「思い出」は・・・「知性」なんだ
「それは きっと別のフー・ファイターズ あたしじゃぁないと思う
これがあたしなの さよならを言うあたしなのよ」
そつぎょう
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅〜特別篇」で太川陽介と蛭子能収の卒業が発表された。どうにか三十回はと願っていたが、致し方のないところ。ルート枯渇を理由に挙げていたが、廃線に伴う徒歩行の増加も予測され、蛭子の過労に配慮したものと思われる。住民の厚意からの車移動(相乗り)は認められるルールが周知されていたらとも思ったけど、焼け石に水、それも限界あるか。
特別篇は予想以上に楽しかった。コンテンツの良質さを再認識したし、田中&羽田コンビも良かった。競技性に拘る太川と宿に拘る蛭子が、温泉宿に執着する年嵩の田中と心配性の若輩羽田に逆転し(チェックインでテレビの露出度を生かす蛭子の役回りをこなす個性派俳優、前席で一人座り先行きを危ぶむ太川の様子を髣髴させる芥川賞作家とか)、また、あくまでも田中がリーダーであり、タレントと文化人という同設定でありながら太川蛭子の主従関係の裏返しともなっている。「旅なんだから楽しまなきゃ!」と意気込むドンキホーテとビールを一口で飲み干すサンチョパンサという古典の鮮やかさ、破壊力を侮るなかれ。松本城でのショット(写真)は素晴らしかった。第一弾の(コンビ+ゲストではない)トリオの道行きという連帯感、ほんわかムードがかもしだされていた。次回あるなら40overのマドンナに牽引されてて(引っかきまわされて)ほしい。
太川&蛭子は新春の第25弾がラストとなる由。特番でこのコンビが旅を、散策をする番組も期待されるが、まずはローカル路線バス乗り継ぎの大団円を視聴したい(マドンナは中島史恵か遠藤久美子か‥さとう珠緒かしらん)。
2015年大晦日の番組企画を今からあれこれ考える・ローカル路線バス乗り継ぎの旅スペシャル(テレビ東京)
ここ十年ほどのテレビ生活で「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」は娯楽番組の最高位を占める。つまり自分にとってはワールドカップや五輪以上の鑑賞コンテンツというわけだ。
以下の文章は一ファンの――番組の終わりの始まりはルート枯渇や蛭子健康問題ではなく、マルシアへの不快感が後を引くやら苫小牧店三十年振り再訪は仕込みだヤラセだという声の大きな視聴者に制作陣がおもねった時点と考える、国境を「クニザカイ」じゃなく「コクキョウ」と読む一人の視聴者の思い込みと私欲 、主我を解放した私見です。
名所名店を訪ねる旅ものはテレ東に限らず食指が動かなかった。路線オタクでも時刻表マニアでもなく、そもそも土曜スペシャルにチャンネルを合わせたことすらない*1。ガチでハードで面白いとの評判を聞いても物臭で嫌味ばかり言う蛭子が売りの番組なぞ御免蒙るわいなと食わず嫌いしていた。ところが蓋を開ければ蛭子は住民らにも気さくで、雑事をこなし、目的完遂に向け動く、走る。蛭子の「ゲス」を楽しむなんて見方は易きに流れる伝言ゲームの如きキャッチフレーズであり、せいぜい蛭子の空回りを笑うといったところ。
一大観光地を一マス飛ばし、駅ビル(微妙に値段が張る)や小さな喫茶店でセットメニューをかっ込む。お薬博物館やワカメ工場、ネギ劇場を見学し、たまの名刹、名跡もテレビクルー用の特別歓待など望むべくもなく(某寺で開門時間を早めてもらった程度)、どのみち三人は足早に立ち去ってしまう(どのみち視聴者からすればタレントが映り込んでいようが「資料映像」である事に変わりはない)。景色の大半、要衝は錆びの浮き出たバスストップであり、つまり一般観光客、学生や高年の旅行者が目にする等身大の日本の情景が流れるわけだ。また、一度限りのゲスト「マドンナ」が主役の番組といっても過言でなく、彼女らは道行ならぬエンタメの方向性を、序破急のテンポを定め、初対面の一般人(重圧時はゲスト女優にすら)に身構えてしまうスター太川*2とフランクだが失言も出る蛭子の緩衝、調節弁(アブソーバー&バッファ)の役目も果たす。
「ローカル路線バス乗り継ぎの旅」とは、都市部の短路で複雑な路線網と本数も運行も希少な地方の複合技で対峙する難敵に果敢に(鷹揚に)挑戦する(漂泊する)三者三様の四日間を描いた「ドキュメンタリー」である。
