱うみたいな話もありましたよね?『ハクソー・リッジ』(2016年公開)は傑作でしたし、新作が早く観たいものです。

そして今回の『マッドマックス:フュリオサ』の敵役として出演しているクリス・ヘムズワースもオーストラリア出身の方です。「マイティ・ソー」シリーズや「タイラー・レイク」シリーズのイメージが強いので悪役というのが意外と新境地なのかなと思うところですが、バイカーギャングの親玉ですね。楽しみ。予告の「Ladies and Gentlemen~.Start your Engine!」の響きとか良いもの。

つまり弟のリアム・ヘムズワースも出身俳優さんとなるのは置いておいて、「マッドマックス」シリーズは故ヒュー・キース・バーンヴァーノン・ウェルズといったオーストラリア出身俳優に悪役を演じさせるのが定石なのでしょうか?でもティナ・ターナーは違うか。

マッドマックス関連から話は逸れますと、恐らく一番有名なのがヒュー・ジャックマンではないでしょうか?どうも今年復活するらしいウルヴァリン役や『グレイティスト・ショーマン』(2017年公開)で日本でも非常に人気のある方。そういえばとんねるずの番組、食わず嫌いに出てたのが記憶に残ってんな。筋肉を作るためにささみ肉食い過ぎて嫌いになったって言ってた。『チャッピー』(2015年公開)とか『イーグル・ジャンプ』(2016年公開)にも出てて良かったよ。

また直近作品でいえば去年『TRA/ター』で大暴れをしていたケイト・ブランシェットもそうです。『キャロル』(2015年公開)や『ナイトメア・アリー』(2021年公開)でも抜群の演技力を発揮していますが、地味に『インディ・ジョーンズ/クリスタル・スカルの王国』(2008年公開)の敵役も印象深いのよね。

そんな中でも個人的にプッシュしたいのがテリーサ・パーマーです。昔ハマった時期がありましてね。『ウォーム・ボディーズ』(2013年公開)や『ライト/オフ』(2016年公開)は去ることながら『魔法使いの弟子』(2010年公開)とか『殺し屋チャーリーと6人の悪党』(2014年公開)みたいな普段ならチョイスしないであろうタイプの作品にまで手を出してたもの。『X-ミッション』(2015年公開)とかいう変な映画にも出てたなぁ。そんな中でも面白いのは先述『ハクソー・リッジ』、主人公が一目惚れしちゃう看護師さんの役でした。

その他マーゴット・ロビーエリック・バナ等も該当者。スター勢揃いの映画が間違いなく一本作れます。

パワフルだぞ!作品たち

それでは作品について触れていきましょう。

豪州映画の代表といっても過言ではない「マッドマックス」シリーズ。そんな「マッドマックス」の亜種的な作品が2014年公開の『奪還者』。舞台は世界経済が破綻して10年が経ったオーストラリアの荒野。誰も彼もが略奪や殺しに手を染めた世界で、愛車を強盗団に奪われた主人公がひたすらその強盗団を追うというサスペンス映画です主人公が車と暴力に取りつかれている様は、まさしくマックスと同じ境遇。怒りと喪失に身を任せ、破滅の道を進みます。なお、ガイ・ピアースロバート・パティンソンのダブル主演の作品なので、クリストファー・ノーラン作品好きは目の色を変えるのでは?っていうかガイ・ピアースもオーストラリア俳優なんですね。

そしてマッドマックスっぽいディストピアな要素とゾンビを掛け合わせた作品も存在。それが『ゾンビマックス!/怒りのデス・ゾンビ』。こんなタイトルが付いてますが、原題は「Wyrmwood」。2014年制作の映画なので2015年の「FuryRoad」の影響ではなさそう…滅茶苦茶な邦題や。しかし内容は侮るなかれ、ゾンビを操ったり、ゾンビの吐く息がガスなのか資源として利用出来るなんていうトンデモ設定が楽しいアイディア勝負な映画。ホームメイド感溢れる“お手製マッドマックス”な装備にも遊び心が感じられます。チープさは否めませんが、ゾンビとマッドマックスが好物の私にとっては満足な一品でした。ちなみにアクションマシマシになった続編の邦題は『ゾンビ・サステナブル(2021年公開)。ゾンビの世界にもSDGsの波ですか?...いい加減しろよ!w 中盤にある体操の吊り輪やってるみたいなシーンがバカっぽくて良いです。

