出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと
久しぶりの読書。
私は自分の人生に刺激を与えてくれる本がすごく好きです。それはきっと、本は自分の中の何かを変えてくれる存在だと信じているから。
読んだからと言って「劇的に人生が変わる」なんてことはありえない。だけど、なにか行動するための「きっかけ」が掴めるかもしれない。
私が本を欲する時は大抵、何かに悩んだり前に進みたい時だから。
というわけで、今回はこの本を読みました。
出会い系サイトで70人と実際に会ってその人に合いそうな本をすすめまくった1年間のこと
- 作者: 花田菜々子
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2018/04/17
- メディア: 単行本
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正直言って、タイトルがセンセーショナルすぎてずっと避けて通ってきた作品。たまたま雑誌の記事で著者の写真を見て「あ、普通の人だ」と分かり、猛烈に読んでみたくなったのです。現役の書店員さんであるということも後押ししました。
本書はタイトルの通り、とあるXという「登録している人と30分だけ会って話をしてみる」というコンセプトの出会い系サイトで実際人に会ってみて、その人に合うと思う本をお勧めする自叙伝。
人生に、仕事に、生き方に悩んでいた著者がたくさんの人に会うことで「本を勧めるとはどういうことなのか」ということや「自分の本当にしたいことは何なのか」、「転職すべきなのか」、「別居中の夫のことはどうするのか」という人生の悩みに向き合っていく。
上記を読むと暗い話なのかと思われるかもしれませんが、全く暗さなど感じず、むしろ前向きになれる本でした。面白くて一気に読んでしまった!
「出会い系」と言われると正直言って良いイメージはわかない。個人的にはマイナスイメージの方が大きいです。
"出会い系=エロ"のイメージが強いから。だけど、この本に出てくるXというサイトはそう言った類のものではない。
もちろんエロ目的の人もいるようですが、ほとんどがそれを目的としない人たちでした。起業するためのヒントを得るために会う人、自分の持つスキルを発揮するために会う人、ただただ人と話したいだけの人。
どちらかというと、自分自身を仕事としている人、自立している人が多い印象です。だからこそ、そういう人たちと出会えたからこそ、自分の進むべき道が見えたのかもしれませんね。
どこに行って誰と出会うかというのは、その後の自分の人生を大きく変える。その一歩の踏み出し方はきっと人それぞれ違って、菜々子さんにとってはXだった。
菜々子さんの進みたい方向性とか、悩んでいることって結構私に近くて、似た感性を持っている人だと思った。
今自分の置かれている状況に関して納得していない。だけど、どうしたいのか分からない。なんとなく本とは関わっていたい。自分の幸せとは何なのか?
自分の悩みとは大抵自分だけでは解決できない。背中を押してくれる人が必要で、新しい考え方を、新しい視点を吹き込んでくれる人が必要。
そのためにはたくさんの人と出会ってみるべきなのでしょう。自分の知見を広げるために。自分の可能性を広げるために。新たな一歩を踏み出すために。
すごい人に会ってみるべきだし、自分の人生で会いたいと思っている人に会うあうべき。
物は使いようだし、人によって前に進む方法も違う。菜々子さんに触発されたからといって同じように出会い系サイトに登録しようとは思わないし、同じことをしたからといって同じ未来にはならないでしょう。
だけど、「こういう進み方もあるんだよ」「自分の人生好きに生きた方が楽しいよ」「お金が全てではなくてやりたいことをやろう」そういうメッセージがダイレクトに伝わってきて、自分の可能性みたいなものを感じた一冊でした。1年後の自分に期待!
