LED ZEPPELIN - CELEBRATION DAYS

Led Zeppelinの音源を少しずつ集めています。

M44カートリッジ 8 Shureのカートリッジの内部構造

Shureのカートリッジの内部構造を調べてみました。


Shureの公式サイトには、Q&Aのセクションがあり、カートリッジの内部構造に関する質問に対する図解付きの回答が掲載されています。

https://service.shure.com/s/article/cutaway-view-of-a-moving-magnet-phono-cartridge?language=en_US

 



質問と回答の日付は2022年ですが、Shureは既にカートリッジ事業から撤退していますので、内部構造を公開しても問題はないのでしょうか。

 

しかし、この図がすべてのカートリッジに適用されるかどうかは明確ではありません。インターネット上には情報が溢れていますが、カートリッジの分解画像までは見つからないからです。


ただし、M3やM7を例にした特許には、この図に類似した図面が掲載されています。また、技術書のレコードプレーヤーにはShureタイプのカートリッジとして同様の構造が紹介されています。当時代表的だったShureタイプのカートリッジはV15 Type2だったそうです。

--

この構造の特徴は、コイルが4つあり、ボディの上部に配置されていることです。

これらのコイルは、左右のチャンネルごとに2つずつ逆向きに配置されており、外部からのノイズを打ち消す役割を果たしています。これは、ハムバッキングのエレクトリックギターと同様の原理ですね。


また、コイルがボディの上部にあるため、垂直トラッキング角が浅くなっても、カートリッジの底がレコード盤を擦ることはありません。


M44の前後に発売されたカートリッジも同様の構造を採用しているため、M44も同じ構造である可能性が高いかもしれません。

 

M44カートリッジ 7 V15や、その他のカートリッジとの比較

1965年のカタログを見てみます。

 

こちらには、当時販売されていた製品の比較が掲載されています。

 

どんなことが書いてあるかというと。。。

 

V15について、トラッキング角15度と楕円針によって、ピンチ効果、IM、高調波歪が低減されています。

徹底した品質管理が行われ、文字通り手作りで個別にテストされています。

Shureの最高級カートリッジで、価格は62.50ドルです。

 

M55Eは、楕円針とトラッキング角15度により、歪みがなく、低質量で傷つきにくい特徴を持ちます。

標準の品質管理条件下で製造されます。

トーンアームが1gで追従できれば、最適です。

特別価格は35.50ドルです。

 

M44は手頃な価格で最高品質のカートリッジとされています。

4~1.5gの場合は、0.0005インチの針を備えたM44-5が最良であり、1~3gの場合はM44-7が最適です。

M44-5は21.95ドル、M44-7は19.95ドルです。

 

他にもM7やM3が掲載されていますが、これらはもう少し古い製品で、M44の方が優れているようですね。

 

--

M55は、カートリッジ本体はM44と同じですが、針の違いによってM55EやM44-5、M44-7として販売されます。

 

これらの製品を比較すると、Shureの最高機種であるV15は品質管理が厳しいだけで、楕円針をつけたM44とはあまり変わらない印象を受けます。

また、設計にも共通点があり、安価で初心者向けの製品ではないことがわかります。

 

--

ただし、これらのカートリッジはその後、異なる経過をだ撮ります。

 

V15は仕様が少しずつ変わり、SMEとの組み合わせでトラッキングを追求しました。

外装もType 2以降はアルミから樹脂に変更され、自重が軽くなり、より軽い針圧に適した設計になりました。

 

一方、M44は外観が変わりましたが、音を拾う機能面においては生産終了まで変更はありませんでした。

設計された使用のまま、50年以上にわたり生産され続けたなんて驚いてしまいますよね。

 

M44カートリッジ 6 V15との関係は?

前回以下のように書きました。

 

V15(Type 〇〇と呼ばない最初期の製品)は、M44より後に製品化されたようです。

M44より一年遅れて、1965年のカタログに掲載されています。

 

でも、あらためて64年のカタログを見ると、V15も載っていましたね。。。

気が付きませんでした。

 

となると、M44とV15は同時期に開発されたのでしょうね。

もしかして、同じもの(もしくは設計が一部共通)??

