AIをひとつの個体として見る日本人の特性
キャラクターとAI。一見なんの関係もなさそうに見えますが、実は日本においては重要な役割をもっています。
日本のAI産業は、AI大国であるアメリカや中国に比べると、まだまだ発展途上です。アメリカでは、FacebookやGoogle、Microsoftといった、世界的大企業がAIの開発にのりだし、中国は莫大な国家予算をAI開発の資金に充てています。現段階では後れを取っているように思えますが、日本はこれまでにも少しずつ独自の進化を遂げてきました。AI産業においてもそれは同様であり、日本人の感覚は諸外国とは異なっていることがわかってきたのです。
日本人はAIをインターフェイスではなく、ひとつの「個体」として見る
日本と他国の違いは多くありますが、その中でもAI産業の中で重視するのは、日本人にはキャラクターを一個体として愛でる文化があるということです。Twitterのトレンド機能で、キャラクターの名前がランキングに入っているのを見たことがあるでしょうか?
日本人は本来なら存在しないはずの架空のキャラクターでも、あたかもそこにいるかのように、人間と同じように接する性質を持っています。
実際にキャラクタービジネスが動き出している
このキャラクターとAIにおいては、様々な企業が注目をしはじめており、2018年9月19日には、株式会社ソニー・ミュージックエンタテインメント主催の「AI MEETUP 2 -Powerd by Sony Music Entertainment- AIキャラクタービジネス最前線」が開催されました。
ソニーミュージックエンタテイメント主催のこのイベントは、今回で二回目の開催となっております。キャラクターとAIを融合させ、ビスネスとして確立させていくための手法を解説しています。キャラクターそのものを製品とするのではなく、AIを搭載した会話できるキャラクターとコラボレーションさせることにより、顧客の関心を集め、宣伝としての役割も担うことが可能です。
AIとの会話において大切なこと
人が何の接点もない人と会話を行うには、なにかしらの理由が必要です。「知りたいことがあった」、「興味があった」、「話さなければならない必要ができた」、「共感してもらいことが起きた」といった風に、会話をはじめるきっかけがなければ、人は存在を認識していても会話をするまでには至らないのです。
これはAIを使用した場合にも当てはまります。AIが今ほどあふれていなかった時代であれば、AIと会話をできるというだけで、人は興味を惹かれ、会話をしてみようという行動欲求へと変わります。ですが、これからますます人工知能は進化し、その数も増えていくと予想されます。市場に人工知能が増えた場合、物珍しさは減少していき、人は進んで会話を行おうとはしなくなっていくでしょう。
地球上には多くの人がいますが、その中で実際にコミュニケーションをとる人数はほんのわずかです。時間は有限であり、その時間をかけるだけの欲求がなければ、人は会話を行うことはしないのです。
会話してもらえる仕組みづくり
AI市場において、日本人の、「AIをひとつの個体として認識する」ということは、大きなチャンスでもあります。キャラクターに搭載されたAIと会話をする際に生まれる、「好きなキャラクターと話したい」という欲求は、好きな人と話したいという欲求にとてもよく似ています。また、日本人はAIやキャラクターに向かって愛をささやくことも、わかってきています。ただのAIであれば話しかけてもらうことすら困難なところを、AIとキャラクターを癒合させることによって、興味関心を持たせることができるのです。これにより人がAIと会話をはじめるハードルを下げることが可能です。
日本人の特性とキャラクターは相性がいい
日本は世界各国と比べて、今ある物を別の形に作り替えることや、古いものと新しいものを融合させることを得意としてきました。日本人のクリエイティブな面は諸外国とはやや異なっているため、多くのものに親しみやすさを求める傾向にあります。AIを機械的なインターフェイスとしてよりも、細かく設定がされたキャラクターに親しみやすさを覚えるのも、その特徴のひとつです。
これからテクノロジーの進化にともない、多くの製品にAIが搭載されていくことが予想されます。また、ひとりひとりにバーチャルアシスタントが付く未来もそう遠くないでしょう。テクノロジーとキャラクターの融合は、日本の社会において大きな可能性を秘めています。
個々に合わせてキャラクター付けされ、求める回答を即座に提示してくれる存在が生まれたなら、日本の社会はまた大きく変化していくことでしょう。