大晦日私案の前にシリーズ各話(01弾〜21弾)の寸評、印象に残ったシーンなどを。☆印は作品全体の評価(なんて偉そうなものじゃなく、たんなる好悪)、「△・±0・▼」はマドンナ(とその得物)のパフォーマンスを考察した。
01 にっぽん列島横断ローカルバス乗り継ぎの旅
2007/09/11〜2007/09/14 ☆☆☆
‥中島史恵(伸びのび代)±0
放映から随分後での視聴でまちがい探しのようになってしまった。スタート時の蛭子遅刻や突然の別行動と「ドキュメンタリー」らしからぬ演出、現在ではゲストに整理券チェックを行う蛭子が運転席横の両替機を清算機と思い違いしていたのが新鮮。イラスト描きタイムも設けられていた。ルート探索に余裕があったゆえか街中、店内、車内で率先して愛想良く声掛けする太川、カツ注文を取り消した蛭子に驚かされる。ただし降車時の「どーもー♪」は第一弾から「健在」した。蛭子失言は停留所の妊婦発言より初日の旅館での方がヒヤヒヤ。中島が主体的に行動するのは単発ゲスト枠ではなく男性陣と同一線の関係にあったからだろう。初代マドンナとして以降の出演を彼女が継続していても、好評のシリーズとなっていたのではあるまいか。
02 東海道人情ふれあい珍道中ローカル路線バス乗り継ぎの旅
2008/02/24/〜2008/02/27 ☆☆☆
‥相本久美子(小さな抵抗)±0
視聴者にアナウンスしないロケ車利用の禁だけではなく、シリーズを特色付けるコンセプトが縦横に散りばめられている回。見目の良い観光スポットの絶景と茫洋とした殺風景との対比とか、住民との交流が齎した僥倖とか、道路地図持参とか、全力疾走とか、「行けるところまで行く」とか。シリーズ最高視聴率も伊達じゃない。蛭子凶悪のピーク回でもあり、愚痴る愚図る蛭子に代わり太川がムードメーカーとして奮戦する。あれやこれやの後日談にも注目。相本の生真面目が功を奏した。
03 秋の北海道縦断!ローカル路線バス乗り継ぎふれあい旅
2008/09/08〜2008/09/11 ☆☆
‥伊藤かずえ(同田貫)▼
県境なき北海道、風光はどこを切り取っても「見所」となろうが、番組ファンには(自分だけかな?)プラ椅子の縁でタコヤキを喰らう漁師の息子のカットがピカイチと思われ。伊藤でなくてもパフォーマンス難易度の高いコースだったとも。
04 人情ふれあい珍道中!春の山陽道ローカル路線バス乗り継ぎの旅
2009/03/03〜2009/03/06 ☆☆☆☆
‥根本りつ子(風車の理)△
2日目龍野の町並み、3日目矢掛バス事業所での出来事も味わい深いが、根本ジーンズ、時刻表蛭子強奪、珍しく抒情あるラストカットが収録された最終日が充実している。三条大橋を起点とするロケーションもバラエティに富んだ。根本はこの番組に限らず土曜スペに最適化した女優さんなのかもしれない*3。攻守頃合が秀逸のゲストだった――693472。
05 みちのく奥州街道日光〜松島ローカル路線バス乗り継ぎ人情ふれあい旅
2009/08/11〜2009/08/14 ☆☆☆
‥藤田朋子(胸襟臆せず)△
ランニング、麦わらのイケメン太川。靴下を脱ぐのが面倒な傍観蛭子。朋子ダンス。奥州の人々。「ふれあい旅」の名に相応しい作品――「風流の初やおくの田植唄」「かげろうの我肩に立かみこかな」。
06 冬の奥州街道(松島〜竜飛岬)ローカル路線バス乗り継ぎの旅
2010/02/01〜2010/02/04 ☆☆☆
‥山田まりや(猫舌ニット)±0
ニットワンピ姿の山田まりやが可愛い。初日の民家で蛭子がシリーズ最高の笑顔を見せる。街道の風物――大迫商家の豪奢な雛人形と青森後潟の小さな地蔵堂が印象に残る。
07 青森から新潟ローカル路線バス乗り継ぎ人情ふれあい旅
2010/08/01〜2010/08/13 ☆☆☆
‥中山エミリ(Be tactful)±0
初日の徒歩行き、鳥海山、台風日本海と全行程を通じてロケーションが目を瞠らせる。中山エミリは辺見エミリと双肩の対人対応力を常に発揮しマドンナを丁寧に務めた。
08 京都〜出雲ローカル路線バス乗り継ぎ人情ふれあいの旅
2011/03/01〜2011/03/04 ☆☆