 

海外の掲示板では、M44とV15(初期型)の発電機構は同じと書いてあるのを見かけます。

外装を分解した内部の写真があれば判断できるのですが、ネットを探してみたところ、参考になりそうな画像は見つけられませんでした。

 

ここで針の互換表をみてみると。。。

 

N44-1とN44-3は、それぞれM44用のモノ、SP用交換針針なのですが、V15も使えるようです。V15でモノ盤やSP盤を聴くのであれば、M44用の針を使ってね、ということになります。

 

少なくとも交換針の取り付け部分の設計は共通なようです。

M44カートリッジ 5 V15との関係は?

垂直トラッキング角が15度というと、まずはV15が思い浮かびますね。

M44はというと、あれもそうだったんだ。。。という印象です。

現在では、堅牢でDJ向きと紹介されることはあっても、垂直トラッキング角がどうこうと言及されることは目にすることはないように思います。

 

V15(Type 〇〇と呼ばない最初期の製品)は、M44より後に製品化されたようです。

M44より一年遅れて、1965年のカタログに掲載されています。

 

ちょっと紹介文を見てみましょう。

https://service.shure.com/s/article/vintage-shure-catalogs-1933-1984?language=en_US

 

紹介の途中で、V15の特徴がまとめられています。

  • Shure バイラジアル楕円針
  • 針の完璧な対称性を実現するために考案された独自の品質管理技術と基準
  • 15 度のトラッキング角度

 

これによって、IM 歪みと高調波歪みを低減すると謳っています。

 

V15は、M44のもつ15度のトラッキングに加えて、楕円針の採用とそれに必要な品質管理が加えられているようです。トレース歪をより小さくするための楕円針はこのころ出始めたのでしょうか。

 

その他、ちょっと気になる点を挙げてみましょう。

  • 開発設計は63年の終わり頃
  • 公差が厳しく厳密な検査が必要なため、数量限定で、安価ではない。
  • SMEのトーン・アームとの組み合わせで、難しく変調の激しいパッセージでも最小の力でトラッキングする。
  • 宇宙時代の信頼性を実現する品質管理と検査対策
  • 精密機械加工されたアルミニウムと超安定性プラスチック スタイラス グリップによって、内部、取り付け部分のすべてにおいて正確な位置合わせを保証する。

宇宙時代というのは、時代を思わせますね。当時最先端のロケットを引き合いに出すほどの品質管理(!)

またSMEのトーン・アームと組み合わせた使用法を提案していることにも注目です。

 

M44カートリッジ 4 実効垂直角の不一致による影響

ちょっと脱線気味ですが、実効垂直録音角と垂直トラッキング角が不一致の場合、どのような問題が起こるのでしょうか?

山本武夫氏が書いた「レコードプレーヤー」という本によると...

  1. 垂直再生信号に第2高調波ひずみが発生する。
  2. 複数の垂直信号の場合には混変調ひずみが発生する。
  3. 左右チャネル間で周波数変調ひずみやクロストークが発生する。

なるほど。なんとなく想像がつきますね。

 

また、レコード盤に収録された音楽によっては、影響が出やすいものと出にくいものがあるそうです。

左右で別の楽器がなるような、よく分離している音楽は、垂直方向に針が動きやすい音楽なので、影響が出やすいです。

一方で、モノラルか、それに近いほど影響は少なくなります。

これも想像がつきますね。

 

「レコードプレーヤー」にはいろいろなカートリッジの垂直トラッキング角が紹介されています。

11種類のカートリッジは、16度から30度くらいの範囲でばらけていて、特に20度前後のものが多いようです。

これは垂直トラッキング角を完全に15度に合わせようとすると、角度が浅すぎてカートリッジの底を擦ってしまうという問題が出てくるためです。

仮に底を擦るのを避けようとカンチレバーを伸ばすと、レバーの等価質量が大きくなったり、レバーが撓んでしまうという問題も出てきてしまいます。

結局、多少の歪みは仕方がないとして、レバーの等価質量を小さくし、レバーの撓みにくさを優先させて設計するのだとか。

一方で、M44もそうなのかはっきりとはわかりませんが、Shureのカートリッジは、コイルの設計を工夫して垂直トラッキング角15度を確保しています。これについてはまたしばらくしてから詳しく書いてみます。

 