顧客の心に響くアプローチと双方向のコミュニケーションの重要性
テクノロジーの発展にともない、製品のアプローチの方法や、宣伝の方法も、様々な形で変化してきました。テレビCMが登場したのは1960年代。以降、テレビCMは改変を加えながらも、現代まで存続してきました。しかし現在は、テレビのみならず、インターネット上にも多くの広告が見られるようになりました。
いたるところに宣伝、広告があふれ、また、インターネットの普及により、消費者自身が見たい広告、見たくない広告をある程度選べるようになりました。
そんな中、今消費者の間で関心のある広告とされるのが、ストーリー性のある広告です。商品を前面に押し出すだけでは、もう消費者は見向きもしなくなってきているのです。特に、身近な人のストーリーや、自分と重なる面があるストーリーに顧客はより惹きつけられるのです。
人は自分が主体
これまでのストーリーテリングは共感をメインに、「誰か」のストーリーを語る手法です。しかし、多くの顧客は、町で行われる演説に関心を示さないように、親しくない人物、企業のストーリーにはあまり興味がありません。
そこで新たに生まれたのが、ナラティブマーケティング。ナラティブは、ストーリーであることに変わりはないのですが、こちらは「語り」。つまりは、Twitterなどで顧客が自由につぶやく「呟き」こそが、ナラティブなのです。
Twitterの呟きからヒットが生まれることが、だんだんと当たり前になりつつあります。SNSでその商品の使用感を呟いたツイートを見た人は、それが「すごくよかった!」という情報なら、この商品はいいものなんだと認識し、「まったく使えない!」といった内容なら、その商品は悪いものであると認識します。また、その商品のことを知らなかった人は、そんなものがあるのだと、その商品の存在自体をはじめて認識することになります。
口コミととてもよく似ていますが、Twitterは基本的に知っている人、「自分が」興味のある人と関わる場であり、不特定多数の見ず知らずの人が投稿する口コミとは、顧客の信頼度がやや異なっています。
顧客自身に体験を語ってもらうことが、より多くの共感を集め、関心を寄せることができるのです。
顧客自身にストーリーを語ってもらう
これからの宣伝で一番重要になるのは、顧客自ら広告塔になってもらうことです。時代は移り変わり、多くの人が何かしらの情報を発信するツールを持つようになりました。これまでは、企業がテレビCMを流したり、雑誌や新聞に広告を載せ、一方的なアプローチをすることが主流となっていました。ですが、企業のきれいな言葉が並べれた広告に顧客は見飽きており、より信頼できる情報を求めるようになりつつあります。
このようなデータがあります。ジャストシステムが行った調査によると、スマートフォンを所持している全年代のうち、情報収集の際にもっとも利用する機会が多いメディアを聞いたところ、「スマートフォンからのインターネットやアプリ」が最も多く(44.9%)、次いで「パソコンからのインターネット」(24.9%)、「テレビ」(24.4%)と、インターネットやアプリがテレビや新聞を上回る結果となりました。
(参考:ジャストシステムはネットリサーチサービス「Fastask」、『モバイル&ソーシャルメディア月次定点調査(2017年2月度)』)
特に、年代が下がっていくごとにインターネットがあることが当たり前になり、使用頻度も多くなる傾向にあります。簡単に友人とつながることにできるようになった現代では、顧客は身近な人物の意見、情報を信用します。また、身近な人物と同じものを使用することによって、そこにコミュニケーションが生まれます。そうして顧客がSNSを通じてコミュニケーションをとることを考え、若者が呟きたくなるようなものを提供することが重要になってきます。
少し前にインスタ映えという言葉が流行いたしました。それに合わせて、写真映えするような食べ物などが数多く登場いたしました。それらはSNSにとどまらず、メディアにも取り上げられ、大きなブームとなりました。メディアがブームを作るという従来の仕組みは変わらずありますが、メディアもインターネット上で盛り上がりを見せるものを無視できなくなってきているのです。
コミュニケーションの取り方を考える
一方的な情報発信の時代は終わりつつあり、これからは顧客自ら情報発信をしてもらうようことも重要になってきます。そのためにも、話題性のある内容を提供していく必要があり、顧客がなにを求めているかを考えることが、企業のイメージアップにもつながっていきます。