‥川上麻衣子(丸顔ブルネット)±0
太川の「自分の夢の方が大きかったんだ」はシリーズ屈指の名言だし、下市入口停留所に於ける荒涼と歓喜の笑顔という光景は実に番組らしい名場面なのだが、前日に彼と別れ一睡もしていない麻衣子後日談を越える余韻がなぜか引かない。ハプニングも歓談もマドンナもそつのない「旅番組」の域に収まっていたということかしらん。
09 出雲〜枕崎までローカル路線バスの旅
2011/07/04〜2011/07/07 ☆☆☆☆
‥芳本美代子(テンガロン*4)△
芳本美代子の人懐っこく孤独な少女――というか、帽子を深く顔がほぼ隠れる芳本の少年のような風情、慕情、旅情、サウダージに尽きる第9弾。「べそをかくのは水曜日の子ども」「遠く旅に出るのは木曜日の子ども」という英詩の一節も浮かぶ*5。津和野等での観光シーンもほっこりした気持ちで視聴できる。この回の名場面はやはり雨天山中での県境ジャンプだろうか。太川も終始リラックスしていて(太川が歌うのは第一弾の混浴以来?)、脇に徹した天草生まれのおっさんも良い。暴風暴雨、タイトな乗り継ぎ、大粒の涙もあるけど心は一片もささくれぬお勧めの一本。
10 ローカル路線バス乗り継ぎ人情ふれあい旅〜四国ぐるり一周〜
2011/11/15〜2011/11/18 ☆☆
‥遠藤久美子(めがね)△
エンクミは健気、健闘だったが*6、いかんせん暗路、迷路が歯がゆすぎた。チェック項目は「おうた」と「おやど」・バナナと平均台・龍馬を横目におべんとう太郎・アナログのプロフェッショナル・焼さつまめし・序破急に於ける破(顔?)に相当するラスト。チェック・ポイントを外し、まだまだ奥も幅もあるだろう四国再訪の期待を込め辛めのマーク。
11 高松〜伊勢ローカル路線バス乗り継ぎ人情ふれあい珍道中
2012/03/14〜2012/03/17 ☆☆
‥いとうまい子(眼鏡)±0
ちえ(やきそば)が固まる、停留所へと駆ける蛭子が途中「おどけてしまって」頭をぽんした女児に逆襲される、女子高生アイドル、ラブホテルの門をくぐる初老カップル……道程は多彩で定番もきちんと押さえられた回だけど、平均点を上回る要素が見当たらず……。
12 ローカル路線バス乗り継ぎの旅松阪〜松本
2012/08/14〜2012/08/17 ☆☆☆☆
‥加藤紀子(才気換髪)△
加藤紀子が文字通り頭の天辺(髪)から爪先まで一軍の実力をまざまざと見せつける回。通過する町並み山並みも味わい深い。ジョジョ第三部のように万人が推すシリーズを代表する作品であろう*7。「多言」無用、シリーズ初見の第12弾。
13 ローカル路線バス乗り継ぎ人情ふれあい旅東京〜新潟
2012/12/05〜2012/12/08 ☆☆
‥田中律子(秀美ちゃん)▼
初日から蛭子にじゃれる太川の様子が目を引く(ルート相談も蛭子と二人顔をつき合わせて行う)。良くも悪くも安定している蛭子は、搦手も連打もさして響かぬ太鼓であったが。憂鬱な視聴が続くが*83日目夜の峠越えから白眉の展開で挽回する*9。ナレーション担当のキートン山田のフォローも冴え、登場人物の何気ない一言(蛭子の約束違いを含め)が重大な影響を及ぼし、伏線回収主義者も納得の作品かと。田中はスタート時からテンションが低い*10。太川もチームではなくお客さんとして遇していた観。テレビ慣れ(ズレ?)したそのキャラは視聴前から何気に持っていたイメージ通りではあったのだが。
14 ローカル路線バス乗り継ぎ人情ふれあい旅名古屋〜能登半島
2013/04/02〜2013/04/05 ☆☆
‥森下千里(カレー全席)▼
トンネル問題を除けば天候にも宿にも恵まれたマッタリ回。蛭子の毒が多めなのは早々に楽勝と見做し「気が緩んでしまった」せいなのか、マドンナに引きずられたのか。「大きな水車」「役場美人」は番組テンプレになるかも。太川は苦労したぶん、好感度が上がったのではあるまいか。森下は足跡でも尻跡でも爪跡でもなく、白薄の手跡しか残せず終了した。無念だろう。
15 ローカル路線バス乗り継ぎ人情ふれあい旅米沢〜大間崎
2013/08/06〜2013/08/09
‥さとう珠緒
未見(冒頭からの十五分で四つ星クラスとは判る)
16 ローカル路線バス乗り継ぎ人情ふれあい旅館山〜会津若松
2013/12/09〜2013/12/12
