積水ハウスで、夢をかたちに。

憧れをかたちに、はできなかったけど、3社で迷い積水ハウスになりました。

バスコアBCH6を徹底解説

浴室点検口問題で、長期優良住宅の認定取得に暗雲が垂れ込めるなか、積水ホームテクノのBATH CORE BCH VI(バスコアBCH6)の導入を再検討することに。

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BATH CORE BCH VIとは

積水ハウスと積水ホームテクノが共同開発した、積水ハウス特別仕様の浴室です。 積水ホームテクノのウェブサイトに、積水ハウス様専用サイトが設けられており、仕様を確認することができます。

浴室を清潔に保つために、撥水・発油性の高い人大浴槽や、フチなしの排水口、ステンレス製のヘアーキャッチャー、乾式目地などが採用されています。

DX(デラックス)グレード、SD(スタンダード)グレードの2つのグレードが用意されています。

BATH CORE BCH VIの仕様

DXグレードとSDグレードの違い

DXグレードには、

  • カウンタースタイル
  • シャワースタイル
  • ベンチスタイル

SDグレードには、

  • カウンタースタイル
  • シャワースタイル

が用意されており、基本的にはあらかじめ設定されたカラーコーディネーション(壁、浴槽、床、天井の色)のなかから選択します。 積水ハウスまたは積水ホームテクノの支店によって対応が変わる可能性もありますが、我が家の担当支店では、カラーコーディネーションの一部変更を認めてくれました(ただし差額発生の可能性あり)。

DXとSD間で基本的な仕様は同じですが、以下のように細かい部分で違いがあります。

  • カラーコーディネーションが異なる(SDの天井はホワイトのみ)
  • カウンタースタイルのウォールラックグリップに間接照明が付くのはDXのみ(SDではオプション扱い)
  • ハンドシャワーは、DXではメタル、SDではホワイト
  • 浴室の框やエプロンは、DXでは加飾柄(木目やレザー調)を選択できるが、SDでは単色のみ

カウンタースタイル

カウンタースタイル

ウォールラックグリップという横に長いカウンターと、その上に設置される鏡が印象的なユニットバスです。DXグレードでは、ウォールラックグリップの下に間接照明も付くので、お洒落度アップ。 ウォールラックグリップは、立ち上がったり、浴槽に出入りしたりといった動きをサポートするだけではなく、収納を兼ねていて、シャンプーボトルなどをすっきり収めることができます。

シャワースタイル

シャワースタイル

シャワースタイル最大の売りは、ハンスグローエ社のオーバーヘッドシャワーを標準装備していること!カウンターがないデザインで、ミニマルな仕様が好みの方にオススメ。

ベンチスタイル(DXのみ)

ベンチスタイル

座ったままの姿勢でシャワーを浴び、身体を洗えるベンチ付き。浴槽へ移動しやすい高さにベンチが設けられているため、高齢者や身体の不自由な方には嬉しい仕様。

その他のオプション仕様

標準仕様の浴槽は、DX・SDともに、リラクゼーション浴槽ですが、節水できるecoたまご浴槽、パールカラーが美しいアクリル人大浴槽も選択可能です。 それ以外にも、

  • マイクロバブル
  • 自動洗浄機能
  • バックマリオンドア
  • 浴室換気暖房乾燥機
  • 浴室テレビ
  • スピーカー

などが用意されています。 このなかでも、バックマリオンドアは、かなりお洒落。色はシルバーのみですが、ステンレス製のバーハンドルが採用されていて、重厚感があります。ガラス面材もカスミとトウメイから選択可能。

長期優良住宅取得を目指す!

長期優良住宅認定を取得できなかった場合、固定資産税の優遇措置が受けられないことで失う金額がかなり大きいことが分かり、浴室点検口を二階に設けることができる積水ホームテクノを採用することに決めました。 我が家の場合、長期優良住宅認定を取るには、マイクロバブルの採用はできないと言われましたが、もともと積極的に付けたかったわけではないので、問題なし。

浴室の壁については、黒っぽい色や、木目調が好みではなく、なるべくテカテカしたパネル感の少ないものということで、「リオージュ」か「ソルティオニックス」かなぁと思いつつ、やっぱり実物を見たいと言うことで、積水ホームテクノに問い合わせ。「ソルティオニックス」については近場のモデルハウスにあることが判明。残念ながら、「リオージュ」はないとのこと。

ソルティオニックス」をモデルハウスで確認したあと、「リオージュ」については積水ホームテクノのバーチャルショールームで確認でき、最終的に「リオージュ」を選択することに。営業さんがカラーコーディネーションの変更に後ろ向きだったので、あまり我儘を言ってもなぁと弱気になり、DXグレード・シャワースタイルのオーセンティックベージュを選択することにしました。

オーセンティックベージュ

浴槽の框・エプロンは、「スモーキーウッド」じゃなくて、普通に「ホワイト」でも良いのになぁと思いつつ…。

最終確認中の変更で減額成功!