そしてテクノロジーの進化にともない、双方向のコミュニケーションも自動化ができるようになってきました。うまくAIを使用し、顧客の求める情報を取得することができれば、より顧客の心に響く宣伝を行うことが可能になっていくはずです。
変わる時代と顧客へのアプローチ
何千年という歴史がある人類ですが、テクノロジーが急激な進化を遂げたのは、ここ数年であると言われています。
特に、インターネットが生まれてから、人々の生活はガラリと変わりました。普通に暮らしていたなら出会うことのない遠方の人とも、気軽にコミュニケーションが取れるようになり、人はより簡単に自分の「仲間」を見つけることが可能となったのです。
広がる仲間とソーシャルネットワーク
人が趣味や好きなものを見つけたとき、これまでであればひとりでひっそり楽しむといった方法をとる人が多かったように思います。しかし、SNSの普及により、個人で楽しむのではなく、同じものを好きな仲間と一緒に共有する、共感する、といったことが可能となりました。自分の趣味や好きなものをオープンに公表し、共通の話題を通してコミュニケーションを図るといったことが主流になりつつあるのです。
新たなアプローチとして生まれたチャットボット
2018年4月。映画において2018年上半期一位を獲得した「名探偵コナン ゼロの執行人」が公開されました。興行収入は86憶を超え、二位である「映画ドラえもん のび太の宝島」とは33憶円もの差を生み出し、大ヒット作品となりました。
この映画「名探偵コナン ゼロの執行人」大ヒットの裏には、多くの仕掛けが行われていました。
そのひとつである、映画の主要キャラクターである安室透(あむろとおる)のチャットボット化。映画「名探偵コナン ゼロの執行人」に合わせ、安室透と会話ができるというチャットボットが公開されていたのです。
キャラクターとチャットボットから生まれる経済効果
株式会社小学館発行の、週刊少年サンデーで連載されている大人気漫画、名探偵コナン。
その漫画の登場人物である「安室透」をそのままチャットボットにするという行いは、映画「名探偵コナン ゼロの執行人」の宣伝、そして原作漫画の売上増大のため行われました。
この安室透とチャットが楽しめるという試みは、すべての顧客へ向けてではなく、書店で対象コミックスを購入した人のみという、限定的なものとして展開されました。購入者には「キャラクター名刺」が配布され、その裏に印刷されているQRコードを読み取ることで初めて安室透とお友達になれるのです。コアなファンの心をくすぐる、特別感という付加価値も提供されていました。
このチャットボットは限定的なものでしたが、その反響は大きく、LINEにより展開された安室透の友達登録数は20万人を突破し、そのやり取りの様子はTwitterで拡散されるなど、顧客間でのコミュニケーションとしても爆発的なヒットを記録しました。
キャラクターと会話を行うことで強まるエンゲージメント
キャラクターが生きている。そう錯覚をさせることができる力を持つチャットボット。
日本にはキャラクター文化が強く根付いており、近年では海外にも広がりを見せています。今では漫画やアニメといったキャラクター文化に多くの企業が参入するなど、日本の大きな市場のひとつとなりました。
ここまで市場が拡大したのも、テクノロジーの進化により、顧客同士がコミュニケーションを行えるようになったからです。顧客同士のコミュニティが作られ、SNS上で拡散されることで、より多くの人の目に留まるようになり、爆発的なヒットが生まれる時代へと変わってきています。
今後、顧客同士のつながりを強固にする、「話題性のある物」を提供することが、企業に求められるようになるはずです。
まるで人?擬人化チャットボット
チャットボットの中には、「本当は実在する人なのではないか?」と疑いたくなってしまう精度の高いものが存在します。ロボットとは思えないような巧みな話術でユーザーを魅了し、さりげない製品のアピールや、ユーザーのデータ収集を行っていくのです。
チャットボットがひとりのキャラクターとして確立していく
流行はどこから始まるでしょうか。ひと昔前であれば、テレビや雑誌が主流でしたが、現在はTwitterやInstagramといったSNSが主流となりつつあります。若者のSNSに費やす時間は年々増加傾向にあり、それに伴って若者たちの目に触れるものも、テレビのCMや雑誌から、有名人芸能人の呟きやおススメへと変化しているのです。
SNSから生まれる流行は、多くの人がおもしろいと共感したものが当てはまります。