‥ちはる
未見
17 ローカル路線バス乗り継ぎの旅山口〜室戸岬
2014/04/01〜2014/04/04 ☆☆☆
‥宮地真緒(コンバース)△
ルートもルイルイもハードな回。泊まりはシリーズ最難関。嗚咽がこぼれるシーンより最終日の乗車タラップにこぼれる脚(3日目)が強烈な印象を残す。寡黙で人見知り、揺らぎの大きい人かなと勝手に想像していたので、周囲に振り撒く愛嬌等、期待に、要求に応えようとする彼女の頑張りが余計に心に響いた。
18 ローカル路線バス乗り継ぎの旅静岡・御殿場〜新潟・直江津
2014/08/19〜2014/08/22 ☆☆☆
‥野村真美(涼顔アイボリー)±0
野村真美のマドンナは悪くない。年齢相応の安定感、蛭子への質問攻め(夢ってカラーですか?白黒?)は新鮮だったし、明朗快脚――健脚で夏の道行の画も麗しい。中島史恵に続く二代目マドンナ就任でも否定する材料は何一つ浮かばない。なのになのに、作品は区画された青波稲穂の上を行き交うラジコンのように軽く、低空を保ち、稜線を越えることなく帰着してしまった*11。駅前なので中ぐらいの水車。小サイズのペットボトルが十本ほど詰め込まれたビニール袋をぶら提げ、国道沿いを走破する元野球部員*12、「ごめんね」と元合唱団員。
19 ローカル路線バス乗り継ぎの旅大阪城〜金沢・兼六園
2014/12/09〜2014/12/12 ☆☆☆☆
‥マルシア(紅引きの儀)△
3時間45分という圧巻のボリューム、個人的にはシリーズベスト回。「マルシアには最初イライラした」という感想がまずわからない*13。開始直後から応援できたし、旅を番組を愉しもう愉しくしようと奮闘する姿は可憐ですらあった。困難が増すにつれ戸惑いが口をつくのは当然で、みかん箱の上での営業を現場で伝えられ、悲鳴一つこぼさず従う者だけが石を投げよと。心身に積むダメージはシリーズ最悪のロードだったと思われる。曇天の寒空と山、山、山。歌手、ダンサーとして特化した華奢な肉体が疲労困憊で辿り着く停留所。夕闇の山道、崖下に見える唯一の灯りは公民館で、老人達の室内ゲートボールをパイプ椅子で見学し、残り物の焼き芋をいただく。夜道のバスに乗り込んだところで一気に寂寞やら孤独やら空腹やら痛みやらが押し寄せ、苛み、マルシアの目に涙が溢れるシーンは現代人の絶望を漂わせるフィルム――例えば『ストレンジャー・ザン・パラダイス』――を彷彿させた*14。ドイツ語には「森の中で一人きりになっている気分」を意味する語(ヴァルトアインザムカイト)が、ロシア語には「何に対しても希望が湧かないような、魂や精神から来るような苦悩や苦痛」を意味する語(トーシュカ)があるという。どちらかを「マルシア」と日本語登録しても良いのではなかろうか*15。
もはや太川蛭子、プロフェッショナル2号について書くスペースは尽きている。マルシアに関するだけでもキリがないのだが最後に。
マルシアは歌謡曲歌手らしく――「サヨナラ」の美声――街中の観衆にはフレンドリーに接し、蛭子とは衒わず日常会話ができる稀有な人物でもある。二つ三つ他回を鑑賞し、番組ファンとなった暁には、シリーズ最長第19弾の存在が俄然光り輝く――万感の思い胸に迫り、満面のさざ波が足元に寄せてくるはずだ。
20 ローカル路線バス乗り継ぎの旅北海道洞爺湖〜知床羅臼
2015/05/02〜2015/05/23 ☆
‥森尾由美(ウィケッドタン)▼
北海道、CP制の両縛りでありふれた紀行特番に。大感謝祭で煽った挙句のこの一本で立ち込める風雲急*16。見所は太川の倒れた傘を直そうとして倒れる蛭子、Tシャツを着た写真の若い女性ぐらい。蛭子が替えのズボンをスタッフ車ではなく手持ちのリュックに収めて自ら運んでいたのが新情報といったところか。
21 ローカル路線バス乗り継ぎの旅紀伊半島ぐるり!大阪 堺〜三重 鳥羽
2015/08/18〜2015/08/21 ☆☆☆
‥高橋ひとみ(やるやら)±0
