素麺マニアが素麺を茹でられなかったワケ
1年以上更新が開いてしまいました。
実は、去年の夏はまったくと言っていいほど素麺を茹でられなかったのです。
毎年「揖保乃糸 三神」を自分用に注文し、お中元素麺を5箱は平らげ、年間5kgは素麺を消費している私としては、ありえない事態。
いったいなぜか。
実は私事ですが、昨春に第一子を出産し、素麺を茹でる時間が捻出できなかったのです。
素麺への愛が重すぎて、タイマーではなく自分の目でベストな茹で具合を見極めたい。
一瞬たりとも素麺から意識を離したくない。
茹で上がったら即座に冷やして、伸びてしまう前に、ベストな状態で食べたい!
そんな私にとって、いつ何時泣き出すかわからない赤子を抱えながら素麺を茹でるのはなかなかの難行だったのです…。
正直何度かは挑戦しました。
でも不思議なことに、赤子が寝た隙を見計らって茹でても、いざ茹で上がり!さあ上げるぞ!!というタイミングに限って泣くんですよね…なぜか。
慌てて火を止めて駆けつけているあいだに、鍋の中で伸びていく素麺…。つらい…。
そんなわけで、昨夏は満足いく素麺を一度も茹でられなかったのです…。
しかし、1年がたって赤子もしっかり寝てくれるようになり、心の余裕も復活し、ついに今日!!ようやくゆっくりと素麺を茹でることができました…!!
ずっとずっとこの日を待ちわびていた、奈良原製麺所の南関素麺。
あいかわらず職人芸の細さとコシで大変美味しゅうございました。
心が生き返る思いです。
これからまたぼちぼち更新していきたいと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
【素麺品評会】島原手延べ素麺 上級品(髙橋製麺)
味も食感もそれぞれな「島原素麺」の中でも、「お、これはおいしい!」と思ったのが髙橋製麺さんの極寒製手延、上級品。
【細さ】★★★★☆
無漂白の生成りの麺は、シュッとした筋のいい細麺。
繊細すぎず太すぎず、日常食べる素麺としては理想的なライン。
【茹で心地】
ストレスのない茹で心地。麺の太さにばらつきが少なく、1分半〜2分で芯まで均等に火が入ります。
「芯まで透明になった瞬間」が鍋からあげるベストタイミングの素麺ですが、ここまで均一に茹で上がりが揃うのもめずらしい。
茹で加減に慎重になりすぎなくてもだいたい美味しく茹で上がります。
気持ちちょっと早めくらいで上げるとシャリッとした食感が楽しめます。
【味】
ほどよくツルッとした舌触りとキレのいい歯ごたえ。
麺の個性が主張しすぎず、かといって物足りなさはない、という絶妙なバランスの素麺です。
日常的に食べても飽きのこない、優等生タイプ。
【オススメの食べ方】
冷やし素麺から、にゅうめん、チャンプルー等の炒め系までなんにでもあう万能選手。
冷やし素麺ならノーマルな麺つゆからスゴだれのアレンジ素麺までなんでも合うし、
にゅうめんなら出汁を効かせた上品系でも、煮込み系でも麺が負けません。
ソーミンチャンプルーにしても麺がべちゃっとなりにくい。
いや、ホント優秀です。
【その他】
こちらの髙橋製麺さんは、明治34年に創業してから百年以上素麺を作られているとか。
今回食べたものは袋入りの素麺でしたが、贈答用の素麺も期待できると思います。
【基本情報】
産地:島原素麺
品名:手延べそうめん
原材料:小麦粉、食塩、食用植物油
製造者:髙橋製麺
TEL:0957-82-2116
【素麺品評会】南関素麺(奈良原製麺所)
好きすぎて、あんまり人に教えたくない素麺があります。
熊本名産、南関素麺。
現代ではものすごくめずらしくなった「作業工程がほぼ手作業の手延べそうめん」の産地です。
実は「手延べそうめん」といっても作業工程の一部が機械化されていることが多く、本当に最初から最後まで手作業でやっている、という製麺所はほとんどありません。
そんななか、南関素麺は生地をつくる工程から生地を延ばす工程、天日乾燥まで、昔ながらの手打ち・手延べの製法を続けている製麺所が残っています。