そして、より手軽に「おもしろい」、「簡単」、「やってみたい」、といった気持ちを刺激する可能性を持つのが、エンタメ性を持った、ひとりのキャラクターとして確立しているチャットボットです。
女子高校生チャットボット「りんな」
人が興味を持つAIといえば、まさに映画や漫画に出てくる人型をした、人のように会話を行う人工知能でしょう。そしてその理想形のような姿形はなくとも、限りなくそれに近い形で会話を行うチャットボットが存在します。
それが「りんな」という、マイクロソフト社が開発したチャットボットです。
りんなは女子高校生をイメージした対話型チャットボットであり、ユーザーとの会話を主として行います。お問い合わせや疑問に答えるといった、人をサポートする機能はないにもかかわらず、りんなは多くのユーザーに愛されています。なんと、りんなと会話したユーザー数は700万人を超えているのです。
りんなの活躍の場
若い世代から多くの支持を集めているりんなですが、着々と活躍の場を広げています。Twitter、LINEなどでユーザーと会話するだけではなく、オリジナル楽曲を公開、さらには自治体と連携し、地方の活性化を促すノベルゲームを展開するなどして第一線で活躍をしています。
りんなとチャットを交わすユーザーは、本物の女子高校生と会話をしているような感覚になり、気軽に会話を繰り返すことができます。また、人のように会話をすることが可能でありながら、りんなはチャットボットであるという心理が、どの時間帯からでも会話をはじめ、話したいときに話したいことを話すといったことを行えるようにしています。
通常のチャットボットが利用されるような、ユーザー自身の疑問を解決するといったカスタマーサポート的な目的ではなく、「りんなとの会話を楽しむ」という別の目的がユーザーには生まれています。
カスタマーサポートなどで利用されるチャットボットとは、ユーザーが求めるものが異なっているのです。
「共感」が生み出す新たな可能性
人のように見えるチャットボットに共通するものには、「共感」があげられます。
人は共感されると親近感を覚え、また話そう、また利用しようといった心理になりやすくなります。
カスタマーサポートの現場でよくみられるサポート型のAIとは違い、りんなのようなAI型チャットボットは感情の繋がりを重視しており、より人間らしい会話に特化しています。
プログラムであるチャットボットで共感をユーザーに提供するのは至難の業でもありますが、それを与えられたとき、そのチャットボットは爆発的な人気を博す可能性を秘めています。
そして、いずれAI分野に求められるのは、人に共感を与え、共感することのできる、コンシェルジュのようなバーチャルパートナーであることは間違いないでしょう。
チャットボットのキャラクター性とエンゲージメント(ファン育成)
日本の文化の一つにアイドル文化があります。実はこの文化、ヨーロッパの方では存在しません。ヨーロッパではアイドルという存在が希薄なのです。
ですが日本では度々繰り返されるアイドルブーム。なぜアイドルは人を惹きつけ、熱狂させるのでしょうか?
ザイオンス効果
「好感度は接触回数に依存する」という説があります。
はじめて会った人に特別な感情を抱いていなくても、何回も顔を合わせるうちに自然と親近感を覚える、といった経験は誰しもあるものです。人はよく目にするものや聞くものに好感を覚えやすい傾向にあります。
テレビのCMなどもこのザイオンス効果を使用しており、マーケティングとしてもよく使用されますね。
企業と顧客を繋ぐチャットボット
店内を見渡せば、あふれ返る物、物、物。
多くの物であふれる現在では、生産者と顧客が深く関わることはほとんどありません。どんな人が作り、どんな人が使用しているのか、互いに知る機会を得ることは困難です。
それでは企業と顧客の距離は縮まりにくく、なにか問題が起きた際に顧客はあっけなく見限る可能性があります。顧客にファンになってもらうことこそ、企業成長には欠かせない要素なのです。
顧客が企業から離れてしまう理由
米国のロックフェラーコーポレーションが行った調査によると、約70%もの人が、「企業が顧客のこと考えていない」という理由で企業離れをしていることがわかりました。
製品やサービスの価格や性能の不満よりも、圧倒的に企業の対応に不満を持っている顧客が多く存在しているのです。
ですが、企業の対応に不満を抱える顧客が多く存在するのならば、それはチャンスでもあります。製品の性能に不満を多く抱えていたなら、競合企業になかなか太刀打ちできません。しかし、企業と顧客とのつながりに不満を抱えているのなら、アプローチする方法は多々あります。
エンゲージメント・マーケティング