着工前の最終確認で、浴室の価格を再確認したときのこと。請負契約時はオフローラで入れていた見積り、バスコアBCH6のDXグレードに変更したら、かなりの増額になってしまいました。 我が家の浴室は非常にシンプルで、鏡、タオル掛け、収納棚、風呂蓋フック、物干しバーなど全部外しています。そのため、オプションで付けている浴室換気暖房乾燥機を除くと、SDグレードとの差は、壁と浴槽の色のみ。しかも、浴槽は加飾柄である必要はなく、壁の色を全面「リオージュ」にしたいだけ!なんとか減額できないのかな…と思っていたら、インテリアコーディネーター(IC)さんから「SDグレードにして、カラーコーディネーションだけ変更すれば、減額できるんじゃないですか?」と女神のような一言が。早速見積りを取っていただき、十数万円減額できました。長期優良住宅の認定も無事取れそうで、めでたし、めでたし。

設備の割引率を徹底解説

目次

はじめに

前の記事で紹介した通り、ハウスメーカー仕入れる商品には割引が適用されていることがあります。今回は、割引率について得た情報・感じたことをまとめました。

ここでは、主にハウスメーカー単位や支店単位で設定されている各商品の割引率について触れたいと思います。なお、タイミングや個別の交渉によって適用されるキャンペーン値引きやその他の値引きは、今回は取り上げません。

また、定価という言い方には法的な問題があり、実際には希望小売価格などの言い方が使われていますが、ここではメーカーが示した消費者向けの価格水準を定価と呼ぶことにします。

割引率の基礎知識

割引率は定価との関係で考える必要がある

施主である私たちにとっては、最終的にいくら払うことになるかが肝心です。

そのため、定価が高く設定されているが割引率も高い場合と、定価が低いが割引率も低い場合で最終的な価格が同じであれば、気にする必要はありません。異なる設備メーカーの商品を比較する際には、割引率だけを見ることには意味がありません。

たとえば、タカラスタンダードは定価が抑えられている一方で、割引率も他の大手メーカー(例:LIXIL、クリナップ、TOTOパナソニック)と比較すると非常に小幅で、実勢価格は近づくと言われています。

割引率はHMと設備・素材メーカーの関係を反映する

大量発注のメリット

大量に仕入れるハウスメーカーは低い仕入値を確保することで、高い割引率を提供できる可能性が高まります。特に大量に同じ商品を仕入れる場合には、設備・素材メーカー側から見ても製造・管理コストが下がるため、良い条件を得やすくなります。

この点で、大手ハウスメーカーで建築戸数が多いところは有利です。取り扱いメーカーやモデルを絞れば、一層の大量発注効果が期待できるでしょう。このあたりが標準仕様へどの程度強力に誘導していくか、会社ごとの考え方の違いに繋がります。

賃貸物件建築部門や、建売分譲ビジネスとのシナジー

また、賃貸物件(例:ヘーベルメゾン、シャーメゾン)や建売分譲を大規模に手がけているハウスメーカーも、潜在的に大きな優位性を持つ可能性があります。賃貸や建売は、注文住宅に比べると戸数が何倍にもなるため、スケールメリットが効きます。

更に入居者が好みも反映して個別に設備仕様を決める注文住宅と違い、HMのアドバイスを受けた貸主(賃貸物件)やHM(建売分譲)が、投資効率やコストパフォーマンスを考えながらまとめて発注することになります。

設備・素材メーカーからすれば、この決定プロセスにより強い影響力を持つHMをつなぎとめておきたいというより強いインセンティブが働くはずです。購買部門が、注文住宅部門と賃貸住宅・建売住宅部門で一体化していれば、賃貸・建売でのバーゲニングパワーを注文住宅にもいかすことができるのではないかと思います。

資本関係を通じた関係強化

さらに、マルホン(無垢床のトップメーカー)を積水ハウスが子会社化したり、住友林業がトクラス(キッチン、風呂、洗面台など)に出資したりといった資本関係の有無も割引率に影響を与える可能性があります。

同一メーカーでも価格帯で大きく異なる

大手設備メーカーは異なる客層に対応するために複数のラインナップを持つことが一般的です。

中間価格帯と高価格帯の商品の間では定価のレンジが重なることも多いのですが、高価格帯の商品は割引率が低く、採用数の多い価格帯になると割引率が大きくなる傾向があります。結果として、実勢価格には大きな差がつきやすいのです。

例として大手キッチンメーカーのラインナップを表にしました。

メーカー 高級
価格帯
大手HM
標準仕様
相当
中間
価格帯
普及
価格帯
パナソニック L Class ラクシーナ
LIXIL リシェル ノクト シエラS
クリナップ Centro STEDIA rakuera
トクラス Collagia Bb

定価ベースでみると、ラインナップ内でも様々な仕様があり、下の価格帯でオプションを盛り込んだ構成が、上の価格帯の標準的な構成よりも高額になることも稀ではありません。

メーカー間の水準合わせは、大手HMの標準仕様でベースモデルに採用されやすいラインナップを基準に並べています。この表は必ずしもLクラスやCentroがリシェルやCollagiaよりも格上であることを示唆するものではありません。逆にCollagiaやリシェルは、カスタマイズにより高級価格帯までカバーしているとも読み取れます。

HMで新築する際のキッチンの割引率はあまり情報が公開されていませんが、リフォーム業者は積極的に値引き率を広告しており、ある程度の水準感が見えてきます。

ここでは、「キッチン先生」のサイト

kitchen-reform.club

にある情報をもとに、まずリフォーム業者8-10社の価格平均とされているものをまとめました。

メーカー 高級
価格帯
大手HM
標準仕様
相当
中間
価格帯
普及
価格帯
パナソニック 42% 61%
LIXIL 35% 56% 64%
クリナップ 23% 36% 65%
トクラス 38% 65%

ただし、詳細に見るとあまり現実的と思えない値引きを提示している業者もありました。大幅な割引で引きつけておいて、工事費に上乗せして回収することなどを前提した見かけ上の値引きが提示されている可能性も否定できないので、少し割り引いて考えるべきでしょう。

このため、「システムキッチンの適切な値引き率は?【全メーカー公開】」からのサマリーも引用させていただきます。

kitchen-reform.club

メーカー 高級
価格帯
大手HM
標準仕様
相当
中間
価格帯
普及
価格帯
パナソニック 30-40% 40-50%
LIXIL 30-40% 40-50% 50-60%
クリナップ 20-30% 20-40% 40-60%
トクラス 30-40% 40-50%