私は菜々子さんの生き方って格好いいと思う。
羨ましくて妬いちゃうくらいにね。
ライトなお仕事小説『これは経費で落ちません!』
私事ですが、現在仕事で経理をしています。まだまだ入社して数ヶ月なのでひよっこであります。毎日分からないことだらけですが、今まで触れたことのない「経理」というものに触れられて楽しいです。
そんな今の状況だからこそ、「経理」とつく本には興味津々です。
これは経費で落ちません! ~経理部の森若さん~ (集英社オレンジ文庫)
- 作者: 青木祐子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2016/05/20
- メディア: 文庫
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これは、石鹸や入浴剤を扱う天天コーポレーションで働く経理部森若さんのお話。お仕事小説です。
「これは経費で落ちない」と言うとは、社員の不正をバンバン暴いて切っていくような爽快系か?と期待しながら読みました。
主人公の森若さんはとても真面目。仕事とプライベートの公私混同はしないし、いつも淡々と仕事をこなす。周りから怖い人と思われている節がありますが、本人はそれを気にしていて、何故そう思われてしまうのかが分からず悩んでしまうような人。敵視されて嫌なことを言われ、それについて自分の中で毒付いてしまっても「自分の性格が悪い」と考える人。自分が傷ついていることにも気付かない。
つまり、とても不器用な人。
そんな、人に誤解されやすいタイプの森若さんが経理部の社員としてテキパキ仕事をしていく姿は素直にすごいなと思いますし、仕事も出来る人で上司としても尊敬出来ると思います。
こんな上司いいな!と思いながら読みましたが、個人的には腑に落ちない部分が多かったかな。
ダメなところ、経費で落ちないものを追求していくのかと思っていたけど、そういうわけでもない。不透明なものを無理やり不透明ではないと思い込み、片付けている感じがする。そういう部分が個人的にちょっともやもやするのは、私がまだまだ経理部のひよっこだからなのだろうか…
なんだか問題が解決されていない気がする。フラグ回収も全てはされてないし、続き物なのかな?
恋する森若さんは最高に可愛いので、そういう部分はとても気になる。
本作は別作品のスピンオフのようなので、今回回収されていないフラグは本編や別作品で回収される予感。
とりあえず本編も読んでみようと思います。
幸せになるための一歩を…『神様のケーキを頬ばるまで』
人の感情は複雑だ。
はたから見ると何の悩みもなく幸せに暮らしているように思えても、心の奥底ではどうしようもない気持ちを抱えているかもしれない。
「素敵な人だ、こんな大人になりたい」そう思われている人だって、その人の日常は波乱に満ちているかもしれない。
そんな"人の感情の歪み"、"不穏さ"、"アンバランスさ"。言葉に出来ない微妙な感情や深い部分を上手く表現しているのがこの『神様のケーキを頬ばるまで」です。
- 作者: 彩瀬まる
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2016/10/12
- メディア: 文庫
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とある雑居ビルを舞台に、そこに関係する人たちの生き方を描いた物語。生きることに不器用な主人公たちが、悩みながらも自分の光を探して歩き続ける。「暗い森に入ってはいけない。」それなのに…人はどんどん深みへと落ちていく。
一見大人で素敵な人生を歩んで見えそうな人が、実際は家庭が上手くいかず子供との関係に悩んでいたり、好きなのに次に進むために別れる選択をしなければいけなかったり…
胸がぎゅっとなる物語が詰まっています。とても苦しいのに、何故かとても好きだと思う。それはきっと、主人公たちの脆さや不安定さが自分と重なるから。愛の歪みの苦しさがずっしりとのしかかってくるから。
私は「龍を見送る」が特に好きです。切ない。
好きなのに、気持ちはまだそこにあるはずなのに。それなのに別れないといけない。そんな恋ってあるんだな。それはきっと、大人への階段なんだ。
この本、とても大好きです。
本書解説の柚木麻子さんによると、これは「祈りの物語」らしいです。なるほど。確かに「祈り」なのかもしれない。
なんというか、柚木さんの深読みの仕方がすごいと思った。知識ある人にしかできない読み方で、自分には思いつかない視点、思い至らない部分で、それがまた面白かったです。
あけましておめでとうございます
2017年が始まりました。
年々1年の経つスピードが早まっているように感じます。つまりそれは、毎日をもっと大切に過ごさなくてはいけないということ。
2017年は毎日を大切に、その日できることはその日にしっかりとやる。「今日もしっかりとやりきった!」と思えるように、そして、その気持ちを少しずつ積み重ねていく1年にしたいと思います。
2016年、思い返せば色々なことがありました。その中で最も大きいのは「転職」をしたこと。大好きな本屋を辞め、心機一転。事務の仕事を始めました。
大きな一歩を踏み出した年。そして今年はその一歩を確実なものにする年。一生懸命頑張ります。
2016年の最後は「久石譲 ジルベスターコンサート」で幕を閉じました。
知らない曲も多かったですが、とても良いコンサートでした。久石さんは本当に天才です。作曲家としても尊敬していますが、演奏者としての久石さんが最も好きです。
今年も必ず行きます。久石さんの本も購入したので今から読みたいと思います。
2017年、楽しんで行きましょう!