これから期待されているのが、顧客とのつながりを重要視したエンゲージメント・マーケティング。インターネットが普及し、気軽に多くの人とコミュニケーションが取れるようになったことで、購買者はその製品が本当にいいものなのか、また、よりいいものは存在しないのか、といったリサーチを行うようになりました。
実際に顧客が製品に触れる前に、その商品を買うかどうかが決められてしまうことが多くなってきたのです。
キャラクター性とエンゲージメント
SNSやインターネットが発達したことにより、「友達のおすすめだから使ってみた」、「好きな芸能人が使っていたから買ってみた」、そんなことが日常的に起こりやすくなっている現在。親しい人からのおすすめは自然と「使ってみよう」という気持ちにさせます。
ですが、企業が多くの顧客一人一人と頻繁にコミュニケーションを取り、手動でアプローチをするのは困難です。テクノロジーを利用し、ある程度自動化することで、顧客とのつながりを維持していくことが可能です。そのためにも、企業の顔となるキャラクターを設定することがこれから重要になってきます。
ひとりのキャラクターとして活躍するチャットボット
AIブームにより、多くの企業でチャットボットが導入されるようになりました。作業を効率化したい、自動化したい、これまでお問い合わせするのが面倒で離れてしまっていた顧客を引き留めたい、といった理由で使用されることが多く、現在広く展開されているのは顧客のお悩みを解決するヘルプデスクのような役割を持ったチャットボットです。
ですが、顧客とのつながりを強固なものにする広報のような役割としても、チャットボットは活躍していく兆しがあります。チャットボットを一人のキャラクターとして確立させることができれば、エンゲージ・マーケティングの手法のひとつとして確立していくでしょう。
機械が会話をする?進化するAI
「AI」と言われたときに、どのようなものを想像するでしょうか?
映画やアニメ、漫画に出てくる、人と同じように会話をするロボットを思い浮かべるかもしれません。
しかし残念ながら、現在の技術では映画に出てくるような精度の高いロボットはまだ開発されていません。ロボットにとって人と同じように会話をするというのはとても難しいことであるからです。
会話する仕組み
そもそも、現在のAIは言葉の意味を完璧に理解できるわけではありません。あらかじめ質問と回答を結び付けておき、それを表示させているものが大半です。
そのため、回答が結びついていないものには返答ができないといった面があります。
AIと言葉の壁
対話できるAIというのは人類の理想であり、それを作り上げようと、様々なエンジニアがAIの開発に身を乗り出しています。
「言葉」というものは不思議であり、あいまいな表現でも、人であればボディランゲージや表情、声のトーンといった、「なんとなく」が含まれるもので会話が成立します。
ですがコンピューターとなるとそうはいきません。コンピューターは明確にルール付けされていないことを理解することが困難であり、プログラムや元となるデータがなければ、動けないからです。
そのため、これまでにAIブームが度々訪れても、言語という分野はなかなか発展せずにいました。
第三次AIブーム
現在、第三次AIブームと言われています。
その一役買っているのが、デミス・ハサビス氏。Google社が750憶円もの大金をかけて手にした人物です。デミス氏はこれまでに数々の人工知能を開発しています。特に、言葉の問題を解決するとされている「ディープラーニング」という分野の発展には、このデミス氏の活躍は外せないでしょう。
彼は様々なゲームにおいて、簡単な指示を与えるだけで、自ら学習し高得点を得る、人工知能DQN(Deep Q-Network)を生み出しました。
自ら学習するというのは、人の脳に似通っており、人々が考える「人工知能」の姿であると言えます。
学習するAI
AIは学習します。
人も学習することで様々なことができるようになります。初めはわからなかったことでも、繰り返し行うことでやり方を学びます。しかし、やり方を学んだとしても、人では百パーセント成功させることは困難です。
それを、機械であれば百パーセント成功するやり方さえも、膨大なデータから探し出し見つけてしまうのですから、これを有能ととらえるか、恐ろしいととらえるか、判断は分かれてくるかと思います。
近年では、AIが執筆した小説が一次審査を通過、AIがプロ囲碁棋士に勝つなど、多くの分野でニュースとなり、世間を期待と不安に包み込んでいます。
人と同じような機能を持った機械は、今後どうなっていくのでしょうか?