リフォームとHMではビジネスモデルも違うので、この数字の絶対水準が注文住宅にそのまま当てはまるわけではありません。しかし、この表に更に数字プラスマイナス5%ぐらいのレンジで見れば、かなり良い線をついていると感じました。

割引が無いもの、あまり感じないものも多い

キッチンの例を見ると大幅な割引に期待が高まりますが、大幅割引は競争が激しい少数の分野に限られており、インテリアで個別性の高いものはあまり割引がありません。

契約後の打合せの中で追加・変更したくなるものの中でも、

  • 壁紙・床材・天井材・タイル
  • トイレの紙巻き器、ドアノブ、タオルフックなどの小物

などはほぼ定価か、あるいは割引があっても工賃部分のインパクトが大きく、割引の有無をあまり感じられない項目です。

金額的には設備の方が大きいですが、契約後の打ち合わせで出てくる件数が多いため、打合せを進める中でこうした資材が定価で加わってくると気分には大きな影響があるかもしれません。ともすれば、「契約してしまったから割引がないんじゃないか。契約前であれば違ったのではないか。」などと考えがちですが、あらかじめそういうものだと思っておいた方がよさそうです。

また、当たり前ですが、造作家具のような一品物は割引という概念自体がなじみません。

割引率が高いもの

水まわり

キッチン、風呂、洗面台、トイレなどは定価から大幅に割引された金額が見積もりに入っています。採用・検討したものの中ではトイレの上級ラインナップのものの割引率が一番渋そうな感じでした。

照明器具

ダウンライトなどによく使われる大光電機やコイズミ照明などは、50%とはいきませんが、それなりの割引が期待できます。ただし、海外有名ブランドの吊照明などは興味がなく検討しなかったので、割引があるかどうかは不明です。

収納

フィットラック、南海プライウッド、永大などのシステム収納も大きな割引がありました。

空調・給湯・電気関係

エアコン(除く全館空調)、エコキュート太陽光発電、蓄電池も水回りと並んで定価と実勢価格の乖離が大きい分野だと思います。

特にエアコンなどは、そもそもオープン価格が一般的になりつつあり、定価という概念は他の分野にも増して有名無実になりつつあります。ともあれエアコンについては、大幅な割引があるように見えますが、家電量販店で購入するより少し高い印象でした。ただし、割引率は一年を通じて安定しており、モデルチェンジの時期に関係なく変わりません。そのため、導入するタイミングによって受け止め方が大きく変わると思います。

エコキュート太陽光発電、蓄電池なども定価から見ると時に5割以上の大幅な割引が適用される設備です。とはいえはリフォーム業者で最安値を提示されている価格の2割増し前後といった印象をうけました。リフォーム業者は工事費が別になっていることが多い一方でHMは諸経費が別途かかるので、トータルで見るとやはりHMの方がやや高いでしょうか。分離発注しにくい設備であることは別にしても、メンテナンスのことなども考えると絶妙な値付けだと思います。

まとめ

割引率に関する情報は、ハウスメーカーや支店、さらには商品によって大きく異なります。高額な設備やシステム収納、空調・給湯・電気関係では大幅な割引が期待できますが、個別性の高いインテリアや造作家具では割引が少ないこともあります。

みつもりに定価で入っているものをみて疑心暗鬼にならないためにも、この記事が、家づくりの際のコストを理解し、賢く選択する一助となれば幸いです。

家づくりの追加コスト徹底解説:見落としがちな要素と注意点

はじめに

家を建てる際、プランに何かを追加する場合のコストがどのように決まるか、気になる方も多いのではないでしょうか。本記事では、設備や素材を追加する際の具体的なコスト構成について解説します。この記事を参考に、見積もりをより詳しく理解し、納得のいく家づくりを目指しましょう。

設備等を追加するためのコスト

プランに何かを追加する場合のコスト(消費税抜き)は、

$$\left[(資材価格 \times 割引率 + 工賃)+(関連する工事費用)\right]\times 諸経費$$

で決まります。

資材価格(上代

追加する設備や素材の定価(上代)です。たとえば、キッチンや床材、壁紙などの設備や素材の場合、メーカーのカタログに記載されている数字がこれにあたります。どのハウスメーカーあるいは工務店で家を建てるとしても、同じ設備であれば原則同じ金額になります。ただし価格の中に輸送費なども含めている場合には、地域によっては価格差がでることがあるかもしれません。

また、設備メーカーのショールームが作成する見積もりも定価ベースのものです。施主が払う金額は、次に述べる割引率を加味した上でハウスメーカーが作成する見積もりに反映されます。

割引率

それぞれのハウスメーカーが設定する割引率です。ハウスメーカーは、

の3つの要素を足し合わせて販売価格、ひいては割引率を決めることになります。この中で特に大きな要素を占めるのが、仕入れの際の掛け目です。ハウスメーカーと設備・素材メーカーの協力関係(取引量の多さ)と、他の設備・素材メーカーとの競合度合いが重要です。

実際にはハウスメーカー単位ではなく、支店単位でこの数字は異なるようです。私たちの地域では、「***県では競争がはげしいので、当社は***の設備はかなり安い値段で仕入れることができます。」といった説明を聞いたこともあります。

資材価格×割引率をそのハウスメーカーにとっての定価と考えるとイメージがわきやすいでしょう。

この資材価格×割引率に加味する形で、施主毎やキャンペーン期間かどうかなど、個別の事情で値引きが提案されることもあります。

工賃

直接的な施工費用、設備の据え付け費用です。ときには工賃が素材価格よりも高いこともあります。代表例はタイルです。タイルを一枚一枚貼っていく工賃は相当に高く、工賃が素材価格の何倍もすることも珍しくありません。