ドーナツの思い出
『なんたってドーナツ』を読んでみて、私もドーナツについて書いてみたくなりました!
この本についてはこちら⬇︎
http://doremifagott.hateblo.jp/entry/2016/11/17/125425
私にとってのドーナツの思い出とはなんだろう。"ドーナツの思い出"と聞いて思い出すのは、幼い頃に見たドーナツを作る母の後ろ姿。"幸せなひと時"を連想する。なんだか温かい食べ物だと思う。
ただそれは私の頭の中のイメージである。私は家で手作りドーナツを食べたこともないですし。
しかし、このイメージはあながち間違っていない。ドーナツのエッセイを読んでそう感じた。やはり、ドーナツは昔ながらのおやつであるからなんだろう。
ドーナツは私となんら縁もゆかりもない食べ物だと思う。美味しいし、たまに食べたいと思う。でも、特別に好きというわけではない。それなのに本屋でこの本を見つけて、これを「読みたい」と感じた。それはなんでなんだろう?
ドーナツと私を結ぶもの。少し考えて見た。
私にとってのドーナツ。それを考えて真っ先に思い出したのは「わかったさんのドーナツ」。わかったさんシリーズは昔から大好きで、自宅に数冊シリーズを持っている。クッキーなんかは昔よく作ったものだった。それなのに、シリーズの中で一番思い入れがあるのは、作ったこともないドーナツだった。
何故かすごく惹かれるものがあって、何度も何度も読み返していた。可愛い女の子の存在、不思議な世界観、そして、わかったさんシリーズの中でもトップクラスの色彩感。それが堪らなく好きだった。
「わかったさんのドーナツ」のことを考えているともう1つ。ドーナツとの思い出を思い出した。
小さい頃に食べていたドーナツといえば、誰もが知っている「ミスタードーナツ」。私はここのゴールデンチョコレートが大好きで、ドーナツを食べるというと必ずこれを食べていた。
買って帰ったドーナツの中にゴールデンチョコレートがないと怒り、うっかり家族の誰かが食べてしまっても怒っていた。それほど私はこのドーナツが大好きだった。
家族の中では「ゴールデンチョコレート=私」という方程式が完全に出来上がっていて、ドーナツを選ぶ時に私が居合わせなくても必ずゴールデンチョコレートは綺麗に箱の中に仕舞われていたものだった。
あんなに大好きだったのに、もう久しく食べていない。いつから他のドーナツを食べるようになったんだろう。久しぶりに食べたくなってきた!
うん。意外とあった、ドーナツの思い出(o^^o)
余談ですが、私は割と何かにハマるといつもそればっかりになってしまう。
普段よくクラシック音楽を聴きますが、それも毎回同じ曲ばかり。YouTubeの音楽動画もお気に入りを繰り返し。数ヶ月に1度は必ず行く大好きなカレー屋さん、通いつめて5年ほど経つのに未だに石焼チーズカレー以外食べたことがない。
全然意識していなかったけど、こう見てみると私の行動パターンは昔からなんら変わっていないのだな。
幸せな思い出をおすそ分け『なんたってドーナツ』
ドーナツ、それは懐かしい思い出の味。
ドーナツって本当に幸せなおやつだと思う。想像するだけで幸せな気持ちになれますし、口の中まで甘い気がする。食べたい。
なぜドーナツという存在は私たちの胸を熱くさせるのか。人々のドーナツに対する思いや、ドーナツという存在について感じたこと、考えたことが詰まった本。それがこの「なんたってドーナツ」です。
なんたってドーナツ: 美味しくて不思議な41の話 (ちくま文庫)
- 作者: 早川茉莉
- 出版社/メーカー: 筑摩書房
- 発売日: 2014/10/08
- メディア: 文庫
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人の数だけドーナツとのストーリーがあり、とても面白く読むことができます。この本ではなんと41編も!「ドーナツのことだけで1つの本が出来上がってしまうのです。その想いと情熱はすごいです。
老若男女問わず、様々な方がその思いの丈を連ねていらっしゃるので、正直読みにくい文章や自分とは合わない文章もあります。
ですがそれ以上にセンスの光る文章、言葉に出会うことができました。こういうところが複数の方で書かれた本の醍醐味と言いますか、面白いところですね。
表現が好きだと思ったのは俵万智さん。
「昔」という言葉を外からの見た目と、内からの心情的な部分に掛けて使っているのが印象的で、「なるほど!そんな表現の仕方が! 」と惹きつけられました。
食欲をそそられたのは堀江敏幸さん。
ベニェって一体どんな食べ物なんだろう。「幻となったあの味」というのがとても興味そそられます。
そして、文章的に好きなのは千早茜さん。
すごく素敵な文章を書く方だなと。エッセイですがそれは1つの物語として仕上がっていて、実に運命的な気がして。千早さんの物語にもっと触れてみたいし、また読み返したい。
後は林望さんの「甘露の味わい」という言葉が好きだなと思ったりと、素敵な文章や言葉に触れられて幸せでした!