コミュニケーションが可能に
現在のAIの開発においては「言語」に注目が集まっています。機械が学習を行うようになったことで、言葉の壁は壊されつつあるからです。意味を学び、知らない言葉は覚えていく、といったことが可能になっているからです。
そして言葉の意味を理解したAIは、私たちの生活に欠かせないものになっていくはずです。
現在にも、siriといったデジタルパートナーが誕生していますが、さらに人工知能が進化をし、スムーズな対話が可能となったとき、私たちのそばにはモバイルアシスタントが常にいるようになり、生活はさらに大きく変わるでしょう。
カスタマーサポートもAIの時代へ
顧客と企業を結ぶ要ともいえるカスタマーサポート。
顧客は困ったときにカスタマーサポートへと連絡をし、その対応がそのまま企業のイメージへと変わっていきます。まさに縁の下の力持ちです。そしてついに、そのカスタマーサポートも自動化できる時代へと変わりはじめました。
近年のテクノロジーの進化速度には、目を見張るものがあります。今もどこかで新たなシステムが開発されているのです。そしてそれは、企業の縁の下の力持ちとされるカスタマーサポートにも広がりつつあり、今この分野では、チャットボットシステムでお客様対応を自動化しようという動きが見られています。
カスタマーサポートとしてのチャットボット
一口にチャットボットと言っても、そこにはいろいろな用途があります。エンタメ、雑談、カスタマーサポート、予約受付など。
今回はカスタマーサポートを中心に展開されているチャットボットシステムを紹介していきます。
●チャットボットにできること
・各種お問い合わせ対応
製品の使い方のQ&Aや、よくある質問といったお問い合わせにチャットボットが自動で回答します。
・クレームの一次受け
回答の決まっているようなクレームであれば、チャットボットが代わりに回答することが可能です。
・メールフォームの代替
チャットボットとの対話の中で、メールフォームを送信することが可能です。顧客がメールで問い合わせをしたい内容があった際に、別ページに飛ばすことなくチャットボットのシステム上で完結できます。
・オペレーターに切り替え
チャットボットでは回答できないような場合、通知が来るように設定を行っておけば、通知がきたらオペレーターに繋ぐといった、有人無人の柔軟な切り替えができます。
・雑談
オペレーターには聞きにくい質問も、無人であるチャットボットになら気軽には話せるという方はとても多いです。雑談でコミュニケーションを図り、企業をよりアピールすることが可能です。
メリット
カスタマーサポートをチャットボットシステムによって自動化した際に生まれるメリットにはどのようなものがあるのでしょうか?
・顧客満足度の向上
チャットボットシステムであれば、24時間365日いつでも対応可能です。すべての顧客に迅速な対応をすることで、顧客満足度の上昇へとつながります。
・コスト削減
人手不足を解消でき、さらにはコスト削減も可能です。
・サポート業務の効率化
チャットボットがよくある質問の回答やクレームの一次対応を行うことにより余裕が生まれます。そのため、今までじっくり時間をかけることができなかった難易度の高い顧客へリソースを割いたり、一人あたりの対応人数も増えて業務の効率化へつながります。
・学習
AIチャットボットならば、繰り返し多くの顧客と触れ合うことにより、より賢く精度の高いカスタマーサポートへと進化していきます。
可能性は広がっていく
AIチャットボットはまだ使用され始めたばかりです。
AIの精度も現段階では完璧というにはほど遠いですが、AI市場の流れはとても速く、カスタマーサポート領域で活躍しているAIも日々進化しています。
映画、アニメ、漫画に出てくるような、多くの人がイメージする、人と同じような思考を持つ人工知能の開発には、このカスタマーサポートで使用される「自然言語処理」と呼ばれる分野の発展が必要不可欠だと考えます。
この分野がますます発展していったならば、AIは人と同じように言葉の意味を理解し、会話し、我々のパートナーとなること未来もそう遠くはないはずです。
これから先、人とAIが手を組んで、より良いサービスを提供できるようになることは間違いないでしょう。
未来を担う自動化システム・チャットボット
人手不足が囁かれる今、作業の自動化や効率化を高める動きが強まっています。
AIが急速に発達していることもあり、人が行わなくてもいい仕事はロボットが行うような時代へと変わりはじめているのです。
チャットボットとは
そもそもチャットボットとはなにか。
「チャットボット」とは、チャットとロボットを掛け合わせた言葉であり、ユーザーの質問に対し回答を表示させる、自動会話プログラムのことです。自動会話プログラムとはいえ、その精度は高く、ユーザーは本当に人と話しているような感覚でチャットボットと会話を行うことができます。