そのなかでも個人的にお気に入りの奈良原製麺所の素麺を紹介します。
【細さ】★★★★★
繊細で極細。麺の一本一本が際立っていて凛とした風情です。
素麺の両端が切られておらず、8の字にぐるぐる巻かれているのが特徴です。
完全な「手延べ素麺」でこの細さ、均一さ、そして長さを実現していることには嘆息するしかありません。
【茹で心地】
そのまま茹でるとすごい長さになるので、下図の赤線の部分で半分に切ってから湯に入れます。
独特のひねたような香りがあるので、たっぷりのお湯でしっかり茹でるべきです。
麺が細いので茹で時間の見極めはシビア。一瞬も目を離せません。
芯まで透き通った瞬間に、いさぎよくお湯から上げましょう。
茹で上がりを流水でもみ洗いすると、シャリシャリとした手触りで、一本一本の麺の手ごたえがしっかりあります。
「もうちょっとかな〜」なんて様子を見ていると、茹ですぎてこのシャリシャリ感を逃してしまいます。
とはいえ、芯がしっかりしてるので少々長めに茹でてしまってもぐだぐだにはなりませんのでご安心を。
【お味】★★★★★
シャリっとしたキレのある舌触りと涼やかさは他に類を見ません。
細さ、透明感、コシ、どれをとっても一級品です。
この一本一本の存在感、透明感…惚れ惚れします。
一般的な素麺に比べると個性が強く、麺に独特の香りがあるので、初めて食べると少しびっくりするかもしれません。
「素麺なんて味がないじゃない」という方にこそ食べさせたいけど、もったいないので毎年一人で一箱食べちゃう、そんな素麺です。
【オススメの食べ方】
いろいろ具材を入れずに、シンプルにつゆだけで食したい麺です。
麺つゆは濃い目の味のほうが合い、スゴだれつゆとの相性もばっちりです。
ちなみに、この素麺に関しては米酢より黒酢のほうがあいます。
坂本醸造の「鹿児島の黒酢」が、酸味とまろみのバランスがよくてオススメです。
あおさを入れると完璧な美味しさなので、こちらも試してみてください。
somen.hatenadiary.com
芯がしっかりしているので、煮麺やソーミンチャンプルーなど火が入る調理に使っても麺の歯応えが残って美味しいと思います。
ただ、もったいないので私はまだ試したことがありません。
【その他】
しおり拝見。
南関は藩政時代関所があったことから「南の関」と称し、街道筋にあたり宿場町として栄え、素麺作りが盛んであった。
始まりは今より約二百五十年前と伝えられ、細く、白く、歯ごたえと品質の良さが買われて参勤交代の折、細川藩の献上品として用いられていたといいます。
大正の頃までは町の両側に戸ごと掛け並べてあったさまはよき風物詩であり詩人、北原白秋は次のとおり歌っています。
掛け並めて 玉名少女がこきのばす 翁素麺は長きしら糸
とあります。
調理方法の欄には 「夏は冷やし素麺にしてわさび、生姜醤油、砂糖酢等、冬は卵とじかけ肉類等をあしらい、または下地をかけて食べると大変美味しく頂けます。」とあり、やはり濃いめの味、パンチの効いた味に合わせるほうが美味しいようです。
【基本情報】
産地:南関素麺
品名:特になし(おそらく一種類しかない)
原材料:詳細不明
製造者:奈良原製麺所
住所:熊本県玉名郡南関町小原1418-1
TEL:0968-53-0551
(ネット販売はされていないので購入希望の方はお電話等でお問い合わせください)
【素麺品評会】三輪素麺「黄金しょうが」(株式会社 池利)
三輪素麺「池利」の「黄金しょうが」。
高知の「黄金虚空蔵II」というなんだかすごそうな名前の生姜を練りこんだ意欲作です。
箱をあけるとほのかに生姜の香りがします。
【細さ】★★★☆☆
白い素麺は平均的な太さ。
生姜素麺はやや太めでがっしりしています。
太さが違うので一緒に茹でるのはかなり難易度が高そうです。
【茹で心地】
生姜麺がかなり重くて太いので、先に生姜麺だけを茹で始めて、半分くらい火が入ったところで白麺を投入しましたが、それでも白麺のほうが先に茹だってのび気味になってしまいました。
完璧を期すなら別々に茹でるのがオススメです。