工賃の最大の要素は職人さんの人件費です。同じ工法・手間・難易度のタイル張りであれば、素材価格が大きく違っても工賃はあまり違いません。一方で、エコカラットや床タイル(塩ビ製)、パネル(AICAなど)は施工しやすさに配慮されており、磁器タイルや石を貼るのに比べると大幅に安上がりです。

判断の目安として、現場の手間がかかる、技術が必要、丁寧に施工しないとムラが出やすい、素材が重かったり厚かったりする、乾燥させる手間などがかかると工賃は高めになります。しかし、仕上がりの質感とのバランスを考えることも大切です。

また、ハウスメーカーがよく使う素材・工法であれば、下請け業者に切れ目なく発注できるため、工賃は安定しやすいでしょう。たとえば、住友林業で無垢板のフローリングを施工する際の工賃は、他社がマルホンなどの無垢板を使って施工するのに比べて、材料のみならず工賃も安くなるのではないかと思います。

逆に、あまり採用されない素材・工法は、下請け業者を囲っておくわけにもいかず、単価が高くなることがあります。私たちはあるハウスメーカーで提案仕様的な位置づけてカタログに掲載されている仕様を採用しようとしましたが、その施工ができる業者が地域に見つからないために断念したこともあります。

関連工事費用

施工内容によっては、その仕様を取り入れるにあたって、直接的な原材料・設備とそれに関する工賃に加えて、追加的な工事が必要になることがあります。たとえば、タイルを壁・床にはる場合や、木質天井にする場合には、下地に追加的な費用が必要になることがあります。間接照明を入れようとする場合、照明器具を設置する場所で天井や壁を上げたり下げたりする造作も必要です。

私たちの例では、部屋の天井に100Kg超の荷重に耐えられるハンモックフックを追加しようとしたところ、天井面から梁までをつなぐ金具の特注と設置が必要 になりました。このような費用も地味に積み上がってきます。

諸経費

私たちが家づくりを検討し始めたころ、意中のハウスメーカー住友林業でした。当時、住友林業のデメリットについて調べるとよく出てきたのが「きこりん税」です。提案仕様に対してかかると言われた12%の諸経費(マークアップ)のことです。

住友林業は見積もりの表記の仕方を変え、いわゆるきこりん税という形での表記は2022年春ごろに廃止されました。しかし、各社の詳細見積もりを見ると、世間のイメージが実態と少し異なることがわかります。

  • 諸経費はオプション・提案仕様だけでなく、基礎・躯体・外装・内装を含め、家づくりのすべてにかかっている。
  • 住友林業だけでなく、積水ハウス三井ホームも諸経費をチャージしている。

ざっくりとした資金計画書レベルでは、どのハウスメーカーも諸経費を本体工事の総額の中に含めています。追加的な工事については、他のハウスメーカーは諸経費を工事費用の内数として取り扱っていましたが、住友林業だけは諸経費前の数字+12%の諸経費という表記の仕方をしていました。

2022年春に、住友林業も追加部分の工事に関する諸経費を工事費用の内数として取り扱うように変更したため、資金計画書レベルの資料では表に見えてこなくなりました。このため、住友林業だけが追加で12%取られるという誤ったイメージが広まったのです。

住友林業では12%と言われていた諸経費ですが、計算してみたところ三井ホームは10%弱、積水ハウスは8%でした。ただし、このことだけを持って積水ハウスが一番安いという結論にはなりません。ハウスメーカーは利益を資材価格(割引率)や工賃の中にも含めているため、諸経費という項目で利益を多く取るか、逆に割引率を低めにしたり工賃を高めにすることで利益を確保するかのアプローチの違いがあります。

これは社内の部門間の仕切りレートの決め方など管理会計に関連しているのではないかと思いますが、社内のことはわかりません。結局、私たちにとって重要なのは、合計でいくらになるか総額でハウスメーカーを比較して判断することです。

仕様の入れ替えの場合

仕様を入れ替える場合、入れ替え前の仕様に関わるコストを見積もりから引き、入れ替え後の仕様に関わるコストを見積もりに足すことになります。最初に挙げた、

$$\left[(資材価格 \times 割引率 + 工賃)+(関連する工事費用)\right]\times 諸経費$$

を見ながら、資材価格では同水準あるいは減額にしたのに、コストが上がってしまうケースをいくつか挙げます。

ケース1:フロアタイル → 乾式タイル

これは私たちが実際に経験した例の一つです。洗面の床にかなり単価の高いフロアタイルを採用予定で見積もってもらっていたのですが、乾式タイルに変更することになりました。もとのフロアタイルの価格が高かったため、素材の価格だけをみるとさほどコストは上昇しないはずが、工賃が大幅に違ったために20万円以上の増額になりました。

ケース2:ラクシーナ → Lクラスへのキッチン変更

設備メーカーは、主力商品で大量に販売する中間クラス(パナソニックラクシーナ、リクシル:ノクト、トクラス:Bbなど)と、上位クラス(パナソニック:Lクラス、リクシル:リシェル、トクラス:Collagia)では、割引率が大きく違うことが珍しくありません。このため定価ベースではほぼ同額の中間クラスの「もりもり仕様」と、上位クラスの「シンプルな仕様」があったとしても、割引率を考慮した現実の価格では上位機種が大幅に高くなることがあります。

ケース3:標準仕様アイテムのカスタマイズ

これも私たちの実例です。あるハウスメーカーのカタログにあるトイレで、リモコンの色を銀色から黒色に変更しようとしたところ、設備メーカー定価はほぼ変わらないのにも関わらず、5万円の追加費用との見積もりでした。ハウスメーカー品番では黒のリモコンが提供されていないため、特注扱いになり掛け目が変わるため5万円かかるとのことでした。