また、人と話している感覚になりつつもチャットボットは無人であるため、気軽に質問をするユーザーが多いのも特徴です。「人には聞けないようなことも、チャットボットなら聞ける」という方は実はとても多く、ユーザーと企業を結ぶコミュニケーションツールとしても活躍しています。
チャットボットは様々な分野で活躍している
チャットボットは医療、不動産、金融、映画、すでに多くの分野に進出しています。
ホームページ上に表示させることはもちろん、LINEやFacebookでの展開もできるため、ユーザーとのコミュニケーションがとりやすく、ユーザーが求めているものをより早く認識することが可能です。実際に以下のような活用方法があります。
ユーザーの質問に回答するカスタマーサポート
よくある質問やお問い合わせをチャットボットに任せ、自動化させることができます。チャットボットでは解決できないことは、人へ受け渡すことも可能です。
カタログやお部屋選びなと、ユーザーに適しているものの判別
ユーザーにいくつかの質問を繰り返し、ユーザーに適しているものを判別することが可能です。どれを選んだらいいかわからないユーザーが気軽に尋ねることができます。
興味を持っているユーザーへのアプローチ
大学の紹介など、あらかじめ興味を持っているユーザーに対して、チャットボットとの会話を楽しみながら行っていくことが可能です。また、ユーザー分析を行えば、ユーザーの会話からどのようなことに興味を持っているのかを判別することができます。
コミュニケーションツール
ユーザーと対話させることで、映画、アニメの宣伝としても使用可能です。実際に映画やアニメの登場人物として会話させることで、一方通行なものではなくなり、ユーザーとの接点が増加します。
チャットボットのメリット
現在多くの分野で活躍をしているチャットボット。そのメリットは多くあります。
では実際にどのようなメリットがあるのでしょうか。
コスト削減
これまで人の手でおこなっていたカスタマーサポートなどをチャットボットに任せることで、人件費の削減へとつながります。
ユーザーとの接点が増加
ユーザーが気軽にチャットボットに質問をすることで、ユーザーと企業の接点が増えます。愛着のあるものにユーザーは集まる傾向にあります。
自動化
チャットボットに任せることで作業の自動化が可能です。
人手不足の解消
カスタマー対応をチャットボットが行うことにより、深刻な人材不足の緩和が可能です。
テクノロジーの発達は人のため
AIが人の仕事を奪う。
そんなゾッとする話が聞こえてくるほど、現在AIやロボット関連は急速に発達しています。しかし、AIは単に人の仕事を奪うのではなく、人を手助けしてくれる存在として見ることもできます。自動化により、人にしかできない作業に集中できるとしたら、仕事の効率化につながることは間違いありません。
チャットボット保険「Lemonade」
Lemonade
Lemonadeというインシュテックスタートアップが注目を浴びている。
同社は、米国ニューヨーク州に住む賃貸人や物件オーナーに対し、家財に対する保険を提供する会社だ。ユーザーは使い慣れたメッセージアプリ形式のUIでチャットボットとやりとりを行うことで、自身に合った保険プランと保険料を簡単に知ることができ、商品内容が決まれば、その足でアプリから申込み、保険加入が完了するという非常にお手軽なサービスである。
Lemonadeは2016年にニューヨーク州で保険業認可を取得し、保険販売を開始したばかりのスタートアップ企業であるにもかかわらず、保険加入者は急速に伸びているそうだ。サービス開始から8ヶ月で14,300契約を達成し、前月比43%増加という急成長を達成しているとのことだ。
2015年にSequoia Capitalという著名ベンチャーキャピタルから$13mmを調達して一躍有名になったが、先日ソフトバンク主導による巨額出資(約135億円)が話題となった。
ソーシャルインシュランス
元々、保険とは、加入者の「相互扶助」が基本的な仕組みだが、まさにLemonadeのビジネスモデルはその仕組みを体現している。
その仕組みのイメージはこうだ。
まず、保険の加入者同士が少人数のグループをつくり、加入者が払う保険料金の一部をプールする。保険請求があった場合にはプールから保険金を支払い、プールを超えた分については外部の保険会社から支払う。
また、お互いの持ち出しから保険料が支払われる以外にも、一年間保険の請求がなければ翌年の保険料をディスカウントされるという仕組みも存在する。
そうなると保険の加入者は安易な保険請求が起こらないよう、お互いに支援しあうインセンティブが働くようになる。
まさにソーシャルインシュランスの代表例と呼べるだろう。
