亀も空を飛ぶ

dvoix2005-10-27

 クルド人監督バフマン・ゴバディによる、イラク戦争開戦直前のイラクを舞台にした作品。福岡で上映されてほんとによかった。『大いなる休暇』のときも言いましたが、ありがとう、シネサロン・パヴェリア。


(あらすじ)
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
 舞台はイラク北部クルディスタン地方の小さな村。

 アメリカに憧れる利発な少年・サテライトは、村々を渡り歩いて、衛星放送受信のためのパラボラアンテナを設置してまわっている。再びの戦争の予感に、人々は軍の動向に関する情報を欲しているからだ(ただし、受信した放送は英語なので、村人はほとんど理解できない)。

 彼は村の子どもたちのリーダー格でもあるので、みんなを指導して、地雷除去作業や、不発弾処理をさせたりもする。なかには、地雷の被害で手や足を失った子どもも数多くいる。かれらは、除去した地雷を国連に売ることで生計を立てているのだ。

 ある日サテライトは、ハラブジャから来たという難民の少女・アグリンに恋をする。彼女には、両腕のない兄(予知能力がある)と、目の見えない幼い弟がいた。サテライトは、仲良くなるために機を見ては彼女に話しかけるが、一向に心を開いてはくれない。

 じつは彼女には、秘められた重い過去があった…。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 日本では考えられないほど酷い生活を送る人々の生活を描いているのに、驚くほどギャグ満載。それだけにいっそう、あまりに救いのないエンディングが胸に迫る傑作。
 なおパンフレットは、クルディスタンについての詳しい解説や、映画に出た子役たちのその後の情報*1、監督インタビュー、映画の全セリフ(!)など、すばらしい仕上がり。

*1:現実に目の見えない子が、目の見えない幼子を演じているんだけど、この映画のおかげで手術ができて見えるようになったらしい。よかったなあ。

大いなる休暇

 週刊プレイボーイの映画コラムで知って以来楽しみにしていたんですが、福岡でも上映されたことを、まずは喜びたい。ありがとう、シネサロン・パヴェリア。


 原題は "La Grande Seduction" で、直訳すれば「大いなる誘惑」になるんですが、「休暇」ってどこから出てきたんだろう。"seduction" にそんな意味あったっけ?と思わず辞書を引いてしまいました。
 映画の内容から察するに、「おれたちゃ失業してるわけじゃないぜ…単に長え休み取ってるだけだ!」って感じの、島民のポジティブさを表しているってことでしょうか。
 それとも何か元ネタがあるのかな?


 なお、パンフレットに池内紀氏がコラムを寄せていて、劇中の1シーンに関して「煙突からいっせいに、コトが無事終わったあとの吐息のように、白い湯気が立ちのぼる」と書かれています。
 しかし、あれは湯気じゃなくて、コトが終わったあとの定番:煙草の煙ではないでしょうか? ライターを擦るらしき音も聞こえることだし。

ヒトラー 〜最期の12日間〜

 ヒトラーを人間的に描いたということでドイツ本国では大きな話題になったらしいが、それほど問題作でもないかなあ、というのが率直な感想。ある程度好感の持てる人間として描かれているのかと思い込んでいたが、被害妄想の強い、コンプレックスまみれの男として描写されていた。じゅうぶん嫌な奴なんだが、これでも問題になるんだなあ。

 作風に関して言えば、やはりドイツではきわめてデリケートなテーマだからか、作品はことさらドラマチックに盛り上がることはなく、淡々と第三帝国の破滅が描かれていく(原題は、Der Untergang:破滅)。主役はヒトラーというよりも、第三帝国そのものといった感があり、群像劇的。

 個人的にはゲッベルスにもうちょっと焦点を当てて欲しかったところではあるのだが、作品の扱う時期的にしょうがないか。ひとつの問題について四つの異なった見解を説得的に主張するという特技とか見たかった。


 なお、本作のいちばんの見所は、『キネマ旬報』のクロスレビューでも触れられていた、ゲッベルスの妻に関するエピソードだろう。 彼女は、「ナチスの滅んだ世界に子どもたちが育つのはかわいそうだ」といって、六人の子どもをみずから毒殺するのだ。信仰という行為が示す、悲劇性と一抹の崇高さとを示す衝撃的エピソード。

 もっとも、前川道介『炎と闇の帝国:ゲッベルスとその妻マクダ』(白水社)によると、彼女はナチスの思想にはけっこう懐疑的な人物であったようで、夫ゲッベルスには複雑な感情を抱いていたみたいだし、子どもを殺す動機も、「ゲッベルスの子であるということで、これからの生涯で迫害を受けさせるには忍びない」ということだったらしい。映画の原作は未読だが、そのへんどうなってるんだろう。 やはり読んでおくべきなのか…。

Hotwax vol.2

dvoix2005-06-13

 タワレコで偶然見つけて購入。表紙から巻頭約90ページにも及ぶ梶芽衣子大特集だが,すごいの一言。詳細な出演映画・テレビ作品リスト,ディスコグラフィ,その歴史的考察といい,実にインフォマティブな作りに頭が下がる思い。テイチクから出てるCD『梶芽衣子全曲集』は持ってるけど,やっぱり漏れてる曲があるんだなあ。それも膨大な数。レコード探すか…。
 ご多分に漏れず『キル・ビル』のおかげで梶芽衣子ファンになった若輩者としては,記事のほとんどを手がけている馬飼野元宏氏に大感謝です。この本片手にビデオ屋巡ろう。

性的犯罪

 実話ベースらしいが,なんか脚本がてきとうだ。ピンク映画をほとんど観ていないので,そういう映画としてどういう評価をされたのかはちょっとわからない。ちなみに,ここダウンロード販売やってる模様。

黒薔薇の館

 丸山(三輪)明宏ってすげえ人気あるんだなあ。大入りで驚いた。たしかに,三輪さんの系譜上にあるスターって今はいないような。劇中,若かりしころの田村正和が出たとたん観客から笑いが。驚くほど変わんないねこの人。