別のハウスメーカーでは、レンジフードを変更しようとしたところ30万円の追加との見積もりでした。変更前後のレンジフードの価格差は数万円なのに、特注が絡み割引率が大幅に引き下がったことが原因のようです。

怖いのは、リモコンやレンジフードがHMの標準の枠組み(HM品番が振られた商品)から外れることで、トイレやキッチンの他の部分の割引率も変化してしまうことです。

まとめ

普段は資材や設備の価格に注目しがちですが、今回は見落とされがちな要素も含めて、全体のコストがどのように計算されるかをまとめてみました。最終的には、しっかりと見積もりを取り、詳細見積もりをつぶさに調べたり比較することが重要です。しかし、この記事をもとにどのような費用がかかるかのイメージをつかむことで、驚きが減り、より的確なコスト予測ができるようになるのではないかと思います。

こだわり度合い別、標準仕様との付き合い方

はじめに

前回は資金計画書について触れ、家づくりにかかる費用の概要を見てきました。

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今回は、金額が一番大きい項目である建築主体工事費について考えるために、よくいわれる標準仕様・オプション仕様について整理したいと思います。

ハウスメーカー比較を始めたころは、各社の標準仕様が気になり、何が含まれているか随分と調べました。特にキッチンなどの設備にはこだわりがあったため、欲しいタイプのキッチンが採用できるかどうかは、ハウスメーカー選定において非常に重要だと思ったからです。

設計完了および着工にあたって振り返ってみると、積水ハウスにおいては何が標準仕様に含まれているか、標準とオプションの境目を特段意識する必要はあまりなかったと感じます。

今回は、施主のタイプ別に、標準仕様に対する向き合い方について私たちの考えをまとめました。

標準・オプション・特注という区分

ハウスメーカーによって呼び方や扱いは違いますが、大まかにまとめると、ハウスメーカーの仕様は次の三分類に分けられます。

  • 標準ハウスメーカーが、建築する家のグレードとして適切だと思うもので、多くのプランで採用する仕様
  • オプション:グレードが高かったり、趣味性が高い仕様。全戸に勧めるものではないが、一定の施主が採用しそうなものをハウスメーカー側であらかじめまとめたもの
  • 特注:標準・オプション以外の仕様

コストパフォーマンスという面で、標準・オプションと特注の間には大きな壁があります。

また、A社では標準仕様に含まれているものが、B社ではオプション仕様であったとしても、A社の見積もり額がB社よりも安くなるとは限りません。標準仕様の方がオプション仕様よりも掛け目(設備メーカー定価からの割引率)が良い傾向があるのは事実ですが、ハウスメーカーと設備メーカー間の取引条件の差が、より大きな価格差の要因となることも多いためです。

従って、「標準・オプション仕様の範囲で何が選べるか?」を考えるのが重要だと思います。

そもそも標準とオプションという区別をしていないハウスメーカーもあります。例えば積水ハウスのインテリアカタログでは、シート材から、無垢材、加工・着色した板材まで多様な床材がES-I/II/III/IV/X、およびCN/CN-Pという7つのグレードに分けて掲載されています。施主が特に希望を伝える前の段階での見積もり金額は、営業担当が「幅広い選択肢の中から大体これぐらいのものを入れておけば、施主のイメージに合うだろう」と用意するものです。これを標準と呼ぶとすれば、標準は営業担当ごと、あるいは案件ごとに異なると言えるかもしれません。

一方、三井ホーム住友林業では、標準仕様、オプション仕様という区分が明確に存在します。特に住友林業は標準仕様に対する制約が厳しく、施主にこだわりがある場合は、オプションや特注に頼る必要があることが多いという印象を受けました。

「とってもおおらか」タイプの施主

ある程度のクオリティは欲しいけれど、細部の仕様やどの設備メーカーにするかはこだわりがない場合、あなたは幸せです。

大手ハウスメーカーであれば、ほぼ間違いなく標準・オプション仕様の範囲で満足のいくものが選べるはずです。また、請負契約後に金額が膨れ上がるリスクは少ないでしょう。

この場合、間取りプランが気に入るハウスメーカーを選べばよいと思います。

「そこそこおおらか」タイプの施主

ほとんどの細部にはこだわりはないけれど、何点かは譲れない項目があるタイプです。

例えば、「キッチンのカウンタートップはセラミック以外はありえない。フロントオープン・深型で幅60cmの食洗機も必要。でもそれ以外はハウスメーカーの選択肢から選べる」というタイプ。

この例では、ほぼリシェルSI(LIXIL)+ Mieleの食洗機に決まりです。従って、標準+オプションの範囲でこれが選べるハウスメーカーが有力候補になるでしょう。

「こだわりまくり」タイプの施主

設備のモデルやグレードだけでなく、細部にも譲れない点が多数あるタイプです。キッチンの例でいえば、

  • カウンターの長さや高さを自分仕様にしたい
  • 面材は、どうしても○○メーカーの△△でないとだめ
  • アイランドにコンセントが必要
  • レンジフードは、○○機能のついたモデルでないとだめ

といった様々なこだわりがあるタイプ。このタイプは特注の嵐になることを覚悟しましょう。

落とし穴は、設備メーカーの設定とハウスメーカーの設定の違いにあります。

例えば、あるハウスメーカーLIXILのリシェルSIを標準仕様に採用したとします。LIXILのカタログを見ると、リシェルSIには多彩なオプションがあり、いろいろなカスタマイズが可能です。面材の種類(色)も各グレードごとに何種類も用意されています。

ところが、ハウスメーカーの仕様としてリシェルSIを導入する場合には、LIXILのカタログと比較すると選択肢が大幅に減る場合があります。なかには、ハウスメーカーLIXILの共同開発仕様として、LIXILのカタログには載っていない選択肢が用意されていることも。