これまで実効垂直録音角と垂直トラッキング角を15度に一致させることが重要、と書いてきましたが、ちょっと注意が必要です。

実効垂直録音角が15度に統一されていったのは1964年以降のことです。

しばらくは15度ではない盤もあったでしょうし、それ以前の盤は15度ではありませんでした。

M44が実力を発揮するのは、実効垂直録音角が15度でカッティングされた盤です。

それ以外の盤については、適切な垂直トラッキング角のカートリッジを選択した方が(実効垂直録音角と垂直トラッキング角という観点だけに限っては)、いい結果になる可能性が高いです。

またモノラル盤に関しては、どんなカートリッジでも違いはないように思います。

 

M44カートリッジ 3 有効垂直角

M44の広告によると、有効垂直角度がまちまちだと、IMや高調波ひずみがでると書いてあります

どうしてそうなるのか、山本武夫氏が書いた「レコードプレーヤー」という本で調べてみました。

ざっくりまとめると。。。

  • 垂直の信号を録音する場合、カッター針はカッター振動系の中心を回転中心としてA-A'の軌跡を描く。
  • 垂直方向に対するA-A'方向の傾き角を垂直録音角θという。
  • 垂直の信号を再生する場合、再生針は再生振動系の中心を回転中心としてB-B'の軌跡を描く。
  • 垂直方向に対するB-B'方向の傾き角をカートリッジの垂直トラッキング角φという。
  • 垂直録音角θと垂直トラッキング角φが等しければ問題はないが、一般的には相違していて、これが歪の原因になる。


。。。ということのようです。
厳密にはA-A’とB-B'は直線でなく、円弧だと思うのですが、動き量が小さいので、ほぼ直線と考えていいでしょうか。

 

加えてこんなことも書かれています。

  • カッター針はA-A'上で単振動をするため、垂直録音角が0度にならない限り、正弦波を録音しても音溝の形は正弦波状にならない。
  • ラッカー盤には弾性があるので、カッティング針の動きがそのままラッカー盤に残るわけではない。
  • 垂直録音角θに対して、ラッカー盤の弾性で戻った角度を実効垂直録音角θeという。
  • アメリカのCBSRCAなどのレコードでは、垂直録音角θ23度のカッターを使っていたので、実効垂直録音角θeは約0度になってしまう。
  • ヨーロッパ系のロンドンなどのレコードでは、垂直録音角θ0度のカッターを使っていたので、実効垂直録音角θeは約-10度になってしまう。


前回のカッターと再生針の実効垂直角を統一するという話は、こういった現象が背景にあったのですね。

M44カートリッジ 2 M44の特徴

ShureのカタログにM44が初めて載ったのは、1964年(今からちょうど60年前ですね)のことだったようです。
画期的な製品だったようで、紹介に1ページ費やされています。


少し読んでみましょう。。。

 

音については昼と夜ほどの違いがあるようです。

  • 可聴域の周波数特性がフラットであるとか、コンプライアンス(25 x 10-5 cm/dyne)については改善されたわけではない。
  • IM(インターモジュール歪)と高調波ひずみがこれまでの製品、Shure Stereo Dyneticに比べて75% から 90%減少している。
  • チャンネル間のクロストークが低中域で打ち消され、チャンネルセパレーションが優れている。

Shure Stereo Dyneticというのはステレオ・レコード用の初期のカートリッジで、M3やM7のことです。

 

針が格納式になっているようです。

  • トーンアームに過剰な力がかかると瞬間的に引っ込む。

うーん、これはどういうことでしょう?針が上下方向に動くということでしょうか?

格納。カートリッジ本体に針が引き込まれるということはないし。。。

 

ここからが重要ですね。こうした改善がなにによってもたらされるかというと、有効垂直角度によるもののようです。

  • 64年当時、それ以前のカッター針と再生針は、どれも有効垂直角度がまちまちだった。
  • 角度の違いがIMや高調波歪の原因とされ、RIAAや EIAが提案する有効カット角 15度に統一されつつある。
  • 15度はShure Stereo Dyneticでは実現できず、新設計のM44で可能となった。

 

図が載っていますが、確かに15度となっていますね(レコード盤の法線とカンチレバーの法線との角度が15度となっていてぱっと見てみたときにちょっと混乱するのですが)。