ウンナンの番組出演以来、そのバラエティ資質、性合いを好ましく視聴していたので、高橋のマドンナ起用は端から安堵感をもたらしてくれた。蒸し暑い曇り空、足取りを重くする小雨、最難間ともいわれる紀州半島を舞台にしながら、おっとりした時間が流れたのは彼女のキャラに負う所が大きい。しかし夏の絶景であるはずの海側、山側とも眺望の光芒、奥行きともに乏しく、見所が案内所美人、のっそりと出る古道3号、カメラをパキパキ意識する*17潮岬の猫ぐらいだったのは残念。悪戦や疲労のせいばかりにはできぬ蛭子の口数の少なさも気になる回だった。まあ、ゆったり視聴の大人回、円熟回ともいえるかも*18。危惧も期待もされた紀州編としてはそう悪くない結果、不快とも退屈とも無縁に楽しめる二時間半。マーク甘め。
ちなみに番組視聴前に「無関心」に止まらず「苦手」としていた出演者は蛭子、藤田、山田、田中、マルシア。太川はずっと戸田元夫で再婚と勘違いしていた。というか好印象を抱いていたのは加藤紀子だけなのだった。
前置きが長くなりすぎたので晦日案はざっと。
リベンジ
前回の目的地とマドンナは継承するが、リベンジ回では2泊3日で辿り着くスタート地を新たに設定する。二作連続で放映。
チーム戦
対抗する田中健(ブラザートム*20)&具志堅用高(ボビー・オロゴン)&メダリスト加藤紀子(ファウンダー中島史恵orアンセスター大橋未歩)のチームとタイムを競う。ゴールは中間地点より相手チームのスタート地点にする方が勝手が良いと思われる。
新マドンナ*21
朝ドラ枠のマナカナor小林綾子。太川枠で日高のり子。元アイドル枠の三田寛子or西田ひかるor佐藤仁美。元ハロプロ枠の石川梨華or紺野あさ美。アナ枠の小林麻耶or内田恭子or紺野あさ美。テレ東枠の吉田真由子or秋本奈緒美or紺野あさ美。グラビア・裏番枠の雛形あきこ。アスリート枠の浅田舞or田中雅美or飯田なお。久美子枠の小椋久美子。蛭子枠で大林素子。本命枠で姿月あさとor大河内奈々子or小沢真珠or吉竹史。希望枠の伊藤歩or香椎由宇or能年玲奈*22。
(最後の)最後に。常時画面に時刻表示がされぬ謎を解消してほしいのと、マナーを含めた案内所対策(いくら太川が当面の目的地に限定し質問を発しても、ゴール終点までの経路をネットで得た所員が話してしまう事態も今後は予測される)が待たれる。ただし、たとえ年4回収録するとしても現在の構成*23では――蛭子の年齢を考慮すれば「第30弾」が限度であろう。残りページを惜しみ慈しみながら小説を読み進めている気分の此の頃(ストックの残りは15、16の二作)。
*3:先入観を多大に覆され☆1個追加した
*4:日本でいうところの"Ten-Gallon Hat"は本場じゃ別物らしい
*5:ロケ最終日である2011年7月7日が木曜日なのが哀しい。日曜日であれば
*6:食べっぷりも可愛い
*8:正月番組でしょうにと
*9:送迎車でなければロケ車となるわけで、「ルール違反」と騒ぐより歩行者、自転車が一般道が往けぬ歩車分離以前の「途上国」の現状を憂うべき
*10:正月番組でしょうがと
*11:テレ朝黄金伝説のSAバス旅と見紛うほどで、二代目ルパン発表時の失望、アンパイという名の危機、そうじゃないんだってば、ならシンプルに野沢那智でいけよという……。
*12:[ルイルイの定番チェック項目]なる一覧がある。□3部屋を「みへや」と発音□新アイテム披露□先行っててと言いながらオヤツ購入□蛭子さんのベッドでゴロゴロ□旅の中盤頃からマドンナを「キミ」とよぶ□地図帳に赤ペンで豪快にメモ□アイドル時代はあまり触れられたくない□オープニングのハイテンション□バス停の時刻表をリュックで隠してカウントダウン……等々のテンプレだが そこに「□一口目は食レポ風(豪快)に」「□激辛一品を注文する」を追加したい。
*13:お絞りが出るタイミングにすら文句をつけそうな、職場のゴクローサマがどうたらと説教する自己ルール至上の連中が騒いでいるかと想像すると更に
*14:他シーンに於いては山田洋次『故郷』や『ザ・ロード』の情感も漂う。ちなみに第9弾はロバート・ワイズ『ふたり』、『いこかもどろか』(二作ともバッドエンド(喪失)ながら疾走感、爽快感を醸す)、第12弾で思い浮かぶのは『アドレナリンドライブ』かな。
*15:ちなみに13弾田中は「非常にたくさんの質問をする人・露Pochemuchka」、ロケや公演で訪れた土地にパッと移住しちゃいそうな17弾野村は「どこか遠くの知らない場所にホームシック的な気持ちを感じること・独Fernweh」に相当。
*16:その失望から諸々減点になった。