この場合でも、必ずしも自分の好みに合わせたリシェルSIが導入できなくなるわけではありません。多くの場合、特注扱いとして導入することが可能です。

導入できるのであれば、一見問題なさそうですが、大きく違ってくるのが割引率です。標準・オプション仕様として導入した場合と、特注で導入した場合では、割引率が大きく違うことがあります。標準・オプション仕様以外から選んだ場合、それが設備メーカーのカタログにある仕様でも、ハウスメーカーから提示される特注価格が、設備メーカーの定価よりも高くなることさえあります(←経験談)。

キッチンのように定価が高い商品では、この割引率の差が非常に大きく効いてきてしまうため、特注に強いハウスメーカーを中心に考える必要が出てきます。

現実的なアプローチ

実際は、どの施主にも自分のこだわりポイントがあります。例えば、キッチンは「こだわりまくり」タイプ、その他は「とってもおおらか」タイプといったように、分野によってこだわり度合いが違うのが一般的かもしれません。

このため、強いこだわりがある分野については、しっかりと調査してハウスメーカーの選択や、予算の確認を行いつつ、他の分野ではおおらかな気持ちでハウスメーカーの標準・オプションのリストから選んでいくのが良いと思います。

まとめ

今回は注文住宅でよく言われる「標準仕様」についてまとめました。この記事を書くのは結構苦労しました。それは標準仕様とオプション仕様という概念はいわれるほど明確ではなく、金額とセットで考えないと、判断基準にはならないということが実感できたからです。

逆に、予算管理の上で本当に気をつけるべきは、標準・オプションを外れた「特注」になるものでした。特注問題について考える上では、割引率がどう決まるかに触れる必要があります。割引率について別途考えてみたいと思います。

資金計画書の仕組み

はじめに

家づくりの総額がいくらぐらいになるのか、何回かわたって実例をもとに説明し、ざっくりとした試算の仕方をまとめます。まず初めに、ハウスメーカーとの打ち合わせの最初の方で出てくる「資金計画書」のフォーマットにのっとって、全体の構成をみてみましょう。

資金計画書の基本

ハウスメーカーごとに分類が異なります。分類の仕方の違いは、各社の考え方が表れていて面白いのですが、比較には不便です。そこで私たちは各社の見積もりを同じ基準で分類し、比較しやすくしました。その際に使った分類の大項目はこちらです。

  • 建築主体工事費
    • 本体工事費
      • 本体工事
      • オプション工事(提案工事)
    • 設計関連費用
    • 仮設工事費
  • 付帯工事費
    • 屋外(屋外電気・給排水工事、ガス工事)
    • 屋内 (カーテン、照明、造作家具)
    • 設備(空調、給湯、床暖房、太陽光、蓄電池)
    • 外構費用
  • その他

建築主体工事費

家本体の費用で、基礎から外装・内装・基本的な設備(キッチン、洗面、トイレ、風呂)などを含みます。標準という概念があるハウスメーカーでは、本体工事がさらに本体工事+オプション工事(提案工事)と分かれていることがあります。

ハウスメーカーごとに仮設工事費と設計関連費用の取り扱いに違いがあります。これらを本体工事費の一部として取り扱っているハウスメーカーもあれば、別項目としているハウスメーカーもあります。これらはどちらも本体工事の大前提として必要な項目であり、施主側の都合で分離発注することができない項目であることから、私たちは主体工事費にまとめて比較しました。ただし、設計士が担当する業務の中でも、長期優良住宅の申請などはその他の項目に含めています。

この金額の内訳や水準については、別の記事で詳しく説明します。

付帯工事費

付帯工事は、完成した本体に外部業者が取り付けるものが中心です。とはいえ、これらが無いと家として機能しないものもあるので、施主の立場からすれば、主体工事と付帯工事の違いはさほど意識にのぼらないかもしれません。

また、本体工事の一部として取り扱われるか、付帯工事の一部として取り扱われるかが、状況に応じて変わる項目もあります。一例をあげれば照明です。私たちがもらった当初見積もりは、どのハウスメーカーも付帯工事の一部に含めていました。しかし詳細見積もりの段階では、屋内電気工事の一環として本体工事に含まれていました。シーリングライト、ペンダントライトのように着脱できるものは付帯工事っぽいですが、ダウンライトや間接照明に関しては、本体工事の一部とみる方がイメージに合うので、納得なのですが、見積もりを確認する上での注意ポイントかもしれません。

その他の例では、外構のタイルデッキを基礎工事と一緒にコンクリートを打つことにしたり、屋外の散水栓を、屋内の給排水の一環として取り扱うこともあるようです。この場合には外構費用と、本体工事の費用の中で入れ替わりが発生することになります。

付帯工事費には、施主支給や分離発注がしやすいものもいくつかあります。

  • 外構
  • カーテン
  • 個別空調 (隠蔽配管でない場合)

付帯工事費に大きく影響するのは、外構工事と、太陽光・蓄電池の採用の有無です。

その他

その他は、役所関係、ローン関係など、家づくりのための付随的サービスに関わる費用もろもろです。中でも大きいのは住宅ローンを借りる際の手数料と登録免許税です。

消費税

土地及び登記等一部の費用を除けば、ほぼ全ての項目に消費税がかかります。ハウスメーカーが坪単価というときは、税抜きの数字が一般的だと思います。

業者からの見積もりに既に消費税が含まれていることがあります。この場合には、資金計画書上は、内税であるかのように見えます。

費用の割合の実例

下のパイチャートは、私たちの家における本体工事と付帯工事の比率を表したものです。本体工事が73.8%、外構が14.1%、付帯工事(設備)が7.9%と続きます。

新築費用の内訳

本体価格の約3割増しが、土地以外の建物・外構全体の総額で、それにさらに10%の消費税がかかっていることがわかります。

まとめ

この記事では、家づくりにおける費用の全体像をざっくりと把握するための基本的な分類と、各分類に含まれる主な項目について説明しました。本体工事以外にも多額の費用がかかることがわかります。私の場合だけでなく、他の例を見ていても、土地を除く建物全体で本体価格の3割増しはそこそこ当てはまりの良い数字のようです。