【お味】
口に含むと生姜の香りが広がって新しい味わいです。
ただ、麺が太くて重いので食感はややもったりしています。
つるつる軽ーく素麺を食べたい気分のときには向かないけど、「素麺じゃものたりないかなあ…」という気分のときには食べごたえがあっていいかもしれません。
【オススメの食べ方】
氷と薬味で締めて爽やかに食べるのがオススメ。
味が濃いわりにまったり系なので、いろんな薬味と相性がいいです。
特に刻み紫蘇をたっぷりかけると、味がピリッとしまってよく合います。
麺つゆにカボスを絞ると爽やかさが加わってとってもおいしいです。
【基本情報】
産地:三輪素麺
品名:黄金しょうが(2013年入手)
原材料:確認し忘れました。
製造者:三輪素麺の池利 - 株式会社 池利
住所:奈良県桜井市茅原419
電話番号:0744-43-2421
【素麺品評会】島原素麺「山崎」(株式会社山崎)
島原素麺「山崎」。
2017年8月時点で、これまで食べた中で一番感動した島原素麺です。
桐箱の表書きは
「山崎の名品 手延素麺 山崎」
「山崎」以外の情報がほとんどありませんが、『超最高級品』と『推奨』の金シールが立派感を醸し出しています。
「現代の名工」である四条日山流宗家の田中喜一先生ご推奨だそうです。
【細さ】★★★★☆
紫に金字のかっこいい帯に包まれた麺が20把。
麺はかなり細いほうです。
キリッとした佇まいで繊細すぎず、芯のある雰囲気。
やや黄色みの強い生成りの麺です。
これは美味しい予感。
【茹で心地】
かなりの細麺なので、油断する暇も写真撮る暇もありません。
たっぷりのお湯で茹でて、麺の芯が透き通ったら揚げどき。
茹であがりの手触りはシャリッとまではしないけど、麺に締まりがあっていい感じです。
(盛り付けにセンスがないのはご容赦ください。)
【お味】★★★★★
味は………これは………美味しい……!!
予想以上に美味しすぎて目を見開きました。
しあわせ感があふれだします。
文句なく★5です。
茹で上がっても表面に締まりがあって、しっかり芯が通った歯ざわり。
小麦の味もしっかりしていて、食べていて飽きが来ない。
細麺ですごく美味しい素麺は「ちゅるちゅる」か「シャリシャリ」のどちらかの食感になる印象がありましたが、これは正統派な感じで「つるつる」もしくは「するする」という食感。
甘くてやさしい「高千穂峡つゆストレート(かつおだし)」とも、バシッと酸味を利かせた「スゴだれつゆ」とも文句なく合います。
個性がしっかりしているので、個人的には「スゴだれつゆ」とあわせるのが好きかな。
キリッとした武家のご新造さんみたいなイメージがあります。
【オススメの食べ方】
シンプルに冷やし素麺で食べたい麺です。個性がしっかりしているので、味が強めのつゆでも大丈夫。
麺が強いのでチャンプルーとかパスタ風とか、炒めアレンジも合うんじゃないかな…
と思いますが、もったいないからやらない。
【その他】
こちらの素麺はしおりがすごかった。
手延そうめん「山崎」は、厳選された最高級製麺用小麦粉と沖縄産天日塩・精製した純正胡麻油を国立公園雲仙の伏流水で真心を込めて仕上げております。
この「山崎」は細麺ですがこしが強く、とても上品な風味の良さが、皆さまから広くご好評を頂いております。
すごい、冒頭だけで私のほしい情報が全部書いてある。
油の種類だいじ。材料もこだわってますね。
島原手延べそうめんの起源は、遠く江戸時代まで遡り寛永十四年(一六三七年)「島原の乱」後と言われています。「島原の乱」により島原半島南部の人口が激減したため、徳川幕府は各藩に命令し強制的に人数割等をして人々を移住させました。その移住して来た人々の中から「手延べそうめん」が伝えられたと言われています。
(一説には大和地方・播州・小豆島などの移住者から伝えられたといわれています)
一枚の素麺のしおりで私がほしい情報がここまで網羅されていたことはかつてありません。
言い伝えレベルではなく、歴史的考証に基づいたそうめんの起源の説明。はっきりわかってないことは、きちんと括弧書きで区分して書く。