*17:転位行動・グルーミング
*18:後にこの一本が最終回(着地点)へと踏み出す下り帰しの第一歩に位置づけられたとしても、悪くないルートだと思う。
*19:本稿は第20弾視聴後に綴った下書きに第21弾感想分を加筆
*21:人材豊富なアナ枠を除き「ありそうでなかった人」をノミネートしたつもりが、後で検索すると土スペ出演済のタレントさんが大半でガッカリだったり……。
*22:伊藤でノワール、香椎でコメディ路線、能年版『ウェンディ&ルーシー』のロード・ムービー期待という無謀な指名。
*23:一泊二日(拘束三日間)の隔週一時間枠に移行される日が来るのだろうか。
「思い出」は・・・「知性」なんだ
「それは きっと別のフー・ファイターズ あたしじゃぁないと思う
これがあたしなの さよならを言うあたしなのよ」
2014年大晦日の番組企画を今からあれこれ考える・逃走中SP(フジテレビ)
やはりフジは『run for money 逃走中』でナッシングイズミッシング。裏のNHK、日テレが強力なので冒険でける。大物タレントなぞ邪魔にしかならぬ6時間の気概を。参照は江戸(第13回)、沖縄(第15回)の二編と「信長と忍者の里(第18回)」から「最後のサムライ(第34回)」までの十七編(計十九編)。企画内容の説明は省いてあるから未見の方はちんぷんかんぷん、さらにネタバレともなるのでご注意。
第一部「汚名挽回*1」 ※プレイヤー22人・2時間20分
第二部「80:20の法則*13」 ※プレイヤー31人・3時間10分
- エース級(8)
- 荒川静香、城田優、永井大、NAOKI、的場浩司、眞鍋かをり、ゴリ、濱口優
- 適応力・潜在力の絵札(9)
- 丸山桂里奈、上野由岐子、田中卓志*14、武井壮、東尾理子or篠原信一、スギちゃん*15、菜々緒、おかもとまり、上地雄輔orテレンス・リー
- ムードメーカー(9)
- 叶美香*16、鳥居みゆき、千秋orAMO*17、ピエール瀧、林修、春日俊彰or狩野英孝*18、南明奈or鈴木Q太郎、小杉竜一or宮川大輔orケンドーコバヤシ*19、具志堅用高*20
- ジョーカー(2)
- 延べ百人を確保し自我に目覚めた元ハンター*21、記憶消去処置を施し釈放された竹取カレン(森口瑤子)*22
- 初参加(3)
- ク・ハラorパク・ギュリ(KARA)、オラキオorテキサス(弾丸ジャッキー)、井森美幸*23
余禄
高月ハンゾウ役が高知東生とはまったく気づかなんだ(シリーズ視聴はアルティメット以降)。てっきり地のプロデューサーが演じているものとばかり。ヘリオス社には東幹久がいてほしい。
実は『battle for money 戦闘中』の方が好きだったり。大山加奈やオグシオの適性はそちらだと考える。オグシオが組めば高橋みゆき&山崎静代、ピーター・アーツ&忍、BBB忍&篠崎愛のペアを超える可能性もあるけど、諸般の事情により実現は難しいのかな。
「第13回江戸」鬼怒川下りのハンター達と花火の絵は面白かった(元木大介の「はあ?」もお約束)。他には「第18回信長と忍者の里」いとうあさこの激走、「第34回最後のサムライ」ケンドーコバヤシの「へ?」の連荘とか。
多層階ビルも開放感と閉塞感の錯綜がヒリヒリして良いエリアだが、「第20回卑弥呼伝説」の見晴らしの利くなだらかな丘陵地に萌えた。テレンス・リーやテキサスはさぞ腕が鳴ることだろう。ちなみに、おかもとまりが責められるのがさっぱり理解できない。百歩譲って鈴木拓らには(4打席連続敬遠みたく)ルールの悪用じゃないかと不快感を持つ人もいるんだなーで済ませるが、彼女のケースはまるで当てはまらぬし、草地や斜面で身を遮蔽するのは脚力を考えれば真っ当な策。躊躇なく土地に背中を預ける彼女に感嘆したほど。無用な声掛けがあったとか当然の声掛けがなかったとかいうのは「策略」以外の推定を退けた一方的な評価、難癖と考える。
仕掛けで笑ったのは用高大活躍の山根通報部隊。ドラマは「白雪姫と野獣王子」、プロットもよく練られた作品だった。船や市電を利用した別エリアへの大移動ミッションは楽しい。バス移動する(乗り遅れる)太川&蛭子の絵は鉄板に相違なかろうが、年末はテレ東が手放さないかしらん。