今後の記事では、各項目ごとの詳細な内訳や具体的な事例を交えて、さらに掘り下げて説明していきます。これから家づくりを考えている方にとって、参考になる情報を提供していきたいと思います。

旭化成ホームズの新商品『アスハウス』について思ったこと

はじめに

前回の記事で触れたとおり、旭化成ホームズが新たに木造住宅を発表しました。この新商品は、日本の伝統的な民家に寄せたデザインと、断熱等級7に加え気密性を保証する点で画期的です。本記事では、私の主観と推測に基づいて、旭化成ホームズの新商品におけるデザインや施工面、営業戦略について考察し、その可能性について探ります。木造住宅市場に新たなプレーヤーが参入することで、業界全体にどのような影響が及ぶのかを探ることが興味深いです。

building-dream-home.hatenablog.com

新商品の特性

デザイン面での制約

説明やモデルハウスの写真を見る限り、日本の伝統的な民家に寄せたデザインのコンセプトがはっきりと感じられます。発表には具体的な内容が乏しいため、私の推測に過ぎないのですが、発表の文面からはこのスタイルに共感する顧客だけをターゲットにしているように思われます。

例えば、「断熱・気密性能は欲しいけれど、家のデザインとしてはコンテンポラリーな洋風の大きめの家を建てたい」という要望には対応しない可能性があります。この点で、従来の注文住宅と比較して自由度が低いと感じるかもしれません。

施工面での制約

ハウスメーカーの強みは、規模を活かして工業化された家づくりにあります。アスハウスについては、これまでのヘーベルハウスで培った工場や施工面でのノウハウがあまり役に立たないかもしれません。C値0.2を実現するには、資材と施工マニュアルだけでは不十分で、経験豊富な職人による丁寧な施工が必要です。

そのため、東京都西部限定で年に20棟弱という規模になったのでしょう。おそらく、東京西部を営業エリアとし、木造・高気密住宅の施工ノウハウを持つ工務店が下請けとして施工を担当しているか、提携してこの商品を開発したと考えられます。

価格面での制約

大量生産ができないこと、ノウハウを蓄積している過程であることを考えるとコストダウンには限界があります。オーバーヘッドや人件費が高いため、ハウスメーカーのプラットフォームでは、大量生産と工業化によるコストダウンが必要です。

施工現場の手間がかかり、工業化も進んでいない家を作ろうとすると、坪135万円でも利益が出ない可能性もあります。施主側からすれば、ほぼ業界最高値の坪135万円払うなら、自由な間取りが欲しいとか、設備は豪華なはず、という期待があるでしょう。旭化成ホームズが期待値をどうコントロールし、バランスを取っていくのかは興味深いところです。

営業部隊

施工だけでなく、営業や設計についても、ヘーベルハウスを担当している部隊がアスハウスを売るのは難しいかもしれません。ただし、施工地域と棟数が限られていることから、西東京地域に数人の担当者を配置すれば、ヘーベルハウスのブランド力もあり、すぐに顧客を見つけることができるでしょう。この点は大きな問題にはならないでしょう。

新商品の背景

今回の新商品は、旭化成が木造住宅に手を出すにあたり、事業化を検討するための実証事業ととらえるのが妥当です。2024年5月24日付住宅産業新聞にも、「まずはトライアルとして東京都内で棟数を限定して販売し、同社が木造住宅を手掛ける意義や事業化の可能性などを検証したい」と書かれています。

www.housenews.jp

旭化成ホームズは、木造建築に取り組むかどうか実証実験を行う上で、他のハウスメーカーとの差別化としてコンセプトのとがった、顔の見える家を打ち出してきたのでしょう。数年続ける中でノウハウが蓄積され、事業化の可否を見極めたいと考えているでしょう。

旭化成ホームズにとっての意味

断熱・気密が重視されるようになり、鉄骨住宅専業のハウスメーカーは岐路に立っています。耐震性の面で優位性があるというイメージも、2025年4月に小規模木造住宅に関する4号特例が縮小され、木造住宅でも構造計算をして耐震等級3を取る例が増えてくると、差別化の要因になりにくくなるでしょう。

こうした中で、木造住宅に新規参入できるかどうか見極めるためには、実験的に木造住宅販売をすることでノウハウを蓄え、感触を探るのが効果的です。数年間の試行期間で、事業化するにあたっては、スケーラブルかどうか、ノウハウを蓄え、事業拡大を通じてコストダウンできるか、十分な市場シェアを獲得できる商品性があるかを見極めていくことになるでしょう。

人口動態や住宅価格と所得の関係を考えれば、国内の注文住宅市場は縮小傾向にあります。こうした中で、新規事業を成功させるのは容易ではありません。私見では、注文住宅としてのアスハウスの未来は厳しいかもしれませんが、最終的には木造の建売分譲ビジネスに進む可能性も考えられます。数年後に、答え合わせをしてみたいものです。

他のハウスメーカーに与える影響

ヘーベルハウスがC値0.2を実現できると主張することで、他のハウスメーカーも気密性を無視した家づくりが難しくなるでしょう。この流れの中で、他のハウスメーカーが主力商品で例えばC値1.0保証(木造住宅の場合)を提供するようになれば、業界に大きな変化が起きるでしょう。

