病室で念仏を唱えないでください
こんな漫画がありました。
こやす珠世先生が描く『病室で念仏を唱えないでください』という漫画。
坊主である主人公が救急医として、またチャプレンとして働くお話です。坊主ならではの悟りを説く場面や、坊主とはいえ様々な煩悩に振り回される様が描かれています。
最近はQOLやインフォームド・コンセント、アドバンスドケアプランニングと患者さんご自身やご家族の診療への関わり方に重きを置かれています。一方で救急診療では生命のトリアージ、タイムマネジメントが求められます。そのような両極端な性質をどう両立していくかを苦悩する主人公を描いている漫画です。
実際自分自身が両立するのはまだ不可能です。ただ医療者としてはチームとして診療にあたるので、役割を意識して対応しています。研修医としては足を使うこと、時間を使うこと、見逃しを防ぐための診察をすることが役割だと考えて動いています。それでも看護師さんの方が長く患者さんと接していますし、食事に関しては栄養士さん、リハビリなら理学・作業療法士さんが詳しいと思います。各メディカルスタッフの特徴を把握して情報共有していくのも研修医の役割なのかもしれないと最近考えています。
病院によって違うのでしょうけど・・・
あと救急診療関連で興味深い論文がありましたのでついでに。
「Immediate total-body CT scanning versus conventional imaging and selective CT scanning in patients with severe trauma (REACT-2): a randomised controlled trial」Joanne C Sierink,The Lancet Available online 28 June 2016
重症外傷患者へ無条件で全身CTを行う群とX線や超音波を行ってから必要な患者だけにCTを実施する群の比較を行った研究です。結論をいえば院内死亡率に差はなく、放射線被曝量は全身CTスキャンの方が多いとのことです。副次アウトカムとしては検査に要した時間、入院期間中のコストなどを調べています。
救急ではオーバートリアージで良いと思うのですが、こういった論文を見ると悩んでしまいます。病院の環境、CTへのアクセスのしやすさ、救急外来の混雑具合、患者の経済状況なども関係ありそうですし、今回気が付かなかった交絡因子もたくさんありそうです。とりあえずどういった群にpanscanが必要なのかの指標があるか、近々しらべてみようと思います。
免疫のチカラ
今後、医療漫画や参考書にかこつけて種々の記事を書いていきます。
今回は協和発酵キリンのホームページに掲載されているwebコミック『新抗体物語』。『Ns'あおい』『町医者ジャンボ!!』、『Dr.アシュラ』を手がけたこしのりょう先生が描いています。
免疫学の研究者牛島元のサクセス・ストーリーを描いたこの作品ですが、初学者に免疫というものを分かりやすく説明するために描かれたもののようです。
作中では花粉症、ワクチン、抗体医薬品、バイオシミラー(バイオ医薬品の後発薬)などについて説明されていました。
腫瘍内科を志す身としては免疫チェックポイント阻害薬の今後の動向も気になるところ。昨年の臨床腫瘍学会でも多くの先生が取り上げていました。悪性黒色腫をはじめとした種々の癌腫に効果があることから注目されていますね。
免疫チェックポイント阻害薬は薬価や長期的な副作用など課題が多いのも確かです。
例えば抗PD-1抗体ニボルマブの場合ですが、悪性黒色腫に対しては3週間に1回の投与が数年間必要で、体重50キロの患者だと1回になんと約75万円かかるそうです。
その一方で新しい治療法が確立するかもしれないというのはとても刺激的と感じる自分もいるのも確かなんですよね。
まずは患者さんが何を求めているか話し合って、時間内にそれを汲みとって治療プランを分かりやすく提案できるように勉強あるのみ。
学生の間に購読した参考書 まとめ
学生の間に購読した参考書を以下にまとめました。
・循環器
『極論で語る循環器内科』
・呼吸器
『レジデントのためのやさしイイ呼吸器教室』
『レジデントのためのやさしイイ胸部画像教室』
・神経
『極論で語る神経内科』
・腎臓・内分泌
『極論で語る腎臓内科』
『水・電解質と酸塩基平衡―Step by stepで考える』
・免疫・アレルギー・膠原病
『みるトレ リウマチ・膠原病』
・血液
『病気がみえる 〈vol.5〉 血液 』
『誰も教えてくれなかった 血算の読み方・考え方』
・感染症
『神戸大学感染症内科版TBL: 問題解決型ライブ講義 集中!5日間』
『感染症診療のロジック』
『みるトレ 感染症』
・腫瘍内科
『がん診療レジデントマニュアル 第6版』
・産婦人科
『病気がみえる vol.9: 婦人科・乳腺外科』
『病気がみえる vol.10: 産科』
・小児科
『小児科(国試マニュアル100%) 』
『HAPPY! こどものみかた』
・整形外科
『手・足・腰診療スキルアップ 』
・皮膚科
『内科で出会う 見ためで探す皮膚疾患アトラス』
・麻酔科
『麻酔科・救急 (国試マニュアル100%シリーズ)』
『やさしくわかる!麻酔科研修』
・精神科
『こうすればうまくいく! 精神科臨床はじめの一歩』
・その他
『内科ポケットレファランス』
『YouTubeでみる身体診察』
『改訂レジデント技術全書』
『臨床研修はじめの一歩―こうすればうまくいく!』
『高齢者診療で身体診察を強力な武器にするためのエビデンス』
『緩和治療薬の考え方、使い方』
国試を終えて
医師国家試験に向けてやったことをまとめます。
・勉強について
実習と合わせて某予備校の授業を受ける。
参考書を読む。 →別の記事でまとめます。
回数別問題集で直近3年分を分析。
予備校のテキストを3周以上する。
medu4で総論対策。
模試の復習をする。
・生活について
勉強会を行う。
予防接種。
早寝早起き(当日に合わせた生活習慣)。
食事内容に気をつける。
おおまかにこんな感じです。
当日は筆記用具、受験票などの必要なものの他、糖分とビタミンB1が含まれているサプリメントを持って行きました。
勉強会について
僕は国試勉強を始める前に色々な先生や先輩から勉強会をすべきという話を聞いていました。
そこで当初は漠然と
メリット
強制力が働く。
色々な視点の情報が手に入る。
デメリット
時間調整してまで、複数人でやるメリットが少ない。
またどのようにすれば複数人で勉強会をするメリットを享受できるかわからない。
と考え、勉強会をすることに対して若干の疑問を持っていました。
国試を終えた僕の意見として
メリット
強制力が働く。→朝7:00に集合し、遅れたら昼食オゴリというゲーム感覚で。
世間話が大抵国試の話題なので、スキマ時間の勉強が自然とできる。
案外楽しく国試勉強ができる。
国試当日に不安を共有できる。→いつも一緒に勉強していると実力が拮抗してくるため
デメリット
友人と成績を比べてしまい、焦る。
無駄な世間話をしてしまうリスクがある。
具体的にどんなことをやったかというと
・回数別で気になった問題・ワードの紹介。
・今年のヤマを張り合う。
・自分が間違えた問題を他の人はできるか確認。
→国試は90%が合格する試験なので、「自分は間違えて、他の人は正解できた状況を減らす」ことができれば受かる。
グループ学習によって120%の学習効率というよりは、学習環境を整えるのが楽という印象でした。(もちろんやり方によっては学習効率を高める方法もあると思いますが)
デメリットも自分が働きかける事によって減らすことができますし。
結果として僕はわりかし楽しく国試勉強を終えることができました。
国試勉強も医療と同じでリスクとべネフィットを比べてより良い選択をすることが必要です。この記事が来年以降試験を受ける方々の参考になれば幸いです。