たったこれだけのことがどれだけ有り難いか…。
山崎さん、ありがとうございます。
ネット販売はされていないようなので、興味のある方は電話やFAXで問い合わせてみてください。
【基本情報】
品名:WS-30
原材料:小麦粉・食塩(沖縄産天日塩)・食用植物油(純正胡麻油)
製造者:株式会社山崎
住所:長崎県島原市南崩山町3338-3
TEL: 0957-64-5552 / FAX: 0957-64-5553
【素麺品評会】三輪素麺「きさらぎの糸」「葛入り生素麺」
奈良のお土産で三輪素麺を2種類いただいたので、食べ比べレポート。
マル勝高田商店の「きさらぎの糸」(写真左)と、三輪山勝製麺の「葛入り生素麺」(写真右)です。
どちらも現地スーパーで購入とのこと。順番にレポートしていきます。
【素麺品評会】きさらぎの糸
【細さ】★★★★☆
麺はかなり細いほうです。
流れ落ちる滝糸のような真っ白の美しい麺。繊細な印象です。
【茹で心地】
細いのであっというまに茹であがります。油断禁物。
水洗い時にシャリシャリとした軽い手触りがあって期待が高まります。
【お味】★★★★★
極細が得意な三輪素麺らしい、シャリっとした歯触りの涼やかな麺。白くて細くて、文句なく美味しいです。
【オススメの食べ方】
あんまりごちゃごちゃ手を加えずに、キリッと冷やして麺つゆと薬味でシンプルに食べたい麺です。麺が繊細なので出汁の効いた薄味のめんつゆがオススメ。
【その他】
三輪素麺の細麺は、とにかく他産地に比べて細い印象があります。
細いのにグダッとならずに、茹でてもしっかりコシと歯触りがあるのが特徴です。
素麺を細く作るのは職人さんの熟練の技術がいるそうなので、いつも「は〜〜、すごいなあ」と感嘆しながら食べます。職人さん、ありがとうございました。
【基本情報】
品名:きさらぎの糸
原材料:小麦粉・食塩・植物油
製造者:マル勝高田商店
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【素麺品評会】葛入り生素麺
初挑戦の「葛入り生素麺」。
素麺への愛が重すぎる私としては、「葛入り…?果たして私はこれを素麺と認められるのか…?」と懐疑的な感じで挑戦しましたが、すみません、結構ちゃんと素麺でした。
【細さ】★★☆☆☆
ちょっと太めで生成りの麺。
【茹で心地】
普通の素麺とは違うので茹で上がりの見極めが悩ましい。
すーっと水がはいって、ぷよんとしてきたら茹で上がり。
【お味】
ぷりっとした弾力があって思いのほか味も食感もしっかりしています。葛きりっぽい感じかと予測してたけど、思ったより素麺らしい印象です。
油を使っていないのであっさりつるつる入りますが、麺の甘さや香りはしっかり出ています。普段「素麺ってあんまり味しないよね」と思っている方には喜ばれるかもしれません。食感はちょっとひやむぎ寄り。
【オススメの食べ方】天ぷらとの相性がいい。イワシ天や野菜天をのっけるとしあわせ感があります。麺が個性的なので強めのつゆと合う。スゴだれつゆとも相性◎
【その他】
賞味期限が90日と短めなので要注意。
【基本情報】
品名:葛入り生素麺
原材料:(確認し忘れました)
製造者:三輪山勝製麺
※レポートした生素麺は賞味期限が短いせいかネット販売していなかったので、半生素麺のリンクを貼っています。
【めんつゆレシピ】スゴだれつゆ+あおさ
最近は麺つゆにあおさを入れて食べるのにはまっています。
作り方は、スゴだれつゆにあおさを入れるだけ。簡単。
アオサとごま油がとっても合うんだ、これが。
どんな素麺ともあいますが、南関素麺との相性が最高です。
(スゴだれつゆの作り方は過去記事をご覧ください)
あおさは粉になってるやつじゃなくて、海藻の形が残っている乾燥アオサです。
対馬の乾燥あおさが美味しかったんですが、ネットでは見当たらなかったので品質が近そうなのを貼っておきます。
開封後は冷凍庫にいれておくと、新鮮な状態で長く保管できますよ。