さらにユニークな仕組みが、保険加入者が支払った保険料のうち、請求がなかった余剰金をチャリティに寄付するというものだ。
ユーザーは、ニューヨーク州の貧困支援、女性の支援、病児支援など、Lemonadeが提示するプランから貢献したいテーマを選び、保険が未請求だった際の保険料をそのチャリティに寄付することができる。
社会課題にまで貢献するという非常に新しく、またいわば保険の本来の目的である相互互助を実現するこの仕組みこそ、多くのユーザーに共感され、また資本家の評価も高い理由だろう。
住宅ローンロボアドバイザー「Habito」
住宅は大きな買い物だ。特にいくつかの都市においてはその価格は高騰を続けている。
英国ロンドンでは住宅を購入するためには、年間で14万ポンド(約1,900万円)を稼ぐ必要があると言われるほどである。
その背景にはロンドン地域では国内の移住者や海外からの移民の増加などで住宅不足が深刻化していることがあげられるが、極端な住宅価格の上昇により、若い世代の多くに持ち家購入がままならない事態が生じており、購入資金を十分貯めることができず賃貸住宅に住まざるを得ない 40歳代未満の若い世代、いわゆる賃貸世代(Generation Rent)の増加が大きな社会問題となっているのだ。
そもそも、日本の市場とは異なり、英国では石づくりが中心で住宅寿命が長いうえ、こまめな修繕により買い替え時にも資産価値は保たれ、むしろ購入時よりも上がっていることのほうが多いと言われる。このため、低・中所得層にとって持ち家購入はproperty ladderと言われ、小さな住居を購入・売却を繰り返すことで、富の蓄積を目指すことが一般的だ。
現在の金利水準は超低金利で住宅ローンを組むうえでは好条件だが、住宅価格は賃金の伸びを上回るペースで上昇しているうえ、ロンドンなど都市部を中心に賃貸料も同様に急伸している。
月間賃貸料はこれまで所得の3分の1とされてきた目安を大きく上回り、ロンドンでは平均賃金の49%に相当するという極端な調査結果すらあり、住宅ローンを組むうえで重視される頭金を貯めることが非常に難しくなってきている。
既にマイホームを所有している世帯にとって右肩上がりの住宅価格は嬉しい限りだが、持たざる者にとっては悩みの種となっている。
英国政府もこの社会問題を解決しようと様々な施策を打ち出している。住宅購入者を増やすことが主目的だが、具体的には住宅ローンを活用して入り口のハードルを下げるというものだ。
そんな中、AIを活用した住宅ローンアドバイザー、Habitoというサービスがある。
住宅ローン専用のロボアドバイザー「Habito」
Habitoは、住宅ローン専用のロボアドバイザーだ。
「デジタル・モーゲージ・アドバイザー(DMA)」と呼ばれるAI(人工知能)を活用したシステムを活用すると、ユーザーは24時間365日、自宅にいながら住宅ローンの見積もりや相談をすることが可能になる。
まず、申請者の財務状況を照会し、申請者の給与、個人生活および雇用に関する質問をチャットボットが行う。
この15分程度のチャットにより、ボットは与えられたすべてのデータを照合し、常に最新のものに更新された住宅ローン金利をもとに、月々の返済額の算出や商品の紹介などをしてくれる。何百という商品の中から、利用者にとって最適なものを選びだしてくれる優れものだ。
正しい商品を選択することで、消費者は年間何千ポンド(約135万円以上)と節約することが期待できる。
特に様々な住宅ローン商品があふれかえっている英国では、最適な商品を探しだすことに困惑する消費者が多いという。
開発にあたり、「消費者が実際に何を求めているか」という点を分析するために、Habitoは何百件というインタビューを実施。
その結果、「会話を交わす雰囲気の中で、最適な商品を素早く見つけてくれるツール」への需要が高いことが判明した。相談の予約待ちなどもなく、思い立ったらすぐに無料で利用できる。Habitoは住宅ローン産業の常識を覆すことを企図している。
今後、よりお得な住宅ローンへの借り換えサービス紹介など、さらなる機能の追加を予定している。
HabitoのCEOで創業者のDaniel Hegartyは次のように述べている。
「私たちのデジタル住宅ローンアドバイザーは、住宅ローンのアドバイスを消費者が最も必要としている方法で利用できるようにすることが大きな目的です。
この技術の利点は、必ずしも最良の取引をお勧めできない、住宅ローンのブローカー(人)に時間を費やすより、システムを介してオンラインで住宅ローンを申請することにあります。
人間のアドバイザーが把握できる少数のものとは対照的に、数百の製品を照会します。
これらのシステムは、人為的ミスやプロセスによる偏りを排除するすることが可能です。ゆくゆくは完全に自動化された住宅ローン承認への道を開く可能性があると考えています。」