動きは遅いが多勢で物陰に潜むゾンビハンター企画(競歩選手大量動員)はとうに提案され却下済なのだろう。タレントハンター企画であれば鳥居みゆき、山根良顕、2700ツネ、内間政成、ワッキー、森脇健児あたりだろうか。
「第14回王国の走り人」の亀治郎&愛之助は凡百のヒールとは次元が違う、格が違う、顔が違う。フィルム・ノワール鑑賞時のごとき絶望感、緊張感に耐えられず視聴を止めたほど。が、もはや両人とも大物すぎて出演不可。ヒール、ヒーロー共に梨園は逸材揃いだと思う。
*1:汚名返上・名誉挽回のもじり。
*2:大まかには饒舌に他者を操りたいタイプと冷笑し潜伏するタイプに二分される。
*3:番組出演で下手を打ったのは杉村や鈴木ではなく、三平とこの人だと思う。
*4:タイミングを見計らったスタッフの誘導に引っ掛かった感はあるが、暢気な旅行話が止めを刺した。
*5:だが「一人は自由だから成長しない」は名言。
*6:空回り組とも。
*7:第15回勝利者、最接近のハンターをかわした男でもある。
*8:封印場所からの途中参加枠。
*9:庇護欲をかき立てる外見とは裏腹の自主独往、独立独歩の二人。
*10:究極の爽気or究極の面倒。
*11:組み直しで二度ほど。
*12:過去シリーズ「解除中」から。
*13:「第20回卑弥呼伝説」で富澤が紹介した都市伝説。働き蟻も勤勉なのは20%で残り80%は怠け者であり、そこから怠け蟻だけ集めると20%の勤勉蟻が出現し、また、勤勉蟻だけ抽出しても80%の怠け蟻が出るとする。自由意志の存在否定からの自己弁護にも用いられる。「パレートの法則」とは別物wikipedia:パレートの法則。第二部は強大な俗説への参加者達の挑戦ともなる。
*14:たまの説教モードがキズ。
*15:番組出演で輝いた人だが、第29回で白鳥久美子と組んでしまい、芸人生命にも係わる命取りの危機に。
*16:目前で扉が開いても微動だにしなかった美香さんの姿はシリーズ中最も印象深い場面。エキストラにも丁寧。明晰、冒険心、決断力、その精神的頑強さは130分間集中力を持続させた至高のエース荒川静香に比肩する。
*17:ロビン・フッドを引き連れての登場はレッスルマニアでのサベージとエリザベスの復縁劇並みにベタでも、やはり胸が躍った。
*18:ドラマで良い表情を見せる。天功と並んだ牢獄でとか小森純を見送りながらとか。
*20:携帯鳴るよーと返答しながらのシャドーとか浜口への賛辞とか名場面多し。
*21:アンドロイドの個別記録をつけているファンもいるだろうと。
*22:記憶喪失後、空白を埋める為に他人の人生を模倣する女優になりましたとさ。『ブレードランナー』×『鍵泥棒のメソッド』みたいなの。
*23:第6回に出演済だが未見なのでここにねじ込んだ。ファンなので。
*24:「第32回アルティメット」の敗者復活イベントは凄まじかった。オープニングゲームでの採用もアリ。安めぐみさんは「戦闘中」の前身番組「護衛中」に於ける伝説の無双。
今年心に残った映画五本
と次点いろいろと俳優さん。
※2014年1月に全ての項目を書き直し。やはり例年通りの妄想記事とします。下書き中は空白に。
コトシのゴサツ
ドゥブレ『幽霊侯の残』
中世フランスの女性「化」学者と夫の徴税吏、妻の愛人、小氷期ヨーロッパの苛酷に暮らす三者の書簡体小説。自己言及のパラドックスを当事者が解明するのが新機軸。禅問答のような局面から展開するFブラウンのSFのようで、懐かしく、敬遠していた「恋愛」小説も苦にならなかった。まあ後半、情緒がやや過重になったのが残念なのだけど。リスト入りしたのは、千五百頁の長編を飽きずに読了し、翻訳調でも生の言葉でもない文の磁力を発見できたから。半切りに綴られた綾を丹念に追えば、面妖な古典科学がおさらいできる。また愛人である若い「女」は余白を家計簿に使う癖があり、当時の細々した物価を知ることもできる。お役立ち度も大だ。
ゴールドマン『アイダとエルンスト』
老嬢と少年こそは最も正義感が強いという(フォークナー。少年の本名はアイザック。ちなみにコード名アイダはオペラの王女ではなくアイダ・ルイス、女灯台守が由来)。血縁関係のない二人組が社会悪に鉄槌をくだす、といっても他愛のないいたずらを仕掛けるだけ。(その半数が百万長者とされる)連邦下院議員の妻のケースでは、フードコーディネーターの肩書きと瀟洒な店舗を所有するターゲットにカエルをすりつぶしたクッキーを食べさせることに成功する。ただし、唯一少年の視点で語られる最終章では死人が出る。かつて居並ぶ記者たちの前で鉛を吸引してみせた発明家は、ご自慢の自動目覚まし寝台(ダリとチャップリンの融合)の誤作動(細工)により昇天してしまう。