シリーズものでいえば、『ウフル・クリーク/猟奇殺人谷』(2005年公開)&『ミック・テイラー/史上最強の追跡者』(2014年公開)のWolf Creekシリーズもあります。こちらもシリーズものとは分かりづらい邦題となっていますが、実際に起きた事件をベースに若い観光客たちが荒野の人間ハンター ミックさんに追われるというホラー。1作目の『ウルフ~』はドキュメントタッチなサイコスリラー仕立てになっていますが、次作の『ミック~』は次々と人が死んでいくスラッシャー映画と化しています。個人的には見世物感の強い2作目の方が面白かったですね。ゴア描写の気合の入り方やミックさんのぶっ飛び右翼思想といったキャラクターの面白味も増していて良かったです。ちなみに本国では3作目が今年公開予定っぽいです。3作も作られるのは人気の証ですね。これはハリウッドリメイクの可能性もありえなくない?ってか日本でも公開して頂戴。

ホラー繋がりでいくと去年日本で公開されたTALK TO ME トーク・トゥ・ミー』も該当作品。まぁ私はハマらなかったんですけどね。序盤の霊が憑依してトリップする描写のは良かったのですが、その後の展開が解せぬ。主人公の言動が腑に落ちず、久しぶりに映画館でイライラすることになりました。

そんな中で推したい作品がプリシラ(1994年公開)。オーストラリアの砂漠を舞台に3人のドラァグクイーンの珍道中を描いたロードムービー。オーストラリア中部にあるリゾート地でショーを行うべくおんぼろバスで旅へ…道中、差別や偏見に晒されながらも下ネタとめげない気持ちで突き進んでいきます。3人の凸凹アンサンブルが魅力的で観ていて元気が湧いてきます。そして衣装の気合の入りようが凄まじい。ビーチサンダルがぶら下がったドレスやマントなのか裾なのか何だかよく分からない無駄に長い布が風になびく服など奇抜でギラギラした衣装の数々。米国アカデミー賞で衣装デザイン賞を獲得してるようですが、そりゃそうだ。って言うかABBAのウ〇コって何だよw。そしてここでも登場『悪魔のいけにえ』でございます。

その他『二トラム NITRAM』(2021年公開)やナイチンゲール(2018年公開)、『アングスト/不安』(1983年公開)といった作品もあります。3作品とも未見ですが、あらすじを見る限りなかなかパワフルそう。近いうちに観てみよ。

↓以前に感想を書いた吞兵衛さん必見の荒野の千鳥足(1971年公開)もオーストラリア映画でした。

captaincinema.hatenablog.com

まとめ

以上、実は奥が深いオーストラリア映画の世界でした。

韓国やインドの映画旋風が昨今の日本ではありましたが、今度はきっとオーストラリアです。ここで挙げた作品以外にもパワフルかつちょっと変な愛すべき作品が沢山あるはず。流行を先取り…にはならないでしょうが、ご興味のある方はオーストラリア映画を掘ってみては?

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

第225回:映画『オッペンハイマー』感想と考察

お久しぶりとなった今回は結構ヘビーですよ。日本での公開が先送りとなっていた映画『オッペンハイマー』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です…といってもネタバレって程ネタバレな事は本作においてはあんまり無いと思うのですが。

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↑こちらがパンフレット。読みごたえ抜群で勉強にもなりますよ。

イントロダクション

”原爆の父”と呼ばれたアメリカの物理学者 ロバート・オッペンハイマーの半生を綴ったたノンフィクション「『原爆の父』と呼ばれた男の栄光と悲劇」を題材にした歴史映画。

時は1954年。「赤狩り」の余波を受け、ソ連のスパイ容疑を掛けられた物理学者のロバート・オッペンハイマー(キリアン・マーフィー)。聴聞会が開催されそこで様々な詰問を受ける中、彼の様々な過去や世界の在り方を変えてしまったマンハッタン計画についてが語られていく。

監督はクリストファー・ノーラン。昔は“一番好きな映画監督は?”と聞かれれば真っ先に答えていた名前。今はそこまでの熱の入れようはありませんが、やはり映画好きのきっかけの1つにもなった『ダークナイト』(2008年公開)があるだけに絶対に隅には置けません。『インセプション』(2010年公開)もSF映画の中じゃ1位2位を争うぐらい好きですし、いつか007を撮る事も期待してますよ。

主演はキリアン・マーフィー。先述『インセプション』や『ダンケルク』(2017年公開)とノーラン作品の常連としてお馴染み。「ダークナイト」シリーズでは3作皆勤賞なのに回を追うごとに小者と化していく男がついに主役の座に、良かった良かった。主演作だと『ピーキー・ブラインダーズ』のドラマシリーズがありますね。面白そうなんだけど、長いんだよなぁ。

