22歳の10月。28歳の10月。
大学4年の10月、まだ卒業前の身でありながらライターの仕事を始めた。
あれからちょうど、6年。
28歳になった私は、今になって初めて
「原稿以外の」文章を書いてみたいと思った。
これまでに数百人もの人に会い、さまざまな取材を行ってきた。
芸能人、研究者や専門家、教育関係者、一般のOLや学生、料理人、美容師、アスリート、弁護士…
テーマもジャンルも雑多だけれど、
どれも”一媒体の一コンテンツ”として取材を行い、記事を書く。
その文章には、常に客観的な視点が求められたし、
”わたし”という色をできるだけ排除し、いかにその媒体の色をまとって綴れるかどうかが書き手のスキルとして認められた。
「分からないことを分かりやすく翻訳して伝えること」が
作家ではない”商業ライター”の役目であると信じ続けていた私は、
ただひたすらに、仕事としての「原稿」を書いた。
その一方で、主観的に何かを綴ることや、
自分について深く掘り下げた内容の文章はいっさい書いてこなかった。
書くことが、なかったから。
何かのジャンルに長けているわけでもなく、
熱く語れるほどの知識を備えた趣味もない。
強いて言うなら、仕事が趣味。
仕事こそが、私のアイデンティティ。
でもいまその仕事を、訳あって、お休みしている。
この選択に至るまでにはあらゆる葛藤があって、
今はまだ正解なのか、間違いなのかは分からない。
ただ、”自分”という人間と、じっくり真剣に向き合ってみたいと思った。
そのために一度立ち止まって、
この場所で初めて、”自分の言葉”として色々なことを綴っていきたい。