デュボイス『ゾンビ村だより』
邦題が酷い。原題は"audubon.org"です。「アメリカの鳥たち」で充分、そもそも村に居住するのは生身の人間たちなのだ。アーカンソー(米国内の他のどこの州より成功につながるビジネス環境と快適な滞在環境を提供します……ウォルマートがアーカンソー州内に本拠を置いているのもこのためです)の森をめぐらす一村を舞台にした掌三枚の連作短編集。すなわち一編二千字、ベルビル(ベルヴィル)郊外に於ける五十二通りのゾンビの死にざまが収められているわけ。愛娘に腕を噛まれゾンビ化したクリーニング屋の店員は、旅路の果てに迷い込んだこの村で、瞬く間に少年らに囲われ最期を迎える。年少のユースが顔上に石をかざした刹那、奇怪にも青年ゾンビの目が涙を垂らす。その視線の先、梢には……。
本人も家族にも思い至らぬ理由から、ゾンビにとどめの一撃を課すことができない少女のカウンセリングの顛末を描いた三つが面白かった。
XカスバートN『ダイアリーズ』
公式、非公式のインタビューをまとめ、さらに自身が加筆したカスバート自伝の「決定稿」。砂漠のもや――まほろより脅威の老人が出現して六十余年、当時の熱狂を紐解けば隔世の感ひとしほである。氏は今年初頭に変声したという。推定年齢十二歳、砂漠から持ち帰り、ガラス瓶に密封されていた砂も半分となった由。本書に於いては失った理由も砂粒の行方もぼかされているが、冷たく脆いネバダの砂上で、或いは新生児室の固いベッドでカスバート氏が消滅した後、熱心な記者か伝記作家により真相が明かされるかもしれない。
生涯の友となった医師は「問題は君が何処からしみ出してきたかだ。それを突き止めさえすれば、我々は君の矢を掴むことができる」と常に励まし、恋人たちは「貴方は何処へ行くの?」と眉根を寄せたそうな。
小海老天『鰹本枯節4:30』
会津藩士鰹本枯節、腹を穿たれ命尽きるまでの四時間三十分。冒頭たちまち切り伏せられ、枯節の戦は窮まる。斜面を滑り落ち、視界は草っぱら。難儀して首をひねっても空模様はうかがえぬ谷中。これより延々と独白が続く――回想シーンはなし。茫然自失の語り手、枯節の意識が、過去にも未来にも飛ばないせいだ。前後の尺は半時ほど。躍動する命も死の静けさも、往時の営み、郷愁も意地も諦念も口の端に浮かばない。
「いたいあついぬるいさむい」
――読者は如何なる教訓も得られず、小説世界にすり合わせて感性を研ぐ手はずが定まらない。枯節はもう動かない。瀕死の男は身じろぎせず、ひゃっこい手のひらを傷口にあてがう労すら厭う様子(からだをさぐるのが怖いのだろうね)。
「みずみずみず」
――もはや主演には期待せず、誰何する仲間の声、そろり近づく敵の足音を待つ。けど誰も来ない。鳥も虫もこの男の前では存在を消すようだ。さっさとケリをつけろと思う(そのほうが本人のためでもあるしさ)。ページ数は未だ半分も消化しておらず、これ以上は付き合っていられないと投了の読者が続出する頃合だろうか。私はそうした(はい、おしまい)。ぱんと本を閉じ、それから御多分に洩れず最終ページを開く。読み終えると私は早々に中断した箇所を探し当て、遠く飯盛を望む草いきれの渦に――下級武士のメエルシュトレエム、綻びの螺旋にふたたび取り組んだという次第。
足しての一冊は『越境小説』ファノン。ブックリーダー専用翻訳プログラム<attraverso>は出力を上げるとスタンザが増減する。テキストの完全なる理解ゆえに、しまい込まれた草稿を浮かび上がらせ、作家のあやふや(欺瞞)を吹き飛ばしてしまうのだ。パラメーターを極限に設定して「イワン・デニーソヴィチの一日」を読む男の話。刊行前から映像化企画が進行し、同年に映画が完成している(劇中メリル・ストリープがポロリ、というかハラリします)。
エントリーに一日掛けることもできなんだ。来年できれば書き直したい。
※著者名追記。「偉人、巨人、傑物と呼ばれるひとびと」の名で検索してきた人がいたらごめん。