その他エミリー・ブラント、フローレンス・ピュー、ロバート・ダウニー・Jrマット・デイモンが名を連ね、更に割とちょい役でデイン・デハーンケイシー・アフレックラミ・マレックケネス・ブラナー等が登場するという主役クラスの俳優が隅々まで配置された超絶豪華キャスト。公開中の『デューン 砂の惑星 Part2』が霞むレベルかと。そんな中で注目したのがベニー・サフディ。サフディ…えっ『グッド・タイム』(2017年公開)や『アンカット・ダイヤモンド』(2019年公開)のサフディ兄弟ですよね? 役としても後に”水爆の父”と呼ばれるようになるエドワード・テラーという結構なポジション。俳優も出来るんですね、そして監督最新作はいつになるんでしょうか。

力と力の対立

鑑賞前は私以外にも多くの人が思っていたのではないでしょうか?本作が核兵器誕生にまつわる話だと。勿論そうしたテーマを含んでいるのは間違いないですのが、戦争や核兵器を扱ったドラマ以上に科学の力と国家権力の対立を描いた政治ドラマの要素が強く感じられました。

ノーラン作品らしい難度の高い時系列バラバラな語り口で展開されるのは、世界の覇権を取るのはどの国なのか?というパワーゲームに巻き込まれた一人の科学者 オッピー。国際競争の施策の目玉として生み出されたのが原爆であるという解釈も出来るので、広島/長崎の描写がない事に違和感はさほど覚えませんでした。(オッピーさんが被害状況の報告を受けるシーンにはあった方が良いと思ったけど)

そして終戦後は原爆開発の後悔に駆られる中、原子力委員会のドンで水爆開発を主導する ルイス・ストローズの嫉妬に晒されるオッピー。このストローズ演じるロバート・ダウニー・Jrがとにかくクソ野郎なんです。アカデミー授賞式でもクソ呼ばわれしてましたが、自惚れと思い込みの激しい政治屋。他人のちょっとした言動を根に持つ(この辺の見せ方は上手かったよね)性格から周りに嫌われてるであろう(エアエンライクも絶対嫌ってるだろw)人物で、彼がソ連のスパイだとオッピーに嫌疑をかけた事が物語の軸となっています。とはいえ"慧眼にして盲目"と言われるだけあって女性関係にだらしなく、科学に対してのみ誠実なオッピーも決して人格者ではない複雑さを持っているので周囲に憎む人が居るのもおかしくなさそう。こうした人間臭さ漂う政治ドラマが主なテーマとなっているように見えました。

そもそも日本への原爆投下自体がアメリカの国際政治的なパワーゲームだったという考えもありますしね。東京大空襲の時点でケリはついていたはずで新兵器である原爆を行使せずとも日本が降伏するのは時間の問題。そんな中、

・実運用による国際的なアピール

・日本の降伏にソ連の介入を避けるべく一刻も早く決着を付けたかった

・アジア人に対する侮蔑や優性思想(黄色人種相手なら使って良いんじゃねぇ的な)

があったとされ、自由のためや国民保護というのは兵器使用を正当化するためのプロパガンダという見方もあります。まぁ結局、権力に飢えた連中はけしからん!科学が持つ力と権力者が持つ力がタッグを組むと惨劇を招く事があるわけですね。これは今なお続いている状況であり、そんな世界で生きていると思うと背筋が凍ります。

まとめ

以上が私の見解です。

きな臭い事ばかりを述べてきましたが、トリニティ実験や原子/分子の世界を表現した映像と音響は圧巻でノーラン監督の集大成的作品であることは頷ける力作でした。一部で批難された原爆賛美では決して無いので一見の価値はある作品です。

ただ会話のシーンで1セリフごとにカットが変わるのが難点。他のノーラン作品にもある傾向かと思いますが、今回はドラマ要素が強いだけあって如実に見られた気がします。あのカットの割り方ってデカいスクリーンに向かない気がするんですけどねぇ。まぁ英語が分からず字幕を追って観ている人間だから感じるのであって、英語圏の人は気にしないのかも。

あっそれとサンスクリット語を読みながらの濡れ場シーンは笑ってしまった。ノーラン作品には珍しいガッツリ濡れ場ですが、いやそこもインテリ風にするんかい!一周回ってアホっぽいぞwあの描写はどこまで実話なんでしょうね。

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

※ちなみに

実は原爆投下が国際政治的なパワーゲーム云々の話はNetfilxのドキュメンタリー『ターニングポイント:核兵器と冷戦』の受け売り知識でございました。これを観ると核兵器開発が世界にどんな影響を与えてきたかが分かります。

また劇中何度か登場するアインシュタインが原爆にどう関わっていたかは『アインシュタインと原爆』(2024年公開)。さらに戦時下の日本においても原爆開発が進められていたという事は『太陽の子』(2021年公開)という作品で把握していたので、この辺を抑えておいて良かったなという気がしました。