そうそう、私はこの本を読んで気づいたことがあります。それは、みなさん割とドーナツの穴のことを真剣に考えているということ。私は穴にそこまで着目したことはないですが、穴という存在は思っていた以上に大きく、人を惹きつけるようだ。
「ドーナツを穴だけ残して食べる方法」と言う本も出版されているくらいですから、その存在は誰しもが気になる部分なのでしょうね。この本も近いうちに読みたいと思います。
舞台は小説よりも奇なり『オペラ座のお仕事』
音楽は好きでクラシックをよく聴きます。しかしながら、オペラに触れたのは高校時代の音楽の授業程度。
そんな私が初めて自分から"オペラ"に触れるきっかけとなりました。
オペラ座のお仕事──世界最高の舞台をつくる (ハヤカワ・ノンフィクション文庫)
- 作者: 三澤洋史
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2016/09/21
- メディア: 文庫
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著者の三澤洋史さんは新国立劇場で合唱指揮者を務めていらっしゃいます。この本では、三澤さんが如何にして音楽の道を志すに至ったのかという話から合唱指揮者という仕事の話、出会った人、オペラのこと、世界で活躍する指揮者のことなどに触れられており、大変興味深い内容でした。
音楽というものは本当に信頼関係の上に成り立っている。どんなに意見が食い違ったとしても遠慮も妥協もせず、時にはぶつかり合いながら進んでいく。そうして"より良いもの"を作り出していくのが本当のプロであり、そうすることで本当の意味の信頼関係が築かれていくのだという事を肌で感じる事ができました。
三澤さんという人物は実に探究心に溢れています。自分の進むべき道のための努力を惜しまず、全力でぶつかっていく。
勉強熱心で、行動力もあり、自らの道を自らの手で切り開く力を感じました。こういう方を人は「才能のある人」と呼ぶのかもしれません。ですが、決して「才能」があったから成功した訳ではありません。
音楽に対する情熱や研究心、自分の知への探究心。それらを兼ね備え、常に学ぶ姿勢を忘れなかったからこそ成功したのだと思います。
もちろん、人が成功するための要素として才能は必要だと思います。ですが、その才能を開花させることができるかどうかは自分次第です。三澤さんが持っていた才能はきっと、自分の知の欲求に忠実で、それらを全てを楽しむことができることだったのでしょう。
私はこの本の中で印象に残っている言葉が2つあります。
まず1つめは「自分のやりたいことは迷わずやればいい。人の目など気にすることはない。」という言葉。
そしてもう1つが「人の言葉というのは重いんだね。いつも真実に感じ、真実に語り、真実に生きていくべきなんだなと、身を引き締めた。」という言葉です。
人の言葉は重い。それは良くも悪くも。言葉には力があるからこそ、発言には気をつけないといけないし、日々の言葉を大切にしたいです。
本書から三澤さんの人柄の良さがとても伝わってきて、一度三澤さんのオペラを観に行ってみたくなりました。そして、実に面白かった!自分の知らない世界を覗くというのはなんと素晴らしいことなんだろう。