C値1.0は現代においてとりたてて高気密ではないかもしれませんが、大手ハウスメーカーが全棟これを計測し保証するならば、非常に大きなインパクトがあるはずです。これまで見て見ぬふりをしていたC値が、ハウスメーカー選びの基準に上がれば、スペック競争も始まり、ますます鉄骨住宅は難しい立場に置かれるに違いありません。守るべき鉄骨住宅が無い、住友林業三井ホームあたりがC値保証に踏み切ることがあれば、大きな変革が期待できます。

まとめ

旭化成ホームズの新しい木造住宅は、ユニークなデザインコンセプトと高い性能を持ちながらも、施工の難しさやコストの問題を抱えています。この記事を通じて、木造住宅市場への新規参入がもたらす影響や、旭化成ホームズが直面する課題について考察しました。今後の動向を注視し、住宅業界全体の進化を見守りたいと思います。

旭化成ホームズの新商品『アスハウス』:究極の断熱・気密性能と独自コンセプトで未来を創る

はじめに

鉄骨で頑丈さに重点を置き、気密・断熱にはあまり力を入れていないと思っていたヘーベルハウスが、断トツの断熱・気密性能を誇る新商品を5/10に発表しました。発表資料やホームページを見ると、性能だけを追求した商品かと思いきや、しっかりとしたコンセプトと熱い思いが感じられる、とても応援したくなる試みです。

この商品の発売が持つ意味合いについて考えてみました。この記事では、商品の概要を説明します。次の記事で、背景などについて思ったことを書きます。

今回の記事は、旭化成のホームページから引用した情報や画像が中心です。

Asu-haus(アスハウス)|旭化成ホームズ

性能面で何がすごいのか

大手HMで、

「断熱性能では最高等級の断熱等級7を、気密性能ではC値0.2㎠/㎡以下を標準仕様とし、高い快適性とCO2排出量削減の両立を目指します。」(アスハウスホームページより)

と言い切っているところ、特にC値を目標ではなく仕様として取り入れ、更に0.2という断トツの水準を実現しようとするところが革新的です。

断熱等級7は、一条工務店ダイワハウスなど、いくつかのHMがアップグレード仕様・商品として提供していますが、C値については、建築件数が多いメーカーでは一条工務店のみが目標とし、それも0.5程度でした。この点で、アスハウスの仕様は群を抜いています。

また、売るためのアピールとして、等級やC値、UA値というスペックを競うのではなく、住む人の快適さが重要であるとしています。具体的に実現したい快適さの内容を明記してくれている点が、とても良心的だと感じました。

旭化成ホームズよりお借りしました。

コンセプト

旭化成ホームズの発表以降、性能に注目した解説記事や動画が一斉に出ていますが、こうした性能の商品を企画した背景となるコンセプトが素晴らしいと思います。

球と人を基準に考えた日本最高レベルの温熱性能。 人々の命を守り、暮らしを長く支える構造安全・耐久性能。 街並みに貢献し、日本の気候風土にあったデザイン。 それらによって生み出されるしあわせな暮らしと空間を、 多くのステークホルダーと共に創りだすことが私たちの切なる思いです。

 

Asu-hausがめざすのは、日本の気候風土や地域性などを大切にするヴァナキュラーデザイン。 変わらない昔ながらの日本の価値観を未来に受け継ぎ未来につなげます。 さらに、省資源、省エネに貢献するだけでなく、人生100年時代に、 用途を自在に可変させながら住む人を支えライフデザインする、 変化にも対応しやすいコンパクトでシンプルなデザインをご提案します。

コンセプトの柱は3つです。

  • 日本の自然風土・日本の価値観にあった家
  • コンパクトでシンプル
  • 省資源・省エネに貢献

日本の自然風土・日本の価値観にあった家

アスハウスのモデルハウス第一号の外観が非常に印象的です。切妻屋根の民家風の建物。ヘーベルハウスとは全く違う方向性を明確に示しています。

旭化成ホームズよりお借りしました。

コンパクトでシンプル

宿泊体験もできるモデルハウス(プロトタイプ)は、約40坪の土地に、延べ床面積30坪(1F:20坪、2F:10坪)

旭化成ホームズよりお借りしました。

これまで大手HMのモデルハウスは、現実に建てられる家と乖離した60坪~80坪ぐらいの豪邸に、標準仕様には含まれないような豪華な装飾を施し、憧れを誘う広告塔のような存在でした。

しかし、アスハウスのモデルハウスは、まさにコンセプトを体現して30坪の、現実(の中でもややコンパクト目)のサイズです。旭化成ホームズが、コンパクトでシンプルな家、というコンセプトに真剣であることが伺えます。

商品概要

非常に尖ったコンセプトのアスハウスは、新たな試みであるため、現段階では大々的に売り出すことはできません。当面は棟数・地域を絞って慎重に展開していくようです。また、大手HMが得意な

工業化・大量生産の枠組みを使えないことや、C値の確保など施工の手間が一段と増しそうなこともあり、価格も非常に高額です。

  • 坪単価:135万円より
  • 販売棟数:2024年度16棟、2025年度25棟を上限とする限定販売
  • 販売エリア:東京都城南・城西地区、都下の一部

まとめ

今回は、アスハウスの概要をまとめました。最初に気密・断熱の数字を聞いたとき、率直に「うらやましい」と思いました。しかし、発表資料などを丁寧に読むと、これは単にスペック競争の中でとらえられる商品ではなく、施主の意識や住み方を問う商品だと感じます。また、当面は実質的に実験的な取り組みになることや価格などを勘案すると、多くの施主にとって現実的には手を出せない商品ではないかと思います。

しかし、この商品には成功してほしいですし、この商品の発表が業界に与えるインパクトは大きいはずです。次回は、アスハウスの発表を見て感じたことをまとめたいと思います。

参考文献