無辺草子

散文。雑文。短文。

静かな場所を探して 玉川上水駅(立川市)

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 玉川上水駅西武拝島線に位置し、新宿まで約40分の距離にある。駅名にある玉川上水は、今から約360年前に江戸の町へ飲み水と防火用水を引くため作られたもので、完成時の長さは羽村から四谷大木戸までの43㎞に及ぶ。駅のすぐ南を流れている。近辺の水深は40センチ程度でとても浅い。

 駅から3分ほど東へ歩くと、上水で運んできた多摩川の水のゴミを取り除いて東村山浄水場に送る小平監視所がある。監視所と呼ばれるのは、送水のかたわら水量や水質のチェックも行っているためだ。

 1965年には小平監視所から下流の流れが途絶えた。淀橋浄水場が廃止されたためだ。だが東京都の清流復活事業により、1986年から水が戻った。ただし流れているのは下水を浄化した再生水だ。「コイが死なない程度の水、飲まないほうがいい」(住民)という話だったが、はてさて。透き通っていて綺麗だったが、ボルビックのようにはいかないのだろうか。

 上水のまわりは雑木林が保全され、遊歩道が整備されている。きっちり設置されたフェンスには閉口するが、都民の水を守るための措置らしい。本当かしら。

静かな場所を探して しんやま親水広場(東久留米市)

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 しんやま親水広場には、ほとんど自然のままの小川が保存されている。流れは蛇行しており、ほとりに草が生い茂っている。川沿いには遊歩道が整えられ、桜、紅葉や桑の木が植えられている。昼間には鴨が飛んできて餌を探し、いろんな種類の小鳥がさえずる。子どもたちはたも網を両手で操って生き物を採っている。

 日が昇っているあいだはとても賑やかだ。だが夜になると水の音だけになる。静寂をせせらぎが貫く。その場所をオレンジ色の街灯が照らす。団地のあいだに幻想的な空間が現れる。

静かな場所を探して 新宿御苑

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 東京に住んで幾星霜、電車に乗って街から街を移動する毎日だ。静かに過ごせる場所を見つけることができない。車の音、話し声、足音、エアコン、広告。あらゆるノイズから離れ、自然のなかで沈黙にゆっくりと浸ることのできる場所はないだろうか。静けさを求めて、新宿御苑へ向かった。

 新宿御苑新宿駅から徒歩10分。約58万3000㎡の広大な敷地に、日本庭園、イギリス式庭園、フランス式庭園、温室などの施設がある。四季を通してさまざまな植物を楽しめる。桜や紅葉が有名だが、いまは紫陽花や夏椿が見頃だ。バラも楽しめる。さまざまな木々が織りなす深緑も魅力がある。

 200円支払ってなかに入ると、そこは別世界だった。静かだ。雑踏も広告も無縁。車の音もほとんど気にならない。目立つのは小鳥のさえずりと、遠くの芝生でだるまさんころんだをする子どもたちの声だけ。楽しそうに遊んでいる様子に目を向けていたら、こっちまで笑顔になってしまった。たしかに「都会のオアシス」だ。

基地のある町 神奈川県大和市を歩いて

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 「すっごいうるさいです」厚木基地から飛んでくるヘリコプターや飛行機の騒音について、基地に隣接する大和市に住む女性はこう答えた。昨日も今日も飛んでいた。特に先月は多かったという。アメリカ軍の原子力空母「ロナルド・レーガン」の艦載機がやってきたときの騒音は、海上自衛隊のヘリや飛行機の比ではないらしい。

 14日は「ロナルド・レーガン」が出港しており、アメリカ軍機の飛来はなかった。だが自衛隊機の爆音も場所によってかなり大きかった。厚木基地については、住民から自衛隊機およびアメリカ軍機の飛行差し止め訴訟が提起されているが、その場に立って実際に音を聞いてみると、訴えはもっともだと思えてくる。自衛隊も住宅密集地を避けて飛行しているようだが、翼の下には少なくない数の民家があるし、公園や畑の上を飛ばざるを得ない。

 私は大和市上草柳を1時間歩いたが、その間自衛隊機に15回遭遇した。4分に1機のペースだ。ヘリは低空で旋回を繰り返し、輸送機は着陸態勢で厚木基地方向へ。爆音が止むことはほとんどなかった。長い間聞いていたおかげで一時的に雑音に強くなり、帰り際に通った夜の新宿の喧騒が、耳に心地よく感じられた。怪我の功名である。

 上草柳の公園では小学校低学年の子どもたちが遊んでいた。騒音について尋ねると、急に真面目な表情になって、怒りを湛えた様子で「うるさい」と答えた。ヘリコプターが飛んできても、まるで気にせずに遊んでいるように見えたけど、あの子どもたちは、本当はいっぱい我慢しているのだろう。

 厚木基地周辺の人たちが騒音に煩わされずに暮らせるよう、アメリカ軍と日本政府にはできるかぎりの手を打ってほしいと思う。