第224回:映画『デューン 砂の惑星 PART2』感想と考察

今回は現在公開中の映画『デューン 砂の惑星 PART2』を語っていこうと思います。毎度の事ながらややネタバレ注意です。

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イントロダクション

フランク・ハーバートの同名SF小説を映画化した2021年公開の『DUNE/デューン 砂の惑星』の続編。

人類に必要不可欠の香辛料の採掘が出来る惑星アラキスの覇権を巡るハルコンネン家の陰謀によって一族を滅ぼされたアトレイデス家の後継者ポール(ティモシー・シャラメ)は、砂漠の民フレメンと共に反撃の狼煙を上げる。そんな中、ハルコンネン家の冷酷非道な次期男爵フェイド=ラウサ(オースティン・バトラー)が惑星の新たな支配者としてフレメン抹殺のために動き出していた。

監督はドゥニ・ヴィルヌーブ。いやぁ前作の時は有給休暇取って初日に観に行くぐらいのテンションでして好きな監督なんですよ。ただ前作は有給休暇を取る程満足したかと言われるとそうでもなかったので今回は普通に休日に行きました。ヴィルヌーブ監督にはそろそろ『ボーダーライン』(2015年公開)みたいなサスペンスに戻って来て欲しい気がしますし。

前作に引き続きティモシー・シャラメを筆頭にレベッカ・ファーガソンゼンデイヤジョシュ・ブローリンハビエル・バルデムと豪華キャストが再集結。さらに今作ではフローレンス・ピュー、レア・セドゥ、クリストファー・ウォーケンも登場。キャスティング頑張りまくってますね。

↓前作についてはこちら

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凄い!でも面白い?

この映画を一言で言い表すなら“凄い!”です。前作同様の映像の超スケール感やモダンな色彩、各軍の衣装の感じも良かったです。やっぱサーダガーの出で立ちがかっけえよ。前作みたくワイヤーでゆっくり降りてきてバンバン敵を屠る活躍が観たかった。そして今回は音響に磨きがかかっていた気がしました。重低音が体にズドンと響いてくる感じ。この感覚は『トップガン マーベリック』(2022年公開)以来だったかも。

ただ面白かったかと問われる微妙。ストーリーが何だかよく分からないので…いや、おおまかには分かりますよ。予言や運命(この運命はヴィルヌーブ監督のSF作品に精通するテーマでしょう)に翻弄された青年が人々をコントロールしプライドや権力のために殺し合いをさせるという現実で行われている戦争となんら変わりない展開。平気で核兵器をちらつかせ脅すのなんて気分悪い、愚かな人間たちの群像劇といえます。

このストーリーを通して現代へのアイロニーかヒロイズムな英雄伝を描きたいか曖昧な気もしますが、シーンとシーンの繋がりの曖昧さの方で混乱しました。例えば序盤、砂漠の民フレメンの仲間になるための試練として砂漠を一人を進んで夜を明かせみたいな展開になるんです。そこでデカいムカデより小さいムカデに気を付けろとか砂漠の妖精に惑わされるな…みたいな忠告をされるんです。じゃ当然そのシーンが出てくると思うじゃないですか。しかし登場はなし。ちょっとすると突如香辛料採掘の襲撃シーンが始まります。こんな感じで唐突な場面展開が連続する形式で進んでいくので、誰が何処で何をしているのか物語を追うのが大変。ってか前作に比べてテンポアップし過ぎでは?

つまり技術特化型といった作品です。少しでも気になっている方は映画館、なるべく設備の良い上映スタイルで観るべきです。逆に自宅のTV画面なんかで観たら魅力の大半を失った凡作を目の当たりにする事になるでしょう。

まとめ

以上が私の見解です。

だいぶ腐す内容になってしまいました。好きな監督だけにモヤっとする。シーン単体で観ると今回の方が良かったのですが、映画全体の完成度として観ると前作の方が良かったなぁ。ってな感じでどっこいどっこいな状態なので、恐らく既に製作に入っているであろうPART3を待ちましょう。次で完結?そしてアニャ・テイラー=ジョイが本格参戦かな?

という事でこの辺でお開きです。ありがとうございました。

※ちなみに

私、本作はTOHOシネマズ日比谷の1スクリーンで観ました。IMAXで観ろよとか言われそうですが、ラージフォーマットのスクリーンに音響も結構良い箱。何より新宿や池袋に比べ客の治安がよろしいので、あそこで観たい作品が流れてると積極的に選択するんです。しかし今回行ったら気付かぬ内に高い料金を払って座るボックス席が増設してたんですよ…。あぁ勘弁してくれぇ~ よりによって私がよく座ってた列がぁ~。そうやって金をむしり取るんですか、世